人事評価は基本的に「業績」「能力」「行動」の3つの軸で評価項目を決めていきます。どの職種、業種でも3つの軸が変わることは基本的にはありません。
しかし、評価項目の中身は職種や業種によって大きく変化します。そこで今回は「技術職」に焦点を当て、以下の項目を中心にわかりやすく説明します。
- 人事評価シートを作成するときの5つのポイント
- 人事評価シートを作成するときの注意点
- 人事評価シートの具体例
- 人事評価で起きやすいトラブル
技術職に対する人事評価で悩んでいる人には必見の内容です。最後まで記事を読んで、要点を確認してみてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
目次
1. 技術職の人事評価シートとは?
人事評価シートは、従業員ごとの目標やその達成度、保有するスキルや資格などを管理するためのシートのことです。立てた目標や評価を記入して管理することで、人事評価の透明性を高めたり、人材育成を効率化したりできます。
人事評価シートは職種に合わせて作成することが重要です。ここでは、技術職の人事評価シートの特徴を見ていきましょう。
1-1. 技術職とは?
技術職とは、システムエンジニアやプログラマー、設計士など、数学やITの知識を必要とする仕事の総称です。主にシステム・建物・機械などの設計やメンテナンスに携わります。技術職は、IT関連の企業はもちろん、製造業や建築業など、さまざまな場所で活躍しており、企業の成長を支える重要な職種のひとつといえるでしょう。
1-2. 技術職の人事評価シートの特徴
技術職を評価する際は、個人のスキルや知識だけではなく、協調性や指導力などにも注目しなければなりません。個人で仕事をする場面もありますが、基本的にはチームを組んでプロジェクトを進めるケースが多いからです。
技術職の人事評価シートにおいては、以下のような項目について評価するとよいでしょう。
- プロジェクトの成果
- 個人の貢献度
- 保有するスキルや知識
- マネジメント力
- 協調性
- プレゼンテーション能力
幅広い項目に着目することで、従業員を多面的に評価できます。
2. 技術職の人事評価シートが重要な理由
ここでは、技術職の人事評価シートが重要な理由について詳しく見ていきましょう。
2-1. 適切な処遇を決定するため
人事評価シートは、適切な処遇を決定するために役立ちます。何の根拠もなく昇進や昇格、異動などを決めると、従業員から不満の声が上がるケースもあるでしょう。また、基準が曖昧になり、処遇を決めるのに悩んでしまう可能性もあります。
人事評価シートを活用して明確な基準を示し、処遇を決定すれば、従業員の納得感が高まるでしょう。一定の基準で処遇を決められるため、人材管理を効率化することも可能です。
2-2. 企業のビジョンを共有するため
企業のビジョンを共有できることも、人事評価シートが重要な理由のひとつです。従業員が同じ方向へ進み、事業を拡大していくためには、企業理念や目標を共有しておくことが欠かせません。
人事評価シートには、企業のビジョンを反映した目標や評価項目を記載するため、評価を通してビジョンが自然と浸透していくでしょう。
2-3. 従業員のモチベーションを維持するため
人事評価シートをうまく活用すれば、従業員のモチベーションを高めることが可能です。適切な目標を設定し、達成度を評価すれば、仕事への意欲が高まるでしょう。
また、不足している能力や知識について指摘することで、どのような努力をすればよいかが明確になり、従業員の成長を促せます。
3. 技術職の人事評価シートを作成する5つのポイント
技術職に求められることは、プロジェクトをうまく回していくことです。そのためには以下が重要視されます。
- 個人の技術力
- 専門的な知識
- チーム単位での協力
「専門性」「協調性」が、技術職には大切であることがわかります。では、人事評価シートを作成するときには、どのような評価項目にすればよいのでしょうか。詳しく説明していきます。
3-1. 計画性
技術職の仕事は数値より計画性が重視される職種です。なぜならプロジェクトを滞りなく進めなければ、顧客の信頼を裏切ることになるからです。
たとえば、製造工場で働いている技術職の人は、納品期日までに商品を製造しなければなりません。納期に間に合わなければ取引先に迷惑がかかるので、計画的に仕事にあたります。
このように技術職では、プロジェクトを遂行するために「計画性」を評価項目に入れこむことが必要です。
3-2. 課題発見力
仕事を進めていくなかで、機械トラブルや改善すべき課題を発見することがあります。
