2007年に政府が「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を発表して以来、ワークライフバランスの実現に向けたさまざまな取り組みがおこなわれてきました。テレワークやリモートワークが普及し、労働者のワークライフバランスへの関心はますます高まっています。この記事では、テレワークがもたらすワークライフバランスへの変化や、ワークライフバランス実現に向けたポイントを解説します。
目次
1.テレワークとは?働く場所を柔軟に選べる勤務形態のこと
テレワークとは、離れたところ(tele)と働く(work)を組み合わせた言葉で、社員が働く場所を柔軟に選べる勤務形態を指します。
テレワークを実現するためには、Web会議システムやビジネスチャットツールを始めとしたITツールの導入が必要です。日本テレワーク協会は、テレワークを以下の通り定義しています。
テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。
テレワークには、自宅で働く在宅勤務、電車などの移動中に働くモバイルワークのほか、企業が用意したサテライトオフィスを利用した働き方があります。
総務省の調べによると、テレワークの継続意向がある人は43.7%に達し、ほぼ半数の人がテレワークに前向きな考えを持っていることがわかります。(※1)
(※1)令和2年情報通信白書|総務省
2.テレワークのメリットと効果
厚生労働省の「テレワーク総合ポータルサイト」によると、テレワークには5つの導入効果があります。
業務生産性の向上
新規雇用・離職防止
社員のワーク・ライフ・バランス向上
コスト削減
事業継続性の確保
テレワークの導入効果の一つが、「社員のワーク・ライフ・バランス向上」です。厚生労働省は「テレワークを利用することによって、通勤に必要だった時間を自己啓発や健康管理のための睡眠、家族と共に過ごす時間に利用する」ことが可能としています。(※2)また、自宅で働く在宅勤務の場合、育児や介護、子供の送り迎え、家事の時間と両立して仕事をすることが可能です。
(※2)テレワークの効果|厚生労働省
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3.テレワークでワークライフバランスは実現できるか?
本当にテレワークでワークライフバランスは実現できるのか確かめるため、テレワークに関する調査結果をみてみましょう。
テレワークの導入前後で、どれだけプライベートな時間が増えたかを示す統計として、厚生労働省の「テレワークではじめる働き方改革」があります。(※2)
「テレワーク利用によって増減した時間」の調査によると、「家族と共に過ごす時間」「育児の時間」「家事の時間」が「増加した」と答える人は80%近くいました。特に「家族と共に過ごす時間」については、「1時間以上増加した」人が全体の52.6%です。
また、「自己啓発の時間」「睡眠時間」「介護の時間」については、「変わらない」と答えている人が半数以上いる一方、「増加した」と答える人も30%以上います。
このように「家族と共に過ごす時間」「家事の時間」「育児の時間」「自己啓発の時間」「介護の時間」の全ての項目で、テレワークの導入前後でプライベートな時間が増加していることがわかります。通勤時間の削減や、在宅で過ごす時間の増加によって、テレワークで働く社員のワークライフバランスを改善することは十分に可能です。
(※2)テレワークの効果|厚生労働省
4.テレワークにおけるワークライフバランスの課題
しかし、ワークライフバランスを実現するうえで、テレワークにはいくつか課題があります。テレワークでは社員の勤務状況が目に見えないため、労働時間の管理が難しく、「隠れ残業」が発生しやすくなっています。
また、仕事とプライベートの区別が難しいのもテレワークの課題の一つです。プライベートの時間が増える一方で、社員が目の前の作業に集中できなくなり、生産性の低下につながるリスクがあります。
4-1.隠れ残業が発生する可能性がある
テレワークの課題の一つとして、社員が申告した残業時間よりも長時間働いてしまう「隠れ残業」が挙げられます。
テレワークは、オフィスワークとは異なり社員の業務量を把握するのが難しくなります。自宅が職場になることで、オンオフの切り替えが難しく、ついつい働きすぎてしまう人も少なくありません。
4-2.仕事とプライベートの区別が難しい
仕事とプライベートの切り分けが難しく、社員の生産性が低下しやすいのもテレワークの課題の一つです。そもそもワークライフバランスとは、厚生労働省の定義によれば、「働く人が仕事上の責任を果たそうとすると、仕事以外の生活でやりたいことや、やらなければならないことに取り組めなくなるのではなく、両者を実現できる状態」を指します。(※3)
つまり、プライベートの時間がいくら充実していても、仕事の生産性が低下している場合、本当の意味でのワークライフバランスを実現したことにはなりません。仕事以外の時間だけでなく、仕事の時間も充実させるためには、オンとオフのメリハリをつける工夫が求められます。
(※3)厚生労働省:男性が育児参加できるワーク・ライフ・バランス推進協議会提言について
5.テレワークでワークライフバランスを実現するためのポイント
テレワークで働く人のワークライフバランスを実現するには、ICTの活用が必要不可欠です。ワークライフバランスの実現につながるITツールとして、勤怠管理ツールやタスク管理ツールがあります。
この2つのツールを導入すれば、前述した「隠れ残業」「仕事とプライベートの区別」の2つの課題を解決することが可能です。
5-1.勤怠管理ツールを導入する
テレワークの隠れ残業を減らすためには、勤怠管理ツールを導入し、社員一人ひとりの労働時間を可視化する必要があります。勤怠管理ツールには、始業時間と終業時間の打刻や、労働時間の自動集計などの機能があるため、テレワークの労務管理を効率化できます。
「テレワークをしている社員の労働時間を管理したいが、管理者の業務負担が心配」「電話やメール中心の勤怠管理から脱却したい」という人は、勤怠管理ツールの導入を検討しましょう。
5-2.タスク管理ツールを導入する
また、業務量を把握するためには、タスク管理ツールの導入がおすすめです。タスク管理ツールとは、個人のタスクやスケジュールを登録し、部署やチーム全体で共有できるツールのことです。管理者が社員一人ひとりの作業予定を把握できるため、「業務量は適切か」「期限通りに業務を進行できているか」を簡単に確認できます。
6.ITツールを有効活用し、テレワークのワークライフバランスを実現しよう
社員のワークライフバランスを改善する手段の一つが、テレワークやリモートワークの導入です。テレワークを導入すれば、「通勤時間を削減し、家族と過ごす時間に当てることができる」「在宅勤務の場合、働きながら家事や育児、介護をこなせる」といった理由から、ワークライフバランスの改善につながります。
しかし、テレワークには隠れ残業や仕事とプライベートの切り分けの難しさなど、いくつか課題もあります。テレワークの課題を解決するには、勤怠管理ツールやタスク管理ツールなどのITツールの活用が必要不可欠です。