役割等級制度とは?メリット・デメリットや導入手順を徹底解説 |HR NOTE

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役割等級制度とは?メリット・デメリットや導入手順を徹底解説

  • 組織
  • 人事評価

虫眼鏡でじっくりと観察する

役割等級制度は、人事評価制度の骨格となる「等級制度」のひとつです。職能資格制度や職務等級制度と違って、従業員を仕事上の役割に応じてランク付けします。労務行政研究所の調査(2022年2月~5月)によると、役割等級制度を導入している企業の割合は42.5%です。[注1]

役割等級制度のメリットやデメリットを知り、自社に合った等級制度を導入しましょう。本記事では、役割等級制度の特徴や導入の流れを解説します。

[注1]人事労務諸制度の実施状況【前編】|労務行政研究所

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人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。

しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。

本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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1. 役割等級制度とは?仕事上の役割に基づいて評価を決める制度のこと

自分も構成物の一部になる様子

日本の人事評価制度は一般的に、従業員を等級(グレード)に分け、賃金・賞与・昇進などの待遇を決める「等級制度」で成り立っています。等級制度には、職能資格制度や職務等級制度などがありますが、役割等級制度もそのひとつです。

役割等級制度の特徴について、他の制度と比較しながら確認しておきましょう。

1-1. 役割等級制度と職能資格制度・職務等級制度の違い

役割等級制度は、従業員が社内で果たす役割に応じて、賃金などの等級を決める制度です。たとえば、職務等級制度の場合は、従業員を営業部長、営業課長、営業チーム長、シニア営業社員などの役職で分け、それぞれの職務(人)に応じた評価をおこないます。

一方、役割等級制度は人ではなく、仕事を基準として等級を決める制度です。たとえば、同じ部長職や課長職でも、担当している仕事の重要度や責任の重さに応じて、賃金の等級に差がつくことがあります。

1-2. 役割等級制度における昇格・降格

役割等級制度では、従業員に与えられた役割の重要度が増したり、より責任の重い部署への配置転換がおこなわれたりした場合に昇給する仕組みになっています。ほかの役職者に負けない成果を出すことができれば、若手従業員が高い評価を得ることも可能です。

逆に、なんらかの理由で従業員の役割の重要度が低下した場合は、降級や降格が検討されることもあります。

2. 役割等級制度が注目されている理由

役割等級制度が注目されている背景としては、主に以下の3点が挙げられます。

2-1. 景気低迷による人件費の調整

バブル崩壊以降の景気低迷により、今まで年功序列制度を採用していた企業を含め、企業にとって人件費はシビアな問題となりました。さらに高齢者雇用安定法によって、企業は従業員が満70歳を迎えるまでの雇用を努力目標として義務づけられています。

年齢と成果が一致しない従業員より、組織に成果をもたらす従業員へ適切な給与を支払いたいと考える企業が増えたのは、自然な流れだといえます。

2-2. 多様な働き方や価値観への対応

転職やリモートワークといった働き方に対する価値観の変化と、それに伴う企業への帰属意識の低下も、役割等級制度が注目される理由として挙げられます。

年齢や社歴を問わない、スキルや成果などの貢献度に基づいた評価は、従業員のモチベーション向上につながります。

2-3. 男女の賃金格差の解消

役割等級制度は、従業員が担当している仕事の重要度や責任の重さに応じて報酬を決定する制度です。役割をこなすことができれば報酬を与えるといったシンプルな制度構造は、不公平な男女格差を解消できる可能性が高いといえます。

3. 役割等級制度のメリット

メリットを積み重ねる積み木

役割等級制度のメリットは3つあります。

  • 人件費を適正化できる
  • 従業員の主体性が高まる
  • 人材育成につながる

それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

3-1. 人件費を適正化できる

役割等級制度を導入すれば、人件費を適正化することが可能です。前述の通り、役割等級制度では、従業員が果たす役割が重要になればなるほど評価点数が高くなり、給与や賞与が増加します。

一方、勤続年数が長い従業員や、役職がついた従業員でも、企業への貢献度が低いと役割等級は上がりません。そのため、企業への貢献度と給与を連動させ、人件費の予算をより有効活用できるのが役割等級制度の強みです。

3-2. 従業員の主体性が高まる

役割等級制度における役割とは、各等級ですべきことをまとめたものです。後の項目で詳しく説明しますが、役割等級制度では等級ごとに「役割基準書(役割定義書)」を作成し、従業員に求める職責を記入します。役割等級制度では、各等級で求められる仕事をこなすほど待遇が上がり、給与や賞与が上昇していきます。

何を・いつ・どのようにすれば企業に評価されるかが明確化されるため、従業員の主体性が高まり、役割等級に応じた仕事を進んでおこなうようになるでしょう。

3-3. 人材育成につながる

役割等級制度は、従業員の賃金・賞与・昇進を査定する人事考課にとどまらず、人材育成にも効果的な制度です。役割基準書には、企業が従業員に期待する姿勢や行動を記述します。たとえば、以下の表は厚生労働省が作成した役割基準書の一部を抜粋したものです。[注2]

項目

技術系専門職(レベル3)

