こんにちは!ヒトテク研究所の村山です。
2017年8月4日に開催された、日本最大級のスタートアップ カンファレンス『B Dash Camp 2017 Summer in Sapporo』にて、準優勝を受賞した『HRアナリスト』。
HRアナリストは、競り負けない採用を実現する人材分析サービスで、面接官や応募者を分析し、個々人に合わせた最適な採用戦略を提案してくれます。
そして今回は、HRアナリストを開発したシングラー株式会社代表の熊谷さんにインタビューの機会をいただき、その想いや特徴を記事にまとめました。
HRアナリストを導入すると具体的にどのような課題を解決してくれるのか。また、どんな背景から生まれたのか。HRアナリストの魅力に迫ります。
熊谷 豪(くまがい ごう) | シングラー株式会社 代表取締役CEO
【目次】
- 採用の決定率を上げる「HRアナリスト」とは
- 「もっとアトラクトの強化を」HRアナリストが生まれた背景
- 同業の採用競合が多い企業に、HRアナリストは効く
- 熊谷さんが面接で意識していることは「違和感を突き詰めること」
- HRTechサービスの導入を検討する上で「思想」と「情熱」は大事
目次
採用の決定率を上げる「HRアナリスト」とは
村山:HRアナリストは、どのようなサービスなのでしょうか。
熊谷氏:HRアナリストは、日本初の「応募者を“口説ける”人材分析サービス」です。HRアナリストを活用して、競り負けない採用ができるようになり、「採用の決定率を上げる」ことにつながります。
事前に応募者に10分程度で完了するアンケートを実施してもらい、アンケートの内容を分析。そこから、採用の設計方法、面談・面接のやり方、応募者の志望度を上げるトピック、自社のアピールポイントは何かといった、採用の戦術を提案してくれます。
さらに、事前に社内でもアンケートを実施して、回収・分析しておきます。そうすることで、応募者と相性の良い面接官、リクルーターの選出といった相性分析も可能となります。アンケートは、HRアナリストから発行されるURLを相手に渡すだけでOKです。
村山:アンケートはどのようなものなのでしょうか?
熊谷氏:アンケートで何を聞いているかと言うと、「意思決定プロセス」と「志向性」の2つを徹底的に聞いていきます。全部で31問、10分ほどで終わります。この内容をもとに分析して結果を見ます。
結果は大きく8タイプに分けてます。その方の思考の特徴、対人関係における人柄、性格の特徴などが出てきます。そうやって応募者への理解を促進し、応募者ごとにカスタマイズされた採用を実現します。
村山:応募者一人ひとりに合わせた適切な採用方法をシステムが導いてくれるのですね。
熊谷氏:そうです。ただ個人の傾向を出すだけでなく、そこからどのようなアクションにつなげていくかも出せるのが、HRアナリストの特徴になります。実際にその応募者を採用するためにどういった採用戦術を練ればいいのか。「採用設計をこうしてください」「面談・面接の方針はこうしましょう」と、アドバイスがもらえるようになっています。
また、面談・面接時の具体的なアクションとして、「応募者をモチベートするときにはこうしたほうがいいですよ」「面接官として見抜く場合はこういうことを聞いていきましょう」「トークの方針としてこういうところを意識してください」といったことも出せます。
さらに、「この応募者の志望度が上がるための要素は何か」ということも出てきます。たとえば、要素として、理念への共感があるとした際、「理念やビジョンの話をしてください。そのために事前にこういったヒアリングしておくといいですよ」と、個々人に合わせた採用方法を一つひとつ細かく知ることができるのです。
最後に相性分析です。応募者と面接官・リクルーターとして相性がいい社員は誰なのか。逆に相性が悪い社員は誰なのか。そのようなこともわかり、最適なアサインにつなげることができます。
このようなことをベースに、最初に話をした「採用決定率」を上げていきます。
「もっとアトラクトの強化を」HRアナリストが生まれた背景
村山:どのようなきっかけがあってHRアナリストをつくろうと思ったのですか?
