将棋とAIから考える、HRTechの現在地 |HR NOTE

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将棋とAIから考える、HRTechの現在地

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※本記事は、ヒト×テクノロジー研究所 所長の村山雄二さんより寄稿いただいた記事を掲載しております。

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こんにちは。ヒトテク研究所 所長の村山です。

将棋における藤井聡太氏の連勝記録は記憶に新しいところですが、彼のトレーニングにAI将棋が取り入れられていたことはご存知でしょうか。

今回は「将棋から見る、AIとの共存」をテーマにご紹介させていただきます。

1.将棋にみるAIとの対話法

幼少の頃より、非凡な才能を発揮していた藤井四段ですが、それだけで往年の棋士達を「29連勝」という記録で破り続けることはできなかったかもしれません。

彼の強さの一つに、AI将棋とのトレーニングが挙げられています。これは、これまでの将棋のトレーニングと一線を画す手法です。これまでの棋士達のトレーニング方法といえば、「過去の棋譜を読み返し、それを将棋盤に並べて、そのパターンを踏襲していく」というものでした。

当然過去のパターンが無数にあり、自分の戦型にあった棋譜を中心に勉強していくことになります。人間の記憶回路としては、何度も同じことを繰り返せば、同じパターンには強くなりますが、それを超えたところでは長考を要し、そこが将棋においては重要な勝負の分かれ目となります。

AIとの練習はここで強みを発揮します。過去のあらゆるデータを読み込ませることは当然ですが、同時にAIは感情や思い込みに左右されません。つまり、将棋における定石ではなく、その場にある状況から最も勝つ可能性の高い打ち手を先の先まで読んで選んでいきます

この時、これまでにない棋譜が自動的にAIの中では精製されます。このスピードに関しては人間が敵うところではなく、AIの圧倒的有利な状況です。

翻って藤井四段は、幼少の頃よりこのAIとの対話をしていたので、これまでの棋譜でのトレーニングとAIとのトレーニングを上手く自分の中で融和させることに成功しているとみることができます。

少なくとも、棋譜一辺倒の将棋のプロたちよりも多くの「対AI」トレーニングはしているでしょうし、未知の棋譜に出会った回数も多かったはずです。

全てがAIのおかげというのは早計ですが、デジタルネイティブ世代が強みを発揮する領域であることは容易に想像できる部分です。

2.AIと人間の勝負に意味があるのか?

3 そういった話をすると、将棋AIと将棋のプロの戦いの話にもなります。

実際にプロが将棋AIに負けるような事実も出てきていますが、それ自体に大きな意味はないと筆者自身は考えております。もとよりパターン化されるような領域はコンピューターが得意とする分野ですし、スーパーコンピュータの黎明期に、すでに円周率の計算では機械に大きく差をつけられた人間の脳が、特定の分野で機械と勝負することには意味はないのです。

あくまで人間対人間の勝負におけるサポーターとしての役割。それが知的勝負におけるAIの役割であると感じています。今後はあらゆる知的勝負、体力勝負の分野でAIがコーチとしての役割を果たしていきますが、同時にそれはコーチングを受ける側である人間のセンスも要求していきます。

AIはこれまでの常識とは全く違った答えを出す場合があります。場合によっては倫理観に合わない答えや戦術を提示してくるでしょう。これはAIも発達段階であり、投入する情報によって結論も大きく異なってきます。このあたり、どのような解を求めるか、という話になってきますが、そもそも統計解析的な知識がベースとして必要です。

3.まだまだ統計解析の延長線上にあるHRTechの現状

2 現在のAIの能力を活用するのであれば、勝つための選択肢を勝つか負けるかの2者択一を目的変数として、従属変数としてのデータを大量に投入することができれば、人間をはるかに超えるスピードで結論を出していくことが可能です。

人事の領域でいえば、退職者予測が先行しているのはこの結果です。実際に退職した従業員のデータが一定数あり、この母集団と現職の従業員の母集団を比較することでその違いを学習することは統計解析の知識で十分可能です。さらにAI化することで、人間では想定しない変数の組み合わせを導き出すことができます。

つまり重要なのは「投入する変数を何にするのか?」「どのようなデータ形式をするのか?」ということで、これを判断するには、担当する人材の統計知識に頼る部分がまだまだ多いということです。

最近のHRTech領域の開発をみると、ここで頓挫しているか、恣意的なデータ投入をして自社サービスをAIと言いたいだけのものが散見されています。それだとAIの本来有する能力を最大化されているとは言えません。

本格的にHRTechが自動化されていくには、とるべきデータの精査が必要です。これには1企業だけの知識では追いつきません。多くのHRTechの知識を集約し、オープンプラットフォームでの議論が必要になってきます。

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