中小企業でも人事評価システムを導入して有効活用できるかどうか、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。人事評価システムは、中小企業でも大いに役立てることができます。今回は、中小企業で人事評価システムが必要な理由と導入の適切なタイミングを紹介します。また、人事評価システムを導入するメリットや注意点、選び方についてもわかりやすく解説します。
目次
1.中小企業で人事評価システムが必要な理由
社員全員の顔と名前が一致している規模の企業において、人事評価システムを導入すべきかどうか迷っている方もいるのではないでしょうか。ここでは、そもそも人事評価システムとはどのようなツールかを解説したうえで、現状の中小企業の人事評価における課題を紹介し、人事評価システムが必要な理由を紹介します。
1-1.人事評価システムとは?
人事評価システムとは、従業員の基本情報やスキル、資格、評価などを管理し、効果的な人事評価をおこなうためのシステムです。人事評価システムには、従業員情報管理や目標・評価の進捗状況管理、人材データ分析といった便利な機能が数多く搭載されています。上手に活用することで人事評価業務を効率化したり、人材配置を最適化したりできるというメリットがあります。
1-2.中小企業における人事評価制度の導入率は?
少子高齢化や人材流動化の影響を受けて、中小企業では人材不足の問題が深刻化しています。人手不足の問題を解消するには、定着率を上昇させる必要があります。そのため、人事評価制度をきちんと整備することが大切です。
「2022年版の中小企業白書」には、人事評価制度の有無について記載されています。(※1)従業員数が5~20人の企業では35.0%、101人以上の企業では87.2%が人事評価制度を構築しています。このように、従業員数が少ない中小企業ほど、人事評価制度を整備できていないことがわかります。
(※1)2022年版中小企業白書・小規模企業白書|中小企業庁
1-3.現状の中小企業の人事評価における課題
中小企業では大企業と比べると、人事評価制度の整備が遅れています。他にも中小企業は大規模な企業と比べると、知名度が低く、優秀な人材を獲得しづらいという課題もあります。また、中小企業が事業規模を拡大していくには、マネジメント人材を育成・確保しなければなりません。さらに、待遇・福利厚生を十分に用意できないため、他の会社へと異動してしまう従業員も多く、離職率が高い傾向にあります。
このような課題を解消するためにも、適切な人事評価を実現して従業員満足度を高め、定着率を向上させる必要があります。人事評価システムを活用すれば、適切な人事評価項目を設定したり、従業員の適性や実績をもとに人事異動のシミュレーションをしたりできるので、中小企業の課題解決に役立ちます。
2.中小企業が人事評価システムを導入する適切なタイミング
ここでは、中小企業が人事評価システムを導入する適切なタイミングについて解説します。
2-1.社員の働きを隅々まで見れなくなったとき
社員が50名を超えてくると、一人ひとりの顔と名前は一致していても、どのような業務をどの程度おこなっているのかを把握しきるのは難しくなります。そのような場合、マネジメント層の提言をもとに人事評価することになりますが、客観的なデータをもとに判断しないと、人事評価に公平を期することができなくなってしまいます。
こうした環境が続くと、社員のなかで不満が蓄積し、離職へとつながっていきます。このような事態を未然に防ぐためにも、社員の働きを隅々まで見られなくなったとき、人事評価システムの導入を検討すると良いでしょう。
2-2.働き方を変えるとき
働き方を変えるとき、これまでの人事評価制度がそのまま活用できなくなってしまうこともあります。
近年では、政府による働き方改革の影響も受けて、テレワークなどの多様な働き方が推進されています。テレワークでは社員の仕事ぶりを直接把握できないため、これまでよりも成果をもとに評価をする必要が出てきます。
このように、働き方の変化に合わせて人事評価制度を見直すとき、人事評価システムを導入するよい機会になるでしょう。
2-3.社員の仕事への取り組み方を変えたいとき
企業を経営していくなかで、社員のモチベーションが低下することもあるかもしれません。。このような状況が継続すると、やがて顧客が離れ、経営に悪影響を及ぼします。
