今回は、新宿歌舞伎町を中心に20店舗600名在籍のホスト業界最大手、冬月グループホールディングズの元カリスマホスト、現執行役員のくまの心さんを取材。
くまの心さんは、今まで累計1万人超の社員・幹部陣の育成をおこなってきた方で、その実績が広まり、いまでは企業や大学からも社員研修実施の依頼がくるほど。
そんなくまの心さんは、日ごろどのようにメンバーを教育しているのか、新人のみならず管理職の育成にも使える「くまの流・人材育成術」をご紹介します。
目次
初日たった3時間で2万円を売り上げて大学を中退。18歳で選んだホストの道
くまの 心(Shin Kumano) | 冬月グループFGHD執行役員
—まずは、くまの心さんがホストを始めたきっかけを教えてください。
くまの心さん:私は2006年、18歳の時に京都でホストデビューをしました。
大学生になってまだ4~5か月目の頃、仲の良かった先輩に「お店を出すから働いてみなよ」と誘われて遊びに行ったのがきっかけです。
そして、ホスト体験初日の3時間で運良く稼げてしまい、短時間で2万円ももらえたことにとても衝撃を受けたんです。
ちょうど、「大学がつまらないな」と感じていたこともあり、これをきっかけにホストの道に進もうと決め、大学はスパッと辞めました。
ちなみに実は、僕の両親はふたりとも教師をやっていて、祖父も教育者というまさに教育者一家なのですが、ホストになる話を初めて両親にしたときは、当然びっくりしていましたね(笑)。
―決断力がすごいですね…!東京にはいつ来られたのですか?
くまの心さん:東京には、ホストデビューした2年後の2008年に上京しました。
当時、大阪のホストに入店の電話をしようとしたとき、たまたま友人から「明日から東京に行こうと思うんだけどお前も来ないか?」と連絡がきたんです。
そこで、運命を感じ「日本一の繁華街、歌舞伎町で挑戦してみようかな」と、その場で決めて、次の日には上京をしていました。
そして2008年に冬月グループに入り、その後5年間はプレイヤーとしてホストをして来ました。
―ホストのプレイヤー時代から、執行役員になるまではどのような経緯があったのですか?
くまの心さん:2008年に冬月グループに入りプレイヤーになった頃は、なかなか売れなくて苦労をしました。
冬月グループはもともとイケメンで推しているメンバーが多いのですが、僕は“顔で売れるタイプ”ではないんです。
ですので、最初は一緒に入った友だちの方が売れていて、非常に悔しい想いを抱えてずっと仕事をしていました。
そこから、「自分は中身と人間力で勝負しよう」と決めて、自分なりの売れ方を追求した結果、3年連続でグループ年間No.2を獲ることができました。
2011年には、初めて自分の店舗を持たせてもらえ、二店舗目、三店舗目と展開して、グループ全体の役員になりました。
2019年には、「くまプロ」と言うオリジナルのグループも作ることができ、最近では新人向けの研修講師や各店舗のマネジメントもさせていただいています。
くまプロというのは、「エンターテインメント×エデュケーション=エデュテイメント」をモットーに、ワクワク仕事をしながら成長できる環境を作りを目指しています。
ですので、全員が仕事も遊びも全力でやり切る子たちばっかりです。
―売れなかった時代に意識された点と、教育やセミナー講師になるまでの話を教えてください。
くまの心さん:売れなかった時代には、特にトーク内容や接客を磨くことだけではなく、誰よりもとにかく動き回ること、どれだけお客様のこと仕事のことを考える時間を増やせるかを意識していました。
たくさんのトッププレイヤーの経験談を聞いて来て感じた共通点があります。
それは、顔がいい、スタイルがいい、接客が上手いトークが上手い、営業が上手い、ということ以前に、仕事に対する姿勢が売れていない子たちとまるっきり違うことです。
少し言い訳になりますが、僕は結果的にNo.1にならなくて良かったと思っています。悔しさが一番のモチベーションにつながることを知れたからです。
当時のホスト業界では、「月に1,000万円売り上げたらすごい!」と言われる時代だったのですが、僕は1か月で1,500万を売ることができました。
これも自分はこんなもんじゃないと限界を決めないことで達成できた数字だと思います。
自分の限界を決めずに常に悔しいという感情をもつこと、つまりやり方ではなく「ホストとしての在り方」を磨いてあげることが大事なのだと思います。
これらの経験をもとに、プロデューサーとして複数店舗を管理する役職につき、次第に現場メンバーへの在り方についての教育をしていくようになりました。
―教育する立場になり苦労された点はありますか?
