人事が主導するプレゼンティーズム対策とは④~頭痛対策について |HR NOTE

人事が主導するプレゼンティーズム対策とは④~頭痛対策について |HR NOTE

人事が主導するプレゼンティーズム対策とは④~頭痛対策について

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※本記事は、株式会社フェアワークの吉田健一さんより寄稿いただいた記事を掲載しております。

前稿では、「ストレスチェック」についてお伝えいたしました。本稿では、頭痛対策についてお伝えします。梅雨の時期が近づくと、雨が多くなり頭痛や体調変化を感じる人もいるのではないでしょうか。

日本では、約3割の人が頭痛に悩んでいると言われています。我が国における頭痛の有病率は、片頭痛が人口の5〜10%、緊張型頭痛が人口の約20%であることが最近の疫学調査で報告されています(参照:一般社団法人日本頭痛学会)。すなわち、国民の4人に1人は、頭痛に悩んでいるということになります。

さらに、頭痛によって仕事や家事の生産性が低下し1日に2時間半の損失をきたしているという調査結果もあり、頭痛は本稿のテーマであるプレゼンティーイズムの主要な原因となっています。

特に片頭痛は、研究にもよりますが、日本国内の年間労働損失額としてプレゼンティーイズムによる損失が33~213憶ドル、アブセンティーイズムによる損失が27億ドルと試算されているほどです。頭痛への対応は、職場においても急務の課題といえるでしょう。

吉田 健一 | 株式会社フェアワーク代表

株式会社フェアワーク代表。日本医師会認定産業医・精神科専門医・精神保健指定医。1999年千葉大学医学部卒業。千葉県がんセンターと千葉県精神科医療センターの医長を経て医療法人社団惟心会理事長。参議院・国土交通省ほか上場起業など50以上の団体で産業医を経験後、衆参両院や中央省庁にて法定ストレスチェックを受託。2019年株式会社フェアワークを起業。健康経営にフォーカスした組織サーベイ「FairWork survey」を開発し、2021年に経産省後援の「HRテクノロジー大賞」にて注目スタートアップ賞を受賞した。現在はオンライン社内診療所サービスに注力している。

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本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。

1.自分の頭痛タイプを知る

実は、頭痛の症状や対処法などに関して正しい理解ができている人は2割程度で、多くの人は痛みを我慢しているという傾向があります。痛みは、それほど強くなくても自律神経系に影響を及ぼし、心理的にも大きな負担となります。

もし頭痛によって日常生活に支障があれば、適切な対応をすることで生活の質(Quality of Life)や仕事の生産性を向上することができます。まずは労働者自身が頭痛のタイプを知り、正しい対処法を取ることが重要です。

◎片頭痛

頭の中の血管をとりまく三叉神経が刺激されることにより、血管の拍動を「痛み」として感じるようになると考えられています。

片頭痛の特徴
  • ズキンズキンと痛むことが多い
  • 動くとつらい、じっとしている方が楽
  • 吐き気や嘔吐を伴うことがある
  • 光と音に敏感になることがある

◎緊張型頭痛

身体的・精神的ストレスが原因で首や肩の筋肉が緊張して血流が悪くなることや、脳が痛みをうまくやりすごすことができずに起こると考えられています。

緊張型頭痛の特徴
  • 頭全体がギューッと締め付けられるように痛む
  • 動いても痛みは変わらない
  • 吐き気は伴わない

◎群発頭痛

片頭痛や緊張型頭痛に比べると頻度の少ないタイプの頭痛ですが、じっとしていられないほどのひどい痛みが群発的、断続的に起こると言われています。

群発頭痛の特徴
  • 片側の目の奥や側頭部が激しく痛む
  • 痛む側の目が赤くなる、涙が出る、鼻づまり・鼻水などを伴う
  • 数週間から数ヵ月間、ほぼ毎日痛みが起こる

    ◎薬剤の使用方による頭痛

    もともと片頭痛や緊張型頭痛のある人が、頭痛薬を飲みすぎることによって起こる頭痛です。頭痛の日数が増え、1ヵ月に10日以上頭痛薬を飲む状況が続いていたら要注意です。

    2.女性と片頭痛:生理との深い関連性

    女性の健康と生活の質に影響を与える重要な問題の一つが、生理と深く結びついた片頭痛です。女性ホルモンと片頭痛との間には深い関連性があり、生理前や生理中に頭痛症状を訴える女性は多いのが現状です。

    月経周期に伴い、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの分泌が急激に低下することで、片頭痛が引き起こされると考えられています。女性の体内では毎月、エストロゲンの分泌量が大きく変動します。エストロゲン分泌がピークに達した後、次に急速に低下し、これが片頭痛を引き起こすとされています。

    しかし、多くの女性は、この生理時の頭痛を「生理に伴う仕方のないもの」と考え、適切な治療を受けずに頭痛を我慢してしまっています。それは、女性が多くの場合、自分の体の変化や痛みを「普通のこと」として受け入れ、医療的な対策を求めないことが一因と考えられます。しかし、これは適切な診断と治療の機会を逃してしまうことを意味します。

    生理時の頭痛に苦しむ女性は、医療機関を受診し、自身の症状を医師に伝えることをお勧めします。自身の頭痛の状態を客観的に理解し、適切な治療を受けるためには、「頭痛ダイアリー」などの記入が有効とされています。

    これは、頭痛の発生頻度や強度、関連するトリガー(引き金)や症状の変化を記録することで、治療方針を立てる上で重要な情報を提供します。また、これは医師とのコミュニケーションツールとしても有用です。ネット検索などで無料で入手できますので、ぜひ活用してみてください。

