企業や個人の業績を見るうえで、「指標」という言葉をよく耳にするでしょう。指標とは、物事の目安となる目印や基準を指し、達成度や推移を測るうえでは欠かせない要素の一つです。組織の成長はもちろん、従業員のパフォーマンス向上を促すこともできるため、目標設定に効果的に取り入れるようにしましょう。
ここでは、目標達成のための指標の役割と重要性、効果的な設定方法やポイントを解説します。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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目次
1. 目標設定における指標とは?
まずは目標や指標の意味について確認しておきましょう。
1-1. 目標とは?
目標とは、最終的に目指すべきゴール地点のことです。新規契約を10件獲得する、前年よりも売上を15%アップさせる、新規社員を10人採用するなど、部署や個人が目指すべき方向を示します。
具体的な数値を用いて定量的に示すこともありますが、顧客満足度を向上させる、コミュニケーションを活性化させるなど、定性的な目標を設定するケースもあります。
1-2. 指標とは?
組織の目標を「ゴール地点」としたとき、指標はその過程で「達成度を測るものさし」として機能します。物事の判断・採点基準として段階的に設定し、金額、時間、点数、頻度など客観的な計測データを用いて、物事の程度を見定めるために使用します。
指標を設けることで、目標達成までの道のりが明確になり、従業員もモチベーションを保ちやすくなるため、スムーズな目標達成が可能です。目標を高く設定する場合には、達成すべき要素も増えるため、目標の内容に応じて複数の指標を設定するのがよいでしょう。
1-3. 指針とは?
指針とは、業務やプロジェクトが進んでいく方向を示すものです。客観的な数値による基準点を示す指標とは異なり、指針はざっくりとした方向性を示しているといえるでしょう。
1-4. 目標と指標の違い
前述の通り、目標は最終的なゴール地点を示しています。一方の指標は、目標の達成度を把握するための基準のことです。1つの目標に対して複数の指標を設定し、達成度を多角的に評価するケースもあります。
2. 目標設定に関連する指標の種類
従業員個人の目標を設定する前には、人事担当や管理職は企業や組織の目標を正しく把握し、周知することが重要です。
企業の目標管理においては、主に以下の4つの指標を用います。
2-1. 経営目標達成指標(KGI)
経営目標達成指標とは、「総売上」「顧客数」「コスト」など、達成すべき要素の大枠を示した、大目標にあたる指標です。英語では「Key Global Indicator」と呼び、「KGI」と示します。
「売上○億円を目指す」「顧客数○万人を達成」「販売コストを○%下げる」など、数値を含めた具体的な目標設定が重要です。
2-2. 重要業績評価指標(KPI)
経営目標達成指標(KGI)に準じて、より具体的な指標を定めたのが重要業績評価指標です。英語では「Key Performance Indicators」と呼びます。
大目標となるKGIに対して、KPIは目標達成のプロセスにおいて達成度を把握し評価するための中目標です。たとえば、KGIで「営業利益を○%あげる」という目標を設定した場合、「商談数」や「受注率」といった、KGI達成のための具体的要素がKPIにあたります。
2-3. 成果指標(OKR)
GoogleやFacebookなどの有名企業が取り入れていることで、近年注目されているのが成果指標です。英語では「Objectives and Key Results」であり、日本語に訳すと「目標と主要な結果」となります。
OKRの大きな特徴として挙げられるのが、目標とそれに付随する具体的な施策を、高い頻度で設定・追跡・再評価するという点です。目標に対する進捗を短いスパンで評価するため、すべての従業員が同じ方向を向きやすく、明確な優先順位を定めて前進していくことができます。
細かい目標を設定する点ではKPIと似ていますが、KPIでは実現可能な目標を設定して100%以上の達成を目指すのに対し、OKRでは達成率が60%~70%に留まるような高い目標を掲げ、長期的なチャレンジを促す点で違いがあります。
OKR を指標とする際は、1カ月から3カ月(四半期)で達成できるような一つの定性目標に対して、2~5個程度の定量指標を設定します。この時、定量指標には「難しいけどベストを尽くせば達成できそう」というストレッチのある水準を設けることがポイントです。
2-4. 主要成功要因(KSF)
主要成功要因とは、目標達成を目指すうえでの自社の優位性を示す指標のことです。「Key Success Factor」の頭文字を取って「KSF」とも呼ばれます。
KSFを設定する際は、競合他社と比較しながら自社の優れている点を洗い出すことが重要です。たとえば、売上をアップさせるという目標があるとき、競合他社よりも価格の優位性があるなら、価格を主要成功要因として設定します。
3. 目標設定における指標の役割と重要性
目標設定において指標を設定することは、個人や組織全体のパフォーマンスやエンゲージメントの向上にとって非常に重要です。指標を設けることで、次のような効果が期待できます。
3-1. 組織力の強化
KGIおよびKPIを設定し組織内に共有することで、従業員にも明確な目標を周知でき、方向性のブレを防ぐことができます。従業員同士のコミュニケーションやチームワークの強化にもつながるため、組織力強化が期待できるでしょう。
3-2. 業務の明確化
目標達成における優先事項が明確化され、無駄な作業にかける時間を短縮できることで、仕事能率の向上につながります。
「KPIの設定⇒実行⇒検証」を繰り返す、PDCAサイクルを回していくことで、より業務が効率化し生産性も向上します。
3-3. 従業員一人ひとりの成長
指標を設けてやるべきことが明確化されると、自分の能力の程度や、現時点での目標達成割合を可視化できます。効率化のためにこれまでの方法を刷新するなど、指標に達するにはどうすべきかを従業員自身で模索するようになるため、能動的かつ自立的な人材育成につながるでしょう。
3-4. モチベーションのキープ
