リスキリングとは?メリットや導入のポイント・事例をわかりやすく解説! |HR NOTE

リスキリングとは?メリットや導入のポイント・事例をわかりやすく解説! |HR NOTE

リスキリングとは?メリットや導入のポイント・事例をわかりやすく解説!

  • 組織
  • 人材育成・研修

\HR NOTEが提供する無料ウェビナーの視聴予約を絶賛受付中!/

リスキリングとはどんな意味?

リスキリングとは、英語では「Reskilling」と表記され、日本だけではなく、海外でも注目されています。たとえば、2020年のスイスで開かれたダボス会議では、2030年までに10億人のリスキルを目指すという「リスキリング革命(Reskilling Revolution)」が発表されました。

また、経済産業省によると、リスキリングの意味は「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」(※1)と定義されています。

リスキリングは、単に学び直すだけでなく、今後も価値の創出を継続させるために必要なスキルを身に付けるという意味が強調されています。そして、リスキリングに似た用語には、アップスキリングやアウトスキリングがあります。

(※1)経済産業省:リスキリングとは

リスキリングとリカレント教育の違い

社会人が新しく学ぶという観点から、リスキリングと似た言葉として、リカレント教育が挙げられます。ただし、リスキリングとリカレント教育の意味は異なります。

リカレントとは、英語では「Recurrent」と表記され、「反復」「循環」「回帰」といった意味をもちます。そして、リカレント教育とは、経済協力開発機構(OECD)が提唱する生涯教育構想のことであり、学校教育から離れて社会に出た後も、必要に応じて学校に戻るなどして、再度学び直し、仕事で求められる知識やスキルを身に付けることを指します。

リスキリングとリカレント教育の違いには、主に職をいったん離れるかどうかが挙げられます。リスキリングは、職業で価値を生み出し続けるために、必要なスキルを身に付ける点が重視されており、就業しながら学ぶことが想定されます。一方、リカレント教育は、大学に改めて入学するなど、一度職を離れることを前提としています。

リスキリングが注目されている理由

ここでは、リスキリングが注目を浴びている理由について詳しく紹介します。

DXの必要性が高まってきた

近年では、IT技術の発展やデジタル化の推進により、企業の競争における優位性を確保するためには、DXの推進が必要とされます。DXを進めることで、企業のデジタル化を推進でき、社内の文化やビジネスモデルを大きく変革できる可能性があります。

また、DX化が進めば、業務効率が上がり、生産性の向上が期待できます。たとえば、デジタル技術を導入すれば、ルーティン業務を自動化し、データ入力ミスなどの人的ミスを減らすことが可能です。また、業務効率が上がれば、従業員はほかの重要な業務に時間を割くことができるようになります。

このように、自社にデジタル技術を導入するなど、DXの必要性が高まっていることから、従業員に新しい知識やスキルを習得させるためにも、リスキリングが注目されています。

DX人材・デジタル人材が不足している

DXを推進するには、DX人材・デジタル人材が必要とされます。しかし、DXに関する高度な知識やスキルをもった人材は不足しているという現状があります。たとえば、DXのビジネスを実現するためのビジネスプロデューサー、AI・ビッグデータ・ブロックチェーンといった先端技術を使いこなせるエンジニアやデータサイエンティストなど、さまざまなDXに関する職種の人材が不足しています。

そのため、優秀なDX人材の確保に悩まれている企業は多いかもしれません。新しく人材を採用するだけではなく、自社の人材を育成することで、DX人材の不足の課題に対応することができます。そこで、社内の人材をDX人材に育成するための手段として、リスキリングが注目されています。

政府がリスキリング支援に注力している

日本政府がリスキリング支援に注力していることも、リスキリングに注目が集まっている理由の一つです。

2022年10月の閣議決定(※2)では「人への投資」「労働移動の円滑化」を強化するために、3年間に4,000億円規模で実施している人への投資の施策パッケージを5年間で1兆円へ拡充する方針を発表しています。また、働きながらキャリアアップするための支援として、リスキリングから転職までを一貫して支援する制度を新しく設立することも公表しています。

このように、政府のリスキリング推進への後押しもあり、企業においてリスキリングが注目されています。

(※2)内閣府:「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」について

リスキリングのメリット

ここでは、リスキリングを実施するメリットについて詳しく紹介します。

業務の効率化

リスキリングにより学んだ内容を実務に活用すれば、業務の効率化が期待できます。たとえば、業務自動化のスキルを習得すれば、ルーチンワークを自動化し、業務を効率化させることが可能です。業務効率が上がれば、残業時間・休日出勤を削減し、従業員のワークライフバランスの実現や企業の生産性の向上にもつながります。

