ビジネスSNSを展開する「Wantedly(ウォンテッドリー)」が、2年の開発期間を経て、満を辞してリリースするのが、今までにないATS(採用管理システム)「Wantedly Hire」。
2021年にリリースした従業員の定着・活躍を支援するサービス群「Engagement Suite」から、実に4年ぶりとなる新しいプロダクトとなります。
この「Wantedly Hire」について、ウォンテッドリー 代表取締役CEO 仲 暁子氏が登壇し、新規事業発表会が行われました。
近年、採用業務の多角化による、採用担当者の業務負担は年々増加。人員不足の現代において、1秒でも早く選考を進めるためにも、業務効率化は不可欠です。そんな採用プロセスにおけるさまざまな悩みを解決するべく、開発に踏み切ったとのこと。
今までにない「ATS」とはどのようなものなのか、企業採用担当者が抱える課題を具体的に紹介し、どのように解決されるのか。
本記事では、「Wantedly Hire」の特徴や機能について紹介していきます。
目次
なぜ今、ATS事業へ参入したのか?
仲氏は冒頭、今、なぜ「Wantedly Hire」が生まれたのか、その背景について触れました。
日本の有効求人倍率の推移は、バブル期を超えて高まってきており、さまざまな企業が中途採用に力を入れ始めた2016年前後から、採用業務を一元管理するATSが台頭し始めました。
そこから8年ほどが経過し、採用取り巻く状況も時代に合わせて次第に変化。
しかし、第一次世代の「ATS」の機能だけでは、新たなニーズに応えきれていないのではないかという仮説から開発をスタートしたといいます。
「ウォンテッドリー」の利用企業の数は現在、4万社を突破。大中小、さまざまな規模の業界のお客様に使っていただく中で、実際に採用管理に対する不満や要望をリサーチ。
採用担当の方、約160名にアンケートを取り、その中で、採用活動において課題に感じていることを挙げてもらいました。
また、昨今の採用の手順の複雑化についても触れました。
今ではカジュアル面談や会食といった、本選考に進む前段階の場が格段に増えていることもあり、候補者と社内メンバーとの日程調整などの業務において負担が増していることなどを紹介。
そうした昨今の求められるニーズに沿った機能を搭載した「Wantedly Hire」ならば、「後から参入することこそ有利に立てるのでは」と仲氏。その言葉からは、今事業に対する自信がうかがえました。
業務の一部を自動化することで、業務負担を軽減!採用のリードタイムを短縮する
実際に、採用業務をどれくらい負担に感じているかというアンケートでは、約7割が業務負担を実感していると回答しています。
現在、慢性的な人不足もあり、どの企業も採用担当が業務をこなしながら、積極的に採用していく必要性が生まれてきています。
それは「採用担当の業務自体が『タレント・アクイジション(TA)*』というものにシフトしてきている結果では」と仲氏は指摘します。
年々、採用難易度が上がっている今の時代において、積極的に働きかけて候補者を捕まえる必要が生まれています。
いわゆるナーチャリングして(潜在的な見込みの高い候補者を探して)移行度を高めて、最後選考へ進んでもらうためにも、今、増加しているのが「カジュアル面談」なのです。
その結果、日程調整のハードルが上がってしまったという現実もあるようです。
アンケートによると、約半数ほどの方々が日程調整に負担を感じています。
候補者と社内メンバー、人事部との日程調整に時間がかかっていては、大きな機会損失になりかねません。
すぐにやり取りをして競合の会社よりも1秒でも早く選考を進めるためにも、この日程調整における業務効率を高めることが、重要な機能だと、仲氏は考えました。
実際のデモンストレーションでは、日程調整ツールのようなシステムを用いて、会社のカレンダーと連携、面談に参加するメンバー全員の空き状況を見て候補日を割り出し、候補者に提案してくれる新機能を紹介。瞬く間にブッキングが終わりました。
これまで、1人の候補者で内定承諾に至るまで、のべ2時間もの日程調整の時間がかかっていたとのことですが、この機能を使えば、即レス対応が可能に。これだけでも、採用担当者の課題の大幅な改善となるはずです。
