人事にこそ必要な「話し方トレーニング」──AI時代における人材アトラクトの本質 |HR NOTE

人事にこそ必要な「話し方トレーニング」──AI時代における人材アトラクトの本質 |HR NOTE

人事にこそ必要な「話し方トレーニング」──AI時代における人材アトラクトの本質

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※本記事は、株式会社カエカ様より寄稿いただいた内容を掲載しております。

HR NOTE読者の皆様、はじめまして。千葉佳織です。私は「kaeka」という話し方トレーニングサービスを運営しています。

執筆者千葉 佳織株式会社カエカ 代表取締役

15歳から弁論を始め、全国弁論大会3度優勝、内閣総理大臣賞受賞。慶應義塾大学卒業後、株式会社ディー・エヌ・エーを経て、2019年に株式会社カエカを設立。社会人の話す力を数値化し、理想の話し方を実現する話し方トレーニングサービス「kaeka」を7,000人以上に提供している。

「kaeka」は3ヶ月から6ヶ月のプログラムの中で、AI診断とトレーナーによる指導をかけ合わせ、受講者の表現力や伝える力を伸ばしていくものです。これまで7,000名の方々にサービスをご利用いただいていますが、その中には人事職の方も多くいらっしゃいます。

人事の仕事は、候補者や社内のメンバーなど、立場や状況によってさまざまな顔を持ちながらコミュニケーションを行うものです。ポジティブな側面だけでなく、時には課題や改善点を率直に伝えることも必要になります。相手の反応を読み取りながら適切に言葉を選び、信頼を築く――まさに「コミュニケーションの仕事」そのものと言えるでしょう。

そして私は、コミュニケーションこそが人間がAIに代替されない価値だと考えています。だからこそ、これからの時代の人事において「話し方を磨くこと」がますます重要になるのです。

マインドセット──「橋渡し役」に留まらない人事へ

人事の皆様は、ご自身が「経営と事業の橋渡し」となりたいとおっしゃっています。経営や現場のリーダーの言葉を候補者に届けたり、既存の制度や福利厚生を説明したりする。その意味では重要ですが、あまりにも橋渡しに徹してしまうと、人事自身の魅力が候補者に伝わらないという課題があります。

私が考えるこれからの人事に必要なマインドは「人事自身の自分の存在をも魅力的に語ることができる」ということです。候補者にとって、最初に触れる会社の顔は人事であることが多い。だからこそ、人事自身の人間性や人生経験が伝わることで、会社そのものの魅力も増幅するのです。

例えば、会社の説明をする時にただ事実をお伝えするのではなく、そこに自分の思いを添えてみる。話に熱を生むことができ、聞き手の納得感も高まります。

kaekaのトレーニングでは、まず一人ひとりの経験を深掘りして「言葉のストック」をつくるところから始めます。幼少期からこれまでのキャリアで印象的だった出来事、挫折から学んだこと、成長を実感した瞬間…。そうした経験を整理し、頭の中でいつでも語れる状態にしてもらいます。その上で、その経験からコアメッセージを抽出していくのです。

「自分はこの会社でこういう人生を歩んできた」「この会社でこんなスキルやこんな価値観を身に着けた」そうした言葉を持ち、主体的に語れる人事は、自ずと人間的な厚みを帯び、相手に伝わる力を強めます。その結果、現場のリーダーの言葉や制度説明と掛け合わせたときに、アトラクトの密度は格段に増すのです。

人事は「人を支える役割」だけでなく「自身の魅力で先導していく存在」でもあるのです。

コンテンツ──具体と抽象を自在に行き来する

私自身、かつてDeNAで人事を担当していました。その際に実感したのは、「話し方トレーニング」と「人事の仕事」をかけ合わせることで、人事がより強い発信力を持てるようになるということです。

採用活動では、「全国に5拠点、全12事業部」「新規事業の代表は新卒2年目からエントリー可能」などポジション、キャリアパスといった「具体的な情報」を伝えることがよくあります。もちろん、そういった具体的な言葉は重要ですが、具体的な言葉の羅列を聞いただけでは、候補者は具体をどのように解釈すれば良いかわからず、候補者の心に深くは響かないままとなってしまいます。逆に「雰囲気が明るい」「若手の挑戦を応援する」といった「抽象的な表現」だけでは説得力に欠けてしまいます。

人によって響くポイントは異なります。だからこそ、具体を羅列したらその解釈を抽象的にまとめ、抽象的に話し始めたら根拠となる具体を述べる。具体と抽象を自在に行き来しながら伝えることが必要です。

