昇進とは、職位が上がることです。企業としては、より優秀な社員を昇進させ、積極的に活躍してほしいと考えます。
しかし現在活躍している社員が、昇進後にも変わらず活躍できるとは限りません。昇進させるべき人物を選定するのは、意外に難しいものです。
具体的には、どのような社員を昇進させるべきなのでしょう。また、昇進させないほうがよい社員はどのような特徴を持っているのでしょうか。
この記事では、昇進の基礎知識や昇進させる社員の決め方、適切な社員を昇進させた場合の企業側のメリット、昇進させるべき社員、させないほうが良い社員の特徴を紹介します。
企業経営者・管理職・人事担当者は、ぜひ参考にしてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
目次
1. 昇進とは職位が上がること
それぞれの企業には定められた職位があり、「昇進」とは職位が上がることです。
たとえば、一般社員から主任、係長から課長に変わる場合などがあります。職位が上がるほど、職務における権限が広くなり、責任も重くなるケースが多いです。
また、役職によってベース給与を設定している企業が多く、だいたいの場合は昇進したタイミングで給与が上がります。昇進を目指す社員がいる一方で、最近では管理職を希望せず、昇進を拒否する社員も増えているようです。
1-1. 社員を昇進させる目的
社員を昇進させる大きな目的は、より責任の重い業務や難しい仕事を担当してもらうことです。たとえば、課長から部長へ昇進する場合は、より広い視点で部署をまとめる必要が出てきます。経営者に近い立場になるため、部下の育成から利益の把握まで、幅広い業務をこなすことも求められるでしょう。
能力のある社員を昇進させることで組織運営を効率化でき、企業全体が成長していくことを期待できます。
2. 昇進と昇格の違い
昇進と昇格は、意味が異なります。昇進は「職位」が上がることで、昇格は「等級」が上がることです。
「昇格」が使われるのは、「職能資格制度」を採用している企業に限られます。職能資格制度とは、それぞれの社員に能力に適した等級を与える制度です。1等級から始まり、1、2、3〜と次第に上がっていくのが一般的で、等級は給与などの待遇面に反映します。
等級と役職は別のものですが、一般社員は1~3等級、主任・係長は4~6等級などと、関連しているケースも多いでしょう。しかし、昇進したが等級はそのままの場合もあり、昇進せずに等級だけが上がる場合もあります。
3. 昇進の決め方
企業は昇進の明確な基準を定め、社員と共有することが大切です。正当な理由のない昇進は、社員のなかに不信感、不公平感を生み出すため注意しましょう。昇進を決める際の具体的な方法は、以下の通りです。
- 人事評価
- 勤務年数
- 昇進テスト
- 小論文
- 面接
- 資格の取得
- 上司の推薦
それぞれの方法について、簡単に確認しておきましょう。
3-1. 人事評価
人事評価の結果をもとに、昇進させるかどうかを決める企業は多いでしょう。人事評価とは、社員ごとのスキルや経験、仕事に対する姿勢などを評価する制度のことです。
人事評価の運用方法は企業によって異なりますが、昇進や昇給の基準としているケースも多く見られます。客観的な評価基準をもとに昇進の可否を判断できるため、従業員の納得感は高まるでしょう。
3-2. 勤務年数
勤務年数で昇進を決める方法は、年功序列を維持したい企業でよく採用されています。社員の安心感にもつながりますが、役職に適していない人でも昇進できてしまうのがデメリットです。
最近では実力主義の企業が増え、勤務年数で昇進を決める企業は減少傾向にあります。適切な昇進を実施するためには、社員が納得でき、企業自体もメリットが得られる昇進基準を採用するべきです。
3-3. 昇進テスト
昇進の可否を決めるために、さまざまなテストを実施する企業もあります。具体的には、面接や適性検査などを実施するケースが多いでしょう。業種によっては、プレゼンテーションを実施することもあります。
試験を通して、論理的思考力やコミュニケーション能力、問題解決能力などをチェックすることが可能です。複数の試験を組み合わせることで、より客観的な評価を実現できるでしょう。
3-4. 小論文
小論文は、先ほど紹介した昇進テストの方法のひとつです。テーマに沿って短い文章を書かせることで、説明力や論理的思考力などを把握します。
テーマとしては、リーダーシップを発揮するために必要なこと、キャリアアップのために普段から意識していることなど、仕事に関する内容を選ぶのが一般的です。
3-5. 面接
昇進テストとして、面接を実施するケースもあります。実際の会話を通して、仕事に対する熱意やコミュニケーション能力を把握することが面接の大きな目的です。
