社員の職務を基準として評価する「職務評価」は、現在多くの企業で採用されています。社員の能力や経験ではなく、職務の重要性を数値化して評価することで、公正な評価が実現可能です。
しかし「職務評価をどのように活用すればいいのかわからない」と、悩んでいる人もいるでしょう。
そこで本記事では、職務評価の手法や評価を実施する際の項目について解説します。職務評価を取り入れて、公正な人事評価を実現したい人は、ぜひ参考にしてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
目次
1. 職務評価とは
職務評価とは、社員が担当している「職務」をもとにして評価する手法です。社員自体ではなく、職務で評価を実施して、公正な人事評価を実現するために活用します。
職務は、社員の役目や務めを意味するものです。仕事の名称そのものではなく何をしているかを意味します。
会社における必要性の基準で社員の業務内容を分類すれば、客観的に職務の価値を決定できるでしょう。
職務評価は、主に以下の3つの項目で構成されています。
評価項目 |
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ウエイト |
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スケール |
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職務評価は、ウエイト×スケールで評価項目の数値化が可能です。すべての評価項目の数値を合計して、評価した職務の重要性を測ります。
1-1. パート・アルバイトも職務評価の対象
職務評価の対象となるのは、正社員だけではありません。基本的には同じ職務内容であれば、パートやアルバイトの従業員も正社員と同様に評価して、同じ賃金を支給する必要があります。
このような考え方は「同一労働同一賃金」と呼ばれ、「パートタイム・有期雇用労働法」のなかで示されています。法律によって、雇用形態の違いによる不合理な格差をなくすことが求められているため、適切な評価ルールを設定することが重要です。
2. 職務評価を実施する意味
職務評価は、職務の重要性を比べるために実施します。企業にとって必要かどうかや、責任の重さなどを比較するケースが多いでしょう。多様な働き方の実現のために、厚生労働省も職務評価の導入を推進しています。
職務評価の特徴は、職務を価値や重要度で評価することです。正社員とパート・アルバイトとの理不尽な格差がないかを把握するために役立つでしょう。
もし不合理な格差があった場合には改善をおこない、働き方の見直しが必要です。企業内で正社員とパート・アルバイトの格差を撤廃するためにも、職務評価を実施するとよいでしょう。
さらに職務評価により社内で公正な待遇を実現することで、社員の満足度やモチベーションの向上が期待できます。企業の印象アップや、生産性向上による競争力の強化にもつながるでしょう。
参照:職務分析・職務評価について | 厚生労働省 群馬労働局
3. 職務評価と情意評価・役割評価の違い
ここでは、職務評価と情意評価・役割評価の違いについて確認しておきましょう。
3-1. 情意評価との違い
情意評価とは、社員の仕事に対するモチベーションや熱意などに注目して評価する手法です。成果や能力以外の部分を評価できるというメリットがありますが、客観的な評価が難しいというデメリットもあります。
職務評価と情意評価は、注目するポイントが大きく異なります。職務評価では与えられた職務に注目し、情意評価では社員の気持ちや取り組み姿勢に注目する、という点が大きく異なる部分です。
3-2. 役割評価との違い
役割評価とは、企業や部署内の役割ごとに重要度を決めておき、その重要度に合わせて評価を付ける手法です。社員の役割に注目するという点で職務評価と似ていますが、異なる部分もあります。
職務評価では、職務内容や職務の重要性だけに注目して評価するのに対し、役割評価では、職務だけではなく社員自身にも注目します。役割評価においては社員のスキルやモチベーションなどにも注目するため、職務評価よりも幅広い視点で評価する手法といえるでしょう。
4. 職務評価の手法4選
ここでは、職務評価の4つの手法を紹介します。
- 序列法
- 分類法
- 要素比較法
- 要素別点数法
それぞれの手法のメリット・デメリットまで解説しているので、参考にしてください。
4-1. 序列法
序列法は、職務を1対1で比較する方法です。職務を細かく分解せずに、全体として捉えて比較できます。
序列は、社内で重視する職務によって決定しましょう。しかし序列法は、職務を数値化して評価するわけではありません。
序列の下位の職務に配属されている社員から、不満の声が上がるリスクがある点に注意が必要です。
4-2. 分類法
分類法は「職務レベル」をA・B・Cの3段階に分類して評価する方法です。組織内で基準となる職務を選び、分析をしたうえで「職務レベル」を設定し、各職務を分類して評価します。
たとえば、以下のように企業ごとに職務の重要性を考えてからの仕分けが可能です。
- Aランク:営業と人事
- Bランク:事務
- Cランク:カスタマーサポートセンター
分類法は、さまざまな職務を同じランクに入れられる点がメリットです。しかし職務を序列で並べないため、たくさんの職務が同じランクに集中するリスクがあります。
4-3. 要素比較法
職務の重要性を判断する部分を企業側で設定するのが、要素比較法です。設定された部分をもとに職務の重要性をA・B・Cのレベル別で比較できます。
判断する部分の例は以下の通りです。
- 熟練の度合い
- 知性
- 専門性
職務によってどのような要件が社員に求められているのかを、企業側が定める必要があります。職務に必要とされる部分で比較して、重要度が高いほど、価値がある職務だと判断しましょう。