人材不足を解消できる

少子高齢化の影響もあり、DX人材などの専門スキルをもった人材は、多くの企業で不足しています。そのため、新しく採用して人材不足を解消しようとしても、難しい可能性があります。そこで、従業員にリスキリングを実施して、今後必要とされるスキルを習得してもらえば、人材不足を解消することが可能です。

新規事業やイノベーションの創出

リスキリングにより、これまでの事業の陳腐化を防止するだけではなく、新規事業やイノベーションを創出できるため、時代の移り変わりに上手く対応できます。

リスキリングをおこない、従業員が新しい知識やスキルを習得することで、これまでにはないアイデアが生まれ、新しい価値の創出が期待できます。柔軟な発想力を活かして、新しい事業を立ち上げたり、ビジネスモデルをよりよい方向に変革させたりすることで、売上の拡大や組織体制の見直しなど、経営状況の改善につなげることが可能です。

このように、激しくビジネスが変化する時代において、リスキリングをおこなえば、社内に新しい風を取り入れて、時代の変化に柔軟に対応できるというメリットがあります。

従業員のエンゲージメント向上

新たな知識・スキルを学ぶ機会を与えることで、キャリアアップの支援にもつながり、従業員のエンゲージメント向上が期待できます。エンゲージメントが上がれば、仕事に取り組む姿勢が改善され、組織活性化や生産性向上、離職率低下といったメリットが得られます。

企業の文化や風土を維持できる

既存事業の発展や新たな事業の推進のために、外部から必要な人材を大量に確保する場合、企業の文化や風土を維持できなくなる可能性があります。そうなると、組織としての一体感を失い、意思決定に時間がかかるなどのデメリットが生じます。

リスキリングでは、社内の従業員に取り組んでもらえるので、自社の文化・風土を維持することが可能です。また、自社の従業員であれば社内ルールや業務のやり方に精通しているため、リスキリングにより身に付けた知識やスキルをスムーズに実務で活かすことができます。

企業でリスキリングを進めるためのステップ・方法

ここでは、企業でリスキリングを進めるためのステップ・方法について詳しく紹介します。

1. 求める人材やスキルを定義する

リスキリングとは手段であり、目的ではないため、あらかじめ自社の求める人材やスキルを定義することが大切です。企業の社風や目標、従業員の特徴などによって、内容は異なります。

そのため、現状の課題や、今後の方向性などの観点からどのような人材が必要かどうかを明らかにすることが重要です。たとえば、今後DXのビジネスを推進するうえで、データベースを使いこなせる人材がいないのであれば、リスキリングにより、データベースエンジニアを育成する必要があるといえます。

このように、自社の課題や今後の目標の観点から、リスキリングによりどのようなスキルをもった人材を育成するかを事前に明確にすることが大切です。

2. 教育・研修内容や方法を決める

自社の求める人材やスキルが明確になったら、社員がリスキリングで学ぶべき内容に合わせて教育・研修の方法を決めましょう。リスキリングをおこなうには、社内教育や外部研修、eラーニングなど、さまざまな方法があります。

従業員がリスキリングにより、効率よく知識やスキルを身に付けられるようなカリキュラムを用意することが大切です。自社で人材を育成するためのカリキュラムを準備できない場合には、外部ベンダーの提供している研修を取り入れるのがおすすめです。

また、幅広い学習方法を用意すれば、従業員の性格によって、自分にあった方法を選べるため、教育・研修に対するモチベーションアップにもつながります。

3. 社員に主体的に取り組ませる

教育・研修の体制が用意できたら、実際に従業員に取り組んでもらいましょう。リスキリングでは、業務に取り組みながら教育や研修を受けることもあるため、業務負担の調整が必要です。

また、強制的に学習させるのではなく、幅広いコンテンツのなかから、自分にあった教育や研修を主体的に受けてもらうことで、従業員は効果的に知識やスキルを習得できます。

なお、就業時間外に教育・研修を実施する場合、従業員の不満につながる恐れがあるので、あらかじめ従業員の同意を得るのがおすすめです。

4. 習得した知識・スキルを実務で活用してもらう

実際に習得した知識やスキルを業務に活用することがリスキリング施策において最も重要といえます。教育や研修をおこなったけれど、業務に活かす機会がなければ、リスキリングの目的を果たせません。