人柄などを重視して昇進の可否を決めたい場合に有効な方法ですが、面接官の主観が入りすぎないように注意しなければなりません。
3-6. 資格の取得
新しい資格を取得することを昇進の判断基準としている企業もあるでしょう。建築業であれば一級施工管理技士や一級建築士、不動産業であれば宅地建物取引士など、業務に関する資格の取得によって昇進させるのが一般的です。
TOEICのスコアが700点以上で昇進できるなど、業種によっては語学力を重視するケースもあります。
3-7. 上司の推薦
昇進するために、上司からの推薦が必要となるケースもあります。部下の努力や成果を近くで見てきた上司が推薦することで、安心して昇進させることができるでしょう。
ただし、上司の主観が入りすぎないよう、他の基準と組み合わせることも必要です。
4. 社員を昇進させる企業側のメリット
社員を昇進させることで企業側が得られるメリットは、以下の3つです。
- 社員のモチベーションが向上する
- 適切な人材を昇進させることでチームのスキル・生産性がアップする
- 新しい考え方やアイデアが導入されやすくなる
それぞれのメリットについて詳しく確認しておきましょう。
4-1. 社員のモチベーションが向上する
成果を出したり高い人事評価を得たりすれば昇進できるとわかっていれば、やる気のある社員は昇進に向けて努力するでしょう。
昇進すれば待遇も良くなり、以前の役職にはなかった権限を得られます。よりスケールの大きい仕事を任されるようになり、仕事から得られる達成感や充実感も感じやすくなるでしょう。
4-2. 適切な人材を昇進させることでチームのスキル・生産性がアップする
リーダーシップを発揮できる適切な人材を昇進させることで、チーム全体のレベルアップも期待できます。また、自分も上のポジションを目指したいという社員が増え、切磋琢磨しながらスキルアップしてくれるでしょう。
4-3. 新しい考え方やアイデアが導入されやすくなる
職位が上になるほど、アイデアや考え方を社内に広めやすくなるのもポイントです。常に新しい風が社内に入るよう、新しい考えをもった人材を昇進させるのも、企業にとってのメリットにつながります。
しかし、これらのメリットを享受するには、明確な基準をもとに定められた人事評価制度が必要です。
本サイトでは、現在体系だった人事評価制度がなく導入を検討されている方向けへ「人事評価の手引き」を無料で配布しています。一般的にどのような人事評価制度があるのかご紹介や、実際に導入する際の手順をまとめています。ぜひこちらからダウンロードして、スムーズな人事制度の導入にお役立てください。
5. 昇進させるべき社員の4つの特徴
昇進させるべき社員の4つの特徴は以下になります。
- 成果を出している
- コミュニケーション能力が高い
- 自発的に動ける
- リーダーシップがある
それぞれの特徴について、詳しく解説していきます。
5-1. 成果を出している
企業が求めていることに対し一定の成果を出しているかは、昇進をさせるか判断するポイントとして非常に重要です。
「真面目で几帳面」「上司への気配りができる」など表面上の印象はよくても、成果が上がっていない社員を昇進の対象とすべきではありません。
部署によっては、成果の定義を定めるのが難しい場合もあります。その場合でも、部署独自の評価基準を設けるなどして、社員が企業に対しどの程度貢献できているのかを明確にしましょう。
5-2. コミュニケーション能力が高い
管理職となると、部下との良好なコミュニケーションが求められます。重要な取引先との関係性を築くためにも、コミュニケーション能力は欠かせません。
いくら成果が出せる人材だったとしても、コミュニケーション能力が低いと、部署の雰囲気や取引先との関係が悪くなりやすいです。それだけでなく、本人の働く意欲が下がる可能性もあります。
コミュニケーション能力がネックとならないよう、あらかじめコミュニケーション研修を取り入れることもおすすめです。
5-3. 自発的に動ける
自発性とは、やるべきことを進んでやる力ではなく、自分でやるべきことを考えて行動できる力です。
昇進して職位が上がるほど、自分の考えで動かなければならない場面が増えます。部下に対しても、自発的に指示を出さなければなりません。上司の指示がないと動けない人物がリーダーとなれば、チーム全体の仕事の効率が下がる可能性もあります。
「自分の考えをもっている」「自分から行動を起こせる」「自分の行動に責任をもてる」といった点に注目して人材選びをすると、良い結果が生まれるでしょう。
5-4. リーダーシップがある
管理職になる人材は、チーム全体を引っ張っていくリーダーシップが必要不可欠でしょう。リーダーシップとは、具体的にいうと「チームのメンバーを導く能力」です。
「チームにいる自分以外の人材のモチベーションをアップさせる、思考や能力に良い変化を与える」能力ともいわれています。チーム全体でプロジェクトを最後までやり遂げる責任感もリーダーが持つべき重要な要素です。