社員の仕事への取り組み方を変えたいときは、人事評価の仕組みを変えることが効果的です。経営層が導きたい方向に社員が向かうように人事評価制度を組み直すと、経営層と社員双方にメリットがあります。
このように、社員の仕事への取り組み方を変えたいときは、人事評価システムを導入すると良いでしょう。
3.中小企業が人事評価システムを導入するメリット
ここでは、中小企業が人事評価システムを導入するメリットについて詳しく紹介します。
3-1.業務の効率化につながる
紙やExcelを利用して人事評価をおこなっている場合、評価シートの作成・回収・集計などに時間や手間がかかります。また、セキュリティの観点から評価シートの持ち運びを禁止している場合、オフィスで人事評価業務をおこなわなければならず、自宅や移動中に作業することができません。
人事評価システムを導入すれば、人事評価に関する業務をシステム上で実現することができます。評価シートのやりとりもシステム上で完結できるので、業務の効率化が期待できます。また、人事評価システムはPCやスマホなどの端末とネット環境があれば利用できるため、自宅や外出先など、場所を問わず業務をおこなうことが可能です。
3-2.公平な評価を実現できる
人事評価システムを導入すれば、評価項目を詳細に設定したり、評価の基準や過程を可視化したりすることができます。人事評価制度を整備しきれていない中小企業でも、客観的な人事評価ができるようになり、公平な評価を実現することが可能です。
3-3.適材適所の人材配置が可能になる
人事評価システムでは、従業員の氏名や住所などの基本情報だけでなく、経歴や目標、スキル、評価などの情報もデータ化して一元管理することができます。また、要員管理や人材配置のシミュレーション機能を活用することで、従業員のスキルや人件費を確認しながら、最適な人材配置を検討することが可能です。このように、人事評価システムを導入すれば、従業員の能力・スキルを正しく把握したうえで、適材適所の人材配置を実現させることができます。
3-4.従業員のモチベーションが向上する
中小企業では明確な人事評価制度が整備されていないことにより、人事評価に対して不満を感じている従業員もいるかもしれません。適切な人事評価やフォローが実施されていない状況が続くと、離職率の上昇につながる恐れもあります。
人事評価システムを導入すれば、公平な人事評価を実現できるため、従業員の不満を解消して仕事へのモチベーションを向上させることが可能です。また、評価分析やストレスチェックといった従業員満足度を上げるための便利な機能を活用することで、従業員の帰属意識を高め、定着率を向上させることができます。
4.中小企業が人事評価システムを導入する際の注意点
ここでは、中小企業が人事評価システムを導入する際の注意点について詳しく紹介します。
4-1.無料ツールに注意する
中小企業の場合、予算が限られていることから、無料の人事評価システムを導入したいと考えることもあるかもしれません。無料ツールは、有料ツールと比べて、セキュリティが脆弱であったり、機能が制限されていたりする可能性もあります。また、一定期間経つと、有料プランに切り替えない場合、システムを利用できなくなる場合もあります。そのため、無料の人事評価システムを導入する際は、利用条件や機能などを細かく確認することが大切です。
4-2.従業員にきちんと周知する
人事評価システムを導入する場合、新しくシステムの操作方法や運用フローを覚えなければならず、従業員にも負担がかかります。そのため、従業員がストレスなく人事評価システムを利用できるように、あらかじめシステムの操作マニュアルを用意したり、研修やセミナーを開いたりして、従業員にシステムの使い方をきちんと周知することが大切です。
4-3.人事担当者の負担を考慮する
人事評価システムを導入することで、評価シートの連携などが簡単になり、業務負担は軽減されることが推測されます。ただし、新たな人事評価制度の整備や、従来の人事データの引継ぎなどに時間や手間がかかる可能性もあり、一時的に人事担当者の負担が大きくなるケースもあります。
そのため、人事担当者の負担を考慮し、余裕を持った導入・運用スケジュールを設計することが大切です。また、サポート体制の充実した人事評価システムを選定すれば、システム導入・運用の負担を軽減することができます。
4-4.評価制度が大きく変わる可能性がある