採用後のミスマッチを防ぐために、採用基準のスコアを標準化する
次に、さきほど紹介した課題に関するアンケートで、43%もの方が悩んでいるのが、採用における「ミスマッチ」の問題です。
仲氏によれば「採用がゴールではなくて、その後、長きにわたって活躍する人を見つけることがゴール」と話します。
よくあるパターンは「採用してもすぐ辞めてしまう」「採用したけど思っていた活躍をしてくれない」……など。こうした問題を解決するための機能についても紹介されました。
標準的な採用面接において、「採用基準スコア」というものが、各社の選考基準に合わせて設定されています。
しかし、その点数のつけ方が人によって違ったり、甘めにつける人もいれば辛めにつける人もいたりと、結局、キャリブレーション(各評価のバラつきをならすこと)する必要がありました。それを解決するのが、「採用基準の標準化」です。
「問題解決力」「チーム思考力」などの各社ごとの評価基準に合わせた質問案を設定しておくことで、どの面接で何を尋ねるかを決める「構造化面接」を、どの企業でも簡単に使うことができるようになります。
また、候補者を見極めるための質問はどのようなものがいいのかという課題についても、人事系コンサル会社「人材研究所」と協力し、質問案のサンプル12種類を標準装備。
誰でもすぐに、「構造化面接」が可能になっています。
選考後のデータ分析を行うことで、次の採用プロセスの改善につなげる
選考が終わった後、不採用、辞退理由などの細かいデータ登録も可能に。こうしたデータを定量化して分析することで、選考の傾向と対策を打つことができます。
こうした分析は「マーケティング業界では知られていましたが、採用プロセスにおいては反映されてこなかった」と仲氏は話します。
たとえば、応募経路に関しても、現在は多岐に渡ります。たとえば「採用イベント」とひとくくりにするだけでは不十分。
企業からニュースレターを送ったアウトバウンドからの参加者なのか、もしくはオーガニックにアクセスした参加者なのかで、歩留まりが大きく違ってきます。
このように、「流入するチャネルに分けて分析したい」というニーズがあるのだといいます。
現在、普及している「ATS」では、具体的にどこから来たのかがわかりませんでしたが、たとえば採用イベントが100個あれば、その100個の中で、それぞれの歩留まりも集計され、今後の改善に活かすことが可能になります。
時間をかけて開発した「次世代型ATS」に手応え!今後、さらなる展開に期待が高まる
この日、紹介された先進的かつ求められている機能だけでも「『次世代型ATS』と呼ぶにふさわしいものに仕上がっているのでは」と仲氏。
最初のコンセプトから2年と、実は長い年月をかけて作られたという「Wantedly Hire」。
これまでは、最大でも半年ほどでリリースし、お客様の声を聞きながらプロダクトを改善していくことを得意としていたそうですが、今回の「ATS」は、多機能であること、またすでに確立している市場への参入ということもあって、しっかりと時間をかけて、すべての機能を備えてからリリース。そのため、かなりの大規模開発になったことを明かしました。
すでに、先行して10社ほどに案内し、デモを体験してもらった結果についても、「すごく反応がいい」とのこと。
既存の確率されたATS事業に「次世代型の『ATS』がどれくらい受け入れられるのか不安はありましたが、現場の採用担当や人事部長の方たちが感じていた多くの課題を改善したことで、いいフィードバックをいただいている」と話し、中でもサイバーエージェントがいち早く導入を決めたことにも触れ、「かなり手応えを感じている」と話しました。
また、日本国だけではなく、シンガポールを中心に海外でも同時に提供開始していく予定や、今後も継続的に、毎月、追加の機能を搭載していく予定についても発表しました。
最後に、仲氏は、
今回、この『Wantedly Hire』を通じて、テック系の人材を採用する企業様以外にも、弊社を使っていただく機会になると思います。さらなる提供価値を拡大していきたいですし、事業としても大きく成長していければという風に思っております。
と話し、新規事業発表会を締めくくりました。