新しい生活様式が定着しつつある近年、ワーケーションという働き方が注目されるようになってきました。ワーケーションは政府にも推進されているため、導入を検討する企業は少なくありません。その一方で、ワーケーションという言葉を聞いたことがあっても、実際にどのような働き方のことを指すのかわからない人もいるでしょう。この記事では、ワーケーションの概要やメリットとデメリットについて紹介します。
目次
そもそもワーケーションとは?
ワーケーションとは、場所や時間に縛られずに働く新しいワークスタイルのことです。もともとは2000年代初頭にアメリカで発祥した考え方で、日本で注目されるようになったのはごく最近です。ワーケーションはこれからますます身近になっていくことが予想されるため、今のうちから概要を把握しておくことをおすすめします。まずはワーケーションの意味や種類についての基本知識を身につけていきましょう。
ワーケーションとは余暇を楽しみつつ働くワークスタイル
ワーケーションは、「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語です。言葉の意味からわかるように、リゾート地や観光地に行き、休暇を楽しみながら仕事をするワークスタイルのことを意味します。
普段と違った環境で仕事をしたり地域の人と交流したりすることで、新しいインスピレーションを得たりリフレッシュしやすくなります。労働者の生産性が向上することはもちろん、地域の活性化につながるというメリットもあります。国や自治体は、さまざまな手段でワーケーションの普及促進に力を入れている最中です。
ワーケーションの種類
ワーケーションといっても、実施形態によって5つに分類することが可能です。ワーケーションの種類を表にまとめたので、違いについて把握しておきましょう。
種類 | 体系 | 説明 |
休暇型 | 福利厚生型 | 有給休暇を活用して、リゾート地や観光地などでワーケーションをおこなう |
業務型 | 地域課題解決型 | 地域関係者との交流を通じて、地域課題の解決を考える |
業務型 | 合宿型 | 職場のメンバーと、場所を変えて業務をおこなう |
業務型 | サテライトオフィス型 | 各地のサテライトオフィスやシェアオフィスで業務をおこなう |
– | – | 出張先などで滞在期間を延長し、休暇を楽しむ |
ワーケーションと並ぶ新しい概念であるブレジャーは、「ビジネス」と「レジャー」を組み合わせた言葉です。休暇や仕事を楽しむために観光地へ行くワーケーションとは異なり、出張などの期間を延長し、休暇を楽しむことを指します。
ワーケーションをおこなうメリット
ワーケーションの導入は、労働者はもちろん、企業や自治体にもメリットをもたらします。自治体にとっては地方活性化というメリットがあることは先述したとおりですが、労働者や企業にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。
メリットについて知ることで、ワーケーションを導入すべきかどうかを判断しやすくなります。この章では、ワーケーションのメリットについて4つ紹介します。
1. 生産性とパフォーマンスが向上する
ワーケーションというと、「仕事とプライベートの切り替えができなくなって作業効率が下がりそう」と思われるかもしれません。しかし、しっかりと休暇と仕事の時間を切り離すことができれば、リフレッシュしながら業務に取り組めます。その成果として、生産性やパフォーマンスが向上しやすいというメリットがあります。
また、非日常空間や観光地におけるコミュニケーションがもたらす刺激は、新しいアイデアや発想をもたらしてくれるかもしれません。ワーケーションは、思わぬビジネスチャンスが得られる可能性を秘めたワークスタイルです。
2. ワークライフバランスが実現できる
ワーケーションを導入することで、ワークライフバランスを実現しやすくなるというメリットもあります。ワーケーション中は、自分の裁量で仕事と休みの時間を決められる企業もあります。また、有給休暇を取りにくいというときも、ワーケーションであれば休みながら適度に仕事との関わりをもつことができるため、罪悪感を抱かずにリフレッシュできるでしょう。
休みの間の土日に旅行先に移動し、月曜から木曜日はワーケーションをして、金曜から日曜日は休んで観光に行くなどといった旅行もしやすくなります。今までは難しかった家族との長期旅行も楽しめるようになるでしょう。
3. 採用力が強化される
