「タクシー王子」日本交通 川鍋会長が描くグローバル競争を勝ち抜く術 |HR NOTE

「タクシー王子」日本交通 川鍋会長が描くグローバル競争を勝ち抜く術 |HR NOTE

「タクシー王子」日本交通 川鍋会長が描くグローバル競争を勝ち抜く術

  • 組織
  • 企業文化・組織風土

※本記事は、ヒト×テクノロジー研究所 所長の村山雄二さんより寄稿いただいた記事を掲載しております。

2-⑥

“テクノロジーの進化”を洞察することで、ヒトの働き方が今後どのように変わっていくかを検証する「ヒト×テクノロジー研究所」。

前回は、記念すべき第一回目のレポートとして、所長の村山とヒトテク戦略部門パートナーの高橋が、タクシー業界を代表する経営者、“タクシー王子”こと日本交通・川鍋一朗会長を直撃しました。

今回は後編、「日本交通の未来戦略」についてご紹介します。
※今回は、前編・後編の二部構成でご紹介いたします。

川鍋会長

川鍋 一朗(カワナベ イチロウ) | 日本交通株式会社 代表取締役会長

日本交通株式会社の三代目。慶應大学卒業後、ノースウェスタン大学にてMBA取得。マッキンゼー入社を経て、2000年に日本交通に入社。2005年に代表取締役社長、2015年に代表取締役会長に就任。配車アプリ「全国タクシー」をはじめ、「黒タク」「陣痛タクシー」などさまざまな施策を導入し、1,900億円もの負債を抱えていた同社を再建させたニューリーダー。

「Uber」に教えられた日本ならではの「シェアリングエコノミー」の在り方

村山:アメリカではライドシェアサービス「Uber」や、空きスペースをシェアするAirbnbが大きな話題になり、「シェアリングエコノミー」という市場の盛りあがりが日本にもきていますが、そちらについてはどうお考えですか?

2-①

【左】ヒトテク戦略部門パートナー 高橋 【右】所長 村山
川鍋:シェアリングエコノミーの最大の問題点は「税収」「社会保険料」ですね。
技術やサービスの変化がものすごいスピードで起こる中、実は社会制度が短い時間で影響を受けつつあります。われわれの業界でも、「Uber」を代表するシェアリングエコノミーの影響を受けていますが、これを本業とする人たちが世界では出てきています。

2-②

そうすると、本業である以上は従業員としての立場の保全を考えるようになります。これは他業界のシェアリングエコノミーでも同じで、労働力として大分安く買いたたかれていることに気づいて、世界中でストライキが起きたりしています。

つまり、クラスアクション(集団訴訟)を起こしているわけで、これまで産業労働者たちが長い時間をかけてここまで到達させてきた労働闘争史を、猛スピードの早送りで見ているような気分になります。

そういったものに対して、真摯に向き合って解決していくことが必要になるでしょう。

どこかに適正な範囲があるはずなのですが、いまのシェアリング議論はその適正な部分はなしに「安くてかっこいいじゃん」という話ばかりで熟成されていません。

2-③

高橋:ある意味先進国モデルというか、やっぱりそうしたシェアについては、東南アジアアメリカがすごく進んでいますよね。ただし、いまのお話の通りで「節度」というものがまるでない。

日本の場合は「節度」があり過ぎて守られ過ぎているとも思いますが、川鍋さんが目指されているような“節度があるシェアリングの形”…より安心安全で、だけどみんながいまよりもっと移動したくなる、これまでにはない1歩進んだモデルがあると考えていて、そこは大いに期待しています。

タクシー王子・川鍋一朗が未来に向けて挑む「ど真ん中からの挑戦」

村山:これまでの話を受けて、日本交通としてはどんな未来戦略を立てているのでしょうか?

川鍋:今後、タクシー業界は「トランスポーテーションモビリティサービス」黄金期を迎えます。トランスポーテーションモビリティサービスとは、自動運転技術などによって運営効率性や利便性を高めるサービスのことです。

まずは配車アプリなどによるIT化というソフト面の進化と、自動運転技術というハード面の進化という2つの大きな柱を持って、この黄金期に挑戦していくつもりです。

日本において、車による移動の7割は自家用車によるものですが、ここが今後のモビリティサービスの可能性ととらえています。

だからこそ、この技術に世界中の人たちが投資を始めています。日本を代表する企業として、ここからどのようにグローバル競争に対峙していくかが問われるでしょう。

③

高橋:そのなかで、業界のリーダーとして、日本交通さんが担う役割は何でしょうか?

