人事評価の時期になると、人事評価シートの書き方がわからなかったり正しくかけているか不安になったりといった悩みを抱える人が多くいます。
本記事では、評価シートの目的や正しく書くために必要な5つのポイントを、トラブル事例などと合わせながら解説します。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
目次
1. 人事評価シートとは正しく評価するためのツール
人事評価シートとは、従業員ごとの能力や目標、成果などを把握するためのシートです。行動評価シートや人事考課シートなどとも呼ばれます。
人事評価シートにおいて行動目標や評価基準を設定しておくことで、目標達成に向けて努力しやすくなり、従業員本人はもちろん組織全体の生産性や業績がアップすることも期待できます。
また、従業員を公平に評価するには、人事評価シートが必要不可欠です。人事評価シートがあれば、スキルや課題などの評価する項目や目標などを明確に示すことができます。
2. 人事評価シートを作成する4つの目的
人事評価シートを作成する目的は、主に以下の4つです。
- 従業員の成長
- 評価の公平性
- 人事評価の納得性
- ビジョンの理解
以下、具体的に説明していきます。
2-1. 従業員の成長
人事評価シートは従業員の成長を後押しすることができます。なぜなら、評価項目を通して自分がどれだけ達成したのか、問題点や改善点なども「見える化」できるからです。
大きな成果をあげた従業員を適正に評価をすれば「やる気」が上がり、結果として「組織の一員」としての帰属意識を生むことができます。
反対にトラブルが多い従業員には改善へ向けた話し合いが可能になります。評価シートは、従業員の成長を後押しする一助になるといえるでしょう。
2-2. 評価の公平性
評価者の気分や感情で評価をすれば、従業員との間にくい違いが生まれます。評価の公平性を確保することは、人事評価シートを作成する目的のひとつです。
「あの部下とは話が合わないから評価を下げてやろう」といった評価エラーは、評価項目や基準が明確であれば起きません。そして評価に透明性があれば従業員も受け止めやすいでしょう。
2-3. 人事評価の納得性
人事評価シートがあれば評価結果に納得性を持たせることができます。理由としては、評価シートによって目標達成度や貢献度などが明確になるからです。
たとえば、昇進や昇給の場面では評価シートに沿って「理由」を説明したり、逆にできなかった場合にもをきちんと説明したりすれば、従業員も納得しやすくなります。
2-4. 組織ビジョンへの理解
人事評価シートは組織のビジョンを理解してもらうために必要なツールといえます。ビジョンが理解できれば、従業員は組織が何に期待しているかがわかるからです。
技術職なら仕事の専門性、営業職であれば接遇スキルなどが挙げられます。このように職種によっても組織が求めるものが違ってくるので、人事評価シートは従業員1人1人に「目指すべき姿」を理解してもらうのに役立っています。
3. 人事評価シートにおける3つの評価軸
人事評価は基本的に3つの評価軸から成り立っています。それぞれの評価軸について順番に説明していきます。
3-1. 業績評価
業績評価では、目標に対してどのくらい達成できたのかが評価基準となります。業績評価のメリットは、数字で評価できるのでお互いに納得度が高い点です。
業績評価の目標設定から評価面談までの流れは以下の通りです。
- 評価者と従業員で目標設定をおこなう
- 評価期間終了後、従業員の業績結果を集計
- 目標数字と業績結果を比較し、評価基準に沿って評価をつける
- 評価面談を通して業績評価の結果を伝える
【業績評価の具体例】
上期評価(4~9月)の業績目標 ⇒ 営業所利益103%達成(昨年対比)
新規獲得件数〇〇件など
3-2. 能力評価
能力評価とは、従業員が保有している能力に対する評価のことです。難易度の高い国家資格や特別な免許を取得した場合、組織が能力評価を与えるケースが多くあります。
なお、資格取得費用は組織で負担するところもあれば実費負担の場合もあります。
能力評価は、組織が指示した対象者に限定される場合もあり、資格を取得しても評価対象外ということもあるので、評価対象を確認しておきましょう。
3-3. 行動評価
