株式会社チームボックスの山本です。
VUCAの時代と言われて久しい昨今、人や組織に求められているのは、過去にとらわれず柔軟に「変化し続ける力」です。
私たちは、誰もが素直に学び合い、自分自身の未来を明るく切り拓いていくための場として、リーダー育成プログラム「Teambox LEAGUE」を提供しています。
これまで多くの企業や組織のみなさんと歩みを進め、私自身は、チームボックスのトレーナーとして、古いリーダーシップをアップデートして生まれ変わろうとする会社、個々のリーダー力は高いのに疲弊しきった組織など、のべ400人のリーダーのさまざまな変化を目にしてきました。
今回は、企業を成長に導くリーダーに必要な5つの姿勢について紹介します。
【執筆者】山本 伸一|株式会社チームボックス 取締役
1979年福岡県生まれ。東京大学在学中、バックパッカーとなり中東やヨーロッパを中心に40数カ国を巡る。帰国後、文転して日本で最も長い歴史を誇る宗教学研究室に所属。日本学術振興会特別研究員としてユダヤ人の歴史をテーマに研究活動に専念。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。イスラエルに5年間滞在し、英語やヘブライ語で学会発表や論文執筆を行う。2016-17年ベン・グリオン大学研究員。2018年より株式会社チームボックスにて、コーチや講師として人材・組織開発プログラムを提供。人と組織の成長支援を通じて真のリーダーを育成する。東京理科大学・國學院大學講師。
目次
1.人と組織を変えるトレーニング
通常のリーダー研修は、一度きり、座学で終わることが多くあります。
しかし、その瞬間は理解し、モチベーションが上がったとしても、そこから継続して実践できるかというと、変わり続けられるのはほんの一握りかもしれません。
チームボックスでは、その点に課題感を感じ、「Teambox LEAGUE」を実践・習慣化できるような3本の柱で構成しています。
- 講師のファシリテーションのもと、参加者同士でお互い学び合う集合トレーニング
- 専属のグローストレーナー(リーダーの成長に伴走する専門家)との対話の中で個人の課題にフォーカスし、自己認識を深めていく1on1
- リーダーとしての自分の言動や姿勢に意識的に向き合う振り返り
私たちは「研修」という言葉を使わず、リーダーを育てる「トレーニング」と表現しています。その理由は、トレーニングを「できないことができるようになること」と解釈しているからです。
何度もアウトプットしてもらい、失敗し、それを振り返ることで体得できる学びに繋げる。私たちグローストレーナーは長期間のトレーニングに伴走し、組織とリーダーを支えます。
また、学び、変化するのに一番大事なのは組織の未来や部下の成長に向き合う「姿勢」です。
実際にトレーニングに参加される方の中にはトレーニングに前向きでない方もいます。ですが、そういった方々も集合トレーニングで他の参加者の変化を見ていくうちに、確実に姿勢が変わっていきます。
2.組織として成果を出せるリーダーに必要な5つの姿勢
では、どのような姿勢・マインドがリーダーに大きな変化をもたらすのか、弊社なりの考えをご紹介します。
①さらけ出しているか?
あなたは普段から周囲に自己開示をしているでしょうか?
これは単純に自分のパーソナルな部分を他人に話す、というレベルの話ではありません。
もちろん自分のことを他人に開示することは大切ですが、例えばチームやメンバーのためなら自分にとって都合の悪いことでも率直に相手に伝えられるかどうか。これが私たちの考える「さらけ出し」です。
人はどうしても自分の弱いところを隠し、強いところを見せたいと思ってしまいます。
特にリーダーであればなおさら「メンバーよりも優れていなければならない」という思い込みに縛られている方も多いのではないでしょうか。
もちろん「リーダーは強く、みんなを引っ張らなければならない」と考えるのも素晴らしいのですが、自分の弱さをさらけ出し、ちょっとズルいところや情けないところ、それすらも正直に話せるリーダーだからこそ、相手も信頼して自己開示ができます。
弱さをさらけ出すのにも強さは必要です。さらけ出せる力、これがリーダーシップに大事な要素の一つです。
②アンラーンしているか?
過去の自分の体験から得た先入観や固定観念を一度捨て去り、新たに学び直す、これを「アンラーン」と呼びます。
それでは、なぜこの「アンラーン」が組織のリーダーに必要なのでしょうか?
