人事評価制度で使われる「定量評価」とは、どのような評価方法を指すのでしょうか。初めて定量評価を導入する場合は、金額、時間、行動回数、アンケート結果など、簡単な指標から設定してみましょう。本記事では、定量評価の定義や定性評価との違い、定量評価の指標設定のポイント、定量評価を実施するときの注意点をわかりやすく解説します。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
目次
1. 定量評価とは?従業員の評価を数字で表すこと
定量評価は、売上や利益、顧客単価など、数値やデータを用いて従業員を評価する方法です。評価結果は数字で表されるため、誰が評価者となっても基本的に差が出ることはありません。従業員を客観的に評価できるのが、定量評価の大きな特徴です。
1-1. 定量評価と定性評価の違い
定量評価に対して、数字で表せないものを評価することを「定性評価」と呼びます。たとえば、意欲や勤務態度、人間関係などの項目は、◯円、◯%、◯件などの数字で表すことができません。定量評価と定性評価を組み合わせ、お互いを補完するような人事評価制度を構築することが大切です。
2. 定量評価を導入するメリット
定量評価には、公平性を保ちやすい、組織全体の進捗状況を把握しやすい、といったメリットがあります。それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
2-1. 公平性を保ちやすい
公平性を保ちやすいことは、定量評価を導入する大きなメリットです。数値や具体的な指標に基づいた評価であるため、評価基準を明確に示すことができ、公平性が保たれやすくなります。
誰が評価しても同じような結果となるため、評価される側の従業員は納得感を得やすいでしょう。評価する側の負担を軽減できることもメリットといえます。
2-2. パフォーマンスを可視化できる
成果やパフォーマンスを可視化しやすいことも、定量評価のメリットのひとつです。どの程度目標を達成できたのか、改善が必要な部分はどこなのか、といったポイントを数値的に把握できるため、従業員にとって目標設定や自己評価の基準として役立ちます。
上に立つ管理職やリーダーも従業員の成果やパフォーマンスを把握でき、指導しやすくなるでしょう。組織全体の目標に対する進捗や達成度が把握しやすくなる点も重要です。
2-3. 競争意識が生まれる
定量評価を導入すれば、従業員に競争意識が生まれる効果も期待できます。数値による評価が出るため他の従業員と比較しやすく、もっと頑張ってよい結果を出したいと思う従業員が増えるでしょう。
競争意識が高まることは、生産性が向上したり、目標達成率が高まったりすることにもつながります。
3. 定量評価を導入するデメリット
さまざまなメリットがある一方、以下のようなデメリットもあるため注意しましょう。
3-1. 組織としての問題点を把握しにくい
組織の現状や課題を把握しにくいことは、定量評価のデメリットといえるでしょう。定量評価では、人間関係やチームワークなどの要素を数値化しにくいからです。
組織全体の評価が欠落してしまい問題点を把握しにくいケースもあるため、定性評価を組み合わせるなどの対策を講じるとよいでしょう。
3-2. プロセスを評価しにくい
業務のプロセスを評価しにくいことも、定量評価のデメリットのひとつです。結果を出すための努力や目標達成までのプロセスは評価の対象とならないため、評価に納得できない従業員が出てくるかもしれません。
定量評価だけでは従業員の潜在的なプロセスや成長を十分に評価できない場合があり、個々の特性や業務によっては配慮が不足する恐れもあるといえるでしょう。
4. 定量評価における指標設定の具体例
定量評価における指標設定のポイントは、大きく分けて5つあります。
- SMARTの法則を活用する
- 金額を指標として設定する
- 時間や行動回数を指標として設定する
- アンケートの結果を指標として設定する
- 1~3カ月ごとに指標を設定する
どのような指標を設定すればよいかわからない場合は、金額、時間、行動回数、アンケート結果などを指標にしてみましょう。また、目標設定のフレームワークのひとつである「SMARTの法則」も役に立ちます。定量評価で使う指標は、1〜3カ月を目安としてリセットしましょう。
4-1. SMARTの法則を活用する
目標管理で使われる「SMARTの法則」は、定量評価の指標設定にも役立ちます。
- Specific:具体的な指標を設定する
- Measurable:計測可能な指標を設定する
- Achievable:達成可能な指標を設定する
- Related:組織目標と関連性がある指標を設定する
- Time-bound:期限を決めて指標を設定する
定量評価の指標を設定するときは、Specific(具体的に)、Measurable(計測可能な)、Achievable(達成可能な)、Related(関連した)、Time-bound(期限付きの)の5つのポイントを意識しましょう。
4-2. 金額を指標として設定する
定量評価の指標としてよく使われるのが「金額」です。たとえば営業職の場合は、売上や利益、顧客単価など、成果や業績に関する指標がよく使われています。営業職以外では、事務職における消耗品費や、管理職における人件費など、金額に関する指標はさまざまです。定量評価の指標設定で迷ったら、まず金額に関する指標を設定してみましょう。
