富士通株式会社が2022年4月をめどに「ジョブ型雇用」を、一部を除く国内外のグループ企業の11万人で導入すると発表しました。
これまで国内の管理職と海外従業員を対象としていましたが、グループ会社を含む国内の一般社員5万人に広げる予定。国籍や組織の枠を超えて、最適な人材を育成・配置可能にし、IT(情報技術)サービスで進めている事業モデルの構造転換を後押しします。
9割の社員がジョブ型雇用に
富士通株式会社では、2020年に国内グループの管理職1万5000人にジョブ型を先行して導入し、仕事の専門性や難易度で設定した格付けに応じた定額の月給と業績連動の賞与を支給しています。
既に、海外グループ会社の4万5000人もジョブ型で働いており、今回国内グループ会社の一般社員に広げることで、国内外のグループ企業で働く13万人弱のうち、9割近くに相当する11万人がジョブ型雇用の対象となります。
導入に向け労働組合と新しい人事制度について協議を進めており、職種、階層ごとに求められる標準的な成果やスキル(技能)をまとめて社内に公開する予定とのことで、社員ごとに異なる詳細な職務内容については今後作成するそうです。
また、新卒で入社する社員は、大学院で専門知識を身につけている場合などを除き、一定期間は一律で処遇する方針です。
ジョブ型雇用はITサービスの事業モデルの構造転換が狙い
富士通株式会社がジョブ型雇用をグループ全体に一気に拡大するのは、ITサービスの事業モデルの構造転換を速める狙いがあります。
従来は個別の顧客の要件に合わせてシステムを構築する「請負型」が主体でしたが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の需要が拡大するなか、デジタル技術やデータ分析などを用いて課題を解決できるサービスを提供する「提案型」への転換を図っています。
顧客との長年の付き合いが受注につながる請負型と異なり、提案型のDXサービスはデジタル技術や課題を洗い出すコンサルティング能力が問われるため、勝ち抜くには優秀な人材の獲得が欠かせません。
力を入れる人工知能(AI)などの専門人材はIT以外の業界も含めて引き合いが強く、高度なスキルに給与で報いやすいジョブ型雇用の導入で人材を獲得しやすく変革を進めています。
ジョブ型雇用の導入は、社内の人材育成にもつながる
ジョブ型雇用の導入は成長戦略に合わせた人材の育成にもつながります。
企業が描く戦略の実行力を高めるため、求めるスキルや職務を明確に定めることは人材を効率よく育てるための一歩になります。
既に専門的なデジタル技術などスキル習得やキャリア形成を学べる研修を充実させてきており、22年2月時点の講座数は9,600講座と、3年前から4倍に増えました。
富士通が描く未来
提案型モデルへの転換は、合理化だけでは実現できません。
富士通は各地域で運用してきた統合基幹業務システム(ERP)を世界的に統合するプロジェクトを20年以降に進めており、散在するデータを集めて分析し、リソースを有効活用する狙いがあります。
データ活用が進めば、組織全体のデータを見て経営判断したり、業務改革の成功例を業種を超えて応用が可能になります。
国内外のグループ全体でジョブ型を導入すれば、親会社と子会社、入社した年や場所などに関係なく人材を配置できるようになります。
成長戦略に合わせたデジタル人材をいかに育て、整えてきたデータインフラなどを有効活用できるか。制度を導入するだけでなく、人材戦略の実行力が今後問われるでしょう。