株式会社チームボックスの山本です。
前回の記事では、「リーダーに必要な5つの姿勢」をご紹介しました。
①さらけ出しているか?
②アンラーンしているか?
③自責しているか?
④人の成長を信じているか?
⑤習慣化しているか?
※前回の記事は、こちらよりご確認ください。
どんなリーダーにも悩みはつきものです。チームボックスが提供するリーダー育成プログラム「Teambox LEAGUE」では、参加者一人ひとりに、専属のグローストレーナー(リーダーの成長に伴走する専門家)がつき、それぞれの課題に合わせて1on1を行います。
今回は、1on1をきっかけに、これまでの自分を見つめ直し、姿勢と行動を変化させることでチームにも良い影響をもたらしたリーダーの事例を紹介します。
<本日のリーダーの特徴>
業種:専門商社
職種:営業職
役職:課長
年齢:40代
悩み:「自分の理想とするリーダー像とは?目指すべきゴールが見つからない」
フォーカスした姿勢:さらけ出しているか?
【執筆者】山本 伸一|株式会社チームボックス 取締役
1979年福岡県生まれ。東京大学在学中、バックパッカーとなり中東やヨーロッパを中心に40数カ国を巡る。帰国後、文転して日本で最も長い歴史を誇る宗教学研究室に所属。日本学術振興会特別研究員としてユダヤ人の歴史をテーマに研究活動に専念。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。イスラエルに5年間滞在し、英語やヘブライ語で学会発表や論文執筆を行う。2016-17年ベン・グリオン大学研究員。2018年より株式会社チームボックスにて、コーチや講師として人材・組織開発プログラムを提供。人と組織の成長支援を通じて真のリーダーを育成する。東京理科大学・國學院大學講師。
目次
1.理想のリーダー像がわからない
専門商社で課長を務めるAさんは悩んでいました。
自分は会社の中でも比較的早くに役職を与えてもらった。プレイヤー時代、数字を出して成果を上げることには自信を持っていたし、それが認められて今の役職についているのだと思っていた。でも心の奥では薄々気づいている。リーダーのゴールは「数字を上げる」ことだけではないことを。だけど具体的に今の自分にとって何が必要なのかがわからない。自分はどんなリーダーになればいいのか?
Aさんは、明確な答えを見つけることができませんでした。それでも部下はどんどん増え、なかには自分より優秀な部下もいる。そんな状況下で、「昔はこうだったから」「それは自分がやるから」と気づかないうちに一方的な考えをメンバーに押し付け、メンバーとの溝は深くなるばかりでした。
このような状況、みなさんの中にも思い当たることがあるのではないでしょうか。
当時のAさんはメンバーとの距離を感じつつも、打破する術を見つけられず、暗中模索の状態でした。
成果を上げる以外にリーダーにとって重要なことは何なのか、誰からも教わることのないままリーダーになり、いつしか「優秀な自分」の仮面を脱ぐことができなくなっていたのです。
2.自分をさらけ出せずにひとりで抱え込んでいた
そんな悩みを抱えていたAさんですが、「Teambox LEAGUE」のトレーニングで「リーダーに必要な5つの姿勢」を学び、さらけ出すことの重要性に気がつきました。
プレイヤーとして優秀だったAさんですが、それが故に自分の成功体験に誇りを持ち、わからないことや知らないことを正直に言えない、自分の弱さをさらけ出すことができないという状況に陥っていました。その結果「チームみんなで頑張る」のではなく、「リーダーである自分が頑張ればいい」という気持ちが強くなり、問題を一人で背負い込むことが多くなっていたのです。
もともとメンバーを引っ張って先頭を突き進むようなタイプではなかったAさん。「リーダーは強くなければいけない」「リーダーは失敗してはいけない」自分の中で勝手に思い描いていた強いリーダー像にとらわれ、本来自分が目指すべきリーダー像を見失っていました。
グローストレーナーとの1on1の中で、「本当はみんなで支え合うチームにしたい、誰か一人が活躍するのではなく、お互い助け合えるチームを目指したい」という理想が徐々に言語化されていきました。理想のリーダーとは、そんなチームをつくることのできる人。
3.「できない」を認め、託す
自分の理想のリーダー像が見えてきたAさんは、まずはチームメンバーとの対話から始めました。支えあえるチームを目指し、日常的なコミュニケーションはもちろんのこと、メンバーとの個別の1on1の時間も多く取りました。
意識的にチーム内でコミュニケーションを増やすことによって、自分がどれだけチームメンバーに目を向けられていなかったかということに気づきました。
また、チームメンバー一人ひとりとの対話を進めるうちに、自分一人ではメンバー全員をケアするのは不可能だということに気づいたのです。これまでのように無理に一人でやろうとせず、「できない」ことを認め、それを正直に別のメンバーに伝えました。メンバーは快く引き受けてくれ、Aさんの業務の一部を別のメンバーに任せられるようになりました。
これまでは「自分だけではできない」という弱みを見せられなかったAさんでしたが、自分の内面を素直にさらけ出すことで、メンバーとの距離も徐々に縮まり、信頼しあえるチームを築くことができたのです。
4.メンバーとの対話(1on1)におけるポイント
最近では、メンバーとの1on1は対話の手段としても広く知られるようになってきました。1on1を実施する際に大事なのは、傾聴とフィードバックであることです。
① 傾聴
基本的ですが、とても大事なポイントです。傾聴とはただ聞くだけではありません。あなたがじっくり聞くことで、相手にとっていい影響を与えられること。そこまでできて傾聴できていると言えるでしょう。
相手が話しているときに、遮って自分の意見を伝えてしまっていませんか?相手が沈黙しているときに、沈黙を恐れずに待ってあげられていますか?
1on1はあなたのためではなく、メンバーのための時間です。しっかり相手の話したいことを聞く姿勢を持ちましょう。メンバーの意見が間違っていると感じたとしても、一度は受け止め、その意見にリスペクトを示しましょう。
しっかりと傾聴できていれば、相手は本質的に何を問題と感じているのか、表面的な事象だけではなく感情までとらえることができるはずです。
②フィードバック
一方で、当然あなたからのフィードバックも重要な側面となります。
フィードバックのコツは、相手の言動をはっきりと承認し、それから耳の痛いことでも率直に評価し助言を行うことです。ただし、一方的にあなたの意見を伝えフィードバックしっぱなしにするのではなく、それに対する相手の考えも聞くようにしましょう。
大事なのは決めつけて押し付けるのではなく、お互いの考えをすり合わせ、認識を揃えていくことです。
5.リーダーが変われば、組織が変わる
これまでも数多くの組織でトレーニングをおこなってきましたが、やはりどの組織においても姿勢・行動を変えたリーダーが多ければ多いほど、組織にも変化が見られます。
とはいえ、今回ご紹介したAさんのように、リーダーにとって必要な要素を学ぶ機会がなかったリーダーも数多く、何を変化させれば良いのか具体的な方法を知らないだけということも少なくありません。
この連載では、これからも姿勢や行動を変えたリーダーの事例をご紹介していきますので、ぜひみなさんも参考にしていただき、組織に変化をもたらすことができると嬉しいです。