「新規事業は社内人材だけでは限界」外部プロ人材が支える挑戦と育成の両立|ビザスク宮崎 |HR NOTE

「新規事業は社内人材だけでは限界」外部プロ人材が支える挑戦と育成の両立|ビザスク宮崎 |HR NOTE

「新規事業は社内人材だけでは限界」外部プロ人材が支える挑戦と育成の両立|ビザスク宮崎

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※本記事は、株式会社ビザスク様より寄稿いただいたものになります。

「新規事業がうまくいかない」「任せられる人がいない」。多くの企業が抱えるこの悩みは、担当者の能力不足ではなく、“挑戦を支える構造”の不在に起因しているかもしれません。

ビザスクが実施した「新規事業担当者の選定に関するアンケート」では、企業の約8割(77.2%)が「経験やスキルに基づいて新規事業担当者を選定している」と回答しています。にもかかわらず、約6割(57.4%)が「担当者には事業成功に必要なスキルが不足している」と感じているという結果が出ました。

この事実は、個々の能力ではなく、組織設計そのものに課題が潜んでいることを示唆しています。

新規事業には、社内人材だけに頼る限界があります。経験やスキルだけでは補えない壁を越えるには、「外部知見」という新たなリソースの活用が不可欠です。外部からの知恵を取り入れ、挑戦を支える「構造」を整えることで、成果と育成の両立が可能になるのです。

本記事では、外部プロ人材の活用が新規事業にどのようなインパクトをもたらすのか、調査データと実際の事例をもとに紐解いていきます。

寄稿者宮崎 雄株式会社ビザスク 取締役 ナレッジプラットフォーム事業 代表

2006年にリクルートHRマーケティングに入社し、営業、新商品開発、リクルートホールディングス・リクルートジョブズの経営企画部門の責任者として従事。2019年3月にビザスクに参画、CEO室長とビザスクlite事業部長を兼任し法人向けマーケティングの立ち上げとビザスクliteの成長を推進した後、2022年より現職。横浜国立大学卒業。

なぜ新規事業は止まるのか?“スキル不足”ではない構造課題

新規事業が止まってしまう背景には、担当者個人の力量不足だけでは語れない「構造課題」が存在しています。

ビザスクの調査では、企業の約8割が「経験やスキルに基づいて担当者を選定している」にもかかわらず、約6割が「担当者のスキル不足」を感じているというギャップが浮かび上がりました。さらに、必要なスキルとして最も重視されていた「戦略立案力」が、実際に担当者が保有していたスキルでは5位にとどまっていたことも判明しています。

このミスマッチは、単なる人材選定ミスではありません。新規事業に求められるのは、通常業務とは異なる高い柔軟性や仮説検証力、さらには市場の変化を先読みする洞察力です。しかし、多くの企業ではこれらの要件を満たすだけの「支援体制」や「成長機会」が十分に整備されていないのが実情です。

実際、アンケートでは「社内で人材を探しても、新規事業経験がある人材が非常に少ない」「既存事業で優秀とされた人材でも、新規事業では力を発揮できないことがある」といった声が多く寄せられました。また、評価制度が既存事業中心に設計されているため、新規事業への異動がキャリアリスクと捉えられてしまうケースも散見されます。

このように、新規事業担当者の苦戦は「個人の問題」ではなく、「支援の仕組みが不足している問題」と捉えるべきでしょう。いま求められるのは個の万能性ではなく、挑戦できる環境と、それを支える外部リソースとの連携です。

「越境知」はなぜ効く?外部人材活用のリアルな価値

こうした状況を打破する鍵が、外部知見の活用です。社内にない知識や視点を取り入れることで、担当者一人ひとりの挑戦を強力にサポートする仕組みをつくることができます。

ビザスクの調査では、新規事業において外部プロ人材の活用経験がある企業は7割以上に達しており、その多くが「戦略立案」や「マーケティング」といった重要なスキル領域を補完できたと回答しています。特に、「戦略立案」は、担当者の選定時に最も重視されるスキルでありながら、社内ではなかなか育成が難しい分野とされています。

具体的な活用例としては、仮説検証フェーズでの壁打ち・想定顧客へのインタビュー設計支援・新規事業制度設計や事業化フェーズにおける伴走支援 などが挙げられます。単なるアドバイス提供にとどまらず、実際に担当者と一緒に考え、動く支援が主流になりつつあるのです。

さらに、外部知見に触れることで、担当者自身の視野が広がり、リスキリング(学び直し)効果も生まれています。たとえば、ある企業では新規事業開発プロセスに外部専門家を伴走させることで、社内の若手人材が独自に仮説検証サイクルを回せるようになり、結果的に組織全体の新規事業推進力が底上げされたという事例もあります。