そのため、リスキリングを実施する前に、教育や研修を受けた後のことを上司などと相談しておくのがおすすめです。そうすれば、リスキリングをおこなった後、前もって知識やスキルを活かす機会を用意しておくことができます。

5. 施策の効果検証や見直しをおこなう

リスキリング施策は一度で終わるものではありません。継続的に実施し、繰り返し学び直すことで、スキルを強化することができます。そのため、リスキリングを実施したら、効果検証をおこなうことが大切です。従業員からリスキリングの内容に関するフィードバックをもらい、定期的に見直しをおこなうことで、より効果的な施策を実施することができます。

リスキリングを実施する際の注意点・ポイント

ここでは、リスキリングを実施する際の注意点やポイントについて詳しく紹介します。

従業員の声を取り入れる

リスキリングは、既存の業務と並行しながら取り組んでもらうため、従業員の負荷が大きくなりやすいです。そのため、施策の策定・実行する際には、従業員の声を取り入れることが大切です。従業員がリスキリングに取り組みやすい環境を構築することで、大きな効果が得られます。

社外リソースを効果的に活用する

リスキリングの教育・研修プログラムは、必ずしも自社で構築しなければならないわけではありません。社内でコンテンツを開発する場合、人材やノウハウが必要になります。そのため、効果的なコンテンツを開発できず、リスキリング施策を断念してしまうこともあるかもしれません。

社内でのリスキリングプログラムの開発が難しい場合は、社外リソースを上手く活用しましょう。外部サービスやコンサルを利用すれば、コンテンツ開発の時間を削減することができます。

継続的に取り組める環境を構築する

リスキリングは継続的に取り組むことで、知識・スキルが定着し、効果が得られます。そのため、長期間にわたって取り組める環境を構築することが大切です。まずは社内で協力してもらえる体制を整備しましょう。リスキリングの目的やメリットを経営層や従業員に伝えることで、理解が得られ、リスキリングをスムーズに推進することができます。

また、モチベーションが続かず、途中で学習を辞めてしまう従業員もいるかもしれません。インセンティブを用意したり、目的を明確化したりするなど、従業員のモチベーション管理も重要です。

企業のリスキリングの取り組み事例

ここでは、企業のリスキリングの取り組み事例を紹介します。他社の事例を参考にして、ぜひ自社のリスキリング施策の策定・実施を進めましょう。

日立製作所

2019年4月に人材育成施策の観点から、日立アカデミー社が設立されました。(※3)日立アカデミー社では、これまでの日立グループでの経験やノウハウから「DXリテラシー研修」を用意し、DX実現のためのリスキリングを推進しています。(※4)

また、日立製作所社は「ジョブ型人財マネジメント」への転換を進めており、従業員の主体的なスキルの習得を支援するために、日立アカデミー社の提供している「学習体験プラットフォーム(LXP)」を導入しました。(※5)

(※3)日立アカデミー社:株式会社日立アカデミー 設立のお知らせ
(※4)日立アカデミー社:DXを推進する人財育成
(※5)日立製作所社:経営戦略に連動した人材戦略の実行

富士通

富士通社では、2020年度経営方針の説明資料(※6)において、社会や顧客へ提供する価値の創造と自らDX企業への変革のために、5年間で5,000~6,000億円規模の投資をおこなうと公表しています。そのなかには、リスキリングの強化も含まれており、DX推進においてリスキリングの重要性が理解できます。

また、富士通グループでは、これまでの営業職を見直し、顧客への価値提供をリードするビジネスプロデューサー(BP)として再定義しました。そして、BPがきちんと役割を果たせるよう、「マーケット分析」「DX構想策定力」「デザイン思考」から学び、顧客のDXプロジェクトに参画して、実務で役立つスキル習得を目指すリスキリング施策をおこなっています。(※7)

(※6)富士通社:2020年度経営方針説明
(※7)富士通社:価値創造に向けた人材・組織の変革

丸紅

丸紅社では、グループ全体で新しいビジネスモデルを創出することをミッションとして、実践的にAIスキルを活かせる人材を育成するために、「デジチャレ」というリスキリングのプログラムを用意しています。

丸紅グループの人材の多くは、業界を深く理解して戦略を策定・実行する「ビジネスナレッジ」のスキルに特化しているのが現状とされています。今後は、「ビジネスナレッジ」だけではなく、「データサイエンス」や「デザイン思考」のスキルを併せもち、デジタル技術を活用して、成長戦略の構築やデジタル変革をリードできる人材を育成したいと公表しています。(※8)

(※8)丸紅社:丸紅のDX戦略とデジチャレ

リスキリングを推進してDX人材の育成をおこなおう!

