こんにちは。ヒトテク研究所 所長の村山です。
最近出会った社会人2年目の若手人事と会話をしていて、とても違和感を覚えたことがありました。それは今後くるであろう「AIが仕事を奪っていく」ことにもつながると感じました。
では、その違和感とはどのようなものか?AIとなぜ関係してくるのか。今回は「AI化する新人」をテーマにご紹介させていただきます。
仕事を”まとめ”てくる新人への違和感
私が、さきほどの新人のどこに違和感を感じたかと言われれば、「表面的な体裁は整えたが深さを感じない仕事」をしてくることです。
実際にその彼はぱっと見、任せた仕事は要領良く仕上げてくるので、提出物だけを見ていると気づかないのですが、その任せたプロセスを振り返り提出物を説明させると、言いようのない気持ち悪さに囚われました。
確かに成果物は悪くないのですが、それは私が依頼したときに伝えた内容をそのまま書き出して、整理しただけのものでした。日常の業務に置き換えてみると、これは繰り返しの作業です。
その気持ち悪さを伝えようとしたのですが、彼自身も「わかりました」と明るく答えるものの、全くわかっている手応えがこちらにはありません。
これはもしかしたら、私が「オジサン」となっていて、「若者の気持ちが分からなくなっているのでは?」と悩んでみましたが、そうとも言い切れないという結論に達しました。そして、それは意外にもビジネスがAI化する波の中では、とても重要な観点であると思い至りました。
AI研究の発展によって、今後、我々の仕事領域の多くがAIに代替されることが想定されています。
特に情報を収集してまとめる作業や、繰り返しの作業といった内容は、すでにテクノロジーの発達によってHRTechやFinTechなどの領域では活用されはじめてきています。
もしかすると、彼が今の仕事のやり方を続けているようであれば、今後AIに奪われてしまう可能性もあるのではないでしょうか。
”まとめサイトを作ること”は仕事じゃない!
先ごろ、某キュレーションサイトの問題に端を発して、キュレーションサイトのあり方が疑問視されるようになりました。ここに同じ文脈をみることができます。
まとめサイトを作ることは仕事なのでしょうか。もちろん立派な仕事であると思います。ただ、これは個人的な見解ではあるのですが、私の考える仕事とは、少し違ってきます。
世の中に自分が介在して、何かの価値を加えることが仕事であると私は考えています。まとめサイトは検索性を上げるかも知れませんが、その情報自体は「誰かが汗水たらして見つけたものや創作したもの」です。私にとって、それは「作業」であり「仕事」と呼ぶ気にはどうしてもなれません。
これと同じ考え方が、今の新人の育った文化の中にはあると考えます。
上司や先輩からの依頼をネットで調べたり、直接本人に聞いたことをまとめたり、正解を探すことには長けているが、自分の力で新しい価値を生み出し、深い思考体験をし損ねているのが、今どきの若者の傾向として見られるのではないでしょうか。
AIに奪われるであろう、パターン化された作業
親友でもあり、ヒト×テクノロジー研究所のパートナーも依頼している、外資系コンサルティング会社ローランドベルガー社プリンシパルの高橋氏と話していても、この流れになりました。
コンサルティング業界でも昔は若手が一生懸命調べていた、その仕事は、AI化された業務システムに置き換わっているとのことです。株式会社ユーザベース社が提供しているSPEEDAなどはその良い例です。
たとえば、昔は新人コンサルタントが7日間かかっていた業界分析をたった1時間に短縮できるようになってきています。その上で業界分析や財務分析までをおこなってくる。それが今の付加価値を生み出す働き方なのではないでしょうか。
作業はすでに奪われ、それだけしかできない若手には、すでに居場所がなくなっています。
上司の仕事は、部下への”深さ”と”付加価値”の追求
懐古主義を展開したいわけではありません。
若者のほうが変化に柔軟であり、情報の渦の中で生きてきている分、正解にたどり着くスピードが我々よりも早いのは間違いありません。
重要なのは、どこにも正解がないことに対して、自分で考察し、試行し、相手のためになる成果を出せているのか。自分の出した価値は何なのかを自覚しているのか、を教えられるのかということです。
かつて、新人教育には時間を掛けることができました。
それは、作業をさせながらも本人たちの得意不得意を把握し、なんとなく周囲との阿吽の呼吸で育成することができていたからです。残念ながらこれからの上司たちにその時間は残されていません。
なんとなく向き合っても理解できない壁が今の若者たちにとの間には、そびえ立っています。彼らに仕事の本当の意味を伝え、成長させ、社会に価値のある何を生み出せるのは、日々の上司としての深さの要望と、部下の成果を表面的に見ない心構えです。
時代の違いを明確に理解しながら、彼らの良いところを認め、足りない部分をしっかりと育成する。いつの時代も変わらないことでありつつも、その変化がAI化のスピードに影響されることを考えると、求められるのは上司の意識改革が先なのかも知れません。