また就く職位によっても、必要なリーダーシップは変わります。上位の役職になるほど、企業全体や企業のもつ役割について考えられるグローバルな視点が必要となるでしょう。
一方で、一般社員に近い役職ならば、現場の社員への指示の仕方やモチベーションの管理、的確なサポートができる能力が重視されます。
昇進させる先のポジションでどのようなリーダーシップが必要なのかを見極め、人材選びをするのも大事なポイントです。
6. 昇進させないほうがよい社員の特徴
人事では、昇進させるべきでない社員を見極めることも重要です。管理職に向かない社員を昇進させると、チーム全体のモチベーション、雰囲気、効率の低下が起こると考えられます。昇進した本人にも大きなストレスがかかり、離職する可能性もあるでしょう。
以下のような社員は、昇進させるかどうか慎重に判断する必要があります。
- 人に仕事を任せるのが苦手な人
- 視野が狭い人
- 人に対して平等に接することができない人
- 感情の起伏が激しい人
- 部下の教育に関心がない人
6-1. 人に仕事を任せるのが苦手な人
人に仕事を任せるのが苦手な人は、あまり管理職には向いていません。管理職は、部署内の社員に対して適切に仕事を割り振り、指示を出したり進捗を管理したりする必要があります。
自分自身が行動すべき場面もありますが、すべて自分で作業していては全体の状況を把握できなくなります。管理職には、他人にうまく仕事を任せる能力が求められるのです。
6-2. 視野が狭い人
昇進して管理職となると自分の担当業務以外にも、気を配らなければならないことが増えます。部下への仕事の振り分けや、それぞれが担当するプロジェクトの管理も管理職の業務の一部です。そこには、広い視野や適切な人材に仕事を振り分ける能力が必要となります。
6-3. 人に対して平等に接することができない人
それぞれの社員に対して平等に接することができないと、管理職としての信頼を得ることは難しいでしょう。自分の好き嫌いで社員を評価したり、仕事を割り振ったりすることは避けなければなりません。
管理職には、常に客観的な姿勢で社員と接することが求められます。
6-4. 感情の起伏が激しい人
感情の起伏が激しすぎる人も管理職に向かないでしょう。もちろん、嬉しいときの喜んだり、問題が起きたときに叱ったりすることは大切ですが、感情のままに行動してしまうことは避けるべきです。
常に冷静に部下と接することは、管理職に求められる資質のひとつといえるでしょう。
6-5. 部下の教育に関心がない人
チームでより大きな成果を出すためには、部下の育成や良好なコミュニケーションが必要です。自分のことにしか興味がなく、部下のサポートや教育に関心がない人は管理職に向かないでしょう。
7. 社員を昇進させるときの注意点
社員を昇進させるときは、以下のような点に注意しましょう。
7-1. 評価基準を明確にする
社員を昇進させるときは、評価基準を明確にすることが重要です。
まずは、係長・課長・部長など、社内の役職ごとに求められる能力を明確にし、昇進候補者の能力を把握するための適切な昇進試験を実施しましょう。前述の通り、小論文や面接など、さまざまな方法がありますが、合格とする基準は明確にしておかなければなりません。
基準が曖昧な場合、社員が結果に納得できず、モチベーションが低下してしまう可能性もあります。
7-2. 各職位の役割をしっかりと伝える
係長・課長・部長といった各職位の役割や責任は、しっかりと伝えるようにしましょう。上の職位に昇進しても、どのような役割なのかを理解できなければ、適切な行動を取ることができません。
上のポジションに立つ人間として部下をしっかりと指導するためにも、役割や責任を理解させることが重要です。
7-3. 辞令が出るまで口外しないようにする
昇進が決まっても、正式な辞令が出るまでは口外しないようにしましょう。未確定なまま情報を発信すると、現場が混乱する可能性もあります。
昇進の対象となる社員に対しても、秘密を守るよう伝えておくことが大切です。
8. 適切な判断基準で社員を昇進させよう!
今回は、昇進の意味や目的、社員を昇進させるときの基準について解説しました。適切なタイミングで社員を昇進させることで、モチベーションを高めたり、組織力を強化したりすることが可能です。面接や小論文などの試験を実施して、上の職位を担当できるかどうかを見極めたうえで昇進の可否を決定しましょう。
また、社員を昇進させるときは、判断基準を明確にしておくことが重要です。曖昧な判断基準では、社員が結果に納得できず、不満を感じてしまうケースもあるため注意しましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。