相対評価は、集団内の他者との比較により個人を順位付けて評価する方法です。一方、絶対評価とは、個人の目標達成状況など、他者と比較せずに評価する方法です。
相対評価は人事評価の納得感を得づらい、絶対評価は評価者により評価にバラつきが出やすいなど、一長一短あるため、違いを理解し使い分けましょう。
本記事では、相対評価と絶対評価それぞれのメリット・デメリット、違い、使い分けのポイントを解説します。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
目次
1. 相対評価とは?
相対評価とは、特定の集団内で他者との比較により、個人の成績や順位を決定する評価方法です。
たとえば、人事評価の場合、S評価は5人、A評価は20人のように、あらかじめ評価の人数や割合など枠を決定し、そこに上位の社員から順次当てはめていきます。
1-1. 相対評価のメリット
相対評価ではあらかじめ枠組みを設け、そこに成績順に社員を当てはめていく方法のため、評価人数に偏りが出ません。そのため、人件費の管理とコントロールがしやすい点がメリットです。
また、評価は枠組みに沿って実施されるため、社員一人ひとりの目標達成度から評価を決定する必要もありません。評価者の負担が少ない点も特徴です。
1-2. 相対評価のデメリット
相対評価ではあくまでも他者との比較が中心となるため、個人の頑張りが適切に評価されません。
たとえば、前年よりも売上を1.5倍伸ばした社員がいたとしても、周りの社員が前年比2倍、3倍の成果を出していれば、評価は変わらないか下がってしまう恐れもあります。
また、集団内のレベルが同程度の場合、S評価とA評価の違いを社員に問われても、具体的な説明が難しくなるでしょう。さらに、同じ社員であっても集団が変われば評価が変わるため、人事異動も難しくなります。
これらの問題から、社員のモチベーション低下、自信喪失、努力の放棄などが起きる恐れがあります。
2. 絶対評価とは?
絶対評価とは、他者とは比較せず、個人の成績や能力を基準に基づき評価する方法です。
たとえば、S評価の条件が目標の120%達成の場合、50人の集団で、50人とも120%目標を達成したとすれば、全員がS評価となります。一方、1人も達成できなければS評価は0人です。
2-1. 絶対評価のメリット
絶対評価では社員それぞれの目標達成状況を確認するため、各人材の能力を把握しやすく、人事異動にも役立ちます。
また、各個人の課題を発見でき、成長を後押しできる点もメリットです。社員自身、頑張りが評価されていると感じれば、人事評価の納得も得られやすくなります。
個人に着目するため、同一労働同一賃金や多様な働き方の実現など、昨今の働き方の課題を解決しやすい点もメリットです。
2-2. 絶対評価のデメリット
絶対評価のデメリットは、評価基準を定めづらく、評価者により評価にバラつきが出やすい点です。
たとえば、「業務への積極性」など数値化が難しい評価項目は、目標達成基準が曖昧になりやすいでしょう。評価に主観が入りやすく、評価者によりバラつきが生まれることもあります。評価者による社員の贔屓などが発覚すれば、人事評価制度自体の信頼が揺らいでしまいます。
また、相対評価に比べると人件費のコントロールが難しい点もデメリットです。
3. 絶対評価が重視されるようになった背景
従来、日本の企業では相対評価が一般的でした。相対評価は基準を定めやすく、社員をバランスよく評価できるメリットがあるからです。
しかし、高いレベルのグループでは公正な評価が難しくなり、社員のモチベーションが下がってしまう側面もあります。そこで、個人の成長に焦点を当てる絶対評価が注目されるようになりました。
また一部の企業では、絶対評価と相対評価の両方を組み合わせた評価方法も用いられています。
4. 相対評価と絶対評価の違い
相対評価と絶対評価には以下の違いがあります。それぞれの違いを詳しく解説します。
項目 |
相対評価 |
絶対評価 |
評価方法 |
集団内の他者と比較し評価する。 |
個人の成績や目標達成状況に応じて評価する。 |
評価例 |
上位10%の社員をA評価とする。 |
目標達成率が100%の社員は全員A評価とする。 |
適する評価項目 |
コミュニケーションなど、数値化できない項目(定性項目) |
営業件数など、数値化できる項目(定量項目) |
評価者の負担 |
小さい |
大きい |
人件費のコントロール |
しやすい |
しづらい |
社員の納得 |
得づらい |
得やすい |
4-1. 相対評価は数値化しづらい評価項目に使いやすい
相対評価は他者との比較により評価を決定するため、コミュニケーション能力など、数値化しづらい項目の評価に適しています。
一方、絶対評価は個人の成績を評価するため、営業件数のように、数値化しやすかったり、数字を重視したりする評価に適しているでしょう。
4-2. 絶対評価は評価者の負担が大きい
絶対評価では、社員一人ひとりの目標設定や目標の達成状況の確認が必要となるため、評価者の負担は大きくなります。
一方、相対評価は初めに厳密な評価基準を設定すれば、社員同士の比較により評価できるため、評価者の負担は少なくなります。
4-3. 相対評価は人件費をコントロールしやすい
相対評価は先にS評価は5名、A評価は10名のように評価の枠を設定するため、各評価の人数が均等に分布します。人件費の予算も立てやすく、コントロールも容易です。
一方、絶対評価では個人の頑張りがそのまま評価されるため、場合によっては社員全員がA評価などを取る可能性もあります。また、評価者が甘い場合、高評価に人材が集中するケースもあるでしょう。評価と給与を連動させると、人件費が高騰する恐れがあるため注意が必要です。
4-4. 絶対評価は社員の納得を得やすい
絶対評価は社員が立てた目標の達成度合いに応じ評価します。周りに自分よりも優秀な社員がいても、自分自身の頑張りを評価されるため評価の納得感も得やすいでしょう。
