「5+3=●」と「○+○=8」―「自律」とはどういう状態をいうか[2] |HR NOTE

「5+3=●」と「○+○=8」―「自律」とはどういう状態をいうか[2] |HR NOTE

「5+3=●」と「○+○=8」―「自律」とはどういう状態をいうか[2]

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※本記事は、グロービス経営大学院の「グロービス・ライブラリー」より、語句などを一部修正したものを転載しております。

【執筆者】村山 昇|キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)をはじめ、管理職研修、キャリア開発研修、思考技術研修などの分野で企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。 GCC(グロービス・キャリア・クラブ)主催セミナーにて登壇も多数。 1986年慶應義塾大学・経済学部卒業。プラス、日経BP社、ベネッセコーポレーション、NTTデータを経て、03年独立。94-95年イリノイ工科大学大学院「Institute of Design」(米・シカゴ)研究員、07年一橋大学大学院・商学研究科にて経営学修士(MBA)取得。 著書に、『キレの思考・コクの思考』(東洋経済新報社)、『個と組織を強くする部課長の対話力』『いい仕事ができる人の考え方』『働き方の哲学』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

会社(経営者や人事担当者、管理職者)も、働く個人も、そして研修事業者やキャリアコンサルタントも、「自律が大事だ」「キャリア自律しなくてはいけない」とよく口にします。しかし「自律」がどういう状態であるのか、ましてや「自律」を育むことがどういうことなのかを明解にとらえ、発信しようとしてきませんでした。

このシリーズ記事では「自律」をいろいろな角度からながめます。きょうは自律を「5+3=●、○+○=8」でとらえます。私が研修・ワークショップで使っている講義スライドとともにみてまいりましょう。

1.「閉じた質問」と「開いた質問」

ここに3つの演算式があります。

最初の「5+3=●」は「閉じた質問」と呼ばれるものです。これは誰が答えても「8」。それしか答えようがないので閉じています。

その点、2番目の「○+○=8」は「開いた質問」です。与えられた右辺の「8」に対し、人によって「3、5」と答えたり「2、6」と答えたり。左辺の組み合わせは無限にあります。

3番目の「○+○=○」は、右辺も左辺も無限に考えられるので、これはもう言ってみれば「開ききった質問」です。

2.「閉じた業務」=答えがある作業を着実にやる

さて、この3つの演算式をふだん職場で行っている仕事に当てはめて考えてみます。

まず、職場では「5+3はいくつ?」「3+4はいくつ?」「2+9はいくつ? きちんと計算して答えを出しなさい」のような業務があります。定型業務と言われる仕事がそのひとつです。求められる答えがあらかじめ決まっていて、任される者はその作業を処理する能力(ここでは足し算という演算技能)をきちんと覚えなくてはなりません。

この種の仕事は誰がやっても同じ答えになりますから、いわば「閉じた業務」と言っていいでしょう。「閉じた業務」において創造性はあまり必要ありません。ともかく正確に、効率よく、根気を持って1つ1つこなしていくのが「よい作業者」です。

そうして「この作業はもうあなたに任せても大丈夫ですね」と言われるようになる。これが仕事をするうえでの「自立」ということです。

3.「開いた業務」=答えは無限にあり、それを自分でつくり出す

次に、上司から「○+○=8」を考えてほしいと頼まれる仕事があります。

右辺の「8」は与えられた目標ととらえてください。その目標に対し、どうやれば達成できるかを考える仕事です。「8」を成り立たせる左辺の組み合わせはいろいろあるでしょう。それを自分なりに根拠をもって創造するのです。

これは「半分開いた業務」というべきものです。この種の仕事ではそれを行う人のやり方や創意工夫によって個性が出ます。これができる状態を「半自律」とみます。

そして最後に「○+○=○」の仕事です。

まず右辺の設定。自分の担当仕事において、あるいは自分のキャリアにおいて課題は何か、挑戦すべきことは何か、どんな目標を定めるのがよいかを考える。

次に左辺。課題を解決し、挑戦を乗り越え、目標を達成するための方法・プロセスは何が適当かを考える。そしてその実行。

そのように右辺も左辺も完全に「開ききった業務」を自分で取り仕切ることができるようになる。これこそが「自律」の仕事です。自律の仕事には、創造性はもちろん、時代をみる目や課題を発見する力、目標を設定するセンスや意志、そして必要に応じてプロセスを修正していく柔軟性や機動力が必要になります。

4.自律=右辺と左辺を自在に組み合わせて自分独自の等式を成立させること

自立から自律に向かう仕事・就労意識の3フェーズを1枚のスライドにまとめるとこうなります。

「5+3=●」的な閉じた業務というのは、足し算という技能さえ身につければ、後は決まった答えが出せるので比較的やさしいといえます。他方、「○+○=8」や「○+○=○」のように開いた業務は、決まり切った答えがないという意味で難しい。

また、「○+○=○」の形は、「○+○×○÷○-○=○」のようにどんどん発展させていくことができます。すなわち、足し算という技能だけでなく、掛け算とか割り算とかいろいろな技能を追加習得して、複合的に組み合わせ、自分が定めた右辺の目標達成に向かっていく。そうした右辺(=目標・ゴール)と、左辺(方法・手段・プロセス)の組み合わせを自在につくり出していくことが「自律」的に仕事をやる面白さです。

本稿で「自律」を定義するとすればこうなります───

「自律」とは、右辺と左辺を自在に組み合わせて自分独自の等式を成立させること。

5.自律的挑戦を重ねていけば想定外にキャリアは発展していく

仕事を得て、生計を立てていくために、まずもって「自立」は大事です。そのために、一人前以上に業務をこなせる知識・技能を身につけること。しかし、そこで安住していては長きキャリアの航海を渡っていくことは難しいでしょう。なぜならそういった「閉じた業務」を真面目にこなす人は世の中にたくさんいますし、機械やAI(人工知能)に置き換わる時代がきているからです。

フェーズ1に留まる人は、厳しい言い方になりますが、代替されるリスクのある「人材」です。またフェーズ2でも不十分です。フェーズ2の仕事は、やはり半分受け身なのです。右辺、すなわち目標や課題が組織や上司から振られるのを持っている状態です。

完全なる自律とはフェーズ3です。右辺、左辺の両方をつくり出せる人は、代替のきかない「人財」です。そしておそらく両辺を自分でつくり出すと、おのずとその仕事は「自分ごと」となり、志事的・ミッション的な性質を帯びてくるでしょう。

そういった自律の仕事を積み重ねていくと、自然にキャリアは切り拓かれてきます。何年か経って振り返れば、納得のいく、いやそれ以上に想定外に発展を遂げる職業人生になっているはずです。キャリア・プラニング(計画)をいくら綿密に立てたところで、日々の仕事において「○+○=○」の自律的挑戦がなされていなければ、絵に描いた餅になるでしょう。

自分の自律的挑戦が、他者の自律的挑戦と交わり、化学反応を起こせば、キャリア・プラニングのちっぽけな枠を超えて、想定外の世界が開けることもあります。自律的に働くことにはそういった醍醐味があります。

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