行動評価は、社員を評価する手法のひとつです。米国を中心に拡がり、近年は日本でも導入例が増えてきています。行動評価は人材育成や業績の改善につながるというメリットがあるため、内容を知って導入を検討してみてください。
本記事では行動評価について解説し、導入する際に役立つ評価項目の決め方や導入手順も紹介します。現状の人事評価に課題を抱えている人事担当者は、ぜひ参考にしてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 行動評価とは?
行動評価とは、米国で提唱された人事評価方法のひとつです。名称の通り、行動の結果を重視した評価で、より公平で明解な評価を下せる方法として日本でも導入例が増加しつつあります。
また、行動評価では優れた結果を出した人の行動特性や能力の分析もおこないます。優秀な人材からヒントを得て、人材を育成することも行動評価の目的です。
行動評価は「コンピテンシー評価」とも呼ばれています。しかし、厳密には行動評価とコンピテンシー評価はイコールではありません。コンピテンシー評価は、優秀な結果を出した本人の行動特性を評価するものです。
コンピテンシー評価は行動評価のひとつですが、分けて考えたほうが混乱しないでしょう。
1-1. 行動評価と能力評価の違い
行動評価が社員の行動やその結果に注目するのに対し、能力評価は社員が保有しているスキルに注目します。具体的には、営業力やコミュニケーション能力、企画力やプレゼンテーション能力などに注目して評価するのが一般的です。
社員をより多角的に評価するために、行動評価と能力評価を併用するケースもあるでしょう。
1-2. 行動評価と業績評価の違い
業績評価とは、仕事における成果や成績をもとに社員を評価する手法です。売上や成約数など、客観的な数値をもとに評価するのが一般的で、成果を出すほど高い評価を得られます。
客観的でわかりやすい評価を実現できますが、努力や熱意などは評価されないため、成果を出しにくい部署の社員は不満を感じることもあるでしょう。他の評価手法を組み合わせて、うまく運用することが重要です。
2. 行動評価のメリット
行動評価を導入するメリットは、曖昧になりやすい人事評価基準を明確にし、人材育成や業績アップにつなげられる点です。具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
2-1. 人事評価の基準を明確にできる
行動評価は行動によって生まれた成果や、モデルとなった人の行動特性を基準に評価します。そのため評価基準を明確化しやすく、公平で納得してもらえる評価がしやすいです。
「成果を上げたのに評価されない」「資格や学歴だけで高い評価を得ている」などの不満が発生しにくくなるため、会社に対する不信感も払拭できるでしょう。
2-2. 業績アップにつなげやすい
行動評価を導入すると「結果を出せば評価される」というわかりやすいシステムが従業員に認知されます。また、評価基準の明確化によって課題も見えるため、評価を上げるための行動をとりやすくなるでしょう。
その結果、会社にとって有用な人材が育ち、生産性や個人の成績が上がって会社全体の業績アップにつながりやすくなります。
2-3. 人材育成に活かせる
行動評価のひとつであるコンピテンシー評価では、優秀な人の行動特性を分析します。それを元に人材育成をすれば、効率的に必要な能力を伸ばすことが可能です。
また、評価基準がわかりやすい行動評価は、従業員が評価を上げるために自主的な行動を起こしやすくなります。スキルアップを図ったり、自分の行動を見直したりして、研鑽する従業員も増えるでしょう。
2-4. 評価者の主観が入りにくい
評価基準が曖昧になりやすい能力評価では、評価者の主観によって評価にブレが生じることがあります。評価をする人の価値観や感情が入り、それが不公平感を生み出してしまいます。
行動評価には、結果やモデルという明確な評価基準があるため、評価者も評価を迷うことが減り、主観を取り除いた公平な評価ができるでしょう。
2-5. 企業の理念を浸透させられる
企業の理念を社内に浸透させられることも行動評価のメリットです。理想としている人材の行動特性を評価項目として設定しておけば、従業員は自然とその行動特性を真似るようになります。
企業の理念やビジョンをうまく取り込んでおくことで従業員の足並みが揃い、組織力が強化されるでしょう。
このように、何を主軸として評価をおこなうか人事評価制度の方針次第で、組織に与える影響は異なってきます。自社の現状にとって適切な人事評価制度を構築する必要があるのです。
しかし、人事評価制度を整えると言っても何から手をつければ良いか分からずお困りのもいらっしゃるかと思います。そのような方へ向けて、本サイトでは「人事評価の手引き」を無料で配布しています。自社にとって適切な人事評価制度を検討するためにまずは人事評価制度について網羅的に理解したいという方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
3. 行動評価のデメリット
さまざまなメリットがある一方、行動評価には以下のようなデメリットもあります。
3-1. 評価システムの構築に時間がかかる
評価システムの構築に時間がかかることは、行動評価の大きなデメリットです。優れた人材モデルを設定したり、行動特性を抽出したりすることは簡単ではありません。
どのような人物をモデルとするかが決まらず、評価システムをなかなか構築できないケースもあるでしょう。まずはモデルとする人物を何人か選出し、行動観察やヒアリングなどを通して基準となる項目を洗い出す必要があります。
3-2. すぐに効果が出るとは限らない
行動評価を導入しても、すぐに効果が出るとは限りません。理想とする行動特性がわかったとしても、簡単に自分の行動を変えられるわけではないからです。評価項目や行動特性が社内に浸透するまでに時間がかかるケースも多いでしょう。
