近年、“採用ブランディング”という言葉を多く耳にするようになりました。
採用市場が変化していくなかで、採用をおこなっていくためには採用ブランディングの構築が必要となります。
本記事では、UZUZ、プレシャスパートナーズ、むすびの3社のイベントをレポートとしてご紹介。
どのように採用ブランディングを構築していくのか、その必勝法について事前&その場で寄せられた質問に採用ブランディングのプロがお話をしています。
ぜひ今後の採用活動にお役立てください。
登壇者紹介
川畑 翔太郎|株式会社UZUZ 専務取締役
在宅設備メーカーに入社後商品開発や製造業務を経験し、高校の同級生であった創業者からの誘いを受け、自身のキャリアチェンジのためUZUZ立ち上げに参画。現在、キャリアカウンセラーだけでなく、ウズウズカレッジ運営やキャリアコーチングサービス、企業ブランディングを担当し、累計2,000名以上の就活サポートを実施。
矢野 雅|株式会社プレシャスパートナーズ 常務取締役CSO
2008年にプレシャスパートナーズの創立メンバーとして参画。「誰と働くか」をコンセプトに、社長・経営者の想いを発信する新卒採用向けメディア『アールエイチナビ』を運営。340社以上の経営者の方の想いをカタチにする採用支援を提供してきた、理念採用のプロフェッショナル。
深澤 了|むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター。「採用ブランディング」の生みの親。早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターののち、パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても”光る人材”が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。FCC賞、日本BtoB広告賞、山梨広告賞など、受賞、連載、雑誌掲載多数。
目次
1.媒体募集で成功するコツ・母集団形成方法
近年の採用において、媒体だけで母集団を成功させるのは非常に難しいと思います。
採用される側からすると、求人広告に書いてある内容だけでなく、企業について企業ホームページや口コミ、SNSを閲覧して情報収集をします。
とはいえ求人広告は働く意欲のある人が見るプラットフォームなので、母集団形成をするためには一番いいと思っています。
ただ、「その企業の母集団」とは違うので、入り口は求人広告を使い、ホームページなどオウンドメディアで自社に引き込むような採用手法が主流になってくると思いますね。
「媒体に頼らない」採用手法というものに力を入れていく必要があると思います。
今から新しくメディア運営をやろうとしたときに、やることの多さに戸惑ってしまうと思います。
そんな時は一気にやらないことをオススメしますね。
一気におこなうと全てが中途半端になってしまい効率が悪くなってしまうので、一端の結果を出したうえで次にいくことが大事だと思います。
母集団形成方法について、中途採用の場合だと困る企業も多いと思うのですが、その辺りはどうアドバイスされていますか?
それぞれに合った訴求ができているかが、母集団形成のコツであると思います。
雇用形態は大きく分けて新卒、中途、アルバイトの3つあります。
アルバイトの方は時給、中途の方は経験が活かせるか、キャリアが積めるかどうかに注視します。新卒は将来的な安定性や会社の理念、ビジョンを見ます。
2.オウンドメディア戦略・設計の立て方
オウンドメディアに来てもらえると、自社のファンになってもらえるんです。
オウンドメディアはあとから「あの会社どうなっているんだろう」と思い出すことで採用に至るケースもあり、短期的・長期的な採用においていいと思います。
自社との接点をつくるために自社に合わせたページを作成することをおすすめしますね。
コーポレートサイトとオウンドメディアの境目がない企業も多いので、この2つを1つにして作成してもいいと思います。
コーポレートサイトはもともと情報の更新が少ないのですが、最近では採用ブログの機能が付いて更新されていくものもあります。
自分たちで決められる範囲でオウンドメディアを作ってしまった方がいいと思います。
採用戦略や設計について立ち止まって考えずに進んでしまい、失敗してしまう企業が多いと思うのですが、アドバイスはありますか?