くまの心さん:実は、そこまで苦労はしませんでした。というのも、僕を育ててくれた上司の影響が大きかったからです。
その方は現場に誰よりも早く来て一番最後に帰るのが当たり前。ホストのズボラなイメージではなく、常に有言実行でスケジュールも分刻みで正確な人でした。
ただ一方で、遊びの時は一緒に騒ぎ、辛いときには一緒に泣いてくれる人間味もある完璧すぎる上司で、めちゃくちゃかっこいいと思いました。
この上司の背中を見て学んだことで、教育者としての在り方を最初からイメージ出来ていたことがとても大きいです。
―その師匠からどのようなことを学び、受け継いだのか詳しく教えてください。
くまの心さん:はい。上司から教わったのは、「ホストは大前提として仕事である」と言うことです。
ホストを始める新人たちに、「ホストとはなんですか?」と聞いてみると、けっこう軽い答えがたくさん返ってくるんですよね。
ホストへの軽いイメージが先行して、平気で当欠(当日欠勤)したり、服装や見た目に気を遣わない子や、合コン感覚でいる子たちもいます。
そもそもホストは一生できる仕事ではありません。成功して自分のお店を持つことが出来るキャストは一握りです。
内勤者として裏でお店を支えてくれるのか、ほかの業種につくのか、何をするにしてもいち社会人としての能力を磨かなければ食べていくことができません。
新しく入ってくるメンバーには「ホストを卒業したあとも社会人として稼げる能力を身につけて欲しい」という思いがあって、あえて厳しいルールを設けたり仕事の在り方、生活習慣なども徹底して教育するようにしています。
たとえばくまプロでは「遅刻は大切な人の時間を奪うことである」と定義づけて10分前出勤を当たり前にしていますね。
これも、めちゃくちゃ仕事ができる上司のもとで学んだマインドです。
「テクニックよりもマインド」冬月の研修で大切にしていること
―普段どのような新人研修をしているか教えてください。
くまの心さん:冬月の歴史や、ホストとは何か、冬月グループの理念などを新人に伝える、「ニュージェネレーションセミナー」というものを実施しています。
まだまだ社会的地位の低いホストという職業であるからこそ、「自分を変え、人を変え、誇れる業界に変えていく」という経営理念や、「冬月マインド十ヵ条」という冬月ならではの行動指針や考え方を教えるようにし、入店当初から冬月グループの一員であるという自覚を持たせるようにしています。
冬月グループの理念や行動指針が詰まったハンドブック[熱狂宣言!!]
