はじめまして。ワンキャリアの寺口です。
キャリア支援や採用支援の領域で仕事をしています。最近の「採用シーン」について、少し思うことがあり、この文章を書いています。

寄稿者寺口 浩大氏株式会社ワンキャリア Evangelist
兵庫県生まれ。京都大学工学部卒業。リーマンショック直後、三井住友銀行に入行。企業再生、M&A関連の業務に従事したのち、デロイトで人材育成支援に携わる。現在、ワンキャリアでEvangelistとして活動。専門はPublic Relations。現在は、2025年10月のカンファレンス、採用ウルトラキャンプに向けて「採用を開こう、そして超えよう」の実現のための仕込みに奮闘中。
最近、仕事をする中で、採用は本当にこのままでいいのだろうか、、と思うことが増えました。個人の考え方や社会情勢が変化する中で、「採用のあり方・やり方」だけがずっと止まっている。そのような感覚を覚えています。
僕がHR領域で仕事をし始めてから約10年、個人の「はたらく」というテーマを取り巻く環境は本当に大きく変わりました。働き方改革、転職の一般化、複業やリモートワークの浸透など、変化をあげればキリがありません。
一方で、採用はというと、どうでしょうか。新卒採用でいうと、2020年にコロナ禍へ突入したことで企業説明会がオンライン化せざるを得ない状況になりましたが、それ以外に大きな変化はないように見えます。
中途採用はエージェント依存状態が続いています。「〇〇採用」や「採用〇〇」のような概念的な言葉は毎日のように発表され、AI活用も含めた新しいサービスも続々と登場しています。採用支援サービスのカオスマップには所狭しとサービスロゴが並んでいます。
しかし、この10年で採用はどう変わったか?という問いに対しては「ただただ難しくなった」というくらいで、あまりポジティブな変化が起きた明るいニュースはないように思えます。
目次
止まっている採用、閉じている採用
採用のあり方・やり方は、なぜこんなにも変わらないのでしょうか?僕はこの「停滞感」の原因は「閉塞感」にあると思っています。「採用」が閉じている。そう思うのです。
採用は3つの意味で閉じていると思います。
- 社内に閉じている
- 社外に閉じている
- 他領域に閉じている
順に説明します。
社内に閉じている
「採用は採用担当者と採用チームだけが頑張ってやるもの」という認識が、未だに多くの企業の中で通念として残っているということです。
「採用に駆り出された」
「人事がまた面接の依頼をしてきた」
「新人を受け入れるほど余裕がない」
誰しも思ったこと、言ったこと、聞いたことがあるのではないでしょうか。
断言しますが、人事だけが頑張って採用がどうにかなったのは遠い過去の話です。労働人口はものすごい勢いで減少し、2040年には1,100万人も足りなくなるという予測がされています。
今既に、ほとんどの企業が採用計画に対して人数が充足していません。大企業で64%、中堅企業で86%、中小企業で79%の企業が、採用計画に対して「定員割れ」を起こしている状況です(参照:HR総研:2025年&2026年新卒採用動向調査(12月)結果レポート)。
このような状況下でも、「人事、採用ちゃんとやれよ」と言っていられるでしょうか。
人事がサボっているわけではありません。むしろすごく忙しくなっています。採用が、本当に難しくなっているのです。
採用が強い会社は、やはり「自分たちの仲間は、自分たち全員で集める」という新しい当たり前が浸透しているように思えます。
社外に閉じている
様々な職種の方々とお話しする中で、つくづく思うことがあります。それは、これほど「隠しあう文化」がある職種も珍しいということです。
採用についての小規模な情報交換会や勉強会、交流会は一部の地域では行われていますが、マーケティング、エンジニアリング、広報、セールスなど他の職種と比べると明らかに「横のつながりをつくる機会」が少ない気がします。
たしかに「限りあるマーケットの中からの取り合いだからノウハウを教えたくない」という意見も、「人事は機密情報が多い」「人事は忙しい」という意見もその通りなのですが、さすがに横のつながりが希薄すぎると思います。
その結果、ほぼ全員が同じことで悩んでいて、個人のキャリアニーズや情報収集方法の変化、テクノロジーの進化についていけず、無料の便利な生産性向上ツールの存在も知らず、もったいない時間やもったいないお金の使い方をしてしまっているなと思うことがよくあります。
「大事な情報を知らない→うまくいかない→忙しい→情報収集の時間を取れない」という負のループに陥ってしまう前に、ちゃんと自分で社外に情報をとりに行くことが必要だと思います。
確かにメディアやSNS、調査レポートなど無料で公開されている情報はあります。ただ、これだけ変化が激しい時代に、今本当に必要な情報はオフラインで口伝で流通しています。今こそ、自分の足で、本当に価値のある生の情報にアクセスしてほしいと思います。
他領域に閉じている
「〇〇採用」や「採用〇〇」のように、採用と何かを掛け合わせた概念は多く存在します。
代表的なもので言えば、採用マーケティング、採用広報などでしょうか。確かに採用は他領域から学べること、他領域のエッセンスを取り込んで進化できるのびしろが多くあると思います。
しかし、ここで言われている「採用〇〇」は現状、その領域からちゃんと学べているのでしょうか?