思想や価値観を強固に語りつつ、それを裏付ける具体的な事例を添える。あるいは具体的な制度や事例を紹介しながら、その背景にある理念を伝える。このバランスが取れて初めて、候補者は「納得」「共感」を同時に得られるのです。

BAD例
当社は、東京都千代田区に本社を置く社員数142名のIT企業です。平均年齢は31.8歳で、男女比は男性が58%、女性が42%です。今回募集するのはシステムエンジニアで、使用言語はJava、Python、SQLです。残業時間は月平均18.7時間、有給取得率は67%です。
GOOD例
私たちは、ITの力で企業の挑戦を支える仲間を探しています。平均年齢は30代前半と若く、エンジニア同士が学び合いながら成長できる環境です。今回募集するシステムエンジニアは、JavaやPythonを使い、企業の業務を効率化するシステムを開発します。単なるスキルだけでなく「新しいことに挑戦したい」「自分の技術で人を支えたい」という思いを持つ方に来ていただきたいと考えています。

具体的な情報をただ並べるのではなく、思想や価値観・抽象的なメッセージの裏付けとして具体的な情報を使っていくことで、相手により伝わるメッセージになるはずです。こうした「具体と抽象を往復する力」は、訓練によって高めることができます。人事がこの力を身につけることで、採用活動は単なる情報提供の場から、候補者の心に残る「物語」を届ける場へと変わります。

 

デリバリー──最後の決め手は「伝え方」

採用説明会や合同企業イベントなどでは、複数の企業が同じ時間に候補者へプレゼンテーションを行います。こうした場面で最後の決め手となるのは「伝え方=デリバリー」です。

私は人事時代、合同説明会で「必ず『いちばん人気』を取る」と決めて臨んでいました。そこでは情報量を増やすのではなく、あえて削ぎ落とし、声の抑揚や間の取り方を工夫しました。自己紹介の位置を変えたり、スライドの順番を意図的に入れ替えたりするなど、他社と違う仕掛けを徹底的に考え抜きました。その結果、説明会後の座談会では持ち場から溢れるほどの採用候補者に囲まれてお話の機会をいただくことができました。

人は理屈だけで動くのではありません。雰囲気や印象、話し手の覇気といった非言語的な要素が意思決定に大きく影響します。だからこそ、人事自身が「わかりやすく、明瞭で、覇気を持って語れるかどうか」が採用活動の成果を左右するのです。

デリバリー力を磨くとは、単に声を大きくすることではありません。抑揚や間、動作、視線、姿勢までを含めた総合的な設計を自分の中で行い、徹底的に準備をする。その覚悟こそが、候補者の心に届く人事をつくり上げるのだと考えます。

今からできる!デリバリーの実践ポイント

総合力が大切なデリバリーですが、今回は簡単に実践できるポイントを2点ご紹介します。

  • 重要な言葉の前に間を取る
  • 話している姿を録画することで、声の抑揚や姿勢を確認する

事前の準備を行い、意識をしていくことは本番の自分の自信にもつながっていくのです。

実際にkaekaにお通いいただいた人事職の受講生の方からは「言葉を紡ぐ意識が強まった」「場面に応じた「話し方」を選択できるようになった」「採用応募数が増えた」という声が届いています。kaekaのトレーニングでは話の対象者と目的を定めたうえで話をするという実践を重ねていきます。アウトプットを含め磨き上げていくことで、ご自身の力を高めていただきたいと願っています。

おわりに──AI時代だからこそ「人の言葉」が必要

AIが進化し、あらゆる業務が効率化されていく時代にあっても、人の心を動かすのは最終的に「人の言葉」です。特に人事は、会社の理念や文化を体現し、未来の仲間を迎え入れる役割を担っています。その人事が自分自身の言葉で語れるようになることは、これからの採用活動の最も大きな差別化要因になるでしょう。

「人事のあなたこそ、自分を磨き、言葉を鍛えなさい」。これは私が伝えたいメッセージです。話し方を磨くことで、人事自身が魅力的になり、その姿が候補者を惹きつける。カエカのトレーニングを通じて、そんな人事の姿を一人でも多く増やしていきたいと思っています。

話し方トレーニング「kaeka」

話し方トレーニングサービス「kaeka」を運営。AIを使った診断「kaeka score」を使って話す力を数値化し、専属のスピーチトレーナーと体系的に話し方を学習するプログラムを提供しています。多くの会社員や経営者、政治家に向けて7,000人以上の指導実績があります。

公式ホームページはこちら個別相談会はこちら

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