「何を」「どこまで」という頑張るべき水準がわかると、従業員もモチベーションを保ちやすくなります。「6カ月以内に売上20%アップを目指そう」など指標が具体的であれば、ゴールが示され、やるべきことにも悩まないため、業務に対するモチベーション向上が期待できるでしょう。
また、具体的な目標をかかげるだけでなく、目標に対して定期的に評価をおこなうことも従業員のモチベーション維持や向上のために欠かせない点です。目標や行動計画の立案と同時に、体系だった人事評価制度の運用は切っても切り離せないものです。しかし、そもそも現状、体系だった人事評価制度がなく導入を検討されている方もいらっしゃるかもしれません。
人事評価制度を整えると言っても何から手をつければ良いか分からずお困りの方へ向けて、本サイトでは「人事評価の手引き」を無料で配布しています。自社にとって適切な人事評価制度を検討するために、まずは人事評価制度について網羅的に理解したいという方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
4. 目標や指標の設定方法
目標達成に向けて指標を設定する際は、次の4ステップで進めるとスムーズに進行できます。
4-1. 業務プロセスの見直し
まずは、自社の業務内容や業務プロセスについて分析をおこないましょう。企業の組織体制、業務フロー、業種や職種を踏まえた指標を設定することが大切です。
どのような業務があって、どのようなプロセスで推進しているかを見直せば、適切な指標を見定めやすくなります。
4-2. KGIを設定
KPIを設定する前には、必ずKGIを明確にしておきましょう。業務プロセスの分析結果をもとに、最適なKGIを設定します。「最終的に達成したいことはなにか」について数値とともに定めておくことで、定量的かつ客観的な指標(KPI)の設定につながります。
4-3. KPIを設定
KGIの達成に向けて、「どのようなプロセスが必要か」を精査し、細分化しながらKPIを定めます。たとえば、「前年度比で営業利益を25%アップさせる」というKGIであれば、「営業一人あたりの受注金額5%増やす」「製造コストを15%減らす」など、企業の状況に基づいて観点の異なるKPIを設定することができます。
4-4. KPIツリーの活用
KPIツリーとは、組織の大目標であるKGIを頂点におき、その達成に必要な要素となるKPIをツリー状に示したフレームワークことです。KGIとKPIの関係性を可視化しやすく、従業員もそれぞれの役割を認識しやすくなるため、スムーズな目標達成を実現できるでしょう。
5. 目標や指標を設定する際のポイント
ここでは、目標や指標を設定する際に意識しておくべきポイントを紹介します。
5-1. SMARTを意識する
目標を設定するときは、SMARTを意識するとよいでしょう。SMARTは目標設定におけるフレームワークのひとつで、目標を具体的に設定するのに役立ちます。SMARTを活用するときは、以下5つのポイントを意識します。
- Specific:具体的であること
- Measurable:測定可能であること
- Achievable:達成可能であること
- Relevant:関連性があること
- Time-bound:期限があること
具体的で測定可能な目標を設定することは、公平な評価につながります。また、達成可能な目標を設定することで、従業員のモチベーションを維持できるでしょう。
5-2. KPIは5個程度が理想
KPIを多く設定しすぎると、従業員が混乱する可能性があります。従業員のモチベーションをキープするためにも、KPIは5個程度に絞り込むのが良いでしょう。
最低限の指標数で、最終目標までの道のりがわかりやすく示されることで、一つひとつの指標における達成感も得やすくなります。
5-3. 数値化した指標を設定する
指標を数値で設定することで、達成度が可視化され、進捗状況を把握しやすくなります。曖昧な指標にすると、公平な評価も難しくなるため注意が必要です。
従業員の取り組み度合いを正確に管理するためにも、指標は数値で示しましょう。
5-4. 期限を設ける
順調な目標達成のためには期限を設けることも大切です。無期限だと、いつまでも目標を達成できないという状況が続きやすくなるため、期限を設けて随時進捗状況を確認しましょう。
5-5. 達成が困難な内容は避ける
従業員のモチベーションを保つためには、内容の難易度も精査する必要があります。従業員個人の努力では目標達成が難しかったり、現在の能力に対してハードルが高すぎたりすると、取り組む前から従業員のモチベーションを低下させることになりかねません。
従業員の成長度合いに応じて前期のノルマより少し高めに設定するなど、最適な水準で設けるようにしましょう。
5-6. 責任者を明確にする
目標や指標を設定するときは、責任者を明確にしましょう。誰がその数値を管理するのか、誰がその作業を担当するのか、といった責任の所在を明確にしておかなければ、誰も動かない可能性があります。
スムーズな目標達成を目指すためにも、担当者や責任者を決めておきましょう。
5-7. 環境の変化に柔軟に対応できるようにする
目標や指標を設定するだけではなく、環境の変化に柔軟に対応することも必要です。市場や社会状況の変化により、設定した目標や指標を変えるべきケースもあるでしょう。
また、担当者の離職や部署の再編成など、社内の事情により目標を変更することになるケースもあります。環境の変化があった場合は、目標数値を変更するなど、柔軟に対応していきましょう。
6. 目標や指標を活用して事業を拡大しよう!
今回は、目標と指標の違いや、設定するときのポイントについて解説しました。目標達成に向け、達成度を測るものさしとして機能する「指標」ですが、効果的に設定することで、組織の成長や従業員のモチベーション向上につながります。
ただし、適切な難易度で設定しなければ、逆にモチベーションが低下してしまう可能性もあるため注意が必要です。また、設定すること自体が目標とならないように注意しましょう。
自社の業務体制や業務内容、また従業員のスキルをしっかりと把握したうえで、達成が見込める具体的目標を立てることが大切です。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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