資格定義

設計技術者の専門職(スペシャリスト)として、上位方針を踏まえて専門業務における計画作成、業務遂行、問題解決などを行い、職務遂行を通じて企業利益を創出する。

対象職種

設計

資格・知識

職務遂行において会社が最低限必要と認める公的資格(TOEIC650~800程度)

期待される姿勢および行動

技術者倫理の遵守

  • 倫理諸規程の理解と遵守
  • 技術者特有の倫理上の諸問題に関する事例の把握
  • 倫理的問題の解決

業務計画の作成と成果の追求

  • 計画の作成
  • スケジュール管理と自己管理の推進
  • 成果へのこだわりと成果の追求

関係部門との連携による業務の遂行

  • 他部門との連携による職務の遂行
  • 社内外関係者との信頼関係の維持・構築

設計品質の向上

  • 安全・品質・環境に関する国内外の規格に配慮した設計の実施

このように役割基準書を見れば、従業員が今すべきこと、将来的にしなければならないことがひと目でわかります。役割等級制度を導入すれば、従業員のさらなるチャレンジを促し、人材育成を効率化することが可能です。

[注2]職業能力評価基準活用事例集(P12)|厚生労働省

4. 役割等級制度のデメリット

デメリットの積み木

一方、役割等級制度には以下のようなデメリットもあります。

  • 評価制度の設計に時間がかかる
  • 役割等級制度が合わない組織もある

企業によっては、役割等級制度がうまく機能しない場合もあるため、組織風土に合った等級制度を選ぶことが大切です。

4-1. 評価制度の設計に時間がかかる

役割等級制度は、制度設計に手間がかかる評価制度です。従来の年功序列制度では、年齢や勤続年数に応じて、自動的に昇給・昇進させるだけで手続きが完了しました。しかし、役割等級制度を導入すれば、従業員のグレード分けや、各役割の役割基準書の作成など、人事担当者の業務量が大きく増加します。

既存の等級制度と比較して、人的リソースが求められる制度であることを知っておきましょう。人事評価システムを導入し、業務効率化やペーパーレス化を実現するなど、人事担当者の負担を減らす仕組みが必要です。

4-2. 役割等級制度が合わない組織もある

企業のカラーや組織風土によっては、役割等級制度が体質に合わないケースもあります。たとえば、以下の特徴に当てはまる企業です。

  • 年功序列制度を長く導入しており、従業員が年功序列に慣れている企業
  • 組織が停滞しており、主体的に仕事をする従業員が少ない企業
  • ルーチンワークが多く、創意工夫やチャレンジとは無縁の企業

とくに年功序列制度を長く導入してきた企業は、役割等級制度を導入することで、給与の引き下げや不本意な人事異動が発生し、ベテラン社員の反発を招く可能性があります。既存社員の理解を得られない場合は、別の等級制度の採用も検討しましょう。

5. 役割等級制度の導入手順

星5の評価

役割等級制度の導入手順は以下の通りです。

  1. 従業員のグレード分けをする
  2. 役割基準書を作成する
  3. 人事評価の流れを確認する
  4. 評価者の訓練を実施する

以下、それぞれのステップについて詳しく解説します。

5-1. 従業員のグレード分けをする

まずは、終身雇用従業員を異なる等級(グレード)に分類します。一般社員で3~4、管理職で2~3程度に分けて等級を作成し、各等級で期待する姿勢や行動を役割基準書に記入していきましょう。

これにより、組織内の従業員の役割や責任を明確化し、組織の目標達成に向けた人材配置が可能になります。

5-2. 役割基準書を作成する

各グレードに対して、明確で具体的な役割基準書を作成します。役割基準書には、役割や責任、期待されるスキルや行動基準などを記載しておくことが重要です。

役割基準書の存在により、従業員は自身の役割や業務内容を把握しやすくなり、組織全体での役割分担が円滑になります。

5-3. 人事評価の流れを確認する

各役割における評価の基準や方法、タイミングなどを明確にし、公正な評価プロセスを確立しましょう。

役割等級制度は報酬と密に連動した制度であるため、従業員の成果を適切に評価し、報酬やキャリアパスに反映させることが不可欠です。

5-4. 評価者の訓練を実施する

評価者は役割基準書や評価基準を理解し、私情を挟まずに公正な評価をおこなわなければなりません。

評価者の訓練を通じて公平な評価プロセスを確保することで、従業員のモチベーションやエンゲージメントを向上させ、組織を目標達成へと導きます。

ここまで制度の導入方法を紹介しましたが、そもそも、人事評価制度を設計すると言っても何から手をつければ良いか分からずお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような方へ向けて、本サイトでは「人事評価の手引き」を無料で配布しています。

自社にとって適切な人事評価制度を検討するために、まずは人事評価制度について網羅的に理解したいという方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

6. 役割等級制度のメリット・デメリットを知り、自社に合った等級制度を導入しよう

楽しく仕事を進めている女性

役割等級制度は、企業が期待する役割に応じて、従業員の等級を決める制度です。職能資格制度や職務等級制度に代わる新しい等級制度として注目を集めています。

役割等級制度は、評価制度の設計に時間がかかるものの、人件費の適正化や人材育成の効率化など、さまざまなメリットがある制度です。役割等級制度を初めて採用する企業は、まず導入の流れを確認しましょう。

【従業員の評価、適切におこなえていますか?】

人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。

しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。

本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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