熊谷氏:昨今、採用の難易度があがって来ている中で、応募者の「動機づけ」と「クロージング」というアトラクトの部分が非常に重要な領域になると考えています。
しかし、十分にアトラクトに注力できている人事の方はそこまで多くないと思いますし、まだそのような領域を支援できるサービスもあまりありません。
私は、独立してから『HRディレクション』という会社を設立しました。外資系のコンサルティングファーム、IT系企業、メーカーなど、5年で80社ぐらい、採用支援に携わらせていただきました。
そのときのクライアントの悩みの多くは、「媒体は使ってきたけれど、打ち手がなくなってしまった」という内容でした。
「では、もう少し自社の採用のやり方を内側から改善していきましょう」と、動いていくのですが、その中で強烈に感じたことは、「面接のやり方がどこもうまくできていない」ということでした。
それこそ、「自己PRしてください」「頑張ったことは何ですか」「強みはなんですか」「前職は何をやっていたんですか」という話で、ただ見極めの面接をしてそのまま帰すだけでした。応募者はなんのモチベーションも上がってない状態なわけです。これでは、他社とバッティングしても勝てるわけがありません。
私は、採用が強い会社には2つの共通項があると思っています。人数やお金やブランド力ではありません。
1つは「採用の勘所」がわかっているということです。応募者に「こう伝えると、こう反応してくれる」というようなことです。
もう1つがインファイトが得意ということです。ごりっと口説けるかが重要です。相手のことを理解して、パーソナライズされたコミュニケーションによって口説ける採用ができている会社は強いです。
それができた上で、人を増やしたり、お金をかけたり、知名度を上げたりすることにより、加速度的に採用力が上がっていくのではないかと思います。
村山氏:根っこの部分をしっかりつくりましょうと。そこからはじめて武器を増やせばいいと。
熊谷氏:ただ、だいたい言われるのは、「とりあえず母集団集めてよ」みたいな(笑)。「いや、そこではないんだけどな」というジレンマはいつもありました。
また、このような状況を解決するために、「採用に強い人つれてきましょう」という話によくなります。実際に私も、顧問といった形で支援させていただいておりますが、時折「これは最終的にその企業にとって効果的なことなのか」と感じることもありました。
それは、コンサルティングフィーが高いということと、時間の融通がきかないことです。また、会社に資産として残らないということが挙げられます。「もっと安く、いつでもどこでも使えて、会社の資産として残せるものを提供したい」想いから、HRアナリストを開発しました。
同業の採用競合が多い企業に、HRアナリストは効く
村山:HRアナリストは、特にどのような企業にオススメですか?
熊谷氏:同業の採用競合が多いところはオススメですね。
採用競合が複数社あって、かつそれが同業業界の会社同士でバッティングしている業態は非常に相性がいいと思います。たとえば広告代理店、人材系、テレビ局の子会社、IT系であればSIerの企業とかですね。
村山:競合が多いけど、なんとかして勝ちたい。でも勝ち方がわからないといった企業ですね。他社との差別化が難しいですよね。
そうすると結局どこで差別化していくかとなると、「ヒト」になるわけです。そのために個々人の採用の戦闘力を高めてくれる武器が、HRアナリティクスだと。
熊谷氏:そうですね。そのように役立ってほしいですね。
村山:実際にHRアナリストを導入した企業の事例はありますか?
熊谷氏:HRアナリストのローンチ前に試験導入してもらった企業の事例になるのですが、中途の人材紹介経由で採用をしているところに、HRアナリストを導入してもらいました。
エージェント経由だと、書類上でしか候補者のことを知らずに直接面接になってしまいます。ですので、そこにHRアナリストを1回かませて、面接のクオリティーを上げるために使っていただいています。
効果としては、まだ統計的な数値データはとれていないのですが、お客様の意見としては「それで面接が楽になった」と言ってもらえています。
村山:ほとんどの面接官は、応募者一人ひとりにあわせて質問項目を考え抜いて臨めていないので、「こんなこと聞くといいですよ」と出てくると、すごく楽ですよね。
熊谷氏:「あとは教育ツールとして活用できて、その分、人事の工数・ストレスが減った」という意見もいただいてます。
村山:面接官、リクルーターはどうあるべきかということもHRアナリストが出してくれるので、人事の介入が減りますね。
また、現場が面接をしているのに、人事のせいにされることもあると思います。「なぜ採用がうまくいかないのか」となった際に、「面接官によってこんなに決定率が違うのですよ」と、分析結果をもとに原因を割り出せれば、人事のせいにされなくてすむということもありますね
昔、私が新卒採用をしていたとき、「目利き力」と「通過率」「入社率」で面接官を分析したことがあったんです。そこに紐付けられる面接官を全部洗い出しました。適正な人数を通過させられてるかどうか、そこの目利きが合っているのかどうかを見ていきます。
そこでわかったことは、面接の目利きがあまりうまくない人は、同時に教育も下手なんです。意外に相関が強いんです。たとえば、面接での見極め力が低い人の配属された新卒は、あまり育っていない可能性が高いのです。
熊谷氏:なるほど、そういう見方もあるのですね!
