社内副業とは?制度を形骸化させない、効果的な社内副業制度導入と運用に必要なステップとは |HR NOTE

社内副業とは?制度を形骸化させない、効果的な社内副業制度導入と運用に必要なステップとは |HR NOTE

社内副業とは?制度を形骸化させない、効果的な社内副業制度導入と運用に必要なステップとは<事例つき>

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※本記事は、株式会社エンファクトリー代表の加藤様より寄稿いただいたものになります。

社内副業とは、社員が本来の仕事に加えて、同じ会社内で別の仕事やプロジェクトに取り組むことを指します。最近では、大手企業を中心に社内副業を導入するケースが増えています。例えば、日立、KDDI、ソニー、リコー、パナソニック、NTT東日本、三井住友海上、丸紅など、多くの業種で導入が進んでいます。

しかし、大企業を中心に制度として導入は進んでいるものの、制度としてなかなか浸透しない、社内副業として切り出す文化がなく募集案件に偏りがある、時間捻出が難しく希望者が少ない、などの課題を感じている企業も少なくありません。

エンファクトリーでは設立以来「専業禁止」を掲げ、従業員の複業(副業)を推奨しています。個々人の兼業・副業を含む広義の越境行動を促す様々な施策を実施し、その経験や知見を組織に波及させる取り組みを行っています。

そして、2020年からその知見を基に事業化し、兼業副業制度の導入支援や越境学習のサービスを提供しています。これまでに80社以上、5,000名以上の支援を行ってきました。最近では、社外への兼業副業制度の相談よりも、社内副業の導入についての相談が増加しているとも感じています。

今回は、そんな社内副業の導入・活性化のヒントについてお話しします。

執筆者加藤健太株式会社エンファクトリー 代表取締役社長 CEO兼CHCO

1989年リクルートに入社し、事業統括、財務経理、経営企画などに携わり、財務経理マネジャーを経て、経営企画マネジャーとして従事。プライスウォーターハウスクーパースコンサルタントを経て、2000年オールアバウトの設立に参画、取締役最高財務責任者(CFO)に就任。2005年JASDAQ市場に上場、その際に日本で初めて知的資産経営報告書を発行。2011年当社を分社設立して代表に就任。人的資本経営を自社のみならず、中小企業、ベンチャーにも拡げるべく、最高人的資本責任者(CHCO)に就任。
X:https://x.com/kentaDONUTS

1. 社内副業のメリット

1-1. 多様なキャリアパスを提供できる

ジョブローテーションや定期人事異動に加えて、普段所属しているチームとは別の業務を経験することで、社員が新たなスキルを開拓しやすくなります。新たに取得したスキルを活かせば、所属している組織の業務を効率化できることもあるでしょう。

また、新たな業務を経験することによって、社員が自分に適した仕事を知るきっかけにもなります。適切なキャリア形成を推進するのにも、社内副業が活きる可能性があります。

1-2. 人材の定着と採用の強化

社内副業制度を通じて、自らの希望や選択による多様な経験を積む機会があることで、社員の満足度が高まり、離職率の低下につながります。

また、柔軟な働き方を提供する企業としてのイメージが向上し、優秀な人材の採用にも有利に働きます。

1-3. 組織の横の連携が生まれ、イノベーションにつながる

異なる視点や専門知識を持つ社員が集まることで、新しいアイデアや解決策が生まれやすくなります。

例えば、営業部門の社員が開発プロジェクトに参加することで、顧客のニーズを直接反映した製品開発が可能になります。また、技術部門の社員がマーケティングプロジェクトに関与することで、技術的な強みを活かした効果的なプロモーション戦略が生まれることもあります。

社内副業を通じて組織の横の連携が生まれることで、異なる知識や経験が融合し、イノベーションが促進されるきっかけになります。

2. 社内副業におけるよくある課題と、活性化のためのヒント

社内副業は、社員が本来の業務に加えて別の仕事やプロジェクトに取り組むことで、組織のサイロ化を緩和し、イノベーションを促進する効果があります。

しかし、これをうまく活用するためにはいくつかの課題があります。ここでは、社内副業を活性化させるための3つのヒントを紹介します。

2-1. Openness(情報の解放)

まず重要なのは、情報の解放です。どのような意図で社内副業を始めるのかを社員に丁寧に説明し、理解を得ることが大切です。説明会を開いたり、募集案件を説明する場を設けたりすることが効果的です。

また、実行された案件の共有や事例発表会を行い、インタビュー記事を社内報で共有することも有効です。弊社では、半年に一度「en Terminal」というイベントを開催し、社員がそれぞれの複業についてピッチを行い、全社員に共有しています。

この場には、卒業(退職)した方々も参加し、様々な情報が飛び交います。また、月次で「Teamlancer エンタープライズ」というツールを使い、複業や社内プロジェクトを自主的に共有しています。

情報の解放は、組織内のトランザクティブメモリーを共有し、知の結合を促進します。特に大きな効果として、周囲の興味を喚起し、社員が自発的に動き出すことが挙げられます。