くまの心さん:私たちはこのようなハンドブックを作っていて、経営理念やミッションビジョン、マインド十ヵ条とアクション十ヵ条というものを記載し、従業員に配布しています。
その他の研修では、「ホストの生活習慣」や「ホストのブランディング」という基礎的なことを教えるようにしていて、ホストの営業手法はあえて教えません。
女の子の気持ちはこうだよ、とか女性を口説くテクニック・スキルよりも「マインド」が大事ということをセミナーで伝えるように心掛けています。
先程もお話しましたが、ホストとはやり方ではなく在り方だということです。
冬月マインド十ヵ条から紐解く、くまの心流マネジメント術
―冬月マインド十ヶ条をもとに、いつもどのようなことを伝えていらっしゃるのでしょうか。
くまの心さん:いつもセミナーで話している内容になりますが、事例を交えながらいくつかご紹介させていただきます。
目標設定のやり方|欲望と目標の違いは「行動が伴うかどうか」
立場や売上など、どんな事でもあぐらをかき、天狗になると成長は止まってしまう。現状に満足せず、常に素直な姿勢で学び続ける。
くまの心さん:マインド十ヵ条の「心得十」に関わるエピソードをご紹介します。
心得十に、「現状に満足せずあぐらをかかない」という項目がありまして、現状に満足しない人材を育てるために、僕は目標設定を重要視しています。
まず、「自分が何者になりたいのか?何を手に入れたいのか?なにをなしとげたいのか?」など自分の欲望、願望を引き出してあげます。
すると、「No.1になりたい、高級な時計が欲しい、綺麗な女性と付き合いたい、世界一周をしたい」など、さまざまな欲望が簡単に出てきます。
その次に、「じゃあ目標と欲望の違いは何か?」と投げかけて考えさせるんです。
欲望というのは口先で「~が欲しい、~がしたい」と言ってるだけの状態で、行動が伴っていないものです。
目標とは、欲望を明確にしてそのために必要な行動計画や期間設定をしアクションして初めて「目標」なのです。これが欲望と目標の違いだとキャストに説明しています。
欲望と目標の違いは「行動が伴うかどうか」という点だけなんです。
最初にキャストたちに目標設定をするときは、なるべく短い期間で達成できる目標を最初に与えるようにしてあげます。
そうすると、1個ずつの目標達成するたびに自信がつき、徐々に自分自身で目標を設定して自走できるようになっていくんです。
このように、欲望を達成し得る目標に変えてあげることで、キャストが自走できるようサポートをしています。
これを継続していくと、「現状に満足しない」で高みを目指していく人材が増えていくと実感しています。
―普段はどのくらいの頻度で目標設定面談を実施されていて、どんなことを話していますか。
くまの心さん:3か月に1度は全キャストに目標設定の時間を設け、幹部陣30人とは、毎月個人面談を実施しています。
この毎月の幹部面談では、以下5項目を聞いています。
- 売上
- お店、担当キャストについて
- 生活習慣などの自己管理
- 一ヶ月間で成長したこと
- 一ヶ月間の満足度
―くまの心さんと面談で決めた目標は全員きっちりやりきっているのでしょうか。
くまの心さん:最初から、決めたことをやりきれるキャストは半分にも満たないですね。
面談を続け自己分析を繰り返させることで、自分の立てた目標に本気になれるキャストたちは少しずつ増えていきます。
それでもできない子には長期的にサポートをし続けて、周りでキラキラ仕事をしている仲間たち見せることで自分で走れるキャストへと変えていっています
逆に自分で走れる子たちにはもっと走れるように厳しめの目標設定をさせてどんどん負荷をかけていくようにしています(笑)。
ホストは「売上達成をしたら良い!」というだけの世界ではありません。売上達成だけでは、ワクワクしないじゃないですか。
キャストたちが高め合い助け合い競い合う精神を持って働ける学校みたいに楽しい場所になるのが理想ですね。
歌舞伎町で働くホストは、地方から出てきた子が多いので、あまり大きなコミュニティを持っていなくて、わりと孤独なんです。
だからこそ、ホストを楽しくやってもらいたくさんの繋がりを持たせてあげることも大切だと考えています。
彼らのコミュニティを広げてもらうためにご飯に連れていったり、話を聞く時間を作って深めてあげることも僕の役目だと思っています。
