近年では、人材の確保や業務効率の向上、ワークライフバランスの実現など、さまざまな目的でテレワークを導入する企業は増加しています。しかし、テレワークの導入時における研修や、テレワーク中の非対面での研修のやり方については、知識が少ないという方は多いのではないのでしょうか。当記事では、テレワークにおける研修について徹底解説します。
目次
1.テレワークとは
テレワークとは、情報通信技術(ICT技術)を活用して、従業員が好きな時間や場所で業務をおこなう柔軟な働き方のことです。
テレワークには、在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィス勤務、ワーケーションなど、さまざまな形態があります。また、近年では、都市部から離れて、実家や地元で働くふるさとワークという働き方も普及してきています。
テレワークと似た用語に、リモートワークがあります。テレワークとリモートワークは、ほぼ同義で使用されますが、リモートワークのほうが新しく誕生した用語とされています。そのため、人や場所に応じて、用語を使い分けるのがおすすめです。
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2.テレワーク時代の研修における課題
テレワークでは、オフィス出社時とは、異なった環境下で業務をおこなうことになります。また、これまでは使用したことのないツールを使用したり、勤怠管理の方法など就業規則が変更されたりする可能性もあります。そのため、従業員にテレワークの注意点などを周知するために、導入時に研修をおこなう必要があります。
また、テレワークで研修を実施する場合、非対面で研修をおこなうことが多いでしょう。場合によっては、一方的な講義のような形となってしまい、研修の効果が下がってしまう恐れもあります。そのため、テレワーク中の研修の方法について理解を深めることが大切です。
3.テレワークの導入に研修が必要な理由
テレワークを導入するには、新しいITツールなどを使用したり、自社の就業規則を変更したりする必要があります。なお、労働基準法の第89条には、「職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項」を就業規則に記載する必要があるということが述べられています。
そのため、テレワークを導入するときには、従業員にITツールなどの使用方法や就業規則の変更点を周知するために、研修をおこなう必要があります。
また、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」によると、テレワークを実施するにあたって、部下が自律的に業務を遂行できるような人材育成をおこなうことが望ましいとされています。そのため、テレワークで業務をおこなうにあたって、人材育成という観点から、導入時に研修が必要ともいえます。
4.テレワーク導入のための研修をおこなう方法
ここでは、テレワークを導入するために必要な研修を実施する方法について詳しく紹介します。
4-1.オンデマンド型の個別学習
オンデマンド型の個別学習とは、あらかじめ用意されている動画のコンテンツや、テキストの教材を配信し、従業員の都合にあう時間にあわせて、自分で研修を受ける方法のことです。
時間や場所を問わず学習でき、覚えづらい箇所があれば、自分のぺースで繰り返し研修を受けることができます。また、学習の履歴や進捗が可視化されるため、管理がしやすいというメリットがあります。ただし、わからない箇所があったとしても、リアルタイムで質問できないというデメリットがあります。そのため、双方向のコミュニケーションを必要とするような研修には不向きです。
4-2.オンライン型の集合研修
オンライン型の集合研修とは、Web会議システムを活用して、複数の従業員が集まり、講師から直接研修を受ける方法のことです。
PCやスマホなどの端末とネット環境があれば、場所を問わず受講できるため、時間を有効活用できます。また、双方向のコミュニケーションも可能であるため、わからない箇所があれば、その場ですぐに解決することが可能です。
さらに、Web会議システムの機能を使用して、ルームを複数作成して、ほかの従業員とグループワークをおこなうことができます。ただし、研修はリアルタイムで実施されるため、当日にWeb会議システムに接続できないなどのトラブルを生じないように気を付けることが大切です。
4-3.OJTによる研修
OJTによる研修とは、OJT担当者が部下や後輩に対して、実際の業務を通じて指導し、知識や技術を教える研修方法を指します。なお、OJTとは「On the Job Training (オンザジョブトレーニング)の略称です。
テレワークの導入に関する知識のある従業員がOJT担当者となることで、個別学習や集合研修だけでは身に付きづらい実践的な知識やスキルを身に付けることができます。また、自社のコミュニケーションの活性化につながったり、OJT担当者の成長につながったりするというメリットもあります。ただし、OJT担当者の業務負荷が大きくなったり、指導者によって効果の幅が生じたりする恐れもあるため、注意が必要です。
5.テレワーク導入に必要な研修内容
ここでは、テレワークを導入するにあたって、必要な研修内容について詳しく紹介します。
5-1.管理職向けのマネジメント研修
テレワークを推進するには、管理職の方からはたらきかけることが大切です。しかし、いきなりテレワークを導入すると、マネジメント方法に悩みを感じる管理職の方もいるかもしれません。
管理職の方がテレワークでの適切なマネジメントスキルを身に付けることで、これまで以上に、部下の仕事に対するモチベーションアップや、業務生産性の向上につながる可能性があります。
このように、テレワークの導入を進めていくためにも、管理職向けのマネジメント研修を用意するのがおすすめです。
5-2.自律的な仕事の進め方や工夫についての研修
テレワークでは、業務をおこなっている姿を上司は把握しづらいです。オフィスに出社して働くのであれば、上司は部下の業務の取り組み方などを随時チェックできるため、悩んでいる姿を見かけたら素早くフォローすることができます。
そのため、テレワークを導入するにあたって、従業員は自律的に仕事を進めていくスキルが求められます。たとえば、テレワークで業務を進めているときに、わからない箇所があったら、「いつ」「誰に」「どのように」相談すればよいかなどを自分で判断しなければなりません。
