皆様、こんにちは。株式会社ニットの小澤美佳(こざわ みか)です。
株式会社ニットは、世界33か国から集まった約400名のフリーランスから構成されるリモートワーカー集団で、2015年よりオンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU」を提供しています。
昨今、コロナ禍の感染拡大防止のためにリモートワークやホームオフィスで仕事をする日々が続いています。出社しなくても問題なく仕事を進められることに気付いた人の中から「オフィス不要論」が提唱されました。
しかし感染症の状況が落ち着きを見せ、元の日常生活を取り戻すのと同時に、オフィス勤務への復帰も始まりつつあります。
今回の記事では、オフィス出社に対する企業と従業員の考え方の違いやコロナ禍以降の賃貸オフィス事情、そしてメンバーがフルリモートで働く株式会社ニットがあえてオフィスを構える理由についてお話します。
【執筆者】小澤 美佳|株式会社ニット 広報担当
2008年に株式会社リクルート入社。中途採用領域の代理店営業、営業マネージャーを経て、リクナビ副編集長として数多くの大学で、キャリア・就職支援の講演を実施。採用、評価、育成、組織風土醸成など幅広くHR業務に従事。2018年 中米ベリーズへ移住し、現地で観光業の会社を起業。2019年にニットに入社し、カスタマーサクセス→営業を経て、現在、広報に従事する傍ら、オンラインでのセミナー講師やイベントのファシリテーターを実施。副業で嘉悦大学の大学講師。キャリアや就職などに関する授業を担当。
目次
1.コロナ終息後の働き方に対する従業員と企業の意識の乖離
アフターコロナのリモートワーク継続について、企業や従業員を対象として、様々な調査機関が意識調査を行っています。調査結果によると、従業員側の調査では、9割以上が週に1回以上のリモートワークを希望しているのに対し、企業側の調査では、6割近くが「規模を縮小してのリモートワーク継続を考えている」という結果が出ています。
企業側も従業員側も、基本的には完全な出勤体制に戻るのではなく、リモートワークの継続を考えてはいるようです。しかし、どうにも企業側と従業員側では積極性に差があるようです。
また、リモートワークを経験した従業員の30%は完全オフィスワークに戻ることには否定的です。さらにこの否定的な層に対して完全オフィスワーク推奨に戻った場合の対応について尋ねると、その半数近く(全体の15%ほど)が転職先を探す、退職するという意見が出ています。このことからトップダウンで完全出社方針を押し付けるのは危険だと言えます。
2.現在の賃貸オフィス事情は?
コロナ禍による賃貸オフィスへの影響ですが、東京都心5区では空室率が今年3月時点で6.37%とと、コロナ禍前の1%台から比べると大幅に上昇しているようです。
また、日本経済新聞社の調査によりますと、2010年移行上昇を続けていた賃貸オフィスの賃料は11年ぶりに前年同期比が低下しているとのことで、その理由として、業績不振によるオフィス撤退や、富士通やヤフーのように在宅勤務の定着によるオフィスの縮小化が挙げられています。
オフィスを縮小した、もしくは解約した企業の中には、「出社して仕事をしたい」「自宅では仕事ができない」という社員のためにシェアオフィスを活用しているところもあるようです。
3.スタッフ全員フルリモートで働くニットがオフィスを構える理由
私たちニットはテレワークを前提に創業した組織です。日本を中心に世界33か国に在住する400人を超えるスタッフ全員がテレワーカーという働き方をしているのですが、実はあえてオフィスを構えています。
その大きな理由は次の2つです。
- みんながいつでも集まれる場所を創りたい
- 対面が向いている業務もある
先述のように、日本中どころか世界中にメンバーがいるため、多くのメンバーは物理的にオフィスに来ることが困難なのですが、ニットの代表取締役社長である秋沢の「いつでもここに戻って来てほしい」「家族も含めたたくさんの人が遊びに来てほしい」という想いや「働くみんなにとって心理的安全のある場を作りたい」という気持ちからオフィスを構えています。
- 1人ひとりがプロフェッショナルでかつお互いの信頼関係の元で繋がっている
- 自分自身の専門スキルを活かして明確な役割を遂行するジョブ型の人
- 1人で集中して業務を遂行するべき事務作業などの仕事
であれば、テレワークの方が高い生産性が見込めるでしょう。
- 小さな兆しから課題を見つけてPDCAを素早く回さなければならない新規事業の開発
- 何気ない会話からイノベーションが生まれるブレインストーミング
など対面の方が向いている業務もあります。キャリア面談も、オンラインでできないわけではありませんが、やはり物理的な距離が近いと心理的な距離も近付くので、対面の方が効果的です。
ちなみに、私自身はその日の業務内容によって、雑談やディスカッションのためにオフィスに出社する、集中するために自宅で働く、気分転換でカフェで仕事をするという、オフィス出社とテレワークを混ぜたハイブリッド型で働いています。
4.オフィスワークとリモートワークの切り分け方
ところで最近、「週の〇日は在宅ワーク」という言葉に違和感を覚えています。
リモートワークに慣れるまではそのようにルールを決めるのもいいと思うのですが、リモートワークとオフィスワークのメリットやデメリットを考慮せずルール化しているため、本質を見失っているように思えるのです。
高い生産性の定義は「最小のインプット(労力・時間・金額)で最大のアウトプット(成果)を出すこと」です。
生産性を向上させるには、今ある労働力を最大化させるための方法と、雇用だけではない選択肢が必要となります。
そのために業務の洗い出しや仕分けをして、テレワークに向いた仕事と対面の方がいい仕事を明確にすることが重要です。
業務を最適化する際は、次の手順で進めることをお勧めします。
①業務を洗い出す
②業務を【コア業務】と【ノンコア業務※】で分ける
※ノンコア業務:必ずしも自分じゃなくても良い業務
③コア業務を「リモートでも可」「オフィス向き」で分ける
④ノンコア業務について、「なくす」「減らす」「誰かに頼む」で分ける
この業務最適化フローは、生産性の高いテレワーク組織を作るためのキーです。
業務の仕分けをしないままリモートワークを実施してしまうと、会社と同じように仕事をしてしまうため、非常に生産性が悪くなります。
何事にも向き不向きは存在します。それはリモートワーク・オフィスワークでも同様です。働く環境が変われば働き方も変えなければなりません。
「これはリモート向きだろう」と思っていた仕事が意外とオフィスの機能が必須だったり、逆に「これはオフィスじゃないと無理だろう」と考えていた作業がリモートでも対応できることに気付くかもしれません。
そうして業務をしっかり見極め、仕分けた上で、一番効率よく仕事ができるスケジュールを組むことをお勧めします。
ハイブリッドな働き方は、慣れるまでは大変ですが、オフィスとリモート、それぞれの利点をうまく活用して生産性を上げましょう。
5.「働き方」や「働く場所」に囚われず、真の生産性向上を目指そう
リモートワークを経験して生産性が大きく上がった人にとって、オフィス勤務に戻るのは望ましくないことかもしれません。逆にリモートワークを経験したことで対面で仕事をする利点に気付いた人もいるでしょう。
今回のテーマである「オフィス不要論」に限らず、働き方改革や複業などいろいろな考え方が出てきていますが、結局のところ、どんな働き方がベストなのかはその人の性格や性質、担当する業務に大きく左右されますし、そもそも仕事の仕方にたった一つの正解というものはありません。
会社が目指す組織のありかたや社員が求める働き方をしっかりとすり合わせ、何が最適なのかをじっくりと見つめれば、会社も社員も嬉しく、また業績が上がるというWin-Win-Winな状況も夢ではないでしょう。