マインドセット|できない理由ではなくできる方法を考えさせる
全ての事に限界を決めるのは自分の考え方次第であり、考え方を変えるだけで可能性は拡がり、人生を大きく変えることができる。
くまの心さん:100メートル走で9秒代の記録を出した選手のエピソードですが、もともとは人類の身体構造上、10秒を切ることは不可能だと言われていました。
しかしその選手は「俺なら10秒を切れる、できる」と決めた上で、「10秒のタイムを切るためにはどうしたら良いか」と思考を重ね、練習に励み、人類初の9秒台の結果をたたき出しました。
「10秒切るのは不可能だ」から「10秒は切れる。そのためにどうしたらいいか」と考え方を変えることで、結果は大きく変わります。
自ら限界点を決めずに、できると信じてやることが非常に大切で、彼が新記録を出した結果、他の選手の思考も変わりどんどん9秒台を出す選手が増えていったそうです。
この話はホストの世界にも当てはまります。
僕が現役だったころは月に1,000万の売上達成は難しいと言われていました。でも僕の先輩は「俺は絶対に1,000万円以上売る」と決めて宣言し、1,000万円を突破するための行動をした結果1,300万円の売上を達成しました。
そして先輩から「次の1,000万円のバトンはお前に託す」と背中を押してくださり、僕も1,000万円の壁を超えることができたのです。
できないと思ってやるのではなく、「できる」と決めて臨むこと。できない理由ではなくできる方法を考えることが大事だと伝える心得です。
モチベーション管理|長期的な目標を持ち続けられるか
【マインド十ヵ条】心得三:モチベーションを高め続ける
プラス感情、プラス思考、プラスイメージを持つ事が、高いモチベーションとなり、仲間のモチベーションも高める。モチベーションは全ての土台、軸となる。
くまの心さん:モチベーションを高め続ける、というマインド十ヵ条をご紹介します。
よく幹部の子たちが「今日〇〇たちを飯に連れて行ってモチベーション上げて来ました!!」と話してくれることがあります。
ただそれは一時的にテンションが上がっただけで、モチベーションが上がったわけではありません。
テンションとモチベーションは別物であり、テンションとは短期で上がり下がりする感情そのものです。
モチベーションとは目的意識を持つことなのですが、これを教える時に、僕はいつもレンガ積みのたとえ話をします。
モチベーションとは目的意識を持つこと「レンガ積み職人のエピソード」
くまの心さん:とある町でレンガを積んでいる人たちに「何をしているの?」と尋ねていきます。
ある人は「石を積んでいます」と答え、またある人は「壁を作っています」と答えます。次の人に訪ねてみると「教会を作っています」と答え、次の方は「人々を幸せにする空間を作っています」と答えてくれました。
この目的意識の差がモチベーションの高低差なのです。
モチベーションはテンションのように短期間で上下するものではありません。長期的な目的意識があること=モチベーションを高め続けることなのです。
ホストの場合、モチベーション=目的意識がなければ、お客様との連絡先交換や日々のLINE対応、お店での接客がただの作業になってしまいます。
そうではなくて「僕は歌舞伎町で1番をとるためにホストをやっている!」と目的意識を持ちモチベーションを保つことが大切です。
レンガ積みの話で例えると、石を積んでいるのではなく人々を幸せにする空間を作るためにホストをやっているんですよね。
だからこそ、心得三で「モチベーションを高め続ける」ことの大切さをメンバーに伝えるようにしています。
No.1にこだわることの大切さ
【マインド十ヵ条】心得四:何事でもNo.1にこだわる
どんな事でもNo.1を獲る。ストイックな精神を持ち、勝ち続ける。
【アクション十ヵ条】
一つ、俺たちは常に仲間と共に高めあい、助け合い、そして競い合う事で、高いモチベーションを持つ本気の仲間が集まる最高のハートコミュニティを構築します。
くまの心さん:マインド十ヵ条にある「何事でもNo.1にこだわる」と、アクション十ヵ条の「仲間と競い合おう」という心得をご紹介します。
「何事でもNo.1にこだわる」&「競い合う」
くまの心さん:お店のメンバーに、「今月の売上いくら?」と聞いても、自分がいくら売り上げているか分かっていないことが多いんです。そんなマインドでは1番なんか決して取れないですよね。
