近年、働き方改革に伴い勤怠管理の重要性が高まっています。
改正労働安全衛生法では、客観的な労働時間の把握が義務付けられるようになりましたが、「なぜ勤怠管理において、客観的記録が求められているのか?」「どのような方法で客観的な勤怠管理をおこなうのか?」と疑問に感じている担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、客観的記録を用いた勤怠管理が求められている背景や注意点について解説します。
数多くある勤怠管理システムの中から、自社に見合うシステムを探す際、何を基準にして選べばいいのか、悩まれる方も多いのではないでしょうか。
そのような方のために今回、社労士監修のもと、「勤怠管理システムの比較表」をご用意いたしました。資料には以下のことがまとめられています。
・勤怠管理システムの5つの選定ポイント
・社労士のお客様のシステム導入失敗談
・法対応の観点において、システム選定で注意すべきこと
お客様の声をもとに作成した、比較表も付属しています。これから勤怠管理システムの導入を検討されている方はぜひご活用ください。
目次
1. 勤怠管理における客観的記録とは?
勤怠管理における労働時間の客観的な記録とは、タイムカードやパソコンのログ、勤怠管理システムなどを利用した正確な記録のことです。企業は厚生労働省のガイドラインに従い、従業員ごとの出勤時刻・退勤時刻や実際の労働時間を適正に把握しなければなりません。
従業員の自己申告による管理では、正確な時間を記録できなかったり、過剰な長時間労働が発生したりするため、客観的な方法による記録が義務付けられています。やむを得ず自己申告制を採用する場合は、後述するような対策を講じることが必要です。
参照:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準|厚生労働省
1-1. 客観的な勤怠管理をおこなわなかったときの罰則
客観的な勤怠管理をおこなわないことにより、法定労働時間を超えてしまったり、賃金の未払いが発生したりした場合は罰則を受ける可能性があります。具体的には6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられるケースもあるため注意しましょう。
また、罰則を受けない場合でも、労使間のトラブルが発生し、社会的なイメージが悪くなる可能性もあります。
1-2. 労働時間の定義
そもそも労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間のことです。たとえば、以下のような時間も労働時間としてカウントしなければなりません。
- 会社指定の制服や作業服に着替える時間
- 朝礼に参加する時間
- 強制参加の研修会や勉強会に出席する時間
具体的に指示した場合はもちろん、参加せざるを得ないなど、「黙示の指示」があった場合も労働時間と見なされるため注意しましょう。
2. 勤怠管理の客観的記録が求められる背景
ここでは、勤怠管理の客観的記録が求められる背景について解説します。
2-1. 従来は労働時間の管理があいまいだった
2019年以前は、労働時間の管理が非常にあいまいでした。その理由として、まだ36協定に罰則付きの上限規制が設けられていなかったことや、法的に労働時間を取り締まるという風潮が弱かったことなどが挙げられます。
労働時間の管理があいまいだったことが影響して、長時間労働や過労死が社会的に問題となりました。その結果、「働き方改革」の一環として、36協定に罰則付きの上限規制が設けられるなど、労働時間の管理に関しての法整備が進められています。
2-2. 労働時間の客観的な把握が義務化!
「働き方改革」が推進されていくなかで、2019年4月に労働安全衛生法が改正され、労働時間の客観的な把握が義務化されました。このような背景があり、各企業の勤怠管理において客観的記録が求められています。
客観的記録の身近な例としては、ICカードによる打刻や、パソコンの使用時間による記録などが挙げられます。第三者から見ても納得できる客観的な方法で、勤怠管理をおこなわなければなりません。
ここからは、より具体的に客観的な勤怠管理が求められる対象者について解説します。
3. 客観的な勤怠管理が求められる対象者とは?
客観的な勤怠管理が求められる対象者は、勤怠管理をおこなうべき全ての従業員です。
以前までは、「管理監督者」と「裁量労働制が適用されている従業員」は適用外でした。しかし現在では、法改正により、これらの従業員の勤怠状況についても客観的な方法で管理しなければなりません。
雇用している従業員の健康を守ることは、企業にとって重要です。健康状態を維持できないとモチベーションや生産性が低下し、優秀な従業員が離職してしまう可能性もあります。勤怠管理は手間のかかる業務ではありますが、高いパフォーマンスを維持しながら働いてもらうためにも、しっかり取り組むことが必要です。
4. 客観的な勤怠管理をおこなう場合の注意点
ここでは、客観的に勤怠管理をおこなっていくうえでの注意点を4つ解説します。
4-1. 出退勤時刻の確認・記録をおこなう
1つ目の注意点は「出退勤時刻の確認・記録をおこなう」です。
企業には従業員の労働時間を客観的に把握し、労働時間管理上の問題点を把握・解消に努めることが求められています。そのため、ただ1日の労働時間を把握するのではなく、労働日ごとの出退勤の時間を記録し、それを基に労働時間を把握する必要があります。
4-2. 正確な労働時間を賃金台帳へ記載する
正確な労働時間を把握するだけではなく、賃金台帳への記載も忘れないようにしましょう。労働基準法の第108条によって、従業員ごとの労働日数や労働時間などを賃金台帳へ記載することが義務付けられています。違反すると、30万円以下の罰金が科せられる可能性もあるため注意が必要です。
4-3. 勤怠管理の記録は5年間保存する必要がある
「勤怠管理の記録を5年間保存する必要がある」ことにも注意しましょう。
ここでいう勤怠管理の記録とは、始業・終業時刻まで記録した出勤簿やタイムカード、残業命令書など多岐にわたります。企業はそれぞれの書類に最後に記載された日を起算日として、勤怠記録を5年間保存する必要があります。
4-4. 自ら従業員が労働時間を申告するのは原則NG
「自ら従業員が労働時間を申告するのは原則NG」です。
従業員の自己申告によって労働時間を把握する方法は、あいまいな労働時間管理になってしまう可能性が高いため、原則禁止されています。そのため、企業内の労働時間管理の担当者が、直接従業員の労働時間を確認することが求められています。
しかし、やむを得ず自己申告で労働時間を管理しなければならないケースもなかにはあるでしょう。その場合の対応について次項で解説します。
5. やむを得ず、自己申告で労働時間を把握する場合の対応は?