業務効率化や人的ミス防止を重視し過ぎるあまり、評価基準の設定について考慮せずに人事評価システムを導入すると、従来の人事評価制度を再現できず、従業員から不満が生じる恐れもあります。
そのため、どのような人事評価制度を実現したいのか事前に明確化しておくことが大切です。人事評価制度を大きく変更する場合は、従業員にきちんと周知して理解を得ることも重要です。
4-5.フィードバックを実施する
人事評価システムを活用する場合、評価をおこなうだけでなく、評価結果に対してきちんとフィードバックを実施することも大切です。人事評価をおこなった後は、上司や管理者との面談を設けるなど、フォロー体制を整備することで、従業員はスムーズに今後の取り組みへとつなげることができます。
人事評価システムでは、面談やフィードバックの結果もデータとして蓄積させることが可能です。そのため、過去のデータを上手く活用して、適切なフィードバックをおこなえる仕組みを構築しましょう。
5.中小企業における人事評価システムの選び方のポイント
ここでは、中小企業における人事評価システムの選び方のポイントについて詳しく紹介します。
5-1.予算に見合った効果が得られるか
中小企業では予算が限られたなかで、システム選定をしなければならない場合もあるかもしれません。たとえば、豊富な機能を搭載しているシステムが魅力に感じるかもしれませんが、予算を超えてしまう可能性があります。そのため、予算に見合った効果が得られるかという観点から、システムを比較検討することが大切です。
5-2.企業規模や目的にあっているか
まずは導入目的を明確にすることが大切です。目的が明らかになれば、必要な機能も具体化され、システムを絞りやすくなります。
また、人事評価システムによっては、複数の料金プランが用意されています。自社の規模を正しく理解していないと、不要な機能が搭載された料金の高いプランを選択し、無駄なコストがかかる可能性もあります。そのため、自社の従業員数や支店の有無などの観点から企業規模をきちんと把握することも重要です。
5-3.自社の人事評価制度を再現できるか
人事評価システムのなかには、自社で扱っている評価シートがそのまま使えないケースもあります。その場合、改めて評価シートを整備しなければならず、時間や手間がかかる可能性もあります。このように、人事評価システムを選定する際、評価シートを移行できるかなど、既存の人事評価制度を再現できるかも重要なポイントです。
5-4.提供形態は間違っていないか
人事評価システムには主にクラウド型とオンプレミス型があります。提供形態を正しく理解していないと、想定しているよりもコストがかかったり、後から機能をカスタマイズできなかったりする可能性があります。
クラウド型の場合、インターネット環境を利用するため、場所を問わずシステムにアクセスすることができます。また、ベンダーの提供しているソフトを利用するので、コストを抑え、素早く導入することが可能です。ただし、機能をカスタマイズしにくかったり、ネット障害の影響を受けたりするというデメリットがあります。
一方、オンプレミス型の場合、社内にサーバーを設置して専用のソフトを組み込むことで利用するため、自社のニーズにあわせて機能をカスタマイズすることができます。また、社内のネットワークを活用するので、セキュリティを強固にすることが可能です。ただし、サーバー構築やソフト開発に時間や手間がかかるため、初期コストが高く、導入までに時間がかかります。
このように、提供形態によって料金やメリット・デメリットが異なるので、自社のニーズにあった導入形態を選ぶことが大切です。
5-5.従業員が使いやすいか
人事評価システムを導入しても、操作が難しいと、かえって生産性が低下する恐れもあります。そのため、従業員のITリテラシーを考慮して、直感的に使いやすいシステムを導入することが大切です。また、導入や運用に不安を感じているのであれば、充実したサポート体制を提供している人事評価システムを選ぶことで、導入時や運用中に疑問点・不明点があった場合でも適切な支援を受けることができます。
6.中小企業も人事評価システムを導入しよう!
中小企業でも、人事評価システムを導入することで得られるメリットは多くあります。
離職率が高く、人材の採用に苦労している中小企業では、社員の満足度の重要性が高くなります。社員が納得感を持って働ける環境をつくるためにも、この機会に人事評価システムの導入を検討してみてください。