「採用マーケティングに取り組んでいます」と言う人事の方に、「マーケターに一回でもマーケティングの話を聞いたことがありますか?」と尋ねたところ、答えはNoでした。「採用広報を頑張っているのですが、うまくいかず困っています」と言う方に、「広報・PRのことを学んでいますか?」と聞くと、答えはNoでした。
他領域の方々は本当に採用を助けてくれます。社内のマーケターが求人サイトを改善したらエントリーが増加した事例や、UXデザイナーが採用フロー設計を改善したら辞退率が下がった事例も実際にあります。
採用は、人事だけが頑張ってうまくいくものではなくなりました。今こそ、他領域の方々の専門性を学び、協働することが採用成功のための必須アクションとなっていると思います。概念だけでなく、実際に学び、コラボレーションが生まれることを願っています。
人事カンファレンスはこのままでいいのか?
上述したように、採用は、あらゆる領域から学べると思います。一方で、一見当たり前ではありますが、人事に関するテーマのカンファレンスを見ていると、やはり「人事の方々だけ」が登壇するものが多く、他領域の知見を学ぶ機会はなかなかありません。
また、採用に困っている経営者や、採用に困っている人事以外の現場社員の方が気になるテーマを取り扱っているものも少ないように感じます。
「新しくカンファレンスをつくるのであれば、人事に閉じたコンテンツ、人事に閉じたキャスティングは、もう辞めてほしい」
「いつもの感じのものであれば、わざわざオフラインで参加しようとは思わない」
「パネルセッションだけでは行かない。ウェビナーやYouTubeで十分」
1年前、カンファレンスを新しく企画するにあたって、100名以上の人事の方々と話したと思います。その中で、人事の皆さんに口を揃えて言われたことです。今の人事カンファレンスの現状に対しては、皆さん、なかなか思うことがあるようでした。
せっかく新しいものをつくるのであれば、コンテンツもキャスティングもコピペするようなことは絶対にしてはならない。そう思いました。
採用にこそ、「すごさ」より「らしさ」を
採用ウルトラキャンプは、京都のみやこめっせで開催します。
「なぜ、京都でやるのか?」という問いは何度も聞かれましたし、何度も自問自答しました。東京を「すごさの街」とするなら、京都は「らしさの街」だと思います。この2年間、京都に通い、様々な方々と対話する中で気づいたことは、「すごさ」が効かないということです。
「業界大手」「急成長中」「最新の」など所謂「すごさ」の情報よりも、「なぜ今の事業をやっているのか?」「なぜこのカンファレンスをやるのか?」「なぜ今の会社で仕事をしているのか?」など「歴史」「物語」「価値観」を問われることが多くありました。
長いお付き合いをするうえで、やはり人は「すごさ」より「らしさ」を問うのだなと思いつつ、採用こそ、この価値観をもう一度思い出すべきだと思いました。
昨今は、「スペック訴求」がインフレしているようにも見えます。企業は、いかに「いい会社」かを「いい人材」に興味を持ってもらうために宣伝し、個人はいかに自分が「いい人材」かを「いい企業」に入るために取り繕う。
不安が高まっている時代に、「合う」より「いい」、「らしさ」より「すごさ」に目がいき過ぎてしまっていると思うのです。
「すごさ」に偏重した結果、現状はどうでしょうか。早期離職の深刻化、採用が充足しない企業の大量発生、人材の一極集中など、おそらく良くなったことはほとんどなかったのではないでしょうか。
個人は、これまでにないほどに「らしくあること」を求めています。市場価値という「すごさ」を得たいのも「らしくあるため」の手段に過ぎません。
理想論ではなく、合理的に「らしさ」を出して、「合う人材」を仲間にしていく方が、持続的に人が集まり続ける企業をつくっていくうえで大切になっていると確信しています。
「採用」を開こう、そして超えよう。
採用ウルトラキャンプのコンセプトです。閉じていた採用を開くことが、改善にとどまらない「超進化」を生むと思っています。
そのコンセプトを実現するうえで、3つのエリアをつくっています。
コミュニティエリア
当日は既に1,500名を超える経営者の方・人事の方、現場で採用に関わっている方に参加申込をいただいています。
ただ、スペースをつくって「ここでよしなに繋がってください」ではなく、様々な共通テーマや共通体験で繋がれる場所をつくっています。焚き火を囲んで本音で語らうように、採用についてじっくりお話しいただける「本音の対話の場」をつくっています。
当日「なんかよかったな」で終わらないように。学びあい、協力し合える濃い繋がりをつくってほしいと願っています。
セッションエリア
計36個のコンテンツを用意しています。採用を開くべく、全てのコンテンツを「採用×〇〇」という縛りで企画しました。
ベーシックなものから、ニッチなものまで。今すぐ使えるものから、普段は忙しくて考えられないテーマまで。老舗からスタートアップまで。中小企業から大企業まで。考えうる、全ての方々にとって重要なテーマを盛り込んでいます。
ブースエリア
採用を開くうえで、マーケティング、ブランディング、テクノロジー活用など、様々な分野のリーディングカンパニーの方々にブース出展いただいています。きっと、採用を進化させるヒントと出会いがあるはずです。
最後に
カンファレンスを1日開催しただけでは、きっと何も変わりません。
しかし、「採用を開こう、そして超えよう」というコンセプトのもとに全国から集まった意志ある経営者・採用担当の方々が共通の体験をし、つながることで、採用は開きはじめると思っています。既に、参加申込は1,500名を超えました。
「採用をどうにかしたい」「閉塞感のある採用シーンをもっとオープンなものにしたい」そのような思いの方々と共に、採用を開いていこうと思います。