行動評価は業績評価や能力評価と違い、数字で表せない評価です。行動評価でよくある評価内容は以下の通りです。
- 勤務態度(遅刻や欠勤など)
- 職場での仲間との関わり方(協調性があるか)
- 仕事に取り組む姿勢
- 顧客への対応
行動評価については評価者だけではわからない部分もあります。顧客や周りの従業員に日頃の仕事ぶりを確認すると、評価の精度が高まるでしょう。
とはいえ、各評価項目の割合やそもそもどのような評価制度を導入すれば良いかわからず、お悩みの方も多いでしょう。
当サイトで無料配布している「人事評価の手引き」では、人事評価の種類と各評価指標のメリット・デメリット、また実際に導入する際の評価点数の内訳や例なども紹介しており、人事評価を導入する際に、必要な情報をこの資料一つでまとめて確認できます。自社に最適な人事評価を選定するのに大変参考になる資料となっておりますので、こちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
4. 人事評価シートのサンプル(職種別)
ここからは、職種別で人事評価シートのサンプルを紹介します。
職種によって評価すべき点は異なるため、特色を理解して評価シートを作成しましょう。
4-1. 営業職の人事評価シートサンプル
営業職は月々のノルマが明確に設定されることが多く、売り上げなどの数値目標にウェイトが置かれます。
業績評価では業務目標達成度や目標達成過程を評価項目に取り入れ、設定された目標をどのくらい達成できたか、そこに至るまでに適切なプロセスを踏めたかなどを評価基準にしましょう。
一方の能力評価では、計画力や企画力、実行力、専門知識などを評価します。
行動評価では、設定した納期を守れたか、ミスはなかったか、相手との商談で有利な条件を引き出せたかどうかなどの項目を取り入れるとよいでしょう。
業績評価 |
業務目標達成度 |
業務目標をどれだけ達成できたか |
目標達成過程 |
目標達成までに適切な過程を辿れたか |
|
能力評価 |
計画力 |
具体的な営業方針を計画できたか |
企画力 |
市場や顧客情報をもとに、適切な企画を提案できたか |
|
実行力 |
自力で業務を遂行できたか |
|
専門知識 |
自社の商品やサービスについて十分な知識を有しているか |
|
コミュニケーション |
顧客や他の社員と円滑なコミュニケーションを築けたか |
|
行動評価 |
スケジュール管理 |
計画通りに業務を遂行できたか |
正確性 |
ミスや失敗がなかったか |
|
交渉力 |
相手との商談で有利な条件を引き出せたか |
4-2. 技術職の人事評価シートサンプル
システム開発や機器のメンテナンスなどを担当する技術職の人事評価では、期日までに対応できたか、品質管理を徹底しているかなどが業績評価となります。
一方、能力評価では、業務を効率的に進めるための計画力やトラブルを速やかに解決するための問題解決能力などが重視されます。
行動力評価では、顧客や取引先に適切な提案をおこなえたか、計画通りに業務を遂行できたかなどを評価しましょう。
業績評価 |
業務目標達成度 |
業務目標をどれだけ達成できたか |
目標達成過程 |
目標達成までに適切な過程を辿れたか |
|
能力評価 |
計画力 |
効率よく業務を遂行するための計画を立案できたか |
問題解決能力 |
問題・課題を適切に解決できる対応をおこなえたか |
|
専門知識 |
問題解決のために必要な知識を有しているか |
|
行動評価 |
スケジュール管理 |
工期通りに業務を完遂できたか |
正確性 |
ミスや失敗がなかったか |
|
品質 |
品質管理を徹底できたか |
4-3. 事務職の人事評価シートサンプル
事務職は、営業職や技術職に比べると業務の目標達成度を数値化しにくい傾向にあります。
そのため、業績評価では主に業務の効率化が評価の主軸となるでしょう。
能力評価では、事務仕事という性質上、専門知識や改善力、実行力などが重視されます。
行動評価では、正確性やスケジュール管理のほか、コスト削減への貢献度などもリストアップすることが一般的です。
業績評価 |
業務目標達成度 |
業務目標をどれだけ達成できたか |
目標達成過程 |
目標達成までに適切な過程を辿れたか |
|
