働き方の多様性が求められる近年、人事の役割は複雑化しています。その中でも、特に「従業員の感情価値」に投資していくことが求められているのではないでしょうか。
今回は、国内では初めて、海外でも例をみないスピードで上場を果たしたデザイン会社である株式会社グッドパッチの佐宗さんに、リモートワーク環境下での組織作りで取り組んだ工夫や事例について寄稿いただきました。
過去に離職率40%という組織崩壊を経験しながらも、2022年にはBest Motivation Companyに選出されている同社が実践する「オンラインホワイトボード」の活用術について、ご紹介します。
佐宗 純 | 株式会社グッドパッチ ProductDivisionシニアマネージャー 兼 ReDesignerグループ事業責任者
立教大学卒業後、大手通信会社でデザイン思考を用いた新規事業開発に従事。 UXデザイナーとしてグッドパッチ入社。プロトタイピングツールProttの初期フェーズやデザイン思考研修の担当等を経て、デザイナー向けキャリア支援サービス「ReDesigner」、学生向けプラットフォーム「ReDesigner for Student」の事業責任者を務める。2021年6月よりオンラインホワイトボード「Strap」の事業責任者、ProductDivisionシニアマネージャーも兼務し、デザイン会社における事業づくりをリードしている。
目次
1. Goodpatchが「社内コラボレーション」を大切にする理由
GoodpatchでStrapの事業責任者を務めている佐宗です。GoodpatchはデジタルプロダクトのUI/UXデザインを強みとして成長してきました。現在はこの強みを活かしながら、デザインの力でビジネスを前進させるデザインカンパニーとしてBrand ExperienceからBusiness Design領域まで提供価値を広げています。
1-1. 早くからフルリモートのノウハウを蓄積してきたGoodpatch
Goodpatchは、コロナ禍のかなり初期から社員の安全確保を最優先としてリモートワークを採用しました。
デザインパートナーとして多くの企業やチームを支援するためには、リモートワークの中でもメンバー同士のコミュニケーションやコラボレーションができる環境を作ることが重要です。
そのため、働き方が変わる中でも、同じ時間・空間を共有し、同じモノを見ながら議論できる環境づくりが必要な状況でした。
Goodpatch社内ではこれに先立ち、2018年からフルリモートデザインチーム「Goodpatch Anywhere」が立ち上がっています。そして、そのノウハウや経験を生かすことで、全社的にもスムーズにリモート体制に移行することができました。
全国で働くデザイナーを採用しやすいこともあり、現在も継続してリモートワークを取り入れています。
そんなGoodpatchが蓄積・実践してきた、オンラインホワイトボードを活用したコラボレーションのポイントをご紹介します。
1-2.「偉大なプロダクト」は「偉大なチーム」から生まれる
また、これまで数多くの成功と失敗をしてきた結果、Goodpatchでは良いコラボレーションを生むためには「同じモノを見る」ということが必要不可欠であると考えています。
社内でリモートワークを進める中でも、良いコラボレーションを体現することはできないか。このような課題をベースに、2020年9月のコロナ禍で開発しリリースしたプロダクトが、オンラインホワイトボードツール「Strap」です。
これは、社内のメンバー同士が同じモノをみながら、同じ時間、そして同じ感情を共有し、コラボレーションをできる場所を目指したプロダクトです。
Goodpatchには、「偉大なプロダクトは偉大なチームから生まれる」という言葉がずっと語り継がれています。異なる専門性や価値観を持ったメンバーが、チームとしてコラボレーションすることで、より良いプロダクトを生み出していけるという信念です。
リモートワーク環境下にあったGoodpatchにとって、Strapは非常に相性が良く、すぐに社内コラボレーションのハブになりました。
日々の会議のシーンはもちろん、新人研修やオンボーディング、経営会議のようなシーンまで幅広く活用されました。そして、社内で出たフィードバックをStrapの改善にも取り入れるという良い循環が生まれています。
2. そもそもオンラインホワイトボードって何?