テレワークを取り入れている企業は年々増えていますが、それに加えてワーケーションを取り入れることができれば、企業の採用力は強くなります。自由な働き方を魅力に感じる人の応募が増え、より優秀な人材の確保が目指せるでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大で新しい生活様式が定着するなか、通勤してオフィスで朝9時から18時まで働く、というようなワークスタイルは、もはや労働者にとって当たり前ではなくなってきました。ワーケーションは企業の大きなアピールポイントとなり、人材不足が深刻化する恐れのあるこれからの日本企業において、採用活動の明暗を分ける一つの要因となるかもしれません。
4. 仕事に対する満足度が向上する
仕事に対する満足度が向上することも、ワーケーションの魅力です。非日常的な空間でリフレッシュしながら働けるため、労働者のメンタルケアに有効であると考えられます。
旅行や帰省をしながら働けるようになればストレスが軽減され、仕事や企業に対する満足度が大きく向上するでしょう。その結果として従業員エンゲージメントが向上し、離職率の低下が実現します。次第に経験が豊富で優秀な従業員が増えていき、企業の利益向上効果が得られる可能性があります。
ワーケーションをおこなうデメリット
紹介してきたとおりワーケーションには多くのメリットがあり、企業にとっても労働者にとっても利点が多い働き方です。しかし、反対にデメリットも存在していることを理解しておく必要があります。
デメリットを理解していないと、ワーケーションの健全な運用ができないだけではなく、労働者の負担を増してしまうリスクもあるため注意しましょう。ここでは、デメリットを3つ紹介します。
1. コストがかかる
遠隔地で仕事をするためには、インターネットやデバイスが使用できるように環境を整えることが求められます。また、オンライン会議用のWeb会議やチャットツールも導入しなくてはいけません。
すでに導入が済んでいる企業にとっては、大きな負担ではないかもしれません。しかし、一から環境を整える企業にとっては膨大なコストになりやすいため注意が必要です。
2. 労働時間の管理や人事評価をしにくい
ワーケーションを導入すれば従業員は遠隔で働くことになるため、正確な労働時間や仕事の進捗を管理しにくくなります。
- ワーケーションを導入したものの、業務量が多くて朝から夜まで仕事をしている
- 仕事の頑張りを評価してもらえず、会社に対して不満が溜まってしまう
上記のような状態になってしまえば本末転倒です。ワーケーションを導入する際は、労働時間の規定や人事評価のプロセスをしっかりと決めておく必要があります。
3. セキュリティ面のリスクがある
場所に縛られずに仕事ができることはワーケーションの大きな利点ですが、オフィス以外で仕事をするとなると、どうしてもセキュリティ面のリスクがつきまとってしまいます。
仕事用のPCを紛失したり大切な書類を落としたりしてしまえば、会社や取引先の機密情報が漏れてしまうことにつながります。また、フリーWi-Fiに接続したことでサイバー攻撃の被害に遭い、データを抜き取られてしまう可能性もあります
。
個人情報や機密情報の保護については、念入りに対策する必要があります。企業側がウイルスソフトなどを提供するだけではなく、労働者一人ひとりにセキュリティ対策の重要さを理解してもらうことが重要です。
ワーケーションをおこなう際のポイント
メリットが豊富なワーケーションですが、実際に導入するときはいくつかのポイントに注意し、従業員の負担やリスクを最小限に抑える取り組みが必要です。
この記事で紹介したデメリットを踏まえ、ワーケーションを実施するときは以下のようなポイントに注意しましょう。
- 従業員の働きすぎを防ぐために労働時間の管理体制を整える
- 費用や有給休暇などを規定した就業規則を整備する
- セキュリティ対策として、ウイルスソフトの導入や従業員教育をおこなう
- 成果の把握から評価に至る人事評価システムのプロセスを明確にする
- 労災の適用範囲を明確にする
ワーケーションの導入時でとにかく大切なのは、ルールを決めておくことです。あらかじめルールが決まっていれば、労働時間や人事評価、給与などでトラブルになることはありません。また、セキュリティ面のリスク低減や労災を防ぐためにも、ルールは欠かせません。まずはルールや規定を明確にして、しっかりと従業員に説明してから導入することが大切です。
ワーケーションを効果的に活用しよう
休暇を楽しみながら仕事をする「ワーケーション」という新しいワークスタイルは、働き方改革が推進される今後ますます注目されていくでしょう。ワーケーションは従業員にとってうれしい働き方であるだけではなく、企業にとっても大きなアピールポイントとなります。メリットとデメリットの双方を踏まえ、ワーケーションを効果的に活用していきましょう。