人材獲得競争が激化する中、多くの企業が潜在層へ向けた早期認知・理解を獲得するためのリクルーティング活動に力を入れ始めています。
特に、採用候補者となり得る方々に自社に関する情報を届ける「採用広報」に取り組む企業が増加しており、その手段も年々多様化しています。
今回、HR NOTEでは「これから採用広報に取り組みたい」と考える企業の人事・採用担当者がどのようなスキルを付けなければならないのか明らかにしたいと考え、採用広報サービス「talentbook」を提供する株式会社PR Table様と共同で、採用広報に求められるスキルに関しての調査を実施しました。
本記事では、100名以上の人事・採用広報担当者および責任者の皆様に回答いただいた本調査の結果を詳しくご紹介させていただきます。
まだ採用広報に取り組んでいない企業の皆様も、これから採用広報に取り組みたいと考えている皆様も、ぜひ参考にしていただければと思います。
目次
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。
1. 採用広報を実践する上で重要なスキルとは…?
まず、採用広報活動を実施する上で必要となるスキルとは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
今回は、採用広報を実践する上で重要なスキルを「5つのカテゴリ」と「18の要素」に分類し、それぞれの重要度について調査しました。
▶【採用広報実践スキル】5つのカテゴリと18の要素
①戦略構築スキル | 1. 採用戦略に基づいた情報発信計画の策定 |
2. ブランド戦略の構築 | |
3. 適切な人材配置とコミュニケーションプラン | |
②マーケティングスキル | 4. ターゲット層の特定や市場・競合分析 |
5. デジタル広告のプランニング・運用スキル |
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6. ウェブサイト構築・運用スキル | |
7. ソーシャルメディアマーケティング | |
③クリエイティブスキル | 8. コンテンツの企画・構成力 |
9. ライティング・編集スキル | |
10. イラストレーションやデザインスキル | |
11. コピーライティングスキル | |
④関係構築スキル | 12. ステークホルダーを味方にするコミュニケーション力 |
13. 炎上を回避する危機管理・メタ認知能力 | |
14. 進行管理するプロジェクトマネジメント力 | |
15. 社会を巻き込むインフルエンサー力 | |
⑤データ活用スキル | 16. データ収集と分析手法の選定 |
17. キャンペーン管理と適切なKPIマネジメント | |
18. データに基づく意思決定とPDCAの実行 |
もちろん、この表に記載しているスキルは採用広報を実践する上でどれも重要なスキルとなりますが、今回の調査では、このスキルの中で最も重要なスキルとは何か、各スキルカテゴリの重要度について5段階評価で回答いただきました。
そして、その平均スコアをレーダーチャート化したものが、次の図になります。
▶採用広報の実践スキルチャート
※重要度の5段階|1:まったく重要だと思わない、2:あまり重要だと思わない、3:どちらでもない、4:少し重要だと思う、5:かなり重要だと思う
5つのカテゴリで平均スコアが最も高かったのは「戦略構築スキル(平均スコア4.37)」です。
採用広報では、SNS運用やコンテンツ作成などのテクニカルなスキルが大事だと思われがちかもしれません。しかし実際は、採用広報を実践することが会社にとってどのような影響をもたらすのかといった全体的な設計を考えるスキルが必要と考えている方が多いようです。
また、18のスキル要素におけるTOP3は「ステークホルダーを味方にするコミュニケーション力(平均スコア4.54)」「コンテンツ企画・構成力(平均スコア4.44)」「ブランド戦略の構築(平均スコア4.42)」という結果になりました。
▶採用広報の実践スキル18要素ランキング
2. 65%以上が採用広報を実践する上で「スキル不足」を実感
それでは、実際にこれらのスキルを既に身につけていると感じている人事・採用広報担当者はどれくらいいるのか調査したところ、「どちらかというと不足している」「かなり不足している」の合計が65%以上という結果に。
多くの方が採用広報の実践に際して自身の「スキル不足」を実感していることがわかりました。
Q. 採用広報を実践する上で必要なスキルを十分身につけられていると感じているか?
前述の通り、採用広報の実践において求められるスキルの幅は5カテゴリ18要素と広範囲にわたります。そのため、担当者の方は日々の業務の中で少しずつスキルを磨いていくことが重要でしょう。