    さらに、女性の片頭痛は、天候の変化、特に雨の前によく発生します。これは、気圧の変化が頭痛を引き起こす可能性があるためです。このように、片頭痛のトリガーは人によって異なりますが、それを理解することは、症状を管理し、生活の質を向上させるために重要です。

    3.片頭痛とその前兆:多種多様な誘発因子

    片頭痛は、一般的な頭痛とは異なり、特定の「前兆」を伴うことが特徴的です。これらの前兆は、頭痛が始まる直前または同時期に現れる症状で、具体的には視覚障害や感覚異常などがあります。

    特に「閃輝暗点」と呼ばれる現象は、片頭痛の前兆としてよく知られています。これは、視界の中に「ギザギザした稲妻のような光」が現れる状態を指し、次第に視覚的な異常が拡大し、その後に視覚消失(暗点)が現れると、頭痛が始まる、とされています。

    一方で、片頭痛の発症には様々な誘発因子が関与しています。睡眠不足や睡眠過多、アルコールの摂取などが代表的な誘発因子ですが、これらに限定されるわけではありません。

    ストレスも頭痛の発症に関与しています。特に注意すべきは、ストレスがある時だけでなく、ストレスから解放された時にも頭痛が起こりやすいという点です。これは、一般的に「週末頭痛」とも呼ばれ、休日にリラックスした時に頭痛が起こる現象を指します。

    つまり、頭痛が起こる直前に特定の症状が見られたり、特定の状態や生活習慣が頭痛の発症を引き起こす可能性があるということです。これらのいずれか、またはいくつかに該当する場合、それは片頭痛の可能性があります。

    そのため、これらの症状や誘発因子が当てはまる方は、早めにかかりつけの医療機関や頭痛外来を掲げる医療機関を受診し、医師に相談することをお勧めします。

    4.最近の片頭痛治療

    トリプタン製剤と呼ばれる片頭痛の代表的な急性期治療薬、予防薬に加えて、2022年6月に新薬(一般名ラスミジタン)が登場しています。いずれも医療機関からの処方薬ですので医師の診察が必要です。

    従来の急性期治療薬は服用のタイミングが遅れると十分な効果を得られないことがありましたが、新薬では痛みの出現後1時間以降に服用しても効果がある、とされています。

    5.2つの頭痛が併発しているケースも少なくない

    頭痛を抱えているとそれだけで十分に辛いものですが、実は一人の人が同時に複数の種類の頭痛を抱えていることも、少なくありません。

    頭の片側だけに脈打つような痛みを特徴とする片頭痛と、頭全体が締め付けられるような痛みを伴う緊張型頭痛が同時に発症するケースが存在します。これらは症状も発症メカニズムも異なります。片頭痛は血管の周囲の炎症によって引き起こされますが、一方で緊張型頭痛は筋肉の収縮によって生じます。

    しかし、これらの特徴的な症状や発症メカニズムの違いにも関わらず、ほとんどの患者さんは自身が両方の頭痛を併発していることに気づかないものです。「自分の頭痛は片頭痛だから」とか「自分の頭痛は緊張型頭痛だから」という思い込みが、他の種類の頭痛の存在を見落とす原因となり、適切な診断や治療を受ける機会を逸してしまうこともあります。

    6.片頭痛の豆知識

    片頭痛を持つ方の約4割は頭の両側に痛みを感じます。緊張型頭痛と併存する人も少なくありません。女性の有病率は男性の約4倍、20~40歳代の発症が多く、日常生活に支障をきたしていたとしても、病院を受診したことがない人が多い疾患なのです。

    「片頭痛かな」と思ったら、日本頭痛学会や製薬メーカーが提供しているサイト(例:「頭痛の悩み.jp」大塚製薬株式会社 運営)などにアクセスして、まずは自身の頭痛タイプを知るように心掛けましょう。

    7.頭痛と向き合う 頭痛予防のセルフケア

    頭痛を予防するためにはセルフケアも有効です。頭痛がある方はぜひ生活習慣にも気をつけてください。

    • 寝過ぎ・寝不足のどちらもきっかけになるので規則正しい生活習慣を身に付けましょう。
    • 空腹時・脱水時に痛みが出やすいので気をつけましょう。
    • ストレス、明るすぎる環境、急激な温度変化や人工的な匂いなどの刺激を避けましょう。
    • ⻭の食いしばりに気がついたら、意識的に大きく口を開けて緩めてみましょう。
    • ブルーライトカットメガネの使用や、20-20-20 ruleと呼ばれる、近くと遠くを向後に見る目のエクササイズも効果的です。
    • 1日2分の頭痛体操:https://www.jhsnet.net/pdf/zutu_taisou.pdf(一般社団法人 日本頭痛学会 HPより)

    片頭痛は、決して珍しいものではなくごく一般的な疾病です。しかし、その症状や影響は個々の患者によって大きく異なり、適切な診断と治療が重要となります。頭痛はそれぞれのタイプごとに、取るべき対策が異なります。

    そのため、頭痛に悩むビジネスパーソンの症状を、人事としてもある程度は把握し、産業医などと十分に情報共有することが、最適な治療法を見つける上で重要となるでしょう。また、生活習慣の改善やストレス管理など、自己管理も片頭痛の予防と改善に大きな役割を果たします。これらを踏まえ、片頭痛の理解と対策を深めて、社員さんが健康な生活を送るための一助としていただければ幸いです。

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