日本の就活の変化の実態|人気ランキングの順位変動を30年分まとめてみた |HR NOTE

日本の就活の変化の実態|人気ランキングの順位変動を30年分まとめてみた |HR NOTE

日本の就活の変化の実態|人気ランキングの順位変動を30年分まとめてみた

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就職活動の時期になると、毎年多くの企業が「人気企業ランキング」を発表します。

調査会社によってランキングの結果は異なりますが、文系では旅行会社、理系では食品や自動車メーカーが人気となる傾向があります。

人気企業ランキングを参考に、「人気の企業だからとりあえず受けてみよう」と考えている就活生は多いでしょう。

しかし、人気企業ランキングは、その年の社会的背景や経済状況、企業の経営状況によって結果は異なりますが、文系では旅行会社、理系では食品や自動車メーカーが人気となる傾向があります。

人気企業ランキングを参考に、「人気の企業だからとりあえず受けてみよう」と考えている就活生は多いでしょう。

しかし、人気企業ランキングは、その年の社会的背景や経済状況、企業の経営状況によって変化します。

本記事では、マイナビが調査した1990年から2020年までの人気企業ランキングで30位以内に入った企業を取り上げ、過去と現在で人気企業の順位の変動をグラフ化しました。

順位変動のグラフから、人気のある企業の要因を考察し、時代によって変化する就活生の心情をご紹介します。

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【1】人気企業ランキングの順位変動

1章では、文系学生の1990年から2020年までの人気企業ランキングで30位以内に入った企業の順位変動を、グラフを用いてご紹介します。

このグラフから、時代によって就活生から人気を集める企業が変化していることを明らかにします。

1-1. 1990年時点で人気企業ランキング上位17位入った企業の順位変動

本章では、1990年時点の人気企業ランキングで、上位17社を3つのグラフに分けて、「順位の変動」と「変動した原因」をご紹介します。

1990年時点の人気企業ランキング1位~5位の順位変動

1990年時点の人気企業ランキング1位~5位

1990年時点の人気企業ランキング6位~10位の順位変動

1990年時点の人気企業ランキング6位~10位

1990年時点の人気企業ランキング11位~17位の順位変動

1990年時点の人気企業ランキング11位~17位

JTBの安定した人気

株式会社JTBは30年間で文系の就活生から安定した人気を得ています。

また、JTBが分類される観光業界は、業界としても人気があります。

実際に、2000年に、「近畿日本ツーリスト」が13位にランクインし、2020年では、「HIS」が13位にランクインしています。

観光業界が人気である要因は、学生が観光業界の仕事内容をイメージしやすく、楽しそうだと捉えている点があげられます。

商社の人気の低下

三井物産株式会社や三菱商事株式会社といった商社は、1990年卒の学生の間で人気があった企業です。

しかし、2000年卒の学生の間で人気が急降下し、現在では30位以下に順位を落としています。

順位を落とした要因として、ワンキャリアは、「総合商社と自分のキャリア志向のマッチングを早期から検討する学生が増えたため」と説明しています。

30年前と違い、現在は、就活イベントや口コミサイトを利用して、就活解禁前から業界や企業の情報を入手することが可能です。

本選考開始前に業界や企業の情報を入手することで、「本当に自分は商社を受けるべきなのか」をじっくり検討できるようになります。

こうして、「商社はかっこいい」といった漠然としたイメージだけで商社を受ける学生が減り、商社の人気企業ランキングが下がったと考えられます。

多くの商社が2000年代に入り順位を落とすいっぽうで、伊藤忠商事株式会社は順位を落とすことなく、2020年にはさらに順位を上げています。

順位が上がっている要因として、「朝型勤務制度の導入」や「深夜勤務の禁止」など積極的に働き方改革に取り組んでいることが、就活生から好印象を受けていることが考えられます。

NTTの人気の低下

ダイヤモンド社によると、NTT株式会社(日本電信通信)は、平成元年(1989年)の世界時価総額ランキングでは第1位を獲得していました。

しかし2010年、NTTは世界時価総額ランキングの上位20位にランクインしませんでした。

世界時価総額ランキングの低下は、人気企業ランキングにも影響しています。

実際に、1990年に5位、2000年に1位と高い順位を記録していましたが、世界時価総額ランキングが下がった2010年には、人気企業ランキングでも30位以下という結果なりました。