イレギュラー対応である上記のようなトラブルは、課題発見から解決までのプロセスも評価の項目に入れるとよいでしょう。課題を早期発見し、迅速に解決すれば生産性低下を防ぐことにもつながります。
3-3. 業務品質
技術職の仕事では業務品質も求められます。クオリティの高い商品は顧客満足度を高め、組織のブランド力を強くするからです。
そのため、人事評価の項目に「業務品質」に結びつく項目も盛り込むとよいでしょう。具体例として、下記のような内容が挙げられます。
- 機械の自主点検(機械トラブルによる生産性低下を抑止するため)
- 作業場の清掃(商品に毛髪が混入しないようにするため)
3-4. 専門性
技術職で働く人は自分の専門性に自信をもっています。自分の専門知識やスキルが、組織の成長に貢献できているという自覚をもちながら、多くの従業員が業務に励んでいることでしょう。
基本的に技術職の仕事は、プロジェクトで進んでいくと先述しました。プロジェクトを成功させるためには個人の知識やスキルが必要です。そのため「専門性」としての評価項目は重視するべきでしょう。
3-5. 顧客満足度
顧客から商品についての問い合わせやクレームがあった際は、専門的な知識がある人が対応することがあります。専門的な知識や説明ができないと、顧客も理解・納得ができません。
顧客への対応を誠実におこなうことで、顧客満足度をさらに高めることもできます。よって、人事評価シートでは顧客への対応なども評価項目に追加しましょう。
4. 技術職の人事評価シートを作成するときの注意点
専門性の高い技術職は、評価項目を決めるのが難しい職種のひとつです。ここでは技術職の評価シートを作成するときの4つの注意点を紹介していきます。
4-1. 専門性の高い部下の意見に左右されない
評価者より相手のほうが専門的な知識や経験がある場合、評価が困難になることがあります。
しかし、知識や経験が豊富な相手に、評価項目を丸投げするわけにはいきません。お互いに話し合って、細かい部分まですり合わせていく必要があります。
もし、それでも専門外で評価を決められない場合は、同じチーム内や近い職種で働いている人に評価項目のアドバイスをもらうとよいでしょう。
4-2. できる限り評価項目に数字を入れる
評価項目に数字を入れにくい技術職ですが、できる限り基準となる数値を設定しましょう。評価項目に数字を入れることで、評価が「見える化」しやすくなります。
たとえば、フォークリフトのドライバーであれば安全運転や確実な納品が求められます。「事故率〇%以内」「商品の破損率〇%以内」というように数字を加えると、お互いに結果がわかりやすい評価項目を設定できるでしょう。
4-3. 相手が成長を実感できる評価項目を入れる
技術職といっても色々な職種があります。0から1を作り出すクリエイティブな仕事であると、自分でも成長を実感しやすいでしょう。
反対に機械の保守や点検などの管理業務では、今ある状態を維持することが求められます。
そのため、自分自身の成長が実感できないという従業員もいるかもしれません。成長が実感できなければやる気が下がり、生産性の低下へとつながります。
相手の成長を評価項目に設定するときには、以下の2点を意識しましょう。
- 組織の中で将来どうなりたいのか
- そのためにできる行動は何か
成長を実感できる具体的な評価項目があれば、あとは実際に行動するだけです。相手の意見を尊重しながら、評価項目を入れるようにしましょう。
4-4. 必要に応じてシステムを活用する
必要に応じて便利なシステムを活用することも大切です。人事評価シートは、人材を評価したり育成したりするための重要な存在ですが、紙ベースで運用すると記入や管理の手間がかかってしまいます。
とくに技術職を含めた従業員数が多い企業の場合、評価者や管理者の負担が多くなってしまうケースもあるでしょう。人事評価を効率的に進めたい場合は、クラウド型の人事評価システムなどを導入するのがおすすめです。
ここまで技術職の人事評価について解説しましたが、そもそもどのような評価項目や評価の点数を導入すれば良いかわからず、お悩みの方もいらっしゃるでしょう。
当サイトで無料配布している「人事評価の手引き」では、人事評価の種類と各評価指標のメリット・デメリット、また実際に導入する際の評価点数の内訳や例なども紹介しており、人事評価を導入する際に、必要な情報をこの資料一つでまとめて確認できます。自社に最適な人事評価を選定するのに大変参考になる資料となっておりますので、こちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