重要なのは、外部人材を単なる「リソース」として捉えるのではなく、組織の一部として取り込み、挑戦の土壌を耕す存在と位置づけることです。

実践事例に学ぶ、新規事業×外部知見の成功モデル

外部知見を活用することの効果は、単なる理論にとどまりません。実際に多くの企業が、外部プロ人材との連携によって新規事業の前進と人材育成の両立を実現しています。

ここでは、代表的な事例を紹介しながら、その成功要因を紐解きます。

■ JVCケンウッド

JVCケンウッドでは、新規事業開発において、

  • 社内承認を得ることが目的化してしまう
  • 挑戦が個人に依存してしまう
  • 成果が出ずメンバーのモチベーションが低下する

といった課題を抱えていました。

同社はまず、外部プロ人材によるチームの土台作りに取り組みました。一人ひとりと1on1面談を行い、課題や不安を丁寧に傾聴することで心理的安全性を高めました。

さらに週1回の定例ミーティングでは「安心して話せる」「批判されない」場づくりを意識し、チーム内で本音を語れる関係性の構築を進めました。

続いて、“アイデアが自然と生まれる仕組み”を設計しました。メンバーが自分の興味関心をテーマにしたトレンドレポートを持ち寄り、毎週共有・議論する場を設けたことで、日々の気づきを共有する習慣が根づきます。

この取り組みの結果、年間で300件以上のアイデアが生まれ、特定の誰かが頑張るのではなく、「みんなで考える」空気感が芽生えました。

さらに、経営陣を巻き込むために「新規事業における支援者としての関わり方」をテーマとした講義を実施。経営陣の理解と支援を引き出し、組織全体で挑戦を後押しする基盤を整えています。

こうした一連の取り組みにより、「承認を取るため」から「自分たちでやり切る」へと目的意識が変わり、“やり切るメンタル”を持つ自律的組織への変革が実現しました。

ストレスチェックの結果でも「働きがい」や「職場の活気」などの項目が大幅に改善し、社内外から「変わった」と評価される存在へと進化を遂げています。

■ 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、新規事業創出プログラム「SparkX」を通じ、社員が顧客課題・社会課題を起点にボトムアップで事業を生み出す文化の醸成に取り組んでいます。

立ち上げ初年度に650件もの応募を集めた同プログラムでは、アイデアの実現性や解像度を高めるため、外部知見を単なる補完ではなく“組織変革と人材育成を同時に推進する戦略的な要素”として活用しています。

プログラムの運営事務局は、プログラム参加者が業界特有の知識やユーザー視点を効率的に取り込めるよう、外部有識者との接点を積極的に用意しました。

短期間で多様な知見を獲得できる調査サービスの活用で、業界構造や慣習の理解、初期仮説の構築を支援し、その後の深堀りには知見を持つ人材への個別インタビューを実施。さらに、最終審査を通過した3チームには、専門性の高い外部人材が中長期で伴走することで、現場解像度の向上と実行力強化を図りました。

これにより、単なる“学び”に留まらず、参加者の自走力や挑戦意識の醸成を後押ししています。

最終審査を通過した事業化フェーズにおいても多様なテーマに対して外部専門家が伴走。各プロジェクトにおける、検証の進め方、事業計画の立て方、交渉のポイントなど、具体的で実務的なアドバイスが提供され、業界特有の“勘所”を学びながら前例のない挑戦を進めました。

結果として、事業の方向性が磨かれただけでなく、「自ら考え、行動し、決断する」リーダー的人材の育成や、挑戦を讃える組織風土の醸成にもつながりました。

■ パナソニック くらしアプライアンス社

パナソニック くらしアプライアンス社の新規価値創出課では、「技術やサービスで一人ひとりのウェルビーイングを実現する」をテーマに、暮らしの課題解決に向けた新規事業開発に取り組んでいます。

しかし、少人数体制でノウハウや経験が不足し、担当者が複数プロジェクトを兼任することで工数も限られるという課題がありました。特に、マネタイズ方法やビジネスモデルの確からしさの検証には専門性が求められ、社内リソースだけでは十分ではありませんでした。

この課題に対し、同社は外部プロ人材の伴走支援を受けました。外部の専門家は、既存のアイデアやコンセプトをもとに、最適なビジネスモデルや有効なマネタイズ手法について助言を提供。Slackや定期ミーティングを通じて密に連携し、サービス設計の仮説をブラッシュアップしました。

今回の題材となった家事シェア支援サービスの開発において、対ユーザー向け(BtoC)と協力企業向け(BtoB)の両面から提供価値を設計。家事負担の偏りを解消し、協力によるポイントや体験につながる仕組みを考案しました。

