クリエイティブ × デジタルを軸にマーケティング支援を提供しているFUSION。同社は2020年に創業していますが、2期目である2021年から新卒採用を開始。
そして、新卒入社した人材の多くが入社後に大きく活躍し、若くして事業の中核を担ってくれているとのこと。
そこには、入社後活躍してくれるであろう人材を見極め、惹きつける採用戦略がありました。
今回は、株式会社FUSION代表取締役 前田さんに話を聞きました。
【人物紹介】前田 遼介|株式会社FUSION 代表取締役
X:@maeta_r
大学卒業後、2017年株式会社サイバーエージェントに新卒入社。若年層マーケティングを行う子会社CA Young Lab設立に参画。2019年、株式会社チョコレイトへ入社。 2020年に独立し、株式会社FUSIONを創業。創業から1年10ヶ月で、業界誌「ベンチャー通信」で” 2022年ベストベンチャー100”に選出される。
目次
FUSIONが2期目から新卒採用を開始した理由とは
−まずはFUSIONの会社概要と前田さんのポジションについて教えてください。
前田さん:FUSIONは2020年3月に創業した5期目の会社で、主に広告事業を中心に展開しています。暮らし、環境、テクノロジーが変化し続け、常に最適解が変わり続けている中、いかに早く新しいANSWERを出して事業としての成果を出すか。そして、より多くの人が幸せになれるサービス・価値を提供できるかを追求しています。
私個人としては、サイバーエージェントの内定者バイト時代に子会社の立ち上げに関わらせていただき、2017年に新卒入社後は若年層マーケティングに従事していました。また、新R25というメディアでタイアップセールスをしていました。その後、CHOCOLATE Inc.に転職し、エンターテインメントコンテンツに携わったのち、FUSION創業という流れです。
−今回は「新卒採用戦略」をテーマに掘り下げていきますが、新卒入社の社員の割合はどのくらいなのでしょうか。
前田さん:全従業員が60名ほどの中で割合としては28.5%で、残りは中途となります。新卒が入社してきたのは3期目のタイミングであるため、準備含めると2期目の段階からスタートしました。23新卒は4名、24新卒は6名採用しております。
−一般的に、創業間もない企業では新卒採用を行っていないイメージがありますが、なぜ新卒採用を2期目から始めたんですか?
前田さん:新卒採用に力を入れるにあたった背景は3つあります。
1つは、中長期での連続的な成長のために育成するという仕組み構築が重要だと考えたからです。昨今労働人口が減少し、広告業で言うと電通、博報堂、サイバーエージェントなどの各社が、本当に死に物ぐるいで中途採用をやっている中、 毎年大量の中途社員を採用することは構造的に実現不可能だと感じています。とするならば、自分たちで新卒を採用して自分たちで育成するという仕組みが必ず必要になると思い、早い段階から仕組み構築に取り組みました。
2つ目は、組織醸成です。うちは中途の集まりでできている会社だったため、ナチュラルな文化・人材像ってなんだろうってなった際に、前職の色が出すぎる等、定まりきらない中で、会社の文化を強めていくために新卒の存在は貴重になると考えていました。
3つ目に、サイバーエージェントの社長引継ぎ研修参加者が全員プロパー社員だったことです。同社では今、社長交代の話が出てると思いますが、その際に社長引き継ぎ研修をやられてる話で、選出メンバーが全員サイバーエージェント新卒入社だったという。改めて、中長期の会社の成長のために新卒採用は必要だと感じました。
−実際、入社された新卒社員はどのような活躍をされているのでしょうか?
前田さん:早い人だと4月入社の1年前から内定者アルバイトとして働きはじめてくれていて、入社前に数千万単位で売り上げをあげるようなケースもあります。新卒が入社して頑張っている姿、夢や目標を宣言している姿勢を見ると、会社が勢いづくため、非常に貴重な存在だと思っています。
また、今の社内を見ると、洗練されたプロフェッショナリズムと、「お金稼ぐぞ」みたいなベンチャー特有の雰囲気が共存していて、この絶妙なバランス感は新卒たちが作ってくれたのだと感じています。新卒採用に関しては、最初は赤字覚悟で、いつコストを回収できるかも不明瞭でしたが、中長期的にやるべきだと判断して進めてきました。
新卒採用で意識・注力していることは?