5. 技術職の人事評価シートにおける目標設定の具体例
冒頭で記述しましたが、人事評価は業績評価・能力評価・行動評価という3つの軸に沿って評価項目を決めていきます。ここでは技術職における人事評価シートの具体例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
5-1. 業績評価
技術職の業績評価においては、プロジェクトの進捗・業務品質・コストなどが評価対象に該当します。
評価項目 | いつまでに | 評価ポイント |
計画性 | 〇月までに | プロジェクトの完了 |
業務品質 | 〇月までに | 品質確保 ※クレーム率・破損率など |
コスト | 〇月までに | 予算内で抑えられたか |
このほかにも「残業時間」を盛り込むと、人件費の削減につながるので取り入れている組織が多くあります。
5-2. 能力評価
能力評価は、プロジェクトの計画・課題解決力・資格取得の有無などが評価対象です。
評価項目 | 内容 | 評価ポイント |
個人スキル | 専門性のあるスキル | 業務に生かせたかどうか |
課題解決力 | 問題や課題に対しての対応 | トラブルに対しての復旧時間など |
資格取得 | 〇月までに | 資格の取得ができたか |
5-3. 行動評価
行動評価のなかでは、協調性や主体性など、仕事への取り組み方や姿勢を評価します。具体的な評価項目は以下の通りです。
評価項目 | 評価内容 | 評価ポイント |
協調性 | ・チーム内のメンバーと円滑に業務を進められたか | ・チーム内の雰囲気が向上したか ・サポートする姿勢はどうか |
職場の規則 | ・組織の規則を守る ・上長の指示に従って行動する |
・報連相が確実にできているか ・自分勝手に仕事をしていないか |
主体性 | ・積極的に仕事に取り組めたか ・問題解決につながる提案書作成 |
・主体的な行動で仕事にどのような影響が出たか |
責任感 | ・責任をもって仕事に取り組めたか | ・求められている役割を理解して目標を達成できるよう努力したか |
6. 技術職の人事評価で起きやすいトラブル
ここでは、技術職の人事評価で起きやすいトラブルを紹介していきます。これから技術職の人事評価をする人は参考にしてください。
6-1. コミュニケーション不足
技術職の人事評価では、コミュニケーション不足が原因で起こるトラブルがあります。
一例をあげると、評価シートを用いて面談をした際「評価項目が説明されていない」と相手から不満を言われるケースです。
トラブルが起きた理由としては、目標設定のときに曖昧な形で終了してしまったことなどが原因として考えられます。
そのため、評価項目を決めるときには、きちんとコミュニケーションを取りましょう。コミュニケーションが苦手な相手でも、お互いが納得した形で評価面談を終わらせることが、トラブル回避につながります。
6-2. 専門性だけを追求
技術職は専門性の高い職種であるため、協調性や計画性より個人のスキルを重視する人が多くいます。
専門性を追求している従業員と人事評価の面談をすると「専門的な評価が低い」と不満を訴えてくる可能性もあります。
あとになって「聞いていない」と言われることがないよう、目標設定後に相手のサインや記録を残しておくとよいでしょう。
6-3. 部下のほうが業務に精通している
評価者より専門的な知識がある技術職の人を評価するのは苦労します。専門的な仕事であるため、評価者もすべてを把握することは難しいでしょう。
評価者より相手が業務に精通している場合、評価に納得しないケースも考えられます。そうした際は、複数の意見を反映する「360度評価」などを導入すれば、適正に評価ができるようになるでしょう。
7. 技術職の特徴に合った人事評価シートを作成しよう
今回は、技術職の人事評価シートの作成ポイントと注意点を紹介しました。専門性の高い技術職は、組織にとっても重要な人材であるといえます。一方で、専門的なスキルや知識をどのように評価すべきかわからず、悩んでしまうケースもあるでしょう。
まずは技術職に求められるスキルや知識を明確にし、適切な評価項目を設定することが大切です。双方にとって納得できる評価項目を定めて、部下の成長をサポートしていきましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
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