「組織戦略がなぜ必要なのかわからない」
「事業戦略や人事戦略との違いは?」
「組織戦略はどのように策定すればよい?」
組織戦略の重要度は高まっていますが、上記のような疑問を感じている方は多いのではないでしょうか。組織のパフォーマンスを向上させるためには、適切な組織戦略の策定・実行が必要です。
本記事では、組織戦略を策定する方法や基本的な考え方を紹介します。類似の言葉との違いや成功させるためのポイント、活用できるフレームワーク、事例とあわせてまとめました。
目次
1. 組織戦略とは
組織戦略とは、組織の理想像を実現させるための方針・手段のことです。組織として目指すべき姿や、理想を実現するためのシナリオを明確にします。
組織戦略がなければ、組織としての今後の方向性が定まりません。組織の統率をとって理想像に近づけるためには、組織戦略の策定が必要です。
組織戦略の内容や経営における位置づけは、企業ごとに大きく異なります。組織全体の力を向上させるために、具体的な策定方法をチェックしておきましょう。
2. 組織戦略と事業戦略・人事戦略・人材戦略の違い
それぞれの意味は以下の通りです。
組織戦略 |
組織の理想像を実現するための手段・方針 |
事業戦略 |
ビジネスモデルや売上目標など事業目標を達成するための手段・方針 |
人事戦略 |
人材の育成・配置など人事業務全般を進めるうえで指針となる戦略 |
人材戦略 |
採用・育成・保持に焦点を絞って人材を最適化するための戦略 |
組織戦略と、事業戦略・人事戦略・人材戦略の主な違いはその対象です。例えば組織戦略は組織全体を対象としますが、事業戦略は個の事業を対象とします。
企業を成長させるためには、組織戦略と事業戦略の両方が必要です。組織づくりと事業づくりのどちらを重視するかで優先度を決めて、策定・実行してください。
事業戦略の対象は人事業務全般、人事戦略は人材の採用・育成・保持を対象とします。人事戦略は組織戦略の一つであり、さらに人事戦略の範囲に人材戦略が含まれると考えられるでしょう。
3. 組織戦略を策定する2つの方法
組織戦略を策定する方法は以下の2つに分類できます。
- トップダウンアプローチ
- ボトムアップアプローチ
具体的な方法について詳しく解説しましょう。
3-1.トップダウンアプローチ
トップダウンアプローチとは、企業のトップが組織戦略を策定して従業員に実行させる方法です。決定権を所有する経営陣が働きかけるため、スピーディーに意思決定ができます。
組織全体の一貫性が高い一方で、現場のニーズや創造性が反映されにくいことがデメリットです。社員の理解を得られる組織戦略にする、企業全体に浸透させるように周知を徹底するなどの対策をする必要があります。
3-2.ボトムアップアプローチ
ボトムアップアプローチとは、従業員の意見をもとに組織戦略を策定する方法です。サーベイや面談で意見を収集して、上層部が最終的な意思決定をおこないます。
従業員の理解を得やすいことが魅力で、さらに組織の実情にそった組織戦略が策定しやすいでしょう。ただし、多様な意見をまとめるのは難しく、意思決定における責任者が曖昧になる可能性があります。
4. 組織戦略における代表的な2つの考え方
組織戦略を策定するうえで、以下のような考え方が前提となります。
- 組織は戦略に従う
- 戦略は組織に従う
それぞれの考え方について詳しく解説します。
4-1. 組織は戦略に従う
「組織は戦略に従う」とは、米国の経営史学者であるアルフレッド・チャンドラーが1962年に提唱した考え方です。「戦略によって組織を変える」との考えを基本としています。
組織戦略の実現を軸とした視点からどのような組織が必要なのかを考え、組織戦略に落とし込みましょう。戦略を基盤として組織を最適化することが、目標の達成につながります。
4-2. 戦略は組織に従う
米国の経営学者であるイゴール・アンゾフは、1979年に「戦略は組織に従う」と提唱しました。「組織に重きを置いて戦略を策定すべき」との考え方です。
社会環境の変化が早くなったことで、戦略を先行させると対応が追いつかないケースが増加しました。そのため先に組織を新しくしてから、戦略を変化させる考え方が生まれたわけです。
企業のトップによって新しい組織構造やシステムを徹底できれば、スムーズに新しい戦略に舵を切れるでしょう。組織の能力を高めて、戦略そのものの質を向上させることが重要です。
5. 組織戦略策定を成功させるための4つのポイント
組織戦略策定を成功させるためのポイントをまとめました。
- 組織の状態を正確に把握する
- 組織の理想像を明確化して周知する
- マネジメント層の教育を徹底する
- 組織に必要な人材を採用する
ポイントを押さえることで、正しく組織戦略を策定できます。
5-1. 組織の状態を正確に把握する
組織戦略を策定するときは、まず組織の状態を正確に把握することが重要です。客観的な視点から、数値を用いて組織を評価しましょう。