4-4. 要素別点数法
構成する部分を仕分けして、それぞれに数値としての評価をおこなう手法が「要素別点数法」です。要素比較法とは異なり、レベルではなく数値で職務を比べます。
たとえば職務における知識の部分を評価したケースでは、以下のように数値化が可能です。
- 「マニュアル通りに業務ができる」1点
- 「上司の指示なく仕事を進められる」3点
- 「専門的な知識を身につけている」2点
要素別点数法は、職務の重要性を数値化でき、それぞれの項目を明らかにできるため、社員からの不満が出にくいでしょう。
しかし、構成部分や配点を決めることが大変で、取り入れるまでに時間がかかるところがデメリットです。
5. 職務評価と職務等級制度
職務評価と職務等級制度は、それぞれ「職務」で社員の評価を実施します。
職務評価では、職務ごとの特徴や重要性などを踏まえて、社員を評価する仕組みです。一方で職務等級制度は、社員が担当する仕事や職務によって等級を分けることで、人事評価をおこないます。
職務等級制度は、以下の属人的な部分で給与や待遇を決定しないことが大きな特徴です。
- 学歴
- 勤続年数
- 能力
業務の難易度や責任レベルによって、等級が決まっており、業務の進捗状況によって最終評価が下されます。職務の大きさによって等級が決まるため、今後の昇進やキャリアプランに影響する可能性があるでしょう。
また評価を実施する際に、職務以外の面が考慮されにくくなるため、給与や待遇を変えることが難しいところがデメリットです。
組織内での異なる職務やポジションをどのように階層化するか人事制度が決まった後は、具体的にどのような方法で評価をおこなうか人事評価制度を検討・導入し、定期的に評価やフィードバックを繰り返していかなければなりません。
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6. 職務評価の評価項目と基準7選
ここでは、職務評価の評価項目と基準について7つ紹介します。
- 革新性
- 対人関係の複雑さ
- 専門性
- 人材代替性
- 裁量性
- 経営への影響度
- 問題解決の困難度
各項目を確認してから、職務評価を自社に取り入れてみてください。
6-1. 革新性
革新性は、新しいアイデアや革新的な方法が必要になるかどうかを示す項目です。
現在自社で実施している方法とは全く異なる新しいアイデアが求められる仕事は、職務の重要性が高まります。
たとえば、システム開発部や企画部は、新しい方法や画期的なアイデアが必要になります。そのため、革新性が必要になる職務とされるケースが多くなるでしょう。
一方でマニュアル通りに進められる業務は、革新性が低くなります。
6-2. 対人関係の複雑さ
対人関係が複雑になればなるほど、配点が高くなりやすい項目です。たとえば、他人との関わりが多く、スケジュールの調整が必要な営業部門は、職務の重要性が高いといえます。
一方で人と接することが少ない研究部門や工場勤務などでは、配点が少なくなるでしょう。仕事を進めるうえで部門内外の人材との調整が多い仕事は、配点が高くなります。
6-3. 専門性
専門的な知識やスキルが必要になるかどうかを示す項目が、専門性です。
たとえば法律や税金に関する仕事をしている部署は、専門的な知識が必要になるため、配点が高くなります。
一方で事務や営業は専門的なスキルが必要ないケースが多いため、専門性が低いと判断されやすいです。
6-4. 人材代替性
社員の採用や配置転換によって異動が発生した際に、代わりの社員を探すのが困難かどうかを示す項目です。代わりの社員が迅速に見つかる職務なら重要度は低く、見つからないケースでは高いと判断されます。
専門性や特別な技術が必要になる業務は、代わりを見つけるのが大変です。代わりが探しづらい職務は重要性が高まるでしょう。
6-5. 裁量性
社員が自ら判断してこなせる仕事はどのくらいかを示す項目が裁量性です。
たとえば、研究開発や営業など労働時間の拘束がない職務が、社員の裁量に任せることが多くなる傾向にあります。
自らが判断して処理する業務は責任が重くなるため、裁量性は高まるでしょう。一方で社員が負う責任がない仕事は、裁量性が低いと判断できます。
6-6. 経営への影響度
経営や業績にどの程度影響するのかを示した項目です。
すべての業務が経営に影響するため、適切に評価するのが難しい問題があります。その際は、会社にとってどの項目が経営や業績に影響を及ぼすのかを決めることが重要です。
たとえば、経営や業績に影響を与える項目として以下が挙げられます。
- 利益や売上に直接関係するか
- 取引先や顧客との関係性に影響するか
- 経営陣に近いか
会社によって違いが大きく現れやすい項目です。
6-7. 問題解決の困難度
仕事において問題解決が困難かどうかを示す項目です。たとえば、以下のような仕事は問題解決が難しい仕事といえます。
- カスタマーサポートセンター
- 取得困難な最新技術が必要な仕事
一方で、マニュアル通りに進めれば業務が遂行できる職務の場合は、困難度が低いといえるでしょう。
7. 職務評価を活用して従業員を適正に評価しよう!
今回は、職務評価の意味や評価項目などについて解説しました。職務評価は、社員が担当している職務内容に注目して評価する手法です。職務の重要性という客観的な基準に注目するため、シンプルでわかりやすい評価制度を構築できるでしょう。
ただし、職務評価を運用する場合は、企業ごとの特徴に合った評価項目を設定しなければなりません。自社に合った評価項目や職務ごとの重要度を設定しなければ、社員から不満の声が上がったり、モチベーションが低下したりする可能性もあるため注意が必要です。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。