電通、博報堂の人気の低下

株式会社電通は、2016年のパワハラ事件の影響からか直近10年で大幅に順位を落としています。

博報堂も近年人気が低下していることから、パワハラ事件の一件で電通だけではなく、広告業界全体に影響があったと考えられます。

また、2020年1月7日にも、同社のクリエイティブ・ディレクターのパワハラ行為が発覚し、東京五輪の開会式演出担当を辞任したニュースが出た影響で、就活生の支持はより薄くなってしまうかもしれません。

銀行の人気低下

三井住友銀行とみずほフィナンシャルグループも直近10年で大幅に順位を落としています。

メガバンク全体の順位が下がっていることから、企業単位ではなく、業界単位で人気が低下していることがわかります。

順位を落とした原因として、ITによる業務自動化を推し進めるための大量リストラ報道や、採用数の削減が公表されたことなどが考えられます。

交通インフラ業界の安定した人気

ANA(全日本空輸株式会社)は、30年に渡り安定して就活生から人気がある企業です。

またANAだけではなく、日本航空やJR東日本、JR東海などといった「交通インフラ業界」は常に就活生から人気を得ています。

その理由として、交通インフラ業界は、社会基盤になる仕事であることや寡占市場であることが多いため、業界全体の需要が景気に左右されず安定している点が、就活生からの人気の要因だと考えられます。

1-2. 1990年時点で上位30位にランクインしなかった企業の順位変動

ここでは、1990年時点の人気企業ランキングで、上位30位にランクインしなかった企業を2つのグラフに分けて、「順位の変動」と「変動した原因」をご紹介します。

1990年時点で人気企業ランキング30位以下の順位変動①

1990年時点の人気企業ランキング30以下①

1990年時点で人気企業ランキング30位以下の順位変動②

ベネッセの不祥事による人気の低下

株式会社ベネッセコーポレーションは、2010年の就職企業ランキングで6位に入るほど、就活生から人気のある企業でした。

しかし、2014年7月に発生した個人情報漏洩事件により、人気が急降下しました。

この一件が起きる前まででも徐々に順位は低下しましたが、2014年の人気企業ランキングでは33位だった順位は、2015年に66位となり、急降下しました。

ベネッセコーポレーションは、2015年以降は50位以内に入っていません。

理系から高い人気を獲得するSONY

SONY株式会社は理系の学生から高い人気を得ています。

SONYは、理系学生の就職人気企業ランキングで、最多の14回の第1位を獲得しています。

また、2012年の3月期に5,200億円の赤字に転落した時期にランク外になりましたが、30年間で安定してトップ10に入っています。

テレビ業界の順位変動

1990年から2000年にかけて、株式会社フジテレビジョンとNHK(日本放送協会)は急激に順位を上げています。

順位が上がった要因として、1990年代にフジテレビドラマの人気が全盛期だったの影響もあり、テレビ業界全体に人気が上がったことが考えられます。

しかし2020年代は、若者のテレビ離れの影響を受け、フジテレビジョンとNHKの両社とも30以下に順位を下げています。

オリエンタルランドの人気上昇

株式会社オリエンタルランドは近年で人気が急上昇した企業の1つです。

オリエンタルランドは、JTBやHISと同様に、就活生が実際に利用したことがあるサービスです。

そのため、親しみやすい企業で、仕事内容がイメージしやすい点が人気の要因であると考えられます。

【2】各時代の人気企業と日本経済の変化

1章では、人気企業の順位の変動と変動した要因をご紹介しました。

本章では、日本経済が大きく変化した「バブル期」「就職氷河期」「リーマンショック期」と3つの時代の人気企業ランキングを調査し、経済状況と人気企業の変化を見ていきます。

2-1「バブル期」の人気企業ランキング

1986年から1991年の人気企業ランキング1位~5位

バブル時代は、現在と同じように「人手不足」が続いていた時代でした。

厚生労働省の調査によると、2019年11月の有効求人倍率が「1.57倍」であったのに対して、1990年の有効求人倍率は「1.41倍」と、企業は就活生から応募を得るのに苦戦していました。