全員が1番をとりたいからこそ、1番の価値が上がると思いませんか?マラソンも、隣や後ろに選手がいるからこそ成り立つスポーツですよね。
隣に1番を目指している本気の仲間がいるからこそ、俺たちは限界突破できるんだぜ、というメッセージです。
アクション十ヵ条「高めあう」
くまの心さん:また、アクション十ヵ条に出てくる「高めあう」という意味についてもお話させていただきます。
ヤクルトの野村監督が就任したころは、試合でエラーをしているメンバーがいてもみんなが「ドンマイ」と励まして許しあっていたそうです。
この時、野村監督は怒ったそうなんですよ。
「なんでミスした奴にドンマイなんて言ってるんだ?プロならドンマイではなくて、なぜミスをしたのか、メンバー同士で注意するのが本当のプロだ」と叱責しました。
ホストの現場に置き換えると、「今日金曜日だし全然お客様来ないよね」と誰かが発言したときに、「わかるわかる今日は暇だよね、しょうがないよ」と傷をなめあっていたらダメなんです。
「あのお客様、癖があってつきにくいよね」と愚痴を言うのではなくて、「あのタイプのお客様だったら、こんな風に攻略してやろうぜ」と高めあうのが本物なんだと。
プロとして傷の舐めあいをするな、というメッセージを発信しています。
アクション十ヵ条「助けあう」
くまの心さん:そして「助けあう」という言葉の意味ですが、困っているキャスト(ホスト)がいたら、真っ先に駆け付けて助けてあげようよというメッセージです。
お酒があまり飲めないキャストがいたら、駆け付けて代わりに飲んであげればいい、足りない部分はお互いに助け合うことが大事だよということです。
上に立つ人間になるためには、売上実績がずば抜けていることだけではなく、周囲からの信頼が必要だと思うんですよね。
僕よりも実績が高い人がいるにもかかわらず、こうして僕が教育担当や代表になれたのは、日ごろから助け合いの精神で動き続け、信頼を貯蓄してきたからだと思っています。
感謝の気持ちを持つことの重要性|ありがとうの反対は「当たり前」
お客様に、仲間に、お店に、会社に。全てを当たり前の事だとは思わず、常に感謝の気持ちを持つ。
くまの心さん:マインド十ヵ条の「感謝の気持ちを持つ」という心得をご紹介します。
皆さんは、「ありがとう」の反対の言葉は何だと思いますか?僕は、ありがとうの反対は「当たり前」だと思っています。
当たり前の日常、当たり前のことにどれだけ感謝の気持ちを持てるか?ということを非常に大切にしています。
僕はおじいちゃん、おばあちゃんっ子だったのですが、家帰ると優しく迎えてくれて、僕の脱ぎっぱなしの服を畳んでくれたり、毎日あたたかいご飯が用意されていたりとても可愛がってもらいました。
どうしても思春期のころは「一緒にご飯を食べるのは嫌だ」と、ごねていた時期もありましたが。
しかしホストとなり、1人暮らしをするようになって、ご飯は自分で準備しなくてはならないし、服は自分で畳まないといけない、部屋を汚すと自分で掃除をしないといけないと、今まで日常にあった“当たり前”の不自由ない生活が、当たり前ではなくなったんですよね。
この時にようやく、家族に「ありがとう」と思えるようになりました。
僕たちホストは、一杯1,000円もするビールを飲んだり、1本50,000円以上するシャンパンをいただく仕事です。
入店当初は最高の笑顔でありがとうと思えていたものが、売れてきてこれらが当たり前になってくると「ありがとう」と思えなくなる瞬間があるんですよね。
お客様が高い料金を払ってドリンクを入れてくださり、一緒にお酒を飲むことができることを当たり前だと思わずに、日々感謝の気持ちを持つことが本当に大切なんだという心得です。
《くまの心の格言》
二流はお客様に感謝をしない
一流は自分でお客様にありがとうと言える
超一流はお客様からありがとうと感謝をされる
毎日の“小さな目標”をやり抜くことを積み重ねよう
小さな事でも日々の送票を持ち達成する事が大きな目標の達成へと繋がっている。
くまの心さん:マインド十ヵ条の「1日1日目標を持つ」をご紹介します。
1日1%ずつ成長をしていけば、1年間で3778%成長できる。ただ、毎日筋トレをしよう、本を読もう、お客様にLINEをしようと、実行するのは実際難しいものです。
大変だけれど、毎日小さな目標を決めて、やり抜くことが大事だよという心得です。