−ここからは採用戦略全体のテーマや重要なポイントについてお伺いしていければと思います。
前田さん:各年の採用テーマはありますが、毎年気にしている点で言うと、 やはり全てのタッチポイントにおいて、いかに素晴らしいクリエイティブを提供できるかにこだわっています。
我々の会社は大手企業と比較すると認知度もありません。その中で、 どうやってFUSIONを選んでもらうか、好きになってもらうか、応募してもらうかを考える必要があります。弊社の強みの一つがクリエイティブ力なので、採用媒体に出す時のバナー、クリエイティブで圧倒的な格の違いを見せ、「この会社よくわかんないけど面白そう」と思ってもらえるかを重視しています。
そして、有言実行であることが人の心を動かすと考えています。クリエイティブにも力を入れているという会社の説明会のスライドが、本当に学生さんたちが見たことないぐらいのクオリティだったとき、たしかに、と心は動くんだと思います。その結果、我々の会社に興味を持ってもらえると考えています。
【関連記事】そこまでやるかをどこまでやるか。FUSIONのユニークなクリエイティブカルチャーを徹底解剖
クリエイティブに力を入れた新卒採用説明会
−なるほど。自社の強みを生かした新卒採用戦略をとられているのですね。
前田さん:はい。また、新卒採用説明会へのこだわりもあります。私含め、クリエイティブ制作のプロであるクリエイティブディレクターや、アートディレクターの人間が、本気で心を動かすために説明会の資料を作ることに投資をしています。
他社では人事担当者が作成されることが多いかもしれませんが、どこよりも説明会の資料にこだわることで、圧倒的に差をつけることに注力しています。弊社では説明会から書類選考へのエントリー率は90%となっており、細かい箇所に対して本気な姿勢が就活生の皆さんにも伝わっているかと思います。
どんな会社に入るか < 誰と一緒に働くか
−クリエイティブへのこだわりは、実際に就活生の皆さんに響いているのですね。説明会に関して、他に意識している点はございますか?
前田さん:学生たちに対してどの社員に話をしてもらうか、は意識しています。人事が話すのも大切なのですが、私も含めた経営陣、局長たちが自らの声で話すことを心がけています。弊社ほど規模が小さい会社だと、 実力・実績が高いハイレイヤーのメンバーと一緒に働ける環境だと思いますので、「この人たちと一緒に働けるんだ」と思ってもらうことを意識しています。
どんな会社に入るかももちろん目指す上で大切だと思いますが、誰と一緒に働くかによってこの入社直後の成長速度は大きく変わると思います。実際の体験談や現場の声を通じて、仕事の醍醐味や目指すロールモデルを体感いただけるかどうかは気にしています。
−ありがとうございます。ここからは新卒採用のフローに移れればと思いますが、注力している点や最終選考の内容をお伺いできればと思います。
前田さん:まず、フローとしては書類選考、面接2回を現場、局長レイヤーが実施し、最終は私が務めています。そして、最終選考に関しては他社と差別化されている点でもあります。最終選考では、課題を設定し新規事業に対して資料作成のうえ提案してもらう内容になっています。1週間〜2週間の準備期間を設けたうえで提案を受け、フィードバック、ディスカッションする流れですね。
提案の中では、私が社員と同じくらい厳しめにビシビシとフィードバックしていることもあり、結構びっくりされます。これは、予想外の質問や対応が来た際に、この人はどのように考えて対応するのか、といった点を知りたいという意図もあります。
−課題を設定のうえ新規事業について考えることは、決して簡単ではないと感じます。実際の合格率はどのくらいなのでしょうか。
前田さん:最終選考からの合格率でいうと、23卒が43%、24卒が23.5%、25卒が27.8%でした。そこから、内定承諾率で言うと23卒が57%、24卒が75%というかたちです。ただ合格率が低いのはおっしゃる通りで、新卒採用はその後の育成を含めて大変であり、投資してうまくいかなかった際は、他の大手企業と比較すると相対的にはダメージが大きいと考えています。
そういった意味でも、5年、10年一緒に働く中長期的なイメージがもてるかどうかを判断しています。この規模の会社は運命共同体だと思っていて。誰かが成功して誰かが失敗するという話ではなく、1番大事なのは、中長期で10年、20年みんなで肩を組んで目標に対して頑張っていけるかどうかなので、そういうイメージが湧くか、お互いに慎重にすり合わせしてやっています。
−中長期的に働く前提で採用活動をされているのですね。また、一方で最終選考では重い課題を出されていますが、その間に他社で内定承諾があって辞退されることもありますか?
前田さん:そういうわけではないですね。 どちらかというと説明会、1次面接の段階で選考辞退が起きるケースの方が多いです。おそらく会社への理解や興味が薄い段階であり、説明会で惹きつけられた反動が出ていると考えられます。
−なるほど。ありがとうございます。また、最終選考を受けた学生さんからはどのような声が上がっていますか。
前田さん:最終選考直後に15分〜20分、人事と話す時間を設けていますが、 大抵「力を出しきれなかった」というコメントは多いですね。「やり切れたです」みたいな人はあまりいないです。多分、私が厳しくフィードバックもしていることもあるため、そういう感想になるのではないかと思います。ただ、この人が長く働けるのか、という点を見極めたいのは、やはり根本としてあります。
内定承諾~入社~活躍まで。実施しているポイント
−ここからは、内定承諾以降を深ぼりしていければと思います。内定承諾〜入社までに意識して実践されていることはありますか?