リスキリングとは、激しくビジネスが移り変わる時代において、今後も価値を創出し続けるために、従業員が必要な知識やスキルを身に付けることです。

近年では、DX推進の必要性が高まっており、DX人材の不足が懸念されています。リスキリングを実施すれば、人材不足の解消に加えて、新規事業やイノベーションを創出することが可能です。リスキリングのメリットや注意点を正しく理解して、社内に必要なDX人材を育成することが重要といえます。

--------------------

\7月26日(金)開催!豪華ゲスト登壇!/
今こそ知っておきたい「人事データ活用」の具体的なノウハウをご紹介!

組織改善に必要な人事データを収集・活用して組織変革を促す「HRDX(人事DX)」。しかし、多くの企業が「具体的にどうやって人事データを活用していけば良いかわからない」といった悩みを抱えているのではないでしょうか?

今回のHRDX CAMPでは、人事データ活用に関する有識者3名をお招きし、人事データ活用の具体的な方法や実践事例を解説します。無料で視聴できますので、この機会にぜひご参加ください。

【こんな方におすすめ!】

  • 人事データ活用が重要だとは思っているが、具体的な進め方のイメージができない
  • 既に人事システムを導入はしているが、使いこなせていないように感じている
  • 「戦略人事」や「ピープルアナリティクス」といった内容に興味がある

人事業務に役立つ最新情報をお届け!メールマガジン登録(無料)

HR NOTEメールマガジンでは、人事/HRの担当者として知っておきたい各社の取組事例やリリース情報、最新Newsから今すぐ使える実践ノウハウまで毎日配信しています。

メルマガのイメージ

関連記事

社内副業とは?制度を形骸化させない、効果的な社内副業制度導入と運用に必要なステップとは

社内副業とは?制度を形骸化させない、効果的な社内副業制度導入と運用に必要なステップとは<事例つき>

社内副業とは、社員が本来の仕事に加えて、同じ会社内で別の仕事やプロジェクトに取り組むことを指します。最近では、大手企業を中心に社内副業を導入するケースが増えています。例えば、日立、KDDI、ソニー、リコー、パナソニック、 […]

  • 組織
  • ワークスタイル
2024.07.17
松野天音
人事が主導するプレゼンティーズム対策とは⑤~紫外線対策と眼精疲労

人事が主導するプレゼンティーズム対策とは⑤~紫外線対策と眼精疲労

前稿では、日本人の約3割が抱えていると言われる「頭痛」対策についてお伝えしました。今回は、日本では1,200万人以上と言われるドライアイ患者や、紫外線対策と眼精疲労についてお伝えします。 近年の日本の夏は猛烈な暑さになっ […]

  • 組織
  • エンゲージメント
2024.07.10
松野天音
リスキリングの仕上げとなる第4段階!学びを実践につなげるためのポイント|仕事旅行社 田中 翼

リスキリングの仕上げとなる第4段階!学びを実践につなげるためのポイント|仕事旅行社 田中 翼

みなさん、こんにちは。仕事旅行社の田中です。「リスキリングの4つのフェーズ」について、これまで連載させていただきましたが、ついに今回で最終回となります。長い間おつきあいいただき、ありがとうございます。 さて、今回は「学ん […]

  • 組織
  • 人材育成・研修
2024.07.03
根本 慎吾
テレワークで業務管理を効率化するには?

テレワークで業務管理を効率化するには?

近年では、働き方改革や新型コロナウイルス感染症の影響を受け、テレワークを導入する企業が増えています。テレワークを導入するうえで、どのように業務管理をおこなえばよいか悩まれている方もいるかもしれません。
当記事では、テレワークでの業務管理における課題やその対処方法について解説します。テレワークの導入を検討中の方や、テレワークの業務管理を効率化したいと考えている方はこの記事を参考にしてみてください。

  • 組織
  • ワークスタイル
2024.06.28
HR NOTE 編集部
テレワークでよくあるトラブルとその解決策を紹介!

テレワークでよくあるトラブルとその解決策を紹介!

近年では、働き方改革の影響も受けて、テレワークを導入する企業は増加しています。テレワークのメリットは理解しているけれど、トラブルの発生を恐れて、導入に踏み切れていないという企業もあるのではないのでしょうか。当記事では、テレワークのトラブルとその対処方法について具体的に紹介します。

  • 組織
  • ワークスタイル
2024.06.28
HR NOTE 編集部

人事注目のタグ