スキル不足を補うための取り組みとして実践していることについては、75%以上が「書籍や記事を読む」、50%が「イベント・講座への参加」と回答しています。
また、YouTubeなどの「動画プラットフォーム」を視聴してスキル獲得をおこなっている方も45.3%いることもわかりました。
Q. 採用広報に必要なスキルを身に付けるために現在実践していることは?
3. スキル獲得に向けた取り組み効果|回答者のリアルな声をご紹介
ここで、回答いただいた皆様がスキル獲得に向けて具体的にどのような取り組みをおこなっているのか、そして、その取り組みの効果はどのようなものだったのか、皆様からのリアルな声をご紹介できればと思います。
①マーケティング部や広報部のメンバーに勉強会を開いてもらう
最も多かった回答は、採用広報に関するスキルを学ぶための勉強会の開催です。
株式会社マクアケ人事本部の柿本様からは、「マーケティング部や広報部のメンバーに勉強会を開いてもらい、採用広報に活かしている」との回答をいただきました。
SEOを取り入れた文章作成、SNS運用の知見など、採用広報に関するスキルを持つ方が近くにいる場合は、まずはその方々に聞いてみることがスキル獲得に向けての第一歩になります。
②他社人事との交流の場に出席し、ディスカッションを実施
また、社内だけでなく社外の方との意見交換を通じて視野を広げている方も多く、ブロードマインド株式会社人事総務部採用マネージャーの長谷川様からは「他社人事との交流の場に出席し、ディスカッションを実施している」との回答をいただきました。
社外の方と関わる機会を設けることで、相対的に自社のことを評価できるようになり、求職者や就活生と対峙した際に自信を持つことができるようになったメンバーが増えたとのこと。
このように、獲得したスキルをアウトプットする機会を作るような取り組みも非常に重要ですね。
③採用に求められるコンピテンシーの整理とレベル分け
ランスタッド株式会社Head of Talent Attraction & HR Excellenceの西野様からは、「採用に求められるコンピテンシーの整理とレベル分けをおこなうことで、全員が自己評価でき、次に何を学ぶべきかがわかる仕組みづくりをおこなっている」という回答をいただきました。
そもそもスキル獲得においては、そのスキルが具体的に何か定義し、どうすればそのスキルを獲得できるか見えるようにすることが必要です。そのため、企業としてそのようなスキル獲得に向けた体系的な教育をおこなっていくことも必要になっているかと思います。
実際にランスタッド株式会社では、これらの取り組みを通じた社外への広報力アップで、リファラル採用数が1年で2倍に伸びたという成果もあげているようです。
▶上記項目以外に実践しているスキルアップの取り組み(自由回答の一部)
- 福利厚生として「AIラーニング費」を開始し、AIツールの活用を促進。(濱田 知世 様|株式会社YOUTRUST 経営企画室 採用・労務・総務担当)
- 編集者の社内副業を推進(渡邉 慎平 様|ナイル株式会社 カルチャーデザイン室)
- Youtubeチャンネルで外部のYoutuberや専門家とコラボ(竹田 悠斗 様|株式会社いえらぶGROUP 人事部課長)
- 社内で開催しているハッカソンなどを通じて理解を深めたAIツール等の活用を強化し、より業務に落とし込む(仙波 優磨 様|株式会社M&Aクラウド 人事)
- オンラインセミナー参加や無料相談などを活用(黄瀬 真理 様|株式会社ライフワークス コミュニケーションデザイン部部長兼戦略人事推進責任者)
- HR関連プロジェクトにクリエイティブや広報メンバーを直接アサインできる仕組みづくり(田中 里子 様|GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 CHRO / HR戦略室長)
その他、ここでは取り上げきれませんでしたが、多くの方が自ら積極的にスキル獲得をおこなうための動きを取っていることがわかりました。変化する採用市場の中で生き残っていくために、ぜひ取り組みを強化していってほしいと思います。
4. 企業として採用広報に関する「スキル不足」をどのように補うべき…?
最後に、採用広報に必要なスキルを持った人材をどのように確保しているのかといった調査では、32.7%が「社外からスキルを持った人材を採用」、28%が「副業や業務委託の活用」と回答しており、社外から専門的な人材を採用したり、サポートに入ってもらったりしていることもわかりました。
Q. 採用広報に必要なスキルを持った人材をどのように確保しているのか?
また、24.3%は「社内のキャリアチェンジ」と回答しており、社内でスキル不足を補う取り組みを進めている企業が増え始めていることも伺えます。
採用広報の実践に関するスキルは、すぐに全てを獲得することができるものではありませんし、そのスキルを身につける方法にも正解はありません。
しかし、これからの人事担当者にとって必ず必要となるスキルであるため、企業としてこれらのスキル不足へ対応するための体制を整えてていくことが、まさに今求められています。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか。今回の調査結果をまとめると、次の通りです。
- 採用広報を実践する上で重要だと感じるスキルTOP3は「ステークホルダーを味方にするコミュニケーション力」「コンテンツ企画・構成力」「ブランド戦略の構築」
- 65%以上の方が採用広報を実践する上で「スキル不足」を感じている
- 9割以上が採用広報を実践するスキルを身につけたいと考えている
幅広いスキルが求められる「採用広報」は、社内で担当できる人材が不足しているケースも多いことでしょう。
従来のスキルセットだけでは対応しきれないため、ぜひ本記事も参考に企業として採用広報スキルを身につける準備を進めていってください。
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。