前田さん:そうですね。内定者歓迎会などのイベントには非常に力を入れています。よくあるのは「ただ普通に飲み会をする」とかだと思うのですが、そうではなく、「日常の業務では得られない学びが得られること」を追求した企画として、25新卒歓迎会では、バスを借りて南房総で野外学習を実施しました。
NEW ANSWER COMPANYと謳っていることもあり、世の中でNEW ANSWERを作っている人たちの元に学びに行こうと。「渋谷区という概念を拡張し、都市、地域の循環モデルをつくる」取り組みをしているSHIPを訪問し、循環モデルに明るい有識者の方から話を聞き学んだり。海で釣りを体験したり、地元の猟師さんとジビエBBQをしたりと、さまざまな経験を通して「体験と感情をデザイン」する事ができたと思います。
また、楽しいのは前提ですが、細かい部分までこだわる姿勢や目的に沿った企画立案を体験して欲しいという思いがありました。そこで、バスの往復でもレクレーションを実施しました。
復路では「内定者の自己紹介」をして内定者の一体感を醸成したり、海から連想される曲を事前に「プレイリスト」として内定者に作成してもらい流したりしました。往路では「FUSIONラジオ」として24卒が内定から現在の振り返りを収録したものを流し、最後まで楽しみました。
【関連記事】新卒が社長と企画する “良くも悪くも普通じゃない” FUSION内定者歓迎会ができるまで
他にも思い出深いので言うと、「寿司フュージョン」という24新卒内定者の歓迎会も兼ねた全社でのイベントを開催しました。
ロゴから有名ディレクターさんに作成いただき、回転寿司レーンを用意し、マグロ1匹の解体ショーを実施しました。これには社員一同大興奮で盛り上がりましたね。
【関連記事】お金を払ってでも行きたい!と思う社内イベントをつくる。
広告代理店 は“人の気持ちをデザインする職業” であるため、FUSIONの細部へのこだわりが企画一つひとつに詰まっています。
−取り組みへのこだわりがすごいですね。そこまで取り組まれる理由は何でしょうか?
前田さん:そこに注力することが一石三鳥じゃないですけど、工夫次第で全てに寄与すると思ってるからです。採用の話と若干ずれるかもしれませんが、本来はただ飲み会をやればいい話だと思うんです。それを企画を立てて、ちょっと工夫することで多くの人が内定承諾をしてくれるかもしれないとか、社内イベントもしくはクライアント対応時に「ここまでやらなきゃいけない」というクオリティのベースの意識ができると思います。
あとは何よりも、これが広報や社外から見た時に、採用のフックにもなります。クライアントからすると、社内のコンテンツでここまでクリエイティブにこだわるのは安心につながると思います。と言いつつ、多分、私のこだわりがめんどくさいんだと思います(笑)どうせやるなら、最高に楽しいものをやった方がいいに決まってると思うので。
−ちなみに、内定者アルバイトの取り組み状況として、その段階で正社員と変わらない内容をやっているのでしょうか。
前田さん:はい、正社員と同じ業務をやってもらいます。そのため、基本的には毎日や週4の実施にしています。週1しか出れないとなると、クライアントワークができないということになるので。ただ、その場合は夏休み等の長期休暇でまとめてアルバイトにきてもらっています。
そして、内定者の段階でも、最低限の業務ができるようになったら、もう顧客とのフロントに立ってもらいます。もちろんお客様にご迷惑があってはいけないので、上長のサポートがありつつではありますが。難易度の高いアクションですが、 うちの規模の会社だと一斉に新卒10人が4月にまっさらな状態で入社すると、育成コストとか集中しすぎる問題もあります。
そのため極力、内定者バイトを通じてできる限り入社前から基礎を作っておける状態にしたいのと、社会人のスタートを、4月だと捉えないで欲しいという想いもあります。
うちの業界では、広告プランナーとして2年目〜3年目から活躍できる可能性があります。そして、弊社では内定者バイトの時から実際にお客様と対面し、経験を積むことが可能です。
それが魅力の1つですし、1年目、2年目の売り上げによってはリーダーのポジションを任せることが可能になっています。
本業でやっていることを採用面においても高クオリティで体現していきたい
−最後に今後の展望についてお聞かせください。
前田さん:2028年までに10の事業体、サービスを作ることを1つのマイルストーンとして置いています。そのため、新卒採用含め人材の多様性を生み出したいと考えています。
あとは新卒採用強化を早めに決めた話にも通ずると思うんですが、 個人的な持論及び感覚として、会社全体の社員数のうち新卒の比率が半分以上になった時が、 会社自体の本来の実力だと考えています。中途比率が多いことは別に悪いことではないですが、属人的なスキルを基に事業成長している率の方が高いというような話だと思っています。
新卒比率が半分以上になった時というのは、属人的な能力よりも会社の仕組み的な能力の方が機能している状態であるため、その際にどれほど業績を残しているかが会社の評価ポイントの1つだと思っています。
今後引き続き、新卒比率を増やしていく中で、会社の仕組みを持って売り上げを伸ばし、 育った新卒たちが子会社や役員など、どんどん組織の中央に来てくれることを願っています。そのため、本業でも採用においても高クオリティでの体現を念頭に信頼を作っていくことを基軸にやっていければと思います。