こんにちは、Mental-Fitです。
女性の社会進出において、日本も少しずつ進んできているとはいえ、欧米など世界に比べると、まだまだ遅れを取っています。
女性が働きやすい環境、社会になったことで女性の選択肢が増え、企業として、雇用主として、女性故の健康課題についてしっかり耳を傾ける必要があります。
そこで今回は、雇用主が女性のメンタルヘルスをサポートすべき具体的な理由について解説します。
目次
1.女性の社会進出に伴って、女性のメンタルヘルスの課題が表出
一昔前までは「男性は外で働き女性は家を守る」という考え方が典型的でした。
働いてお金を稼ぐのは男性で、家事や育児などをするのは女性というのが世間一般的だったのに対して、時代が変わるにつれてその役割の決まりがなくなりつつあり、近年では女性の社会進出が様々な分野で進んでいます。
2019年の総務省統計局による労働力調査によれば、2009 年には2,649 万人であった女性の労働力人口が、2019年には 2,992 万人となっており、8年連続で増加傾向にあると報告されています。
また東洋経済新報社「役員四季報」の調べによれば、2021年7月末時点での上場企業の女性役員数は3,035人で、2012年の630人と比較すると約4.8倍にも増加しています。
こうした女性の社会進出に伴い女性特有のメンタルヘルスの問題が顕在化してきました。
2.女性は男性の2倍、うつになりやすい
女性は男性の2倍程度、うつ病になりやすい。うつ病が女性に多いことは、世界的な傾向である。男女差の原因としては、思春期における女性ホルモンの増加、妊娠・出産など女性に特有の危険因子や男女の社会的役割の格差などが考えられている。また、うつ病は一般には若年層に高頻度にみられるが、うつ病の経験者は若年層と中高年層の2つの年齢層に多く、中高年層にも心理的な負担がかかっている可能性がある。
厚生労働省(2004)『うつ対策推進方策マニュアル』
厚生労働省が2017年に実施した『患者調査』によれば、うつ病・躁うつ病の総患者数は1996年以降、常に女性の方が男性よりも多い傾向にあり、特に40代以降においては顕著な差が生まれています。
その背景には、結婚、出産、育児、介護、仕事における昇進等、女性特有のライフコースにおける大きな意思決定のタイミングと、男性優位とされる社会下でのキャリアプランが重なってしまうことに大きな原因があります。
3.月経随伴症状による労働損失は4911億円
例えば、女性特有の月経随伴症状による労働損失は4,911億円と試算されている。健康経営を通じて女性の健康課題に対応し、女性が働きやすい社会環境の整備を進めることが、生産性向上や企業業績向上に結びつくと考えられる。
経済産業省ヘルスケア産業課(2019)『健康経営における女性の健康の取り組みについて』
生理があるたびに襲ってくる痛みや吐き気、めまいなどのいろんな症状を「月経随伴症状」と呼び、これに悩まされる女性は少なくありません。
その症状の程度というのは個人差があり、デスクに座っていることでさえ辛くなるような症状が重い女性もいます。
多くの女性が社会に進出するということは、この月経随伴症状についてもしっかり考える必要があります。
本人が辛いのはもちろんのこと、引用部分にもあるように月経随伴症状によって大きな労働損失があり、さらに医薬品や通院にかかる費用などを加えると社会的経済損失は約7000億円にも及ぶとされています。
雇用主としては、無理をしないで休める環境作り、休み希望を躊躇なく伝えることができる環境を整えることが女性の社会進出の助けにもなるでしょう。
4.働く母親は父親に比べて、バーンアウトを発症する確率が高い
「バーンアウト」という言葉を聞いたことがありますか?
これは「燃え尽き症候群」という意味で、今まで熱心に仕事をしていた人が急にやる気を失うことです。
バーンアウトの具体的な症状としては、3つあります。
①情緒的消耗感
仕事相手と信頼関係を築くため誠実で思いやりのある対応を心がけると、情緒エネルギーが使われます。それが消耗することで疲弊感を感じるようになります。
②脱人格化
情緒的なエネルギーがなくなると、それ以上消耗をしないために人間は脱人格化という防衛を行い、相手の人格を無視したり冷たい対応などを取るようになります。
③個人的達成感の低下
これは上記の2つにより提供するサービスの質が低下し、それにより達成感や成果が得られなくなり仕事へのやる気ややりがいなどが低下してしまうことです。その結果、仕事を辞職したり休職することにつながります。
5.危惧される女性管理職の健康状態
バーンアウトは、特に医療従事者や介護、接客など人と直接的にコミュニケーションをする職業でなりやすいといわれていましたが、最近ではどの職種でもバーンアウトを発症する人が増えています。
実際、今日WHO(世界保健機関)でもバーンアウトについては問題視されており、それは個人だけの問題ではなく組織としての責任という見方もあります。
そのため、雇用主としては従業員に対して、職場での不当な扱いやコミュニケーション不足、過大な業務量などバーンアウトを誘発する原因を一つ一つ解決していく必要があります。
最後に
今回は、雇用主が女性のメンタルヘルスをサポートすべき理由について解説しました。
昨今、女性の社会進出が数字で顕著に見られるようになってきた一方、世界の中ではまだ発展途上の段階に位置していることは事実です。
女性特有のメンタルヘルスの課題を社会全体が理解することこそが、日本における女性の社会進出という難題の突破口になると信じています。