採用計画を設計する上で気にしておきたいのが「有効求人倍率」。日常的に耳にする言葉ですが、理解しきれていない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、「有効求人倍率」とは何か、データの見方や注意すべきポイントについて、解説いたします。
目次
1.有効求人倍率とは
有効求人倍率は、有効求職者数に対する有効求人数の割合のことを指し、雇用動向を知る上で重要な指標の1つです。
厚生労働省は、全国のハローワークに申し込まれた求人数を求職者数で割って計算をし、その結果を「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」で毎月発表しています。
有効求人倍率が1以上であれば、求職者よりも求人数が多いといえる状況で、1未満であれば求人数より求職者のほうが多いといえる状況です。
新規求職者(新規求職申込件数)に対する新規求人数の割合。
その月に申し込まれた求職者数と、同じくその月に受け付けられた求人数を用いて、統計を出している。
一方で、有効求人倍率は、前月からの繰り越された求職者数と求人数に、上記新規求人倍率分の求職者数と求人数を加算して統計を出している。
2.有効求人倍率の数値によって分かること
有効求人倍率をみる上で、基準は”1″になります。ここでは、基準の高低差によって有効求人倍率が何を表すのか紹介いたします。
2-1 有効求人倍率が高いとき
求職者よりも求人数のほうが多く、人手不足な状況を指します。
企業側としては応募者が集まりづらい状況になり、求職者側としては選択肢が多く有利なため、「売り手市場」になります。
そのため、企業側が希望する条件での採用活動が難しくなり、応募要件を緩和せざるを得ない状況もあり得ます。求職者の流出を避けるために様々な施策の実施が求められます。
2-2 有効求人倍率が低いとき
求人数よりも求職者が多い状況を指します。
企業側としては一定の応募者数を期待できることから採用しやすくなり、求職者側としては就職が難しい状況になるため、「買い手市場」になります。
しかし、有効求人倍率が低い時期は景気の低迷と重なります。そのため、不景気でも業績の良い企業や、そのような状況下でも採用活動を継続できる企業にとっては、採用しやすい時期になります。
3.有効求人倍率を見る上での注意ポイント
次に、有効求人倍率を見る上で考慮すべきポイントを3つ紹介いたします。
3-1 ハローワーク以外での求人・求職が含まれない
有効求人倍率は、厚生労働省がハローワークでの求人数・求職者数をもとに算出したもので、民間企業の求人サイトなどハローワーク以外で募集される求職者の求人は反映されていません。また、毎年の大学卒業者(新卒)の採用が計算に入っていないことも注意すべきポイントです。
採用したいターゲット層がハローワークを利用して就職活動を行わない場合もあるため、その点について留意した上でデータを確認しましょう。
3-2 正社員の求人とは限らない
ハローワークにて出される求人の中には、無期労働契約(雇用期間が定められていない契約)だけでなく、有期労働契約(雇用期間が定められている契約)も含まれています。
つまり、派遣、契約社員が含まれているので、正社員だけの有効求人倍率ではありません。そのため、母数に含まれている雇用契約を確認してから見るようにしましょう。
3-3 地域、職種などによって数値が異なる
ニュースなどで報じられる有効求人倍率は、労働市場全体の平均値であることが多く、そこには自社と異なる地域た産業、職業も含まれています。そのため、自社のカテゴリに合っているデータを見ましょう。
地域によっては、契約形態が混合した求人倍率しか発表されておらず、わかりにくいものもあるため、ものによっては数値の信ぴょう性に疑問の余地が残ります。
4.最新の動向(令和3年10月分)
4-1 正社員の有効求人倍率(新規学卒者を除く)
(縦軸は有効求人倍率。一般職業紹介状況を元に作成。)
2020年10月から2021年10月の全国の正社員に限定した有効求人倍率の変遷は、2020年10月/0.8倍、2021年9月/0.89倍、2021年10月/0.91倍となっています。ここ1年は低水準を記録し、求人数よりも求職者のほうが上回っている状態です。
4-2 都道府県・地域別有効求人倍率(就業地別・新規学卒者を除きパートタイムを含む)
(縦軸は有効求人倍率。一般職業紹介状況を元に作成。)
2021年10月のパートタイムを含む都道府県別の有効求人倍率の平均は1.15倍でした。最も高かったのは福井県/1.93倍。続いて島根県/1.68倍、秋田県/1.6倍、富山県/1.56倍、岐阜県/1.56倍となっています。
一方、最下位は沖縄県/0.8倍で、続いて東京都/0.9倍、神奈川県/0.93倍、大阪府/0.94倍、千葉県/0.97倍となっています。
4-3 職業別有効求人倍率(パートタイムを除く)
(縦軸は有効求人倍率。一般職業紹介状況を元に作成。)
2021年10月の職業別有効求人倍率の平均は1.1倍でした。最も高かったのは警察官や消防士、自衛隊などの保安の職業/6.17倍。
続いて大工などの建設・採掘の職業/5.54倍、接客業や介護職などのサービスの職業/2.17倍、バスや電車の運転士などの輸送・機械運転の職業/1.89倍、研究者や開発技術者などの専門的・技術職の職業/1.83倍となっています。
一方、最下位は受付係などの事務的職業/0.34倍となっています。
5.まとめ
有効求人倍率の理解は深まったでしょうか?
有効求人倍率とは、有効求職者数に対する有効求人数の割合のことを指し、雇用動向を知る上で重要な指標の1つです。
今回紹介した注意すべきポイントを意識しながら、採用活動に向けて正確に認識してみてください。