能力評価 |
実行力 |
自力で業務を遂行できたか |
改善力 |
業務の効率を改善できたか |
|
専門知識 |
事務に必要な専門知識を有しているか |
|
行動評価 |
正確性 |
ミスや失敗はなかったか |
スケジュール管理 |
期日までに業務を遂行できたか |
|
コスト削減 |
備品などのコスト削減に貢献できたか |
|
クレーム対応 |
顧客や取引先からのクレームを適切に対処できたか |
4-4. 管理職の人事評価シートサンプル
チームや部署、部門を統括する立場にある管理職は、個人ではなく、管轄するチーム・部署・部門全体の業務目標達成が評価対象となります。
能力評価では、リーダーシップや指導・育成能力、経営方針の理解・促進など、管理職ならではの能力が求められます。
行動評価では、チームのスケジュール管理や重大なクレームへの対応力、部下がおこなった仕事の正確性のチェックなどを評価基準としましょう。
業績評価 |
業務目標達成度 |
管轄するチームや部署などが業務目標をどれだけ達成できたか |
目標達成過程 |
管轄するチームや部署などが目標達成までに適切な過程を辿れたか |
|
能力評価 |
リーダーシップ能力 |
管理職として、チームや部署などを適切に統括する能力を有しているか |
指導・育成能力 |
部下を適切に指導・育成できたか |
|
経営方針の理解・促進 |
会社の経営方針を理解し、その促進に貢献しているか |
|
行動評価 |
スケジュール管理 |
管轄するチームや部署などが期日までに業務を遂行できたか |
クレーム対応力 |
重大なクレームに対して適切な対応をおこなえたか |
|
正確性 |
管轄するチームや部署などがおこなった業務にミスや失敗はなかったか |
4-5. 製造職の人事評価シートサンプル
製造業では、生産量、品質、効率性などの指標を考慮し、目標達成度に基づいて業績評価をおこないます。能力評価では、専門知識や問題解決能力など、製造工程に応じて求められるスキルを評価します。
行動評価では、作業ミスがないことはもちろん、納期の管理や品質向上への取り組みを評価基準に取り入れましょう。
業績評価 |
業務目標達成度 |
業務目標をどれだけ達成できたか |
目標達成過程 |
目標達成までに適切な過程を辿れたか |
|
能力評価 |
計画力 |
効率よく業務を遂行するための計画を立案できたか |
問題解決能力 |
問題・課題を適切に解決できたか |
|
専門知識 |
問題解決のために必要な知識を有しているか |
|
行動評価 |
スケジュール管理 |
工期通りに業務を完遂できたか |
正確性 |
ミスや失敗がなかったか |
|
品質 |
品質管理を徹底できたか |
|
工数 |
作業工数を削減できたか |
4-6. 介護職の人事評価シートサンプル
介護職は数値での評価が難しい職種であるため、人事評価はまだまだ一般的ではありません。しかし職員のモチベーションを維持し、離職を防ぐためにも、人事評価を取り入れることは非常に有効な手段です。
業績評価では、病院や施設が定めた業務目標がある場合、達成や貢献の度合いで判断します。
能力評価では、問題解決能力や知識・スキルの習得に加えて、利用者とのコミュニケーションが評価基準として挙げられます。行動評価では、スケジュール管理能力や正確性、そして必要な各所との連携力を重要視するとよいでしょう。
業績評価 |
業務目標達成度 |
業務目標をどれだけ達成できたか |
目標達成過程 |
目標達成までに適切な過程を辿れたか |
|
能力評価 |
計画力 |
利用者に応じた介護を遂行するための計画を立案できたか |
問題解決能力 |
問題・課題を適切に解決できたか |
|
専門知識 |
利用者のために必要な知識を有しているか |
|
コミュニケーション |
利用者と適切なコミュニケーションが取れていたか |
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行動評価 |
スケジュール管理 |
計画通りに業務を完遂できたか |
正確性 |
ミスや失敗がなかったか |
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連携 |
職員と必要事項の共有がスムーズにできたか |