外部専門家からは、どの協力企業に価値を提供できるか、収益構造や事業規模の算出方法など実践的な知見が提供され、短期間で仮説の精度が高まりました。今後は業界関係者へのヒアリングや、一般モニターによる試用調査を進める予定です。

この事例は、外部知見の活用が単なる補完ではなく、専門性を“即戦力”として取り込みながら限られたリソースで事業開発を推進し、挑戦意欲や実行力を高める戦略的な仕組みとして機能することを示しています。

■ アサヒグループジャパン

アサヒグループジャパンでは、グループ横断の新規事業開発プロジェクトにおいて、メンバーの多くが新規事業開発の経験を持たないという課題を抱えていました。さらに、未開拓領域に対する知見も不足しており、限られたリソースで事業を推進する難しさがありました。

こうした状況に対し、外部の専門家をプロジェクトメンバーとして迎え入れることで、必要な知見を補うだけでなく、実践の場でノウハウを内部に蓄積することを目指しました。

外部の専門家には、社内的にリードプランナーという肩書きで、プロダクトマネージャーやプロジェクトマネージャーに近い役割を担ってもらいました。週3回の定例ミーティングや日常的なチャットを通じて密な連携を取りながら、複数あった事業案のブラッシュアップや方向性の絞り込みを支援しました。

さらに、事業開発に関連する体験型のコンテンツにも積極的に参加し、利用者視点でのインサイトを把握した上で新たなアイデアや改善提案を行いました。スポットでその都度のニーズに合わせて依頼できる柔軟さも、プロジェクトを支える大きな要素となりました。

結果として、複数の事業案は一つのテーマに集約され、約1年かけて事業の骨子を形にすることができました。外部専門家の伴走により、ただ知識を“教わる”のではなく、共に手を動かすことで実践に裏打ちされたリアルな新規事業開発のプロセスを体感でき、知識やノウハウの理解も深まりました。

泥臭く一緒に挑戦する過程が、メンバーの自走力や挑戦意欲を育む土台となりました。

成功企業に共通するポイント

これらの事例から読み取れる成功要素は、次の3点です。

  • 初期フェーズから外部活用を設計に組み込む
    新規事業の仕組みそのものに外部リソースを組み込むことで、担当者が孤立しない。
  • フェーズに応じて必要な知見を柔軟に選択する
    仮説検証、事業化、拡大と、段階ごとに最適な知見をスピーディに取り込む。
  • 外部知見を“育成装置”として活用する視点を持つ
    単なるアウトソースではなく、担当者自身のスキルアップにもつなげる運用。

外部知見を戦略的に活用することで、成果だけでなく、挑戦する人材の可能性を最大限に引き出すことが可能になるのです。

「人を育てる」には、社外の力を使えばいい

人材戦略において、「育成」は欠かせないテーマです。しかし、従来の育成方法だけでは、新規事業に必要な柔軟なスキルや思考力を短期間で身につけることは困難です。

現在、多くの企業が人材ポートフォリオにギャップを抱えています。理想の人材像と現実の人材構成にはズレがあり、特に「DX推進」「グローバル対応」などの領域で人材不足が深刻化している状況です。

これらのギャップを埋めるために、企業が主に取り組んでいるのは「採用」と「社内研修」です。たとえば、デジタルスキルの強化に向けた外部研修プログラムの導入や、中途人材の積極採用といった施策が挙げられます。

しかし、採用には時間とコストがかかり、即戦力となる人材の確保は容易ではありません。また、研修によるスキル習得も、実践の場が不足しているためにスキル定着が難しいという課題が指摘されています。

つまり、現在の多くの企業では、「採用」と「育成」に打ち手が偏っているが、それだけでは変革に必要なスピードと柔軟性に追いつけないという二重の課題に直面しているのです。

ここで活きるのが、外部知見を活用した実践型育成です。外部のプロ人材とともにリアルなプロジェクトに取り組むことで、仮説検証や意思決定プロセスを体験的に学び、即戦力となるスキルを自然に獲得することができます。

新規事業成功の鍵は「社外知見を戦略に組み込むこと」

新規事業担当者の選定と育成において、「人材の質」に課題を感じる企業は少なくありません。しかし、その多くは個々人の能力ではなく、「支える仕組み」の不在に起因しています。

  • スキルギャップを埋めるには、内部育成だけでは間に合わない
  • 成果と育成を両立するには、外部知見の活用が不可欠
  • 外部プロ人材は、単なる補完リソースではなく、挑戦を支える支援装置になる

この視点を持つことで、新規事業の成功確率を高めるとともに、次代を担う人材を育てる土壌を育むことができるでしょう。

いまこそ、 「人がいないからできない」ではなく、「外とつながることで前に進める」そんな組織への進化が求められています。

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