HR NOTEの読者のみなさん、こんにちは。株式会社YOUTRUSTの岩崎と申します。
皆さんの周りで、最近転職した“優秀な知人”はいらっしゃいますか。彼らはどうやって転職をしているのでしょうか。
私はDeNAで中途採用担当をやったのち、現在は「YOUTRUST」というキャリアSNSを作っていますが、仕事柄たくさんの「優秀だな」と感じる人たちの転職経路を見てきました。
そして、その転職手法をよく見ていると、過去とは違う転職の仕方をする人たちが増えているのを感じています。
ではどうすれば、「優秀な人材」に出会えるのでしょうか?今回は、そのための一つの手法として、「お試し就職」についてお話させていただきます。
目次
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。
転職活動せずに転職する優秀な人たち
優秀な人たちの転職活動をインタビューしていると「転職はしましたが、転職活動はしてません」と答える方が増えている。
「いやいや、転職活動なしに転職ってどういうこと?」となるのだが、よく聞くとこういうことらしい。
- 知人に副業でもいいから手伝ってほしいと言われて副業を開始
- 副業しているうちに面白くなる
- フルタイムにならないかとオファーをもらう
- 副業先に転職する
このように、はじめは信頼している友人に誘われて「自分が役に立つのであれば」と副業でのお手伝いを始めたところ、そこにじわじわとそちらに軸足が移動していったというわけだ。
たしかに優秀だといわれる人たちは転職市場にめったに出てこない。
想像してみてほしい、現職で成果を出している人たちは、現職でも面白い仕事にアサインされることが多く、また厚遇の場合も多い。
そもそも「こんな会社辞めてやる!」と思う瞬間も少ないのだ。
すると、もちろんエージェントに登録して履歴書や職務経歴書を各社に送る、なんてことも滅多にないのだ。
人事が「優秀な人がいない」とよくいうのにはこういう背景があるのだ。世の中には優秀な人はたくさんいるのに、市場には出てこないのである。
そしてこれを逆手にとって、優秀な転職潜在層を採用するために、意図的に「副業⇒正社員」の流れを生み出している、動きの早い企業が増えている。
これがいわゆる「お試し就職」だ。
「お試し就職」の導入は、意外と簡単である
「お試し就職」とは文字通り、試しに働いてみてから入社するか決めるというものだ。
多くは副業として、業務委託費を支払って、実際に仕事をしてもらうというものが多い。
採用企業からしても、知らない人を突然正社員で採用するのではなく、実際に一緒に働いてみてオファーするかを決められるため、スタートアップをはじめとした感度の高い企業からこのような動きが出てきている。
働き方改革の追い風はもちろん、昨今は在宅勤務により通勤時間や夜の飲み会がなくなったため、副業をしたいという人が増えている。そういうニーズとも合致する、現代の優秀層採用には最適な採用手法かもしれない。
お試し就職のメリットとデメリット
一方でお試し就職はメリットばかりではない。求職者、採用企業両者にとって以下のようなメリットとデメリットがある。
求職者にとっては、
- 中の実態を見た上で意思決定できるので転職ミスのリスクが軽減できる
- 副業中に勝手を知っているため、入社してから実際に成果を出すまでが早い
などミスのリスクが軽減できるというメリットがある。
一方で、
- 並行で副業できるのは通常多くても2〜3社が限界なので全ての転職先候補の会社をお試しできるわけではない
というデメリットもある。採用企業にとっては、
- 転職市場に出てこない優秀な人が採用できる
- 面接だけでは見えない側面を見ることができるので、採用ミスの可能性が軽減できる
などが良い点なのだが、
- 副業受け入れが必要になるので一気に何人も平行して選考しづらい
- 副業から入社を断られたときに、他に候補者がおらず、ふりだしに戻ることが多い
などリスクももちろんある。
良いことだらけではないので、ポジションや採用要件によって、必要に応じた使い分けが良いと考えている。
具体的に言うと、本当に強い人や、めったに採用できない人を採用したい場合に使うことをオススメしたい。
お試し就職→正社員に成功した企業事例
ここからは実際に「お試し就職」を通じて、採用に成功した企業の事例をご紹介したい。
【事例】株式会社POLの営業責任者として入社・桐原有輝さん
桐原有輝さんは、4ヶ月の副業=「お試し就職」期間を経て、31歳の時に正社員として入社した。
新卒で野村証券、その後は人材紹介会社で着実なキャリアを歩んできた。最初スカウトメッセージが届いたときは、POLの社名もサービス名も知らなかったとのこと。
「未知の会社でしたが、POLだけが『副業からでもウェルカム』というメッセージをYOUTRUST経由でくれました。正社員が条件の会社は、面談もお断りしていましたね。次のキャリアを築く上で、会社選びは絶対に間違えたくなかったんです。リスクを排除するために、副業で複数の会社を見たいのは、当然の流れでした」
と語る。
桐原さんにとって、副業は文字通り「お試し就職」の場だったのだ。
最大4社同時に副業していた桐原さんを、POLはどのようにして仲間にすることに成功したのか?
同社、執行役員の渡辺さんは、お試し就職経由での正社員採用成功のポイントをこう語る。
「まず、情報開示を正社員と同じレベルでおこなうこと。たとえば弊社では、Slackのチャンネルも原則全て公開しています。事業計画などの重要な内容も含まれます。特にリモートワークが増える今、情報不足による働きづらさは、出来る限り排除すべきだと思います。もう1つは、定期的なフィードバックをおこなうこと。報酬や業務内容、正社員意向を振り返るために、1ヶ月ごとに時間を設けています。副業の方の成果や成長は、基本的に受け入れ側にあると思っているので欠かせません」
桐原さんは、社員と同等の権限・責任で働く環境を得られたため、会社・人のリスク排除ができ、さらに事業への当事者意識が高まったことで、自然と正社員入社を決断したと話す。
お試し就職は、期限を切らないと失敗する
では、「お試し就職をやれば優秀な人を採用し放題なのか」というとそこには明確に気をつけることがある。期限を切ることだ。
考えて見てほしい、だらだら副業として居心地良い環境を作ってしまうと、フルタイムになる必要がなくなってしまうのだ。
お試し就職中は副業として収入を得ている場合が多いため、副業先にフルタイムになることで、逆に副業がなくなってしまい、短期的には収入も減ってしまう。
気持ちよく働いて、副業収入も入るのにで、それを手放したくなくなるコンフォートゾーンに入ってしまうのが最悪だ。
なので、副業を開始する際にお互いに「1〜2ヶ月で意思決定しましょう」と必ず期限を切って決めるということがコツである。
お試し就職は選考という側面も強いので、選考フローとして候補者の流動性を担保する必要があるのだ。
フルタイムに口説くのは難しくない
「その1〜2ヶ月でじゃあどうやって口説くんですか?」という質問をいただくことが多い。
答えはシンプルで、自分がこれされたら転職するな、ということを相手にカスタマイズして提供するのだ。正直、お試し就職かどうかは関係なく、口説くのに通ずることかも知れない。
- 何があったら転職したいのかを知る
- 一番オファーをもらって嬉しい人から、まっすぐになぜ一緒に働きたいのかを伝える
基本はこれである。非常にシンプルかもしれないが、その人が仕事に何を求めているのか、何があったら転職に踏み切れるのかを知ったうえで、最もその人が嬉しいと感じる人から理由も合わせて心の底からオファーする。
正面から「今、あなたが必要だ」と言われたら、あなたも真剣に考えてしまうのではないだろうか。それをやるしかないのだ。
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。