中小企業・新卒採用をし始めたばかりの企業は特に、リソースが足りず22卒採用が終了してから23卒採用を始めることが多いのですが、時期が被っているのは当然なので、そこは同時におこなってほしいなというのは間違いなく言えますね。
一度力をかけてやることで翌年からはクリアになってくると思います。
3.競合他社と差別化できる求人の打ち出し方
どこかと比べる相対評価ではなく、自社の自己分析をおこない、自社にしかない強みを見つけてほしいですね。
ナンバーワンではなくオンリーワンを探し、そのオンリーワンをどう打ち出すかを大事するべきだと思います。
採用できる時点で事業は好調なはずなので、強みがないってことは絶対ないと思います。
ですので、企業側も自社のことをしっかり考えていくという時間を取っていくべきだと思いますね。
弊社ではSNSに力を入れて「個人のブランド化」をしています。
「個人総和+事業の価値=法人の価値」だと思っていて、各々の価値を上げていけるといいと思います。
4.選考中の離脱を防ぐための施策
エージェントとして普段している工夫は、まず魅力的なポジティブ材料を積み上げて、学生が受けたい、入社したいと思うラインを超えることを意識します。
重要なのは、80点で受けたいと思う学生に、95点まで積み上げてから選考の前にネガティブな部分や弱点も含めて伝えて80点を下回らない程度に下げるということです。
なぜ重要かというと、後から見つけたネガティブ材料はすごく印象が強くなり、だまされた印象を受けることがあります。
先にネガティブな情報もできる限り伝えておくことを意識していますね。
自社採用としては、学生に親近感が湧いて、安心材料になる社員インタビューを掲載しています。
インタビューやSNSなどで情報を多く発信することで、マイナスな情報を探ってもらい、それによって自社HP・採用サイトなどでポジティブな情報をもう一度目にするような仕掛けを作っています。
採用する中で学生に興味を持ってもらえる行動をしていたかが大事です。
弊社でおこなっていて好評なのは、学生への面接の通過連絡の際に、人事が電話で通過した理由を伝えています。
学生はなぜ落ちたのか、どうして通過しているのか分からずに不安になっている中で、どこを評価しているのかを伝えることはすごく自社への興味付けになります。
次の面接で落ちてしまったとしても、プレシャスパートナーズは丁寧にフィードバックしてくれた暖かい会社だったという印象になります。
そういったファンづくりが採用ブランディングになっていきます。
今は口コミサイトに色々と書かれるので、そこも無視せずに真摯に対応することも大事だと思います。
しっかりフィードバックしてあげることで会社の理解度が深くなり、段々好きになっていきますよね。
そういう風にやっていくと「この会社に行きたい」と思う学生が生まれるのかなとお二方の話を聞いて思いました。
5.SNSで拡散する方法を知りたい
川畑さんはTwitterのフォロワー数も多いので、是非どのように活用していけばいいのか聞いてみたいですね。
最初は毎日6ツイートをするというノルマを決めてやっていましたね。
毎月スプレッドシートを作り、地道に新作ツイートを書き溜めて溜まってきたらリライトという形を取っていました。
”リツイート”や”いいね”が多く、成果が出たものから順番に並び替えてリライトしていくというのを9カ月ほど続けました。
すごくバズったこともあったのですが、SNSは更新が早いので一気にフォロワーが増えて一過性でまた消えていくんです。地道にやることが大事だと思いました。
FacebookやTwitterなどSNSごとに育て方が違うので、採用ターゲットがよく使っているSNSに決めて、優先順位と目標値を決めて進めるのがいいと思います。
SNSごとに反応のいい投稿内容も違うので、キャラ設定もある程度SNSごとに意識していますね。
自社の社員を巻き込むのがおすすめですね。
自社の魅力を発信できるのは自社の社員なので、弊社ではほとんどの社員がSNSを活用して自分のアカウントで自社をPRしています。
そういった細かい部分の積み重ねがSNSブランディングになっていくので、会社のファンを巻き込んでそこで地道に活動していくのが採用SNSの有効な活用法かなと思います。
私の知っている会社は社長付随して会社全体で行い、今まで採用できなかったのがTwitterからだけで2ヶ月で2人採用できたそうです。