社内副業は強制ではなく、社員の主体性や自律的な考えから生まれるものであり、「興味喚起」が重要な要素です。

2-2. Safety(安全性)

次に重要なのは、心理的安全性の確保です。心理的安全性を高めるために、参加のハードルを下げる工夫が必要です。

例えば、三井住友海上火災保険株式会社では、社内副業というよりも、あるテーマに興味のあるメンバーを募り、ざっくばらんにディスカッションする「meetUP」を開催しています。オンライン参加も可能にすることで、地方拠点や子育て中の社員も参加しやすくなり、参加者が増加しています。

また、募集する案件を「タスク型」ではなく「プロジェクト型」にすることも有用です。成果物や期日を明確に定義するタスク型の仕事はミスが許されず、引き継ぎや教育に手間がかかるため、参加者のモチベーションが上がりにくいです。

一方、プロジェクト型の仕事は新たな発想や結合を生みやすく、参加者のモチベーションも高まります。社内なので、失敗しても大きなリスクはなく、挑戦することが奨励されます。

2-3. Slack(緩さ、あそび)

最後に重要なのは、緩さやあそびの要素です。社内副業をガチガチのルールやプロセスで管理せず、柔軟に運用することが活性化の鍵です。

多くの企業は社内副業の対応時間を20%前後と設定していますが、柔軟に運用している企業の方が活性化しています。

評価についても、厳密に行うのではなく、受入部署からの加点評価のみを反映させる方法が企業に多く取られています。評価を厳密に行う企業では、かえって活性化しないことが多いです。

また、案件を募集する側の出しやすさ、応募する参加者の手の挙げやすさも重要です。事前確認や上長の承認を可能な限り減らし、面倒さを低減することが求められます。

3. 社内副業を実践している企業事例

事例1.丸紅

丸紅は2018年4月から、全社員を対象に勤務時間の15%を社内副業にあてることを義務化しました。

社員に通常の業務とは異なる部門を横断させ、新事業の創出を狙っていくとのことです。

参考:丸紅

事例2.KDDI

KDDIは、2020年6月から社内副業制度を開始しました。

組織の壁を越えた人材シナジーによるイノベーション創出が期待されています。

参考:~正社員約11,000名を対象、就業時間の約2割で実施~

事例3.リコー

リコーでは2019年から社内副業制度を導入しました。

勤務時間の2割まで社内で希望している仕事や活動に取り組めるようにする制度です。社長によると、社員たちの動きが活発化したとのことです。

参考:リコー・山下良則社長「三愛精神で『はたらく歓び』を提供」

事例4.SMBCグループ

SMBCグループでは、「自律的なキャリア形成」を目的として社内副業制度を導入しています。

多様な領域の業務スキル・経験を有する人材の育成を狙っていくとのことです。

参考:価値創造を支える人材戦略

事例5.コクヨ

コクヨでは社内副業の導入を通じて、社内の議論の活性化や、公募で社内副業を実施するプロセスを通じて組織に内省を促す効果を感じているとのことです。

参考:コクヨ編 04「取材殺到!スゴい社内副業」創業家5代目・コクヨ黒田英邦社長…社内ベンチャー生む謎の部署?【社長、質問があります!】

弊社では三井住友海上火災保険株式会社の実践事例を人事をお招きし、社内副業の組織活性化の秘訣を紐解くイベントを開催しました。ご興味のある方は、以下のレポートをご覧ください。

■ イベントレポートの目次
1)社内副業導入の背景:環境の変化に対応し、持続的な企業成長を実現したい
2)社内副業の狙いと仕組み:現場担当者自身が共創を生み出せる組織へ
3)社内副業「導入期」の取り組み:スタート時点から社員を巻き込み盛り上げていく
4)社内副業「普及期」の取り組み:カギは「オープンにすること」「人事自らの地道なサポート」
5)直近の取り組み状況:熱意ある社員をより増やしていきたい
6)社内副業の今後の展開:3つのチャレンジで、より共創を広げていきたい
7)パネルディスカッション
8)組織文化を変える「きっかけ」としての社内副業導入と、越境学習

4. 社内副業を導入したいと考える人事がまずやるべきこと

社内副業にはメリットが大きいものの、他社の実践事例をそのまま導入しても決してうまくいきません。

社内副業を導入する際には、その目的を明確にすることが重要です。導入自体が目的にならないように注意し、何を達成したいのかをはっきりさせることで、成功のイメージが見えてきます。

実際、従業員の稼働の偏りを解消したり、事業間の労働移転を目的とした社内副業が成功しているケースはほとんどありません。成功している企業は、従業員の自律性や主体性を促し、興味を喚起し、組織内部にトランザクティブメモリーを蓄積することを目指しています。これが業務改善やイノベーションの芽生えにつながるのです。つまり、「育む環境の整備」を実践している企業が成功しているのです。

ここでは社内副業についての基本的なポイントを紹介しましたが、通常の兼業副業や企業の越境学習など、幅広い分野で共通する観点です。これから何かしらの施策を検討する際に、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

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