一方、相対評価では2つの場面で納得感を得づらくなります。ひとつは、集団内で社員の能力に大きな差がないときです。この場合、わずかな差で社員に序列がつくため、評価の理由に納得できない社員が出る恐れがあります。
もうひとつは、集団内で能力に大きな差があるときです。この場合、上位層と下位層の社員が固定されます。下位層の社員には、「頑張っても評価を上げられない」という無力感が生まれ、やる気の低下につながる可能性もあります。
5. 相対評価と絶対評価はどっちがいい?使い分けるポイントを紹介
相対評価と絶対評価にはメリット・デメリットがあるため、うまく組み合わせて使うことで、人件費をコントロールしつつ、社員のモチベーションを高めることが可能です。以下、使い分けのポイントを解説します。
5-1. 昇給や昇格は絶対評価を基準にする
絶対評価は社員のモチベーション向上につながるものの、基本給とそのまま連動させると人件費が管理しづらくなります。
そのため、絶対評価の高評価は昇給や昇格の条件とし、複数の方法と組み合わせるのがおすすめです。
これにより、社員のモチベーションを維持したり、成長を促したりしながら、ある程度賃金をコントロールできます。
5-2. 集団の人数や属性により評価方法を変える
一般的に絶対評価よりも相対評価のほうが評価者の負担は少ないとされているものの、社員の数や属性により異なる場合もあります。
集団の人数が少なかったり、同じ職種の社員のみであったりするなら、他者と比較したほうが評価者の負担は軽減できます。しかし、集団の人数が多かったり、多様な職種の人材を抱えていたりするときは、相対評価によりランク付けをおこなうのはかえって手間がかかるでしょう。
以上のように、集団の規模や職種の多様性により、評価方法を変えるのもおすすめです。
このように、取り入れる評価方法次第で組織に与える影響は異なってきます。自社の現状にとって適切な人事評価制度を構築する必要があるのです。
しかし、人事評価制度を整えると言っても何から手をつければ良いか分からずお困りのもいらっしゃるかと思います。そのような方へ向けて、本サイトでは「人事評価の手引き」を無料で配布しています。自社にとって適切な人事評価制度を検討するためにまずは人事評価制度について網羅的に理解したいという方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
6. 人事における相対評価と絶対評価の運用方法
相対評価と絶対評価は、業務内容やポジションによって使い分ける必要があります。たとえば、事務職やクリエイティブ職など、評価が可視化しにくい役割においては、相対評価が適しているといえるでしょう。
反対に、営業職に代表される、結果が数値として表れやすい役割においては、絶対評価が適しています。
6-1. 相対評価の運用方法
相対評価を運用する際は、透明性が高く、公正な評価をおこなえているかを確認しましょう。運用のポイントは以下の3点です。
評価基準を公平にする
相対評価の運用において重要なのは、公平かつわかりやすい評価基準の確立です。これにより、評価者の個人的な感情による評価がなくなり、社員は評価基準に沿って業績や能力を向上させることができます。
また、一度基準を定めれば誰でも評価がおこなえるため、評価プロセスが容易になるのもメリットです。
評価基準を公開する
社員に対する評価基準の公開は、評価の透明性と信頼性を高めるうえで欠かせません。社員は評価基準を通して、業務における重要なポイントや、自身の課題について理解を深めることができます。
自身の成長が評価につながることがわかれば、社員はモチベーションを高く持って目標達成に向けて取り組むでしょう。
必要に応じて絶対評価を取り入れる
数値評価の必要がある業務やポジションに対しては、絶対評価を組み込むことが効果的です。これにより、社員個人の業績や成果を客観的に評価できます。
絶対評価は、数値データや目標達成度などの具体的な基準に基づいた評価です。相対評価と組み合わせることで、公正な評価体系を確立することができます。
6-2. 絶対評価の運用方法
絶対評価を運用する際は、社員一人ひとりにフォーカスすることが重要です。運用のポイントは以下の3点です。
能力やポジションを考慮する
絶対評価では、社員の能力や担当するポジションを考慮して評価をおこないます。そのため、個々の能力や役割に応じて、適切な基準や期待値を設定することが重要です。
評価基準が適切でない場合、社員のモチベーションは低下してしまいます。目標達成を促進するためにも、それぞれの業務内容を把握した上で基準を設定しましょう。
最適な目標値を設定する
絶対評価では、目標値を明確に設定することが不可欠です。目標は具体的かつ達成可能なものでなければなりません。
適切な目標の設定により、社員は何を求められているのかを把握し、自身の業務や成果に集中しやすくなります。
また、目標の達成度合いを客観的に評価するためには、明確な基準や指標を用いることも重要です。
過程も評価に取り入れる
絶対評価では、目標達成に至るまでの取り組みの姿勢も、評価の対象として取り入れましょう。これにより、社員は単なる結果だけでなく、業務プロセスの改善やスキルの向上にも注力するようになります。
社員のこのような取り組みは、組織によい変化をもたらし、長期的な成長へとつながります。
7. 相対評価と絶対評価はそれぞれの適正により使い分けよう!
相対評価は人件費のコントロールがしやすく、社員の競争意識を芽生えさせやすい方法です。一方、絶対評価は社員の能力を把握でき、成長を促したり、人事異動に活用したりしやすい方法です。
どちらの評価方法にも一長一短があるため、違いを理解し使い分けるとよいでしょう。なお、人事管理システムを導入すれば、人事評価全体の効率化にも役立ちます。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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