どうしても採用担当者はやることが多くて効率的にやる方法がないかと探ると思うんですが、これに関しては超地道ですよね。
6.採用、入社時、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月の節目でどんな研修や面談をすべきか
弊社は3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月の節目の研修はなく、入社時の研修と、OJTと振り返り研修ですね。
その代わり、入社して1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の節目には必ず人事が面談をおこなっています。
上司や同じ部署のメンバーではなく第三者機関的な立ち位置で人事がクローズドでおこなっていますね。
またジョブローテーション制度というものがあり、全社員に半年~1年に一度、「職種を変えたい」、「部署を変えたい」などのアンケートを実施しています。
こちらの制度は非常に効果的で、実際に営業から人事、内勤、マーケティングに異動したメンバーが多く、結果的に離職率も下がりました。
帰属意識の高いメンバーのパフォーマンスを上げることに繋がるのでジョブローテーション制度、人事が面談するのはおすすめです。
弊社では入社時に研修をおこない、面談は毎月のようにおこなっています。
また半期に一度評価の前に役員面談も行っており、どんな業務をおこなっているのか、どんなことに悩んでいるのかを話します。
また毎週あみだくじで誰かとランダムでマッチングするクロスランチ制度があり、他の部署の社員同士で話す機会を設けていますね。
入社時の理念共感は、入社後のやりがいや入社後の理念共感とすごく深い相関があり、これを回帰分析するとちゃんと因果関係があるというのが我々の調査研究で分かっています。
お二人がお話しされたことと、入社時の理念共感を紐づけて行っていくと一本の線として効果が出るのではないかと思います。
7.支社ごとでの採用ブランディングの高め方はどうすべきか
理念やバリューなど、基本的なブランディングは本社や支社で変わりないと思います。
しかし支社ごとにカルチャーが異なることもありますよね。
働く人のキャラや指導方針でカルチャーは若干変わる部分があったりするので、その場合は働く人、「誰と働くか」という部分を伝えていくのがいいのではないかと思います。
私たちが紹介している企業でこれはいい取り組みだなと思ったのが、採用ブログ自体は会社で統一されていて、支社のタグをつけて各支社が採用ブログを書いていました。
支社ごとの色や雰囲気、どんな人が働いているのかがわかりやすかったですね。
求職者にも伝わりやすいと思います。
8.10~20代が会社に求めること、理想の働き方
やっぱり“働きがい”なのかなと思います。
みんなが稼ぎたいわけではないし、みんなが休みたいわけではないので、人それぞれのやりがい、働きがいが違うってことをまず人事が把握してほしいですね。
弊社は最近、営業の中でも部下をマネジメントして管理職になるマネージャー職と、プレイヤーとして自分の実力を伸ばしたいエキスパート職の2つの評価制度に変えました。
多様性に対応するような評価制度や研修を導入することが、今の若い世代の理想の働き方に繋がるのではないかと思います。
「自分らしく働きたい」というのともう一つ、「自分の居場所がその会社にあるか」が重要なんだろうなって思っています。
その会社で自分らしくいられるか、自分の適性にあった仕事やポジションなのか、会社の中で必要とされているなという自分の居場所がないと人は辞めていくと思います。
また、多様性は大事ですが、多様性を増やすために会社の許容レベルを超えるとだめだと思いますね。
会社の方が個人に譲歩しているとなると、それはミスマッチになってしまいます。
川畑さんの「自分の居場所」はすごく今の若い子たちに感じますね。
承認欲求が強いので、私のことを見てくれている、知ってくれているって思うだけで精神的な安定にもつながるので、会社は若いメンバーを承認することが必要ですね。
会社が大事にしている理念や価値観は、その人が何のためにそこにいるのかという居場所という部分に繋がると思うんです。
重なり合いを見つける仕組みを作り、その人個人も自分がここになぜいるのかを考えていかなきゃいけない。
あくまで50:50の関係だと思います。
ぜひ本日のセミナーを日々の採用の中で活かしていただければと思います。