また、抽出した行動特性が正しいものであったか、時間をかけて検証することも必要です。一定期間運用しても効果が出ない場合は、評価制度の再構築が必要となります。
3-3. 定期的に見直す必要がある
行動評価は定期的に見直す必要があります。理想とすべき行動特性は、市場や社会の状況などによって異なるからです。導入時に決めた行動特性や評価項目に固執していると、従業員の成長を促せなくなったり、企業の成長が止まったりするケースもあるでしょう。
行動評価をうまく運用するためには、適切なタイミングで制度を再構築することが大切です。
4. 行動評価における評価項目の例
行動評価の項目を決める際は、いくつかのカテゴリーに分類して考えるとわかりやすいです。以下、さまざまな業種で活用できる4つの分類例と項目を紹介します。
4-1. 目標達成に向けた行動
目標達成に向けた行動の評価とは、目標達成の度合いそのものや、目標達成に向けてとった行動を評価します。行動評価の基準になる項目です。
目標の達成率が重視される項目ですが、目標達成のために起こしたアクションや取り組む姿勢も評価するのがポイントです。
評価項目の一例は以下のようなものです。
- 業績や成果はどれほどか
- 指示を受ける前に自主的に行動しているか
- 会議やミーティングでアイデアをどれほど出したか
- 幅広い情報を積極的に集めているか
4-2. サポートと人的サービス
サポートと人的サービスの評価項目では、他の従業員や顧客への対応を中心に評価をします。この項目によって、数字や結果に表れにくいプロセスやサポート能力も評価することが可能です。
評価項目の一例は以下のようなものです。
- 相手の立場になって考えることができるか
- 感情ではなく論理的で根拠のある行動をしているか
- 課題に対してチームメンバーと協力して解決に臨んだか
- 顧客のニーズを察知して対応できているか
4-3. 周囲への影響力
周囲への影響力は、発言や行動によるインパクトと影響力を評価する項目です。影響力が大きければよいわけではなく、周囲に対するプラスの影響力を評価します。発信に加えて受信する能力も評価することで、関係を構築する能力も測れます。
評価項目の一例は以下のようなものです。
- 提案力や議論力はどれほどか
- 他の従業員と友好的な関係を築く行動をしているか
- 周囲から評価されるような発言や行動をしているか
- 読解力や傾聴力はどれほどか
4-4. マネジメントコンピテンシー
マネジメントコンピテンシーは、マネジメント能力そのものではありません。マネジメントによって発生した結果を評価する項目です。チームメンバーが協調できるように働きかけ、問題や課題に対して他の従業員や部下をけん引して目標達成に貢献したかを評価します。
評価項目の一例は以下のようなものです。
- 部下に対して誠実で配慮のある行動をしているか
- 感情をコントロールして冷静に話し合いをしたか
- トラブルに対して合理的で効果的な対処をしたか
- 誰に対しても社交的で分け隔てなく接したか
5. 行動評価の導入手順
行動評価を導入して効果的に運用するには、準備と周知が重要です。以下の流れを参考にし、社内全体の理解を重視しながら導入しましょう。
4-1. 行動評価の基本を理解する
行動評価と能力評価の違いや、必要な評価項目、導入による変化などをまずは知っておきましょう。前述のような評価項目の例を参考にしながら、行動評価についての理解を深めておくことが大切です。
4-2. モデルとなる人物のデータを集める
コンピテンシー評価をするために、モデルとなる人物(コンピテンシーモデル)を選定してデータを集めます。コンピテンシーモデルは複数人選定し、それぞれに共通する行動特性を洗い出すのが基本です。行動を観察したり、本人へのインタビューを実施したりして、理想像を固めましょう。
なお、実在する人物ではなく、会社が理想とする架空の人物を作ってモデルにすることも可能です。
4-3. 具体的な評価項目を決める
コンピテンシーモデルのデータから得られた結果を基準に、評価項目や評価基準を決めていきます。単純にコンピテンシーモデルの行動特性をなぞるのではなく、行動特性と会社の方針や理想を照らし合わせて決めることが重要です。
評価基準は難易度の設定に注意しましょう。高い目標を目指すあまり、現実的でない難易度設定にすると従業員のやる気を削いでしまいます。
4-4. 評価者への教育をおこなう
行動評価をうまく運用するためには、評価者への教育を実施することが重要です。評価手順や注目すべきポイント、評価する際の注意点などを把握しておかなければ、適切な評価を実施できません。
研修会などを開催して、行動評価の意味や方法を評価者へ周知しておきましょう。
4-5. 社内への周知をする
人事評価は、給与などの待遇に大きく影響するものです。そのため、急な評価基準の変化は混乱を招き、不満や不信感につながる恐れがあります。
行動評価によるメリットや評価基準、導入する目的を中心に、導入前に全従業員に対して十分に周知しておきましょう。
4-6. 定期的な見直しを実施する
行動評価に限らず、人事評価の項目や基準は定期的な見直しが必要です。会社の状況や世の中の情勢に合わせて、求める人物像は変化していくからです。
1年に1回程度、最低でも3年に1回を目安に行動評価の見直しをおこないましょう。
5. 行動評価を導入して業績アップにつなげよう
今回は、行動評価の意味やメリット・デメリットなどを紹介しました。行動評価はわかりやすい評価基準で、公平な評価ができる制度です。日本でも導入する企業が増えており、従来の能力評価と組み合わせて運用されるようになっています。
行動評価は結果を重視する評価ですが、項目設定によってプロセスやサポート能力も測ることが可能です。理想とする人物像や業種に合わせて項目を設定し、評価と人材育成に活用しましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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