4-7. 販売職の人事評価シートサンプル
販売職は、実績が数値として明確にあらわれる職種です。売り上げ成績が人事評価において重要視されることは間違いありません。
業績評価では設定された目標の達成率と、そこに至る過程を評価基準にしましょう。能力評価では、販売計画の立案や専門知識、そして顧客とのコミュニケーションなどを評価します。
行動評価では、ルーティンワークの正確性に加えて、トラブル発生時の対応力が問われることも多いようです。
業績評価 |
業務目標達成度 |
業務目標をどれだけ達成できたか |
目標達成過程 |
目標達成までに適切な過程を辿れたか |
|
能力評価 |
企画力 |
市場や顧客需要を把握した販売計画を立案できたか |
専門知識 |
自社の商品やサービスについて十分な知識を有しているか |
|
コミュニケーション |
顧客が満足するコミュニケーションが取れていたか |
|
行動評価 |
正確性 |
ミスや失敗がなかったか |
クレーム対応 |
顧客や取引先からのクレームを適切に対処できたか |
5. 人事評価シートを正しく書く5つのポイント
ここでは、人事評価シートを正しく書くためのポイントを5つに分けて説明していきます。どのポイントも評価をするうえで大切な内容です。
5-1. 相手にわかりやすく簡潔に
評価シートを書くときは、相手にわかりやすく簡潔に書きましょう。難しい言葉や長文では、相手に伝わりにくいからです。
具体的なアドバイスとしては「箇条書き」がおすすめです。伝えたい内容がわかりやすくなり、納得度も上がります。
5-2. 客観的な視点で
評価をするときは主観的になりすぎず、客観的な視点で書きましょう。自分だけの基準で評価をつけると、相手との間に温度差が生じる可能性があるからです。
この問題を解決するためにも、周りの従業員や取引先などに仕事ぶりを聞き取りしてみましょう。第三者の意見を合わせた客観的な視点で評価を書くことで相手も理解しやすくなります。
5-3. 具体的な数字を入れる
相手に評価を伝えるときは、具体的な数字を入れましょう。数字を入れることで「信ぴょう性」を持たせることができます。
たとえば感謝を述べるとき、「営業に貢献してくれてありがとう」と「100万円の売り上げで営業に貢献してくれてありがとう」では、後者の「100万円」と数字を入れたほうが伝わりやすいのがわかります。相手に伝えるときは具体的な数字を入れて伝えることを意識しましょう。
5-4. 改善点はポジティブに伝える
評価をする際、改善点があればダメ出しではなくポジティブな言葉で伝えましょう。ポジティブな言葉を使うことで相手も「次は頑張ろう」と仕事への意欲がわいてきます。
失敗やミスを単純に否定するのではなく、具体的な注意点や改善点を伝えることで、再発防止にもつながるでしょう。
5-5. 評価を伝えた後は前向きな状態で
相手に評価を伝えた後は、前向きな状態で面談を終わらせましょう。落ち込んだり、不満を持ったままだったりすると、その後の仕事にも影響します。前向きな状態で終われるように背中を押してあげましょう。
6. 人事評価シートの自己評価・コメントの例文
ここからは、人事評価シートの自己評価と、フィードバックコメントの例文をそれぞれ紹介します。
上述した5つのポイントを踏まえた例文を適宜参考にし、評価シートの記入に役立ててください。
6-1. 営業職の自己評価・コメントの例文
営業職は業績評価を数値で表しやすい職種なので、自己評価やコメントにも具体的な数値を入れるとよいでしょう。
たとえば自己評価では、以下のような文を取り入れます。
「今期は営業利益が前年比110%を達成した。SFA(営業支援システム)の活用により、効率的にテレアポを遂行できたほか、既存客へのフォローを忘れずに実施できたことが業績アップにつながった。」
一方、評価に対するコメントについては、社員のモチベーションアップのためになるべくポジティブな言葉を取り入れるのがポイントです。
「自社商品やSFAの特徴や機能についてより深く理解しようという姿勢が見られた。テレアポやフォローの効率を上げることで、顧客にアピールする機会が増え、その結果が前期比売上110%につながった。」
6-2. 技術職の自己評価・コメントの例文