熊谷さんが面接で意識していることは「違和感を突き詰めること」
村山:熊谷さんが面接の際に意識していることはありますか?
熊谷氏:新人の人事の方に言っていることは、「聞くことを決めるな」と言っています。面接表などもつくらせないようにしています。
何を聞くかに注力しすぎて、相手のことを見ないカチカチの面接になってしまうからです。ですので、「相手を見て、違和感を持ったことをヒアリングしよう」という話をしています。とにかくしっかりコミュニケーションをして、違和感があったらすぐそこを突き詰める。
村山:違和感とは、具体的にどのようなものですか?
熊谷氏:たとえば、面接をしていて、「どうしてこういう選択したんだろう?」と、何か辻褄が合わなくなるポイントや、「一般的に考えるとこの選択するだろう」というところを、「なんでこっちの選択なんだろう」と、自分の常識外のところが出てきた瞬間に、違和感は発生すると思います。
人事は、常識内は評価できるのですが、常識外になったときに適切な評価ができなくなります。ですので、そこをしっかりとヒアリングしていかないと、相手の理解が進まないと思っています。
違和感をとにかく大事にしてほしいですね。それが、カチカチの質問をして、相手もカチカチになったままで面接終了だと本当にもったいないです。これで優秀な人事がライバル会社にいて、ちょっと気持ちいいコミュニケーションをしたら、競り負けてしまいます。
村山:違和感を察知するコツのようなものはありますか?
熊谷氏:私がとにかく聞いてほしいのは、人生の中での「決めるタイミング」についてです。なぜその選択肢を選んだのか、意思決定するポイントを聞いていきます。
また、「相手に関心を持ってね」と言っています。第一印象で関心を失う人は、絶対人事に向いていません。
村山:なるほど。私は「イタコになれ」と言われましたね。応募者のキャリアシートと応募者を見て、自分がその人になったつもりで、その人の違和感を感じとれと。「自分だったらこっち行くのに、なんでこっち行ったんだろう」みたいな。
HRTechサービスの導入を検討する上で「思想」と「情熱」は大事
村山:HRTechサービスを、人事の方が活用していく上で、求められる姿勢はどのようなものでしょうか。
熊谷氏:まず、手当たり次第に手を出さないほうがいいと思っています。これだけ多くのサービスが出てくると何を選択すべきか迷うと思いますが、決め手はサービス設計者の思想だと思っています。ですので、その思想に共感した上で、自社の課題にマッチしてるサービスを選択することが大切ではないでしょうか。
よくわからずに、「とりあえず広がっているから使おう」だと、失敗につながると思います。
村山:思想とその情熱は大事ですよね。どこの課題を解決しようと思っているのか。そしてその熱量はどのくらいのものなのか、そこを確認したほうがいいですよね。
熊谷氏:今、HR領域における分析ツールはたくさんあると思います。しかし、アトラクトに特化したサービスはまだそんなに出てきていません。
おそらく、今後は次々に出てくる可能性は十分にあります。そうなったときに、我々の差別化要因は「思想」と「情熱」でしかないと思っています。そこは他社には負けません。
村山:今後、HRアナリストを通して実現したいことはありますか?
熊谷氏:面接を極力なくし、面談で意思決定できるような形をつくっていきたいですね。「じゃ、うち来ない?」という会話を増やしていきたいです。
村山:選んだり選ばれたりという世界観をなくしたいということですね。そういうことではなくて、気が合うか合わないかぐらいの話に近いですよね。
熊谷氏:今は求職者の働くニーズが多様化してきています。人事が個々人に合わせてカスタマイズした対応をしないと、応募者の惹き付けはできません。昔みたいに一方通行の面接をしていては絶対に採れないと思うんですよね。
村山:働くことに対する非常に多くの価値観が存在しますよね。そう考えると普通の人事の経験値じゃ追いつかないかもしれませんね。
熊谷氏:難しいと思います。エンジニア採用が特に顕著で、すごくギークなエンジニアが面接にきて、文系の社長が対応して、「うちは数字がどうのこうの」みたいな感じで話をして、まったく刺さらずに帰っていくみたいな。
そういったこともあって、HRアナリストでは、エンジニアのタイプ分析もつくっています。
村山:「相手をしっかりと見てください」と言いたいですよね。そのためにもHRアナリストは非常に有効的ですね。