役員と一般の従業員は異なる雇用形態であるため、勤怠管理に関するルールも異なります。
特に、最近起業した方や勤怠管理担当になった方は、役員という役職を理解する必要があります。
今回は、役員の特徴や勤怠管理の必要性について解説します。
働き方改革が始まり、法改正によって労働時間の客観的な管理や年次有給休暇の管理など、勤怠管理により正確さが求められることとなりました。
しかし、働き方改革とひとことで言っても「何から進めていけばいいのかわからない…」「そもそも、法改正にきちんと対応できているか心配…」とお悩みの人事担当者様も多いのではないでしょうか。
そのような方に向け、働き方改革の内容とその対応方法をまとめた資料を無料で配布しておりますので、法律にあった勤怠管理ができているか確認したい方は、以下のボタンから「中小企業必見!働き方改革に対応した勤怠管理対策」のダウンロードページをご覧ください。
1. 役員の種類
会社の中心的人物として組織を動かし、管理監督をおこなう人材のことを役員といいます。
ここでは会社法で定義されている「取締役」「監査役」「会計参与」の役割と、役員と執行役員との違いについて解説します。
1-1. 取締役
取締役とは、株主の委託をもとに、企業の業務執行に関する意思決定をする役員のことです。
その際には、法令に適正な基準に準じているか監督する機関となります。
会社法改正前は、取締役会の設置と、取締役3人以上、監査役1人以上の選任が義務付けられていましたが、改正後はこの義務が撤廃され、取締役1人のみで監査役も不要といった最低限の機関設計が可能となりました。
ただし、取締役会を設置する場合には、取締役を3人以上選任する必要があるので注意しましょう。株式の譲渡制限を設けていない「公開会社」などの場合には、取締役会の設置が義務付けられています。
1-2. 監査役
監査役は、取締役や会計参与の職務執行を監査する役員のことです。役割は、健全で法律・規則に反することなく企業経営を守ることです。取締役が法令違反行為をおこなっていないか、規定に基づき適切に処理されているか確認します。
1-3. 会計参与
会計参与は取締役と共同し、賃貸対照表・損益計算書・事業報告書等の計算書類作成の役割を担っています。
会計の専門家であり、税理士、税理士法人、公認会計士、監査法人のいずれかが役割を担えます。
1-4. 執行役員
執行役員は事業運営のトップを担う役割を果たしていますが、会社法上の役員とは異なります。
経営の重厚事項を決定する権限は保有していないため、会社経営に参画する位置づけではありません。
執行役員を設置するメリットは取締役が経営に専念できたり、現場での意思決定が円滑に行えたりすることです。
2. 役員と従業員の違い
役員と従業員の違いとして、「雇用形態」「報酬」「保険」について解説します。
2-1. 役員の雇用形態
両者の明確な違いとして雇用している側と、雇用されている側という違いがあります。
役員は法人と「委任契約」を提携しているため、従業員数にはカウントされません。
なお、民法においては以下のように記載があります。
(受注者の注意義務)
第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を追う。
引用:第六百四十四条|e-Gov民法
この記載によると、役員は善良なる管理者として注意義務をもって委任されていることを意味しています。
一方で、従業員は労働契約の内容を守り、会社や監督の命令に従い業務を遂行する必要があります。
2-2. 役員の報酬
役員は株主総会によって決定される「役員報酬」を会社から受け取ります。この報酬は、一般的な従業員の給料よりも高い水準ですが、会社の業績によっては大幅に減額されることもあります。役職や勤続年数などによって決定され、従業員が会社から支給される「給与」とは異なります。
また、役員は「雇用」ではなく「委任」での契約であるため、労働基準法の「労働者」の対象となりません。そのため、役員には残業手当の支払い義務が発生しません。
2-3. 役員の保険
役員にも、健康保険、介護保険、厚生年金保険をあわせた「社会保険」が適用されます。
法人である場合は、健康保険と厚生年金保険には強制加入となります。加入義務がある場合に、加入手続きをしていないと法律違反となるため、注意してください。
また、常時5人以上の従業員が働く個人事業所の事業主や役員の場合も、原則として健康保険と厚生年金保険には加入する必要があります。しかし、原則として労災保険と雇用保険は役員には適用されません。ただし、従業員としての労働実態もある使用人兼務執行役員の場合については雇用保険に加入することができます。
その際には、ハローワーク指定の「兼務役員雇用実態証明書」等を管轄のハローワークに提出して、ハローワークから被保険者資格があると認められることにより加入することができます。
3. 役員の勤怠管理は原則不要
企業が従業員の出勤や退勤等の就業状況を把握して、管理をおこなうことを勤怠管理といいます。
前述の通り、役員は従業員とは異なるため、原則として勤怠管理は不要です。ここでは、その詳細について解説します。
3-1. 労働基準法や就業規則は役員に適用されない
使用人と雇用契約を締結している労働者については、労働基準法や就業規則が適用されます。
しかし、役員は法人と委任契約を締結しており、労働者にはあたりません。そのため、労働基準法と就業規則が適用されず、労働者ではない役員については勤怠管理が不要となります。
3-2. 勤怠管理が必要な場合もある
委任契約と雇用契約の両方を締結している「使用人兼務役員」については、一部勤怠管理が必要となる場合があります。この場合、労働者の要素が強いと判断されると、有給休暇の付与等含めて勤怠管理が必要となることを把握しておきましょう。
加えて、2019年の法改正によって勤怠管理をする上で管理担当者様が把握しなければならないルールが増えました。当サイトでは法改正で企業が対応すべき勤怠管理の方法をまとめた資料を無料で配布しております。自社の勤怠管理が適切に行われているのかどうかを確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
4. 役員の勤怠管理時の注意点とは
役員の勤怠管理は原則として不要ですが、実態把握のための注意点があります。
ここでは、注意点を2つ解説します。
4-1. 出勤簿を付けなければならない
労働の実態を会社が把握しておくために、出勤簿は必ず付ける必要があります。
社会保険適用の際に重要な記録となるため、役員であっても賃金台帳は作成する必要があることを念頭に置くことが大切です。
4-2. 他社への出向時には従業員として勤怠管理をしなければならない
役員が他社に出向する際には、一般の従業員と同様の扱いとなり、従業員同様に何日の何時に出退勤したのかを記録する必要があります。また、本来役員には適用されなかった労災保険と雇用保険が適用され、勤務状況をより詳細に記録する必要があります。
5. 役員は従業員と異なり勤怠管理は不要だが、実態把握は必要
役員は「雇用契約」「保険」「報酬」において従業員と異なり、勤怠管理も原則として不要です。ただし、企業は労働時間の実態把握のためにも出勤簿を付けたり、他社への出向時に従業員として勤怠管理をする必要があります。
従業員との立場や役割を認識して、状況に応じて勤怠管理をするようにしてください。