4-3. 時間や行動回数を指標として設定する
金額と並んでよく使われるのが、時間に関する指標です。とくにコールセンターでは、応答までにかかった時間を表す「平均応答速度(ASA)」や、顧客対応にかかった時間を表す「平均処理時間(AHT)」、通話にかかった時間を平均した「平均通話時間(ATT)」などの指標を設定することが一般的です。
また、入社して間もない新入社員など、いきなり成果を出すのが難しい従業員に対しては、「業務にかかった時間」「研修を受けた回数」などの指標を設定することで、成果に表れない仕事ぶりを評価できます。
4-4. アンケートの結果を指標として設定する
アンケートやサーベイの結果を元にして、定量評価の指標を設定することも可能です。たとえば、従業員サーベイを実施している企業の場合、従業員満足度を指標に設定してみましょう。
前回調査と比べて、「従業員満足度が◯%上がった(下がった)か」「仕事にやりがいを感じる従業員が◯%増えた(減った)か」を分析することで、管理職や労務担当者の取り組みを定量的に評価できます。
4-5. 1~3カ月ごとに指標を設定する
定量評価の指標は、1~3カ月を目安としてリセットし、新しい指標を設定する必要があります。1~3カ月の期間が経つと、従業員の成長や周囲の環境の変化により、古い指標とのギャップが生じるからです。1~3カ月ごとに被評価者との面談を実施し、指標を変更する必要があるか確認しましょう。
また、指標や目標の見直しだけでなく、指標に対して定期的に評価をおこなうことも従業員のモチベーション維持や向上のために欠かせない点です。目標の立案と同時に、体系だった人事評価制度の運用は切っても切り離せないものです。しかし、現状、体系だった人事評価制度がなく導入を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
人事評価制度を整えると言っても何から手をつければ良いか分からずお困りの方へ向けて、本サイトでは「人事評価の手引き」を無料で配布しています。自社にとって適切な人事評価制度を検討するために、まずは人事評価制度について網羅的に理解したいという方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
5. 定量評価を実施するときの注意点
定量評価を実施するときの注意点は以下の3点です。
- 従業員のモチベーションの変化を把握する
- 評価者の言葉でフィードバックを伝える
- 必要に応じて定性評価と組み合わせる
定量評価を適切に運用しない場合、従業員のやる気やモチベーションを低下させる可能性があります。定期的に評価者と被評価者の面談を実施し、言葉で直接フィードバックを伝えることが大切です。また、定量評価と定性評価を組み合わせることで、より公平な人事評価制度を構築できます。
5-1. 従業員のモチベーションの変化を把握する
定量評価を実施するときは、従業員のモチベーションの変化を注視することが大切です。定量評価の指標が従業員の能力に合っていない場合、目標をなかなか達成できず、モチベーションの低下につながる恐れがあります。定量評価の指標が適切かどうか判断するうえで、モチベーションの変化は重要なバロメーターのひとつとなります。
モチベーションの変化を定点観測するには、従業員を対象としたサーベイやアンケートの実施が効果的です。たとえば、サーベイシステムを活用すれば、サーベイやアンケートを簡単に作成できるだけでなく、結果を自動で集計できます。定量評価を円滑に実施するため、サーベイシステムをはじめとしたITツールの導入も検討しましょう。
5-2. 評価者の言葉でフィードバックを伝える
定量評価は、評価結果が数字で表されるため、誰が見ても判断が変わりません。一方で、定量評価の数字だけでは、「なぜその数字になったのか」「なぜ目標を達成できた(できなかった)のか」がわかりにくいという欠点も抱えています。
そのため、定量評価を実施したら、評価者と被評価者で面談の機会を設け、直接フィードバックを伝えることをおすすめします。もし定量評価の結果が低くても、その理由や今後の改善策を言葉で伝えれば、従業員の不満を解消することが可能です。
5-3. 必要に応じて定性評価と組み合わせる
定量評価には、数値目標やノルマの達成を追い求めるあまり、「数字がすべて」という思考に陥りやすいという欠点もあります。そのため、必要に応じて定性評価を取り入れ、定量評価と組み合わせることが大切です。業種にもよりますが、定量評価と定性評価のバランスは、6対4が理想的だといわれています。数字やデータで表しにくい業務は、無理やり数値化するのではなく、定性評価を取り入れましょう。
6. 定量評価の指標の立て方を知り、人事評価の方法を見直そう
定量評価は、人事評価で使われる方法のひとつで、従業員の能力や実績を数値的に表すことを指します。定性評価では、従業員の実力に合った適切な指標を設定することが大切です。
金額、時間、行動回数、アンケート結果など、まずは簡単な指標を使って従業員を評価してみましょう。また、数字で表せる「定量評価」と数字で表せない「定性評価」を組み合わせることで、より公平な人事評価制度を構築できます。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
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