技術職の自己評価では、高品質なサービスを期日までに提供できたかどうかが主な評価ポイントとなります。
また、品質アップのための専門知識、スキルを養っているかどうかにも着目しましょう。
以下では具体的な自己評価の例文を紹介します。
「顧客・取引先の情報や業界の動向について学び、どのような課題・問題点を抱えやすいのかを分析した。営業職と連携し、情報を共有することで、顧客のニーズに沿った提案をおこなったことが大型契約につながった。」
一方の評価コメントでは、日頃の業務に取り組む姿勢や、顧客からの反応などをもとに、評価すべきポイントを挙げていきます。
「業界の動向を探るセミナーへの参加や、資格取得を目的とした勉強に励む姿が見られた。専門スキルを培うことが品質向上につながり、顧客から仕事ぶりを評価する声も上がっていた。」
6-3. 事務職の自己評価・コメントの例文
事務職の自己評価では、業務の効率化やコストの削減など、目に見えやすい部分を数字で評価するのがポイントです。
たとえばコスト削減に成功した場合は、以下のような自己評価をおこないます。
「備品の使用記録を記載する表を作成するとともに、パソコンで消耗品の種類や数を管理するようにした。備品の状態を正確に管理できるようになり、必要な量を必要なときに発注できるようになったうえ、使用記録のルールによって過剰な備品の持ち出しがなくなった結果、コストを20%削減できた。」
一方評価コメントでは、提示された数字に対して明確な評価を返すのが基本です。
「新たなルールの作成と管理方法の導入により、備品のコストを20%削減できたのは非常に評価できる。既存のルールにとらわれず、コスト削減のために新たなルールを企画・提案する姿勢が見られた。」
6-4. 管理職の自己評価・コメントの例文
管理職が自己評価する際は、担当するチームや部署、部門の業績や成績をふまえた内容にする必要があります。
以下では具体的な例文を紹介します。
「チーム一丸となって業務に取り組めるよう、プロジェクト発足の段階で、プロジェクトの目標や納期、タスクの内容などについて全員で話し合う機会を設けた。初動の段階でチームの方向性や目標を明確にすることで、全員が足並みを揃えてプロジェクトに取り組み、協力してタスクをこなす姿勢が見られた。その成果もあり、プロジェクトは当初目標の105%達成を実現できた。」
一方、フィードバックするための評価コメントには、以下のような文を取り入れます。
「発足の段階で、チームメンバー間で目標やタスクの内容などを共有することで、団結力を高めたことが目標達成につながった。その後のメンバー同士のコミュニケーションも円滑になり、問題や課題の迅速な発見および解決を実現できた。」
6-5. 製造職の自己評価・コメントの例文
製造職の自己評価では、業務の効率化や品質向上など、製造プロセスの改善に焦点を当て、具体的な数字や実績を挙げることが重要です。たとえば品質向上に成功した場合は、以下のような自己評価をおこないます。
「製造プロセスの品質管理を強化するために新しい検査手法を導入した。結果的に検査作業の効率が向上し、不良品の発生率を10%減少させることができた。」
一方の評価コメントでは、具体的な実績とチームへの影響についてフィードバックをおこないます。
「新しい検査手法の導入により、検査の効率が向上し、不良品の減少に成功したことは評価に値する。品質向上に対する積極的なアプローチが見られ、チーム全体にポジティブな影響を与えた。」
6-6. 介護職の自己評価・コメントの例文
介護職の自己評価では、サービス提供の質や効率向上など、改善をおこなった点や工夫した点に焦点を当てましょう。数値化しにくい項目が多い職種であるため、利用者へアンケートを取る、トラブル発生数を記録するなど、できることから残しておくことも大切です。
たとえば雰囲気づくりに寄与した場合は、以下のような自己評価をおこないます。
「明るい雰囲気づくりのために、利用者への挨拶時はプラスアルファでお声がけを徹底。結果として、利用者とのコミュニケーションが円滑になり、一人ひとりの状態について理解度が増した。また対職員や利用者同士のトラブル減少にも貢献できた。」
一方の評価コメントでは、数値化が難しい場合は姿勢そのものへの評価が大切です。