川鍋私は日本のトランスポーテーションを次の時代に向けて動かしたいと思っています。これを、国に向かって、ど真ん中から向き合って、やるべき人間がやる。これが自分の仕事だと思っています。

端っこから始めると、何か問題が起こったときに、やっぱり自動運転は危ないとか、暴走したらどうするんだと言われてしまう。世界最高の技術を誇る日本で実践ができなくて、リスク許容度だけが高い技術に劣る国に先んじられるなど、決してあってはなりません。

だからわれわれがやる。業界の中心にいるという矜持をもって、しっかりと地固めをしながら真正面から取り組みたいのです。

2-⑤

村山:きわめてユニークな取り組みをされていますからね。今がちょうど先々の勝敗を占うタイミングだと思いますが、近未来に向けてはいかがですか。

川鍋:ちょっと宣伝になっちゃいますけど、新サービスをどんどんリリースしていきます。先日都内で導入された「初乗り410円」に加えて「事前確定運賃」というサービスをテストしていきます。

さらに「タクシー相乗りサービス」といった斬新なサービスも検討しており、業界に新しい風を吹き込みたいと考えています。

なにしろ、タクシー業界最高のエンジニアが集まる会社で開発を進めており、イノベーションの震源地を目指しています。自動運転車自体は自動車メーカーが開発するものなので、それをいかにサービスと融合させるかがわれわれのミッションです。

高橋:それは期待できますね!
2-⑦

川鍋:近未来ということで、「東京オリンピック」の話をしましょう。羽田空港でパラリンピアンを車椅子のまま自動運転車にお乗せするのです。車内にアテンダントは乗車しますが、運転をする人はいない。そして、選手会場となる豊洲までおもてなしする…このイメージです。

必ずや、実現させてみせます!

人事業務に役立つ最新情報をお届け!メールマガジン登録(無料)

HR NOTEメールマガジンでは、人事/HRの担当者として知っておきたい各社の取組事例やリリース情報、最新Newsから今すぐ使える実践ノウハウまで毎日配信しています。

メルマガのイメージ

関連記事

ウェルビーイング経営に必要な「高いエンゲージメント状態の実現」とは

ウェルビーイング経営に必要な「高いエンゲージメント状態の実現」とは

ウェルビーイング​を​経営​に取り入れる際​​​には、One(個人の欲求充足)ばかりではなく、All(企業の成果創出)にも目を向け、両方の実現(One for All, All for One)を図​ることが重要です​​ […]

  • 組織
  • エンゲージメント
2025.01.10
松野天音
ウェルビーイング経営に必要な「高次元の個人欲求充足」とは

ウェルビーイング経営に必要な「高次元の個人欲求充足」とは

ウェルビーイング経営を推進するためには、従業員のニーズに応えることも大切ですが、わがままとも言えるようなリクエストまで受け入れていると、組織の求心力が低下し、経営に​ ​影響を及ぼすおそれがあります。 ウェルビーイング​ […]

  • 組織
  • エンゲージメント
2025.01.08
松野天音
仕事と介護の両立をサポートするビジネスと今後の可能性|人事ができる“仕事と介護の両立”支援の実践ポイント♯17

仕事と介護の両立をサポートするビジネスと今後の可能性|人事ができる“仕事と介護の両立”支援の実践ポイント♯17

仕事と介護の両立支援においては、第7回から12回でご紹介した通り、先進的な取組を実施する企業が出てきています。その一方で、両立支援をどのように進めたらよいかわからない企業、進めているけれども思うように効果が出ない企業が存 […]

  • 組織
  • ダイバーシティ&インクルージョン
2024.12.25
松野天音
積極性が全く感じられない従業員から“やりたい”を引き出すには③|WE戸田

積極性が全く感じられない従業員から“やりたい”を引き出すには③|WE戸田

皆様ご無沙汰しております。株式会社WEの戸田です。 従業員の「やりたい」を引き出すにはどうしたら良いかについて、第3回目の記事となります。 第2回では「どうやって個人の”やりたい”を引き出すか?」 […]

  • 組織
  • キャリア開発
2024.12.24
松野天音
【FMTあり】150名超のコーチングを経て見出した、超実践型!明日から使える1on1の活用方法|co-take LLC 手嶋

【FMTあり】150名超のコーチングを経て見出した、超実践型!明日から使える1on1の活用方法|co-take LLC 手嶋

HR NOTE読者のみなさんはじめまして。人材育成事業をやっている手嶋と申します。 管理職の方とお話する機会が多くありますが、1on1についての質問を数多くいただきます。その中でも良く耳にする疑問が、「1on1においてコ […]

  • 組織
  • 人材育成・研修
2024.12.24
根本 慎吾

人事注目のタグ