皆様ご無沙汰しております。株式会社WEの戸田です。
まず、能登半島地震にて被害に遭われた皆様におかれましては1日も早く安心して過ごせる日が来ることをお祈りしております。
また、被災地にて支援活動をしてくださっている皆様に感謝申し上げます。
いつ、どこで、何が起きるかわからない。生きている私たちは常にこれを意識して毎日を全力で生きましょう。
さて、今回は「従業員のキャリア開発」について書かせていただきます。
【執筆者】戸田 裕昭|株式会社WE 代表取締役 / 総務省地域力創造アドバイザー
大学卒業後、オフィス家具メーカーにて新規事業創出・地域活性化に携わる。総務省地域力創造アドバイザーや国土交通省スマートアイランド推進実証事業コーディネーターなどを担い、全国各地の地域における事業振興のアドバイスを行なっている。 また、個々人のやりたいことが起点となる事業創出を目的とした伴走型教育プログラムを開発・構築。小学校から大学までの教育機関や自治体、民間企業と連携し、人材育成を軸とした「組織変革」「事業創造」「地方創生」を行う。
そもそもキャリア開発とは?
私は、キャリア開発とは「従業員のキャリア構築を組織として支援すること」だと認識しています。
ですから、従業員の皆様一人ひとりに明確なキャリア(人生設計)が無いと機能しない、と考えています。
キャリア構築のためには、明確な意志が必要です。しかし、私は自分の知る範囲では、明確な意志を持って働いている人は少ないと思っています。
だからこそ、そのための教育プログラムとして「Will Based Learning®」を開発しました。従業員の皆様一人ひとりにWill(人生の目的)を作り、組織においてどんな成長をしていきたいかを描くことが必要だと思ったからです。
今も、ゴールがどこかわからない状況で、何をすればよいかわからない人が多いのではないでしょうか。
「とりあえずやってみるか」「みんながやっているからやってみるか」「言われたからやってみるか」は、人生設計のための行動として意味はありません。
人事として手を打つこと
私は、毎回色々なテーマについて書かせていただいておりますが、そのたびに人事の皆様が対応しなくてはならないことが幅広く、本当に大変なお仕事をされているのだと改めて感じています。
今の時代は、一人ひとりのキャリアをそれぞれに任せればよい時代ではありません。
私が新卒社員の頃は「すぐ辞めたら給料泥棒だ!」とか「頑張りが足りない!」とか、先輩たちに散々言われました。正直腹立たしかったですが、当時は言われていることも正しいと思って、気合いと根性で乗り切りました。
しかし、今は時代が違います。「給料泥棒!」だなんてことを言うと、パワハラになってしまいます。このような時代による変化があるからこそ、組織として対応することが求められていると思います。
では、人事の皆さんがこの「キャリア開発」の場面ではどのような手を打てばよいのでしょうか。
私が人事の皆様にご提案することとしては、「(愛のある)厳しさ」の必要性です。
AIの回で触れたように、都市部の大企業では人手過多の状況が発生しています。一昔前のように、一度入社すれば定年までいられる、という世の中ではなくなってきているという現実を、まずははっきりと伝えるべきでしょう。
若手従業員に対して
特に、若手従業員の方々に向けて伝えることを提案したいと思います。
30代後半以上の年齢層の方々は、まだ「気合と根性」の世界で生きてきた経験もあるのではないかかと思われるので、もしかしたら「おい!もっと頑張れ!!」という言葉で、叱咤激励していることが通じるかもしれません。
しかし、若い世代の方々はそのような姿勢では、潰れてしまうかもしれません。それは若い世代の意思に、ある特徴があるからです。
これまで、大学生の就職相談を多く受けてきたなかで、このような質問がありました。
- 転職を前提に考えています。ファーストキャリアはどこがいいですか?
- どこの会社が働きやすいですか?
- 就職はしたくないけど新卒が使えるのは今しかないので就職したい。
などなどです。
ここから、皆さんはどのような印象を持ちますか?
お伝えしたいことは、「どうしても御社で働きたいです!」と言って、入社を希望する人たちは少ないという認識を持った方がよいのではないか、ということです。
もちろん、強くしっかりとした意思をもつ学生もいます。ただ、それだけではない、ということです。認識のズレが発生すると対応方法を間違えてしまいます。
学生時代の「いいね」
このような意思の持ち方について、私が一つ大きな問題があると感じていることは、彼らの学生時代の「育ち方」です。問題は、大人たちの無責任な「いいね!」です。具体的なケースをご紹介します。
私が大学で講義をしたとき、授業を受けてくれた学生(当時1年生)から「相談したいことがある」と言って話に来てくれたことがあります。
話を聞いてみると、「覚悟を決めてやりたいことがあるので、大学を辞めたい」と言うのです。私はその「覚悟を決めてやりたいこと」について、詳しく聞きました。
その結果、私が伝えたことは「いいね!」でしょうか?いいえ、違うのです。
私は、「やりたいことはわかった。でも、99%うまくいかない。大学にいる間に色々行動して成功確率をあげよう。いけると思ったら背中を押すよ。」と伝えました。
その学生は、「わかりました。今までいろんな大人に相談したけど、止められたのは戸田先生が初めてです。」と言って、大学を辞めずに続けることにしました。
最終的には、在学中に色々行動して、大学を卒業して今は楽しそうに自分の「やりたいこと」の活動をしています。
このエピソードからお伝えしたいことは、簡単に「いいね!」ということの危険性です。99%無謀だと思っても、大人は「いいね!」と言ってしまうことがよくあるのです。
それが優しさだと思って接していたり、学生の「やりたい」という思いに、すぐ背中を押したいと思ったりするからだと思います。もちろん、そのこと自体は悪いことではないと思いますが、本当の優しさではない、と私は思います。
育った環境(時代)で打ち手は変わる
若い世代は特に、「育ち方(環境や時代)」に影響を受ける、という考えをお伝えしました。今は特に、自分の意思を持ちにくい状況かもしれません。
だからこそ、大切なことは、従業員一人ひとりとの向き合い方です。もう何度もお伝えしているので、「わかってるよ!」と、言われてしまうかもしれませんね。
でも、やはり重要なことだと思うのです。制度だけを整えてもうまくいきません。育った時代が違えば生きてきた環境が違うのです。
ですから、人事の皆様にご提案したいことは、やはり「誰を成長させたいのか?」「その人はどんな環境で育ってきたのか?」「その人はどんなWillを持って生きていきたいのか?」ということに着目し、一緒に考えていく、ということです。
最後に
またしても、一人一人に向き合いましょうという結論になってしまいました!同じことの繰り返しのようで大変心苦しいのですが、やはり、本当に組織を変えていくためには必要なことだと思います。
ただ一方で、「組織としてそこまでやらないといけないのか?」という疑問もあると思います。少し厳しく放り投げる必要もあると思います。
「可愛い子には旅をさせよ」「獅子の子落とし」と、言われるように、時には厳しさが人を成長させます。
しかし、忘れてはいけないのが「そこに愛はあるのか?」ということです(※笑ってくださった皆さんありがとうございます!)
とても大変な役割だと思いますが、人事の皆様だからこそ、愛を持って厳しく接することも挑戦してみてください。きっとそれが人生において役に立ったと感謝される日もくるでしょう。私もやはり、あの時の上司や先輩たちに感謝しています。
今回も読んでいただきありがとうございました!
次回も楽しみにしていてください!!