やむを得ず、従業員の自己申告によって労働時間を管理する場合は、下記3点を意識するようにしましょう。それぞれのポイントについて、順番に解説します。
5-1. 事前に従業員に自己申告制について説明する
1つ目のポイントは「事前に従業員に自己申告制について説明する」です。
自己申告制による労働時間管理を導入する前に、自社の従業員に対し「適正な労働時間を申告することの重要性」を説明しましょう。従業員によっては、申告後の企業側の対応を恐れて、正しく労働時間を申告することに抵抗を覚える従業員もいます。そのため、適正な申告をおこなったとしても、従業員に不利益は無いということを周知する必要があります。
5-2. 必要に応じて労働時間の真偽を調査する
2つ目は「必要に応じて、労働時間の真偽を調査する」です。
自己申告によって労働時間管理をおこなっていくなかで、従業員が申告した労働時間と実際の労働時間に相違が見られることがあります。そのような場合は、該当する従業員に確認するなど、実態調査をおこなう必要があります。
また、合致しなかった場合だけでなく、定期的に申告した労働時間と実労働時間に相違がないか確認を取ることが望ましいです。
5-3. 従業員が適正に申告できる環境をつくる
3つ目は「従業員が適正に申告できる環境をつくる」です。
企業によっては、労働時間の削減のために時間外労働に一定の上限を設け、その上限を超えて時間外労働をおこなった従業員の賞与を減額するといった規則を設けていることもあります。このような場合、従業員が適正に労働時間を申告することに抵抗を覚えてしまい、客観的な勤怠管理をおこなうことができません。
従業員の自己申告による勤怠管理をおこなう場合は、従業員が適正に申告できる環境づくりを心掛けましょう。
ここまで、やむを得ず自己申告で労働時間を把握する場合の対応について解説しました。自己申告による勤怠管理は、労働時間の管理があいまいになってしまう可能性が高いため、できる限り客観的な労働時間管理ができる環境をつくりましょう。
6. 客観的な勤怠管理を効率化するツール
ここでは客観的な勤怠管理をするうえで役立つ、効率化ツールについて解説します。
6-1. タイムカード
1つ目に紹介する効率化ツールは「タイムカード」です。
客観的に勤怠管理をおこなうためには、従業員の出退勤の時間が記録された客観的記録が必要になります。その点、タイムカードは操作がシンプルで使いやすいため、客観的な勤怠管理に取り組もうと考えている企業におすすめです。
ただ、労働時間の集計業務を手入力でおこなう必要があるため、入力ミスが発生するリスクがあります。
6-2. パソコンのログ
2つ目に紹介するのは、パソコンのログを活用する方法です。
仕事で使用しているパソコンのログによって出勤時刻や退勤時刻を把握すれば、労働時間を客観的に把握できます。すでに使用しているパソコンを利用するため、タイムレコーダーなどの新たな機器を設置する必要はありません。
6-3. 勤怠管理システム
3つ目に紹介する効率化ツールは「勤怠管理システム」です。
勤怠管理システムであれば、スマートフォンやパソコン、ICカードなど多様な打刻方法があるため、労働環境を把握しづらい業種においても、正しく労働時間管理をおこなうことが可能です。
また、勤怠管理と給与計算が連動しているため、集計作業による入力ミスが発生することもなく、簡単に客観的記録を用いた勤怠管理をおこなうことができます。
7. 客観的な勤怠管理を実現し、法令に遵守した職場づくりを!
本記事では、客観的記録を用いた勤怠管理をおこなう重要性や、勤怠管理における注意点について解説しました。客観的記録を用いて勤怠管理をおこなうことは、適正な労働時間を把握し、結果として、従業員の長時間労働を防ぐことにつながります。
勤怠管理の方法を見直す場合は、タイムカードや勤怠管理システムなど、記録や集計を効率化できるツールの導入を検討しましょう。多くの作業を自動化できるため、担当者の負担を大幅に軽減することが可能です。
今回の記事の内容を踏まえて、客観的な勤怠管理を実現し、法令に遵守した職場づくりを心掛けましょう。