例えばサーベイやフレームワークを活用した方法がおすすめです。サーベイで明らかにした従業員の不満やストレスを解消すれば従業員のモチベーションが向上し、組織戦略が実行しやすくなります。
5-2. 組織の理想像を明確化して周知する
組織戦略を成功させるためには、組織の理想像を明確にする必要があります。組織全体で行動するためのゴールを設定したうえで、以下の方法で従業員に周知しましょう。
- 組織戦略について説明する場を設ける
- 組織戦略にそった目標をチームや部門ごとに設定する
- 組織戦略がテーマのワークショップを開催する
組織の理想像を現場レベルまで周知することが重要です。すべての従業員が組織戦略に基づいた判断や行動をできるようになれば、組織の連携力が向上するでしょう。
5-3. マネジメント層の教育を徹底する
上層部と現場の従業員をつなぐマネジメント層の教育を徹底することで、組織戦略の浸透が早くなります。メンバーや部下を適切に管理できるように、マネジメントの質を高めることが重要です。
意思決定の質やスピードが向上し、さらに現場の課題を明確化できます。環境を整えることにもつながり、より効率的に組織戦略を実行できるでしょう。
5-4. 組織に必要な人材を採用する
理想や経営理念を実現するために必要な人材を採用することが重要です。どのようなスキルや経験を持った人材が何人必要になるのか、具体的に検討しましょう。
企業文化・風土に適合した人材かどうか、カルチャーフィットを重視してください。人材の採用や育成には時間が必要なので、長期的な目線を持つことが重要です。
6. 組織戦略策定に活用できる3つのフレームワーク
フレームワークは、物事を検討する上での思考の枠組みや構造を意味する言葉です。
- マッキンゼーの7S
- SWOT分析
- MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
組織戦略に活用できるフレームワークをまとめました。
6-1. マッキンゼーの7S
3つのハードな経営資源と、4つのソフトな経営資源をベースとしたフレームワークです。組織に必要とされる7つの要素の頭文字がSであることから、7Sと名付けられました。
ハード(戦略・構造) |
戦略 組織 システム |
ソフト(人材・スキル) |
スキル 価値観 人材 スタイル |
組織の現状を明確にするために、それぞれの項目の現状を把握することが重要です。ハードとソフトについて、両方の視点を取り入れることで適切な組織戦略を策定できます。
6-2. SWOT分析
企業を取り巻く内部要因と外部要因を、ポジティブとネガティブに分けて分析するフレームワークです。
ポジティブ |
ネガティブ |
|
内部要因 |
自社の強み(Strength) |
自社の弱み(Weakness) |
外部要因 |
市場・顧客への機会(Opotunity) |
競合の脅威(Threat) |
強みと弱みを明確にすることで、企業の現状を把握できます。SWOT分析によって、多角的な視点から組織戦略を策定できるでしょう。
6-3. MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を活用することで、企業が果たすべき役割や目指すべき方向性を明確にできます。
ミッション |
企業が存在する理由・社会で実現すべきこと |
ビジョン |
何を実行すべきなのか・企業として目指すべき理想の姿 |
バリュー |
ミッション・ビジョンの実現に必要な行動指針・姿勢・価値観 |
ミッションを達成するためにはビジョンが、ビジョンを実現するためにはバリューが必要です。自社の根本思想や事業を整理したうえで、シンプルかつ明確にまとめてください。
7. 組織戦略の2つの事例
企業の現状や抱えている課題によって、適した組織戦略は異なります。
- 事例1|自動車業界の企業
- 事例2|電機メーカーの企業
組織戦略の成功事例を2つ紹介しましょう。
7-1. 事例1|自動車業界の企業
A社は、組織戦略としてグローバルタレントマネジメントに力を入れています。組織・文化・人事をもとに人材を配置・活用することで、グループ全体のパフォーマンスを最大化することを目標としました。
日本の良さと海外のマネジメントスキル・ビジネススキルを持つ人材育成に着手するなど、多彩な取り組みを実施しています。優秀な人材の育成を強化することで、組織の生産性を向上させた事例です。
7-2. 事例2|電機メーカーの企業
B社では、最高の職場を作ることを組織戦略として掲げています。社員一人ひとりが、顧客の役に立つためにチャレンジすることが理想です。
チャレンジする個人に寄り添い、アドバイスして、挑戦を阻むものを取り除くことを組織の役割としています。一人ひとりと丁寧に向き合うことで、未来の経営リーダーの育成に成功した事例です。