「明るい雰囲気づくりへの姿勢や声がけの行動には、大変好感が持てている。利用者や職員を含めて施設の雰囲気が良くなっていることは肌感覚としてもあり、また、対職員や利用者同士のトラブルは事実として減少している。」
6-7. 販売職の自己評価・コメントの例文
販売職は、売り上げ実績が人事評価に直結します。そのため、自己評価やコメントにはできる限り具体的な数値を入れましょう。
たとえば以下の自己評価コメントのように、個人と店舗全体に関わる取り組みについて、数値を交えて伝えます。
「今期の個人売り上げは前年比110%を達成。積極的な接客と説明を心がけ、顧客に商品の魅力を伝えられた。また、顧客のニーズに合わせて、朝晩で陳列を変更する施策を実施。これにより、店舗全体の売り上げを前年比120%へと導いた。」
一方の評価コメントでは、提示された数値はもちろん、取り組みの姿勢に対してもポジティブな評価を返すように努めましょう。
「積極的かつ丁寧な接客からは、顧客をファン化しようという前向きな姿勢が見られ、結果として個人売り上げ前年比110%の達成へとつながった。また、新しい陳列施策は店舗スタッフ全員のモチベーションアップにも寄与し、一丸となって前年比120%に向けて取り組むことができた。」
7. 人事評価で起きやすい4つの評価エラー
ここでは、人事評価で起きやすい評価エラーを4つ紹介していきます。
7-1. ハロー効果
ハロー効果は相手のわかりやすい特徴に影響され、ほかの評価項目も同様の評価にしてしまうことです。
【具体例】
- 〇〇さんは一流大学を出ているから、仕事の進め方は最高評価にしよう
- 〇〇さんは、転職を3回しているから「継続力」は減点にしよう
7-2. 期末誤差
期末誤差は評価期間の終わりに起きた出来事に影響されて、評価全体を決めることです。期末誤差で評価をつけると、期初の仕事を正しく評価していないと従業員から不満が出てしまいます。
7-3. 中心化傾向
中心化傾向とは評価する相手の結果などに関わらず、無難な評価をつけることです。評価期間がギリギリで時間がないときや、従業員から不満が出るのが面倒なときに発生しやすい評価エラーといえます。
7-4. 寛大化傾向
従業員を成長させたかったり、不満を減らしたりしたいときに起きやすい評価エラーが寛大化傾向です。寛大化傾向とは評価結果が実際より甘くなることをいいます。
結果にもとづいて正しく評価をつけることを心がけましょう。
8. 人事評価において発生しやすいトラブル
2020年以降、日本ではマスクを付ける生活が当たり前になりました。そして組織の「働き方」も劇的に変化しています。
具体的には在宅ワークが増え、オンラインが主流になりつつあります。ここでは働き方が変化することで発生している人事評価のトラブルを紹介します。
8-1. オンラインでの面談が増加し、伝えたいことが伝わらない
仕事の打ち合わせはオンラインでも対応できますが、人事評価は本来対面でしっかり相手に伝えたいところです。しかし、オンラインでは相手に伝えたいことがうまく伝わりにくいといえます。
結果として、人事評価をしたけれど消化不良になることもあります。お互いに伝えたいことが伝わったか確認し、納得した形で終えるようにしましょう。
8-2. 在宅ワークが増えたことで行動評価がつけにくい
在宅ワークが増えることで行動評価がつけにくい状況になりました。なぜなら、協調性や積極性など行動に紐づく項目が在宅ワークにより評価できないからです。
このような状況が続くと「正しく評価されない」と従業員から不満が出てしまうでしょう。そうならないための改善策として以下の2点が効果的です。
- オンライン上での情報共有
- 仕事の進捗が把握できる日報の提出
行動評価は業績評価と違って数字では表しづらい項目になります。よって従業員が納得できるよう、評価設定するときに細かく内容を決めておきましょう。
9. 目的や書き方を理解して正しい人事評価シートを作成しよう
今回は、人事評価シートを作成する目的や正しい書き方について説明してきました。従業員の成長のほかに昇進や給与などの待遇にも影響が出るため、責任を持って評価をつける必要があります。
本記事で紹介した内容をもとに、お互いに納得性のある人事評価を目指しましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。