新型コロナウイルスの5類移行とともに、客足が戻りつつある飲食業界。その一方で、人材不足が深刻化しています。人材不足にどう立ち向かうべきかー。 その課題解決に取り組む飲食店のひとつが、京都の日本酒専門飲食店「伏水酒蔵小路」です。 この記事では、「伏水酒蔵小路」の事例を紹介しながら、飲食店DXの成功のポイントを解説します。
目次
飲食店の深刻な「人材不足」、どう解決するか?
新型コロナウイルスの5類移行とともに、客足が戻りつつある飲食業界。その一方で、人材不足が深刻化しています。人材不足にどう立ち向かうべきかー。その課題解決に取り組む飲食店のひとつが、京都の日本酒専門飲食店「伏水酒蔵小路」です。
伏水酒蔵小路とは
日本酒生産量第2位を誇る京都・伏見に本社を置く、合同会社伏水酒蔵小路。
日本酒専門店「酒蔵」のほか、串カツやおでん、ラーメンなど「うまいもん専門店」8店舗が集まった屋台村「伏水酒蔵小路」を営んでいます。 「伏水酒蔵小路」では独自の「出前」制度を採用しており、席を移動せずに複数のお店の料理を楽しむことができるのが魅力です。
京都・伏見区に「伏水酒蔵小路」と酒販店「伏水酒蔵堂」を構えるほか、大阪・日本橋に「伏水酒蔵小路 別館」と、多角的に店舗を展開しています。
シフト管理を「4分の1」に。「一石三鳥」のDX
この「伏水酒蔵小路」のバックオフィス全般を担っているのが、代表社員の光山俊一氏です。社員・アルバイト含め約40名の従業員のシフト管理や給与計算、経理業務などをおこなっています。
従来はエクセルによる手作業でのシフト管理をおこなっていましたが、シフト管理サービス「Air シフト」の導入をきっかけに、シフト管理・給与計算・アルバイト採用を効率化。代表の光山氏は「一石三鳥」だったと語ります。
Airシフト」とは
「Airシフト」とは、リクルート社が提供しているシフト管理サービスです。スタッフ向けシフト管理アプリ「シフトボード」と連携することで、シフトの収集や作成などの業務を効率化することができます。また、勤怠管理や単発バイト募集なども可能です。
参考:【Airシフト】 シフト管理システム | やりとりも作成もラクになる
導入背景
「Air シフト」導入のきっかけは、シフト管理・給与計算の効率化を図るためでした。
「Air シフト」の導入前は、現場のマネージャーがLINEや電話など個別連絡でスタッフの希望シフトを聞き、エクセルに入力してシフト表を作成。シフト作成だけで毎月6時間ほど掛かっていました。
給与計算はタイムカードをエクセルに転記して計算。時間が掛かるだけでなく、手作業での転記による入力ミスが発生していました。
酒販店を開始し、拠点や従業員数を拡大するようになった頃、管理業務の非効率さをより一層強く感じるように。そんな時に「Airシリーズ」の存在を知り、すぐさま導入に至ったといいます。
導入効果
現場の店長などのバックヤードの業務時間が大幅に削減されました。また、手入力・手計算によるミスも減り、管理業務が大幅に削減されました。
「Air シフト」の導入後は、システム上でシフト収集や勤怠管理ができるため、エクセルへの転記作業が不要に。
シフト管理・勤怠管理・給与計算に費やす時間は4分の1に削減されました。
また、「Air シフト」の「単発バイト募集機能」を使うことで、人材不足の解消にも役立てています。シフト単位でアルバイトの募集・採用ができるため、人手が足りない繁忙期の人材獲得に重宝しています。
コロナが落ち着き、飲食店が再開し始めてからは、募集を掛けても採用が難しくなった時期もあったとのことですが、「単発バイト募集機能」があることで、「何とか人手不足を乗り越えられている」と実感しているそうです。
導入までの課題
導入する前には「システムの移行で最初はバタつくのではないか」という懸念もあったそうですが、誰でも使いやすい画面で、スムーズに移行できたといいます。
最近では、採用したアルバイトスタッフがすでにスタッフ用アプリを利用している場合も多く、アプリの操作を教える手間も掛からないため、そのような面でも、使いやすさを実感しているといいます。
Power Automateを活用して請求業務を効率化
さらに、勤怠管理だけでなく、最近では「Power Automate」を活用して、請求業務の効率化も図っています。 「Power Automate」とは、マイクロソフト社が提供しているRPAツールで、ローコードでさまざまなアプリケーションの操作を自動化することができます。
「伏水酒蔵小路」では、9つの店舗が互いに「出前」をし合う形式。各店舗間の請求と支払は、毎月、受発注の合計金額を計算して精算します。そのため、「9×8=72通り」の受発注を計算しなければなりません。
画像:伏水酒蔵小路公式サイトより引用
「Power Automate」を導入する前は、手作業で72通りのデータを出力し、エクセルに貼り付けて計算していました。
POSシステム上で一つひとつフィルタをかけて、データを出力し、エクセルに貼り付けるという作業を72回繰り返すという、単純作業ではありますが、どう頑張っても3時間ほどかかってしまいます。
この作業を「Power Automate」を使うことで自動化。最初に作業フローを設定をすれば、あとは毎月ボタン1つ押すのみで作業を完了することができます。
「業務の効率化」が「事業の拡大」の後押しに
最近では、「伏水酒蔵小路」の2階にゲストハウスも新しくオープン。今後も新しい地域での店舗展開の構想もあるそうです。
このように事業の拡大に目を向けられるのも、「Air シフト」や「Power Automate」による業務効率化があってのことだと光山氏は語ります。
伏水酒蔵小路の「出前」の形式での店舗運営は、従来の請求業務のやり方では時間が掛かりすぎるため、なかなか他拠点にまでは広げられませんが、「Power Automate」であれば、計算に手間がかからないため、拠点を広げても対応できます。