毎日30人のお客様にLINEを送ろうとしても、どうしても気持ちが乗らない日がありますよね。そのときおすすめの方法は「まず、やる」ということです。
人間の脳には側坐核(そくざかく)という器官があります。この部分が刺激されると脳全体に対して「やる気をだせ!集中しろ」と信号を出します。
では側坐核を刺激して脳を動かすためには、どうするのか?それはまず、嫌でも5分間ひとつのことを集中してやることなのです。
本を読み始めたら気づけば1時間経っていたという経験はみなさんあると思います。これがまさに側坐核の働きによるものなんです。
だるいなと思っても、まずは5分やってみることで、行動をすることができます。
この原理を知ってから、僕は必ず「会議は10分前に来い」と指導をしています。10分前に資料に目を通して、脳を活性化させてからスタートすることで、より良い状態で全員が会議に参加できるからです。
くまの心さんが考えるセミナー論と人事教育担当者へのアドバイス
―最後に、くまの心さんの今後の展望を教えてください。
くまの心さん:ホスト業界を変えていき、「ホストは成長できる業界だ」と思われるように動いていきたいと本気で思っています。
キャストたちは夜遅くまでアフターなどで酒を飲み、昼前に起きて毎日何十人ものお客様と連絡をとり、毎日お店へ出勤し、休みの日にもコツコツとお客様とLINEや電話をし、食事に行ったりして24時間365日常にホストをやり続けています。
20代の若い子達がこんなにも本気で仕事に向き合い、キラキラ働いている仕事は数少ないのではないでしょうか?
ホスト業界のイメージはいろいろありますが、実際は人間的にかなり成長できる場ですし、冬月グループのホストはプロとして本気で遊び、本気でチャレンジしている人が多いです。
ホストは成長できる業界だと思ってもらいたいからこそ、ミッションの中に「業界を変えていきたい」と掲げているのです。
【ミッション】
世の中の常識に縛られる事なく、俺たちが新たな文化/常識を作り出す。
常に業界の最先端を走り周りに影響を与え、業界の価値を高め続け新たな時代を築く。
そして、この業界をさらに日本に浸透させ誇れる業界にしていく。
―最後に、教育・育成で悩んでいる人事担当者や経営者へアドバイスをお願いします。
くまの心さん:「石を積むだけの人間にならず、目的意識を持ち、魂を込めて研修をしてほしい」と伝えたいです。
企業では「君は教育担当者、あとはよろしくね」と言われて、受け身で教育担当者になっているケースが多いのではないでしょうか。
一方的に「君は人事のセミナー担当だ」と言われるだけでは、石を積んでいるだけになってしまうでしょう。
何のために人事セミナーで喋らなくてはならないのか、どうして教育担当をやるのか、人事側にも目標設定をしてモチベーションを高めてあげる必要があると思います。
本人がなぜやっているのか分からなければ、その教育やセミナーは、ただの作業になってしまいますよね。
僕は今までさまざまな企業セミナーやマネジメント講習に参加をしてきているのですが、研修会社や企業のマネジメント講習では「情熱の入り方が薄いな」と感じることがあります。
僕の場合は、ホストを実際にやってきて感じたこと、現場の事例をまじえて話すようにしているのですが、恐らく研修講師の方は自分でマネジメントをやったことがない方も登壇されていますよね。
ここは、教育や研修、セミナーを実施する上で大きな違いだと思います。僕らは魂を込めて、目的意識を持って話せるので。
「この子たちに伸びていってほしい」という思い、目的意識=モチベーションがある状態で人事教育、セミナーや研修を実施することが大事だと思います。
言われてやるだけではなく、人事・経営者の皆さんも『心得三、モチベーションを高め続ける』に習い、目的意識を持って人材教育に臨んでいただければと思います。
まとめ
派手で自由な印象のホスト業界ですが、いい意味で期待を裏切られる取材となりました。
教えていただいた冬月グループのマインド十ヵ条、アクション十ヵ条はどれも奥が深く、他の会社にも展開すべき内容だと感じました。
くまの心さんは、煉瓦積み職人やホスト現場のエピソードを交えて説明してくださるので非常に明快でわかりやすかったです。
ぜひこれからも、企業の新入社員研修や人事向けセミナーなど実施していって欲しいと思いました。