健康経営に取り組む企業が増える中で、社員の健康について考える機会が多くなってきたという経営管理部門担当者も多いのではないでしょうか。
就業者全体の44.5%を占める女性の健康サポートは、実は十分とは言えないのが現状です。
これまでの日本の就業者比率は男性が圧倒的大多数を占めていたこともあり、企業の健康サポートの内容は男性に適した内容に傾いていました。
そこで、女性の未病予防をサポートするためにつくられたのが「クレアージュ東京 レディースドッククリニック」。
すべての女性にとって必要な健診や医療を提供する女性専用クリニックとして、2021年3月23日にオープンしました。
今回は、開院に先駆けて行われた発表会の内容を踏まえ、「企業人事は女性の健康についてどう取り組んでいくべきか」を考えていきます。
企業健診は、男性の身体に偏った項目になっている
男性と女性では身体の特徴が異なるため、必要な健診内容も異なります。
男性に多い疾患である胃がん・肺がん・前立腺がんや、男女ともに多い大腸がん・糖尿病・高血圧の検査は、現在の企業健診では補助の対象となっている場合が多いです。
一方で、女性に多い疾患である乳がん・子宮がん・婦人科系疾患などの検査は、企業健診のメニューに含まれていないのが一般的。
女性は、検査が必要なのか不必要なのかを自分で判断し、自己負担で受診することになります。
加えて、女性特有の疾患を検査できる健診施設は全体の約半数と少ないため、一か所で同日に検査を受けられないというケースは珍しくありません。
今回行われた発表会では、1972年に労働安全衛生法が制定されてからこれまで50年変わらず、企業健診の項目が男性の身体に偏ったものになっている状況が示された「女性の健診を取り巻く課題」が5つ挙げられていました。
必要な検査の情報が届いていない
では、実際に女性特有の疾患はどれほど仕事に影響を及ぼしているのでしょうか。
経済産業省によると、月経随伴症状などによる労働損失は4,911億円。女性特有の症状や病気によって、「支障がある」と答えた女性は6割を超えています。
多くの女性の苦しみが実在するにも関わらず、月経関連の不調原因を調べる「経膣超音波検査」はほとんどが検査補助の対象外。
加えて、「この検査自体を知らない」という女性が33.7%もいる状況です。
検査を受けない理由としては「必要だと思わないから」と答えた人が29.3%。
検査の目的や適切な受診年齢など検査の内容に関して「わからないから」と答えた人は36.4%という結果に。
乳がんの検査として最も広く知られるマンモグラフィに関しても、マンモグラフィの検査で済む人と乳房超音波検査も必要な人がいることはあまり知られていません。
デンスブレストと呼ばれる高濃度の乳腺の人は、見落としを防ぐため、マンモグラフィと乳房超音波検査の併用が推奨されています。
働く上で必要不可欠な健康を守るために必要な検査が、認知されていないのが現状です。
今、企業人事ができること
企業、特に社員をサポートする立場である人事が取り組むべきことについて、同クリニックをコンサル支援する株式会社ファムメディコの佐々木氏は、「まず女性に必要な健診内容を知ってもらう機会を設けて欲しい」と話していました。
女性自身の健康に対するリテラシーが向上することによって、自分自身で正しい判断・選択ができるようになります。
また、健診について実際に女性の声を聞いてみると、企業の補助に対する期待の声が多いといいます。
「費用的に検査が受けづらい」「企業健診で紹介してもらわないと存在すら知らずに終わってしまう」といった声を受け止め、知識の啓発や補助の拡充を検討することが必要です。
近年取り組まれている健康経営においても、健康に関しての個人のモチベーションを上げるための企業の情報発信は非常に有効です。
総院長の浜中医師は、産休育休に入った女性の健診受診率がぐっと下がる現象について触れ、その結果、重い病気が後から見つかる方をたくさん診てきたと話しました。
「どのライフステージでも自分の健康管理は自分が握っているものだという意識を持ってほしい」といいます。
個人の健康意識を上げる発信と、所属する個人の取り組みを最大限バックアップする姿勢は、企業の「人」を支える人事として、重要なタスクになっていきそうです。
1年に1回は受けていただきたい、女性に必要な健診「YOU健診」
今回発表会がおこなわれた「クレアージュ東京 レディースドッククリニック」では、女性にとって重要な子宮・卵巣、大腸、乳房の3つの部位をカバーした「YOU健診」を用意しています。
女性の罹患率が高い3つのがん(子宮がん・大腸がん・乳がん)に加え、婦人科系疾患を調べることができる経腟超音波検査まで、1カ所で全ての検査受診が可能です。
クリニックでは、健診の際に起こる不安を解消できる工夫が至る所に施されています。
たとえば、スタッフは全員女性で、体のラインが目立たない検査着を独自開発。待合スペースは病院としての清潔感はもちろんのこと、リビングのようなあたたかみのあるくつろぎの空間になっています。
すべての女性が、自身の身体に起こりうるリスクを、これまでよりも多く・正しく知ることを目指した健診施設です。
社員全員が健康に活躍できる企業への一歩として、このような施設での健診補助や、自社社員への情報発信をぜひ検討してみてくださいね。
紡 もえ(つむぎ もえ)
兵庫県出身のフリーライター。現在は千葉で黒猫と暮らしている。日本酒と化粧品をこよなく愛する。うつ病サバイバー。得意領域はインタビュー、採用、メンタルヘルス、女性の健康、美容、酒など。
Twitter:@TsumugiMoe