これには大きく分けて二つの理由があります。
まず一つ目は、社会やビジネスを取り巻く環境が大きく変化しているからです。
VUCA時代とも呼ばれる現代社会では、多様な価値観やあり方が存在しています。そのため、リーダーシップを発揮するのは以前よりずっと難しいのです。いつでも、どこでも、誰とでも活躍できるリーダーであるためには、自分が新しい局面に向き合ったとき、過去の自分の成功体験や「べき論」を捨ててでも、新しい学びを得られるか。これが重要です。
次に、現代の組織でマネジメントを担うリーダーは、難しい立場に立たされているからです。
自分たちが若手の頃に教えられたのは、「背中を見て覚えろ」「考えなくていいから、ひたすらにやれ」といったやり方で、実際にそう鍛えられてきました。しかし、今の若手はそのようなやり方ではついてこない可能性が高いです。
一方で、自分より上の層の人たちは、未だに旧来型のマネジメント方法で負荷をかけてきます。その矛盾と向き合いながら、部下を育てなければならないため、柔軟に環境に適応するために学びなおしは必要になります。
③自責しているか?
個人的には、「自責」とは自分を責めることではなく、「責任感」を持って考えられるかどうかであると捉えています。
例えば、座っていても手を伸ばせば届く範囲なら、意識せずとも責任感を持つことはできるでしょう。
ですが、少し立ち上がり2,3歩進んだ先にある事象にも責任感を持つことができる人は、前者よりも少ないのではないでしょうか。
これをできるのがリーダーであり、私はこれを「自責」と呼んでいます。
ここで、ポイントなのは“2,3歩”先にある事象に責任感を持つという事であり、全ての事象を自責で捉えるのは不健全です。
あくまで今まで自分の見ていた世界より、少し広げた先の事象も責任感を持って物事を考えましょう。
④人の成長を信じているか?
何度指摘しても改善が見られないメンバーに対して、「どうせ彼はダメだから」と諦めていませんか?
変わろうと努力しない、改善しようとしない人に直面したときに、リーダーがどう向き合うかはとても重要です。
組織の上では、リーダーひとりが優秀であればいいのではなく、いかに優秀な人を育てられるかが大切です。
チームボックスではYETMINDという言葉を使っていますが、これは「今はできなくても、まだできないだけ。これから必ずできるようになる」と信じる姿勢です。YETMINDはリーダーが部下と接する際に重要なマインドです。
組織は自分ひとりのパフォーマンスで成り立ってるわけではありません。「どうせできない」「どうせ変わらない」と諦めるのではなく、「今はまだできないだけ」と少しポジティブに言い換えるだけで、心に余白ができます。この見えない余白を信じ、人と組織の可能性を最大化させていきましょう。
➄習慣化しているか?
仕事でも日常でも、何かを学ぶ機会は数多く存在しています。
しかし、学んでいる瞬間だけやればいいのではなく、継続的にやっていく姿勢を持っているかどうかが大事です。
個人という視点で見れば、意識的に習慣化させることもできるかもしれません。
ですが、組織という視点でみると自分以外のメンバーに対しても意識を向ける必要があるため、難易度が高くなります。常に組織を成長し続けさせるために、組織の中で習慣化させることもリーダーの役割のひとつです。
最初は意識的にしていた行動が、習慣になると無意識的な行動に変わります。
難しいと思っていたことも少しずつ簡単になり、楽しみになっていく。これが習慣化のプロセスです。
3.「変わりたい」と思っているすべてのリーダーへ
ここまで読んでくださった読者の方には、リーダーとしてまだまだ「変わりたい」と思う気持ちが少なからずあるのだと思います。
ただ、一点念頭に置いていただきたいのは、会社のためや他人のため、自分以外のために良きリーダーになろうと思うのには限界があります。これから先より困難な状況にぶつかったとき、自分以外の何かを理由にしていると乗り越えられなくなるかもしれません。
そして、いつの間にか自分以外の何かに責任を押し付け、「なぜ会社のために自分がここまでやらなきゃいけないのだろう?」と悪循環に陥ることもあるでしょう。
ここで、どんな時もブレない自分らしい軸を持つために大事なポイントが「オーセンティシティ」です。オーセンティシティとは「自分らしさ」のことであり、どんな時もブレない自分らしい軸を持つことが大事です。
本当にやりたいことなのか?ゴールはどこに置くのか?自分の内なる思いを言語化しておきましょう。
よくリーダーシップはマネジメントと同じ視点で語られることが多いですが、リーダーシップとマネジメントは違います。
リーダーシップは人間が生きていく上で身につけていてほしい力であり、どんな立場にいる人にも共通して必要なものです。誰でも何らかの場面でリーダーになり得ます。
今後の連載では、私やグローストレーナーがこれまで見てきた組織やリーダーにスポットを当て、どのような道のりを経て課題を解決したか、この5つの姿勢に磨きをかけることでどのような変化を手にしてきたのかをみなさんにお話ししていきたいと思います。