このように、テレワークで生産性を落とさないためにも、自律的に仕事を進める方法やコツについて、テレワーク導入時の研修として盛り込むのがおすすめです。
5-3.リモートワークにおけるコミュニケーションの研修
テレワークでは、周囲に人がいない環境で作業する機会が増えるため、コミュニケーションの希薄化が懸念されます。オフィスに出社していれば、近くの席にいる従業員と気軽にコミュニケーションを取ることが可能です。
そのため、コミュニケーションの希薄化にともない、孤独感や不安感を感じる従業員もいるかもしれません。また、業務の生産性が下がってしまう恐れもあります。
そして、テレワークでは、電話やメールに加えて、Web会議システムやチャットツールを活用してコミュニケーションを取ることになるため、テレワークならではのコミュニケーションの取り方やコツを把握することが大切です。
このように、テレワークでは、コミュニケーションが課題となることが多いため、テレワークの導入時にコミュニケーションの取り方の研修を設けるのがおすすめといえます。
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5-4.ITツールの活用についての研修
テレワークでは、Web会議システムやビジネスチャット、勤怠管理システム、ファイル共有ツールなど、ITツールの活用が必要不可欠です。
ITツールを使いこなせないと、プロジェクトをスムーズに進められず、テレワークが社内に定着しない可能性もあります。たとえば、Web会議システムの操作方法がわからないと、会議に多くの時間を割くことになり、本来の業務に集中できない恐れがあります。一方で、ITツールを使いこなせれば、テレワークでも円滑に業務を進めることが可能です。
そのため、テレワークを導入するうえで、自社の従業員のITリテラシーを向上させるような取り組みをおこなうことが大切です。そこで、テレワークで使用されるITツールの活用方法に関する研修を取り入れるのがおすすめといえます。
6.テレワークで研修をおこなうための準備
ここでは、テレワークでの研修を実施するための準備について詳しく紹介します。
6-1.オンラインに沿った研修作り
テレワークで研修をおこなう場合、オンラインに沿った研修の方法や内容にすることが大切です。たとえば、カリキュラムや休憩時間などを記載した研修マニュアルを事前に用意しておくことが挙げられます。
また、推奨とする端末やブラウザ、ネット環境をあらかじめ受講者に周知しておくのがおすすめです。そうすれば、通信の安定性を担保したり、端末やブラウザの違いによる不具合を防止したりすることができます。
そして、テレワークでの研修は、直接対面で研修を実施する場合とは異なったトラブルが発生することも少なくありません。そのため、あらかじめ想定されるトラブルとその対処方法を明確にして、研修を実施するチームメンバーに共有しておくことが大切です。
6-2.ITツールやネットワーク環境の整備
テレワークで研修をおこなうにあたって、使用するITツールやネットワーク環境を整備することが大切です。
たとえば、Web会議システムによっては、さまざまな機能の搭載されたものがあります。また、ターゲットとする層が少人数のものもあれば、大人数のものもあります。そのため、使用するITツールが研修内容や受講者数に見合っているかどうかを事前に確認することが重要です。
そして、テレワークでの研修では、インターネット環境を使用するため、安定した通信環境を用意することが必要不可欠ともいえます。たとえば、予備の回線を用意しておくと、接続にトラブルが生じても、対応可能です。
このように、テレワークでの研修では、IT機器を使用するため、どうしても不具合は付きものですが、できる限りトラブルが生じないように事前準備を怠らないことが大切です。
7.テレワークで研修をおこなうコツ
ここでは、テレワークで研修を実施するコツについて詳しく紹介します。
7-1.大人数になりすぎない
テレワークでの研修の場合、会議室のように物理的な場所を用意する必要がないため、大人数で開催しようと考える方は少なくないでしょう。しかし、受講者数が多くなると、通信が不安定になり、画面のフリーズなど、不具合が生じるという可能性が高まります。
また、質問に対する回答など、講師の一人ひとりの受講者に対応できる時間が減ってしまい、リアルタイムで実施するオンライン研修の意味が薄れてしまう恐れもあります。
そのため、受講者が積極的に参加できるように、研修の受講者数の上限をあらかじめ明確にしておくことが大切です。また、大人数になる場合には、講師の人数を増やしたり、Web会議システムのルーム数を増設したりするのがおすすめといえます。
7-2.社員が集中できる環境を作る
従業員がテレワークでも集中できるような環境を整備することが大切です。直接対面でおこなう研修であれば、周囲の目線があるため、適度な緊張感をもって研修に参加することができます。しかし、テレワークでの研修では、自宅から参加する方も少なくないため、オン・オフの切り替えができず、集中力が続かない方もいるかもしれません。
そのため、テレワークのなかでも、従業員が集中できるように、講義と休憩の間隔を短くしたり、受講者の発言する機会を増やしたりするなど、工夫が必要です。
7-3.双方向のコミュニケーションを心掛ける
テレワークでの研修をおこなう場合、講師と受講者の間や、受講者同士でコミュニケーションを取る機会を設けるのがおすすめです。テレワークでの研修の場合、講師が発言するだけで、講義のようになってしまうこともあります。受講者が講師に質問したり、受講者同士でコミュニケーションを取ったりすることで、研修の内容をより深くまで理解することが可能です。
そのため、定期的に質問する機会を設けたり、随時チャットで質問を受け付けたりするのもおすすめといえます。また、グループディスカッションをおこなう機会を設ければ、受講者同士のコミュニケーションを活発化させることが可能です。
8.テレワークにおける研修のポイントを理解しよう!
テレワークを導入するには、ITツールを使用したり、就業規則を変更したりする必要があります。また、テレワークでは、オフィスに出社して働くときよりも自律性が求められます。そのため、テレワークで円滑に業務をおこなうためにも、研修を実施することが大切です。
そして、テレワークでの研修では、通信に不具合が生じたり、集中力が続かなかったりすることもあります。そこで、テレワークでも研修の効果を高められるように工夫をおこなうことが大切です。