ランキングによると、1986年から1991年にかけて上位5位以内に入った企業は、わずか14社です。

その他の企業はランクインすることができておらず、人気企業ランキングに偏りがあることがわかります。

特に、バブル期には「金融業界」や「商社」が就活生から人気がありました。

バブル期では、海外で働くことできる企業といえば、商社が中心でした。

そのため、多くの学生が商社に入社することを目指しており、商社は就活生から人気がある業界でした。

また、SONYや日本電気など、「ものづくり日本」を象徴する電気メーカーもランクインしていました。

2-2「就職氷河期」の人気企業ランキング

2000年から2005年の人気企業ランキング1位~5位

就職氷河期とは、バブル崩壊を発端に1993年から2004年に起こった就職難であった期間を指します。

就職氷河期が起こったのは、バブル崩壊後の不景気により企業が採用人数を減らしたことが原因となっています。

不景気の影響で有効求人倍率は、2000年に「0.59倍」にとどまりました。

また、求人数の大幅削減のほかに、企業の業績悪化や新興国との競争激化によって新卒を育成する余裕がなくなり、「即戦力」となる新卒を求める風潮が現れました。

就職氷河期のランキングでは、現在のランキングと同じく旅行業界の企業が上位にランクインしていました。

2-3「リーマンショック期」の人気企業ランキング

2006年から2011年の人気企業ランキング1位~5位

2008年8月に起きた世界的金融危機のリーマンショックは、日本の経済や雇用に深刻な影響を与えました。

2008年の有効求人倍率「0.88倍」から、リーマンショックが起きた翌年の2009年の有効求人倍率は「0.47倍」まで低下しました。

さらに、就活生が採用の決まった企業から一方的に内定を取り消される「内定取り消し」が話題になりました。

リーマンショック期でも、JTBや全日本空輸は就活生から人気があり、時代の経済状況に関わらず、人気のある企業であることがわかります。

【3】JTBの業績と人気企業ランキングの相関関係

第2章では、人気企業ランキングとその時代の経済状況の関係性ついて明らかにしました。

今回は、文系の学生から長期間人気を獲得しているJTBを取り上げ、売上高の推移と人気企業ランキングの比較をご紹介します。

2002年から2019年のJTBの売上・人気企業ランキングの推移

上記の図は、青のグラフが「売上高」、オレンジの折れ線グラフが「人気企業ランキングの順位」を表しています。

2004年から2007年にかけて、JTBは順位を6つ落としています。

しかし、その間の売上は増加しており、特に2005年の売上は前年比13%と大きく成長した年となりましたが、順位は2つ落としています。

また、2010年の売上高は前年比12%減となり、最終損益は過去最大の赤字になります。

いっぽうで、人気企業ランキングの順位は1つ順位を上げ、この年から8年間連続で1位を獲得しています。

このグラフようにJTBは、企業の業績と人気企業ランキングに相関関係が見られないことがわかります。

【4】まとめ

本記事では人気企業ランキングの変遷から、就活生の変化をご紹介しました。

人気企業ランキングの変遷を経済状況や売上高の推移などと比べてみると、次のような順位変動の要因がわかりました。

人気企業ランキングの変遷からわかった順位変動の要因
  • JTBやHISなど就活生が楽しそうと感じる業界は、景気の変動や売上高の変化が変化しても学生からの人気は変化しない。

  • 銀行と商社は、人気が低下するときは企業単位ではなく、業界単位で落ちる。

  • 電通やベネッセなど不祥事の報道が起こると人気は低下する。

上記の通り、JTBやHISなどの旅行業界は、就活生が楽しそうとイメージする仕事内容なので今後も人気のある業界でしょう。

いっぽうで、不祥事のあった多くの企業は報道後、人気企業ランキングの順位を落としています。

このランキングの推移から、就活生は企業のイメージが下がるリストラ報道や不祥事といった報道に関心があるようです。

旅行業界のランキング推移と、リストラや不祥事などの報道後のランキング推移から、就活生は「イメージ」で企業を判断していることが多いのではないでしょうか。

旅行業界やレジャー業界でも、就活生のイメージする「楽しい仕事」ばかりではありません。

このように「イメージ」で 企業を判断してしまう就活生を採用してしまうと、「イメージしていた仕事と違った」と判断され、ミスマッチになりかねません。

そのため人事担当者は、就活生のイメージを正すために、会社説明会や採用ページなどで、自社がどのような会社かを就活生に示す必要があります。

就活生が楽しいと捉える仕事や働きたいと思う仕事の内容ばかりを伝えるのでなく、時には難しいことや辛いことに直面することも認識させた方が良いかもしれません。

会社説明会で就活生に伝える内容については下記の記事をご参照下さい。

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