オンラインホワイトボードは従来のホワイトボードをオンライン上に再現したものです。従来のホワイトボードと同じように、自由に文字を書いたり、図形を描いたり、付箋や写真を貼ることができます。
またオンラインホワイトボードには、ビジネスにおいてこのようなメリットがあります。
- どこにいてもメンバー全員で同じホワイトボードを見ながら作業できる
- オンライン上でボードごと保存されるので議事録代わりにもなる
- 字の綺麗さや構図のスキルに捉われない
リモートワークやハイブリットワークへの移行に伴い、社内外での研修やクライアントを巻き込んだコンサルティングをする上で、コラボレーションの場としても有効なツールです。
また、企画職や事業開発職ではブレインストーミングや事業ロードマップ策定の機会に、開発職やマーケティング職では価値定義や仕様の共有、スケジュールの作成時に活用する企業が増えています。
3. Goodpatchで実践する組織マネジメント
それでは、実際にGoodpatchではどのような取り組みが行われているのか。ここからは、各部門の事例をピックアップしてご紹介したいと思います。
3-1. 行動に落とし込む新人研修
Goodpatchの新人研修は、創業ストーリーや共通の価値観についての理解を高める研修、プロダクトアイデアやUIデザイン・UXデザインに関する講義を聞いた上でランディングページをデザインするといった実践的な研修等、様々なコンテンツが用意されています。
特に、共通の価値観について理解を深めるバリュー研修は、代表の土屋も新入社員と直接向き合いながらワークショップ形式で毎月欠かさず実施しています。
5つのコアバリューをしっかりと理解し、日々の仕事に反映するために、Strap上に5つのバリューの概要と新入社員が記入するワークシートを用意。各バリューに対し、自分がすべき行動とすべきでない行動を付箋に書き出し、日々の行動にまで落とし込みます。
具体的な行動を考え、可視化し共有することで新入社員自身がGoodpatchの価値観を体現できるよう工夫しています。
オンラインホワイトボードは広さに制限がないため、参加者全員で共有することも簡単です。また、それをきっかけにコミュニケーションが生まれ、オンラインでも滞りなく開催できています。
ホワイトボードをそのまま保存することもできるので、後から内容を振り返るなど、立ち戻る場所にもなっています。
3-2. 5つの壁を乗り越えるためのオンボーディング
先ほど挙げたコアバリューの中には「Play as a Team (最高のチームのつくり手になる)」というバリューがあり、チーム配属時のオンボーディングに活かされています。
新入社員には5つの壁があると言われているのをご存じでしょうか?
それは、①準備の壁 ②人間関係の壁 ③期待値の壁 ④学びの壁 ⑤成果の壁です。
オンボーディングでは、これら5つの壁を乗り越えられるように壁ごとに施策を考え、順次実行しながら効果を観測して改善点をアップデートしています。
また、実施した施策を1つのホワイトボードに集約しておくことで、メンバーがそれぞれ同じレベルで自己開示をしてお互いの共通点を見つけることにより、雑談が活性化しました。
具体的には、チームのミッション・ビジョンや今期の目標、また、各メンバーの取扱説明書や自分史、ストレングスファインダーといったチームメンバーに関する情報を網羅的にまとめています。
また、「オンボーディング」の役割と入社時に困ることをあらかじめ洗い出し、どんなことに困っていて(AsIs)どんな状態になりたいのか(ToBe)、どの情報へアクセスすれば解決するのか(How)を一覧化することも試みています。
3-3. Good& Moreでフィードバック
リモートワークになってから「チームのメンバーが夜遅くまで働いてしまう」「残業時間が増えた」「オンとオフを切り替えられない」「チーム内の雑談が無くなった」などの課題感を持つチームでは、「月イチGood&More 」という取り組みを実施しています。
Good&Moreとは、メンバー間で「良いと思ったこと」と「これから期待すること」を伝え合う振り返りのフレームワークです。こういった会話する機会を仕組みとして作ることでコミュニケーション量を増やしています。
毎月、同じホワイトボード上で開催することで、自分に対するフィードバックが蓄積されていきます。過去のフィードバックを振り返ることで、チームの成長や課題に気づくことができるため、チームの定例イベント化していくと効果的です。
4. 最後に
Goodpatchでは、社内コラボレーションのハブとしてオンラインホワイトボードを活用して、オンライン環境であるからこそのメリットを引き出し、組織マネジメントや人材育成まで行っています。オンラインホワイトボードをただの議事録で終わらせず、チーム作りや、組織マネジメントに是非活かしていただきたいと思っております。
【オンラインホワイトボードツール「Strap」について】