新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、Web会議や採用におけるWeb選考などを導入している企業が多いことでしょう。
行政においてもWeb会議システムを導入している市区町村が少しずつ増えているようです。4月には、各行政に先がけて、奈良県の三宅町がWEB会議システム「Calling」の導入を決定。
今回は、三宅町の町長である森田 浩司 町長と、職員の吉本 卓也様に
- なぜ先行事例がない中、先がけてWeb会議システムを導入しようと考えたのか
- 実際にどのようにWeb会議システムを活用しているのか
- 活用してどのような効果を実感されたのか
など、「行政×Web会議システム」の活用事例についてご紹介します。
1、奈良県三宅町とは?
三宅町は、奈良県の北部にある面積4.07平方キロと全国で2番目に小さい町で、人口は、6,825人(3,061世帯)となっています。(2020年5月1日時点)
ちなみに全国で一番小さい町は、大阪府の忠岡町とのことです。
三宅町は、野球グローブの生産が盛んで、2021年には生産がはじまり100周年を迎えます。グローブ以外にもスパイクをはじめ、様々なスポーツ用品の製造も行われています。
「三宅町の職人がつくったグローブしか使いたくない」と言っていたプロ野球選手もいたようです。
三宅町の職員数は保育士も含めて全員で約110名。本庁の役場業務としては80~90名。(保健士、臨床心理士、社会福祉士含む)
面積が全国でも2番目に小さい町ということもあり、住民との距離が非常に近いことが役場の特徴のようです。住民とも顔見知りのケースが多く、「職場の○○さんにお世話になっていて~」などの声が、よく住民から聞こえるようです。
2、Web会議システムを行政で導入した背景
▶この取材もWeb会議で実施しました。
森田 浩司 氏 | 奈良県三宅町 町長
三宅町議会議員を経て、2016年32歳の時に、三宅町長選挙に初当選。町を二分する選挙を制し、当時の現職を大差で破り県内最年少町長となる。育児休暇や働き方改革などの問題に率先して取り組みをおこなう。
吉本 卓矢 氏 | 奈良県三宅町 財政課 職員
2016年奈良県三宅町役場へ入庁。長寿介護課で介護保険業務に携わる。
2019年より現職。現在は三宅町役場の電算担当として庁舎内のシステム関係業務をおこなう。
―本日はよろしくお願いします。そもそもなぜ、三宅町役場でWeb会議システムを導入しようと考えたのでしょうか?
森田町長:やはり新型コロナウイルス感染症の影響ですね。緊急事態宣言が出てから、密を避けるために、職場の体制を変え、A班・B班という形で「出勤チーム」と「在宅チーム」の二班に分かれ、1週間ごとにシフトのような形で交互に出勤することにしたんです。
その状況下で、出勤チームと在宅チームの連携を図っていくためには、やはりWeb会議を導入していく必要性を強く感じ、Web会議システム導入の検討を進めていきました。
―在宅勤務ではどのような業務をおこなうのですか?
森田町長:情報漏洩のリスクなどを伴わないような、家でできる仕事を持ち帰ってもらっています。
吉本さんは在宅勤務の時、どのようなことをしていましたか?
吉本さん:私の場合は契約に関わる業務が多いので、業者との契約の仕様書作成であったり、役場に出勤したときにすぐに決済が回せるよう、そのための資料作りなどを主におこなっていました。
―Web会議システムの導入に至るまでには、どのようなプロセスがあったのでしょうか?
森田町長:もともと部署によってはZoomを導入しているところもあったのですが、全体には浸透しておらず、またZoomのセキュリティ面が問題視されていたこともあり、別のシステムの本格導入を検討していたんです。
そのタイミングでちょうど株式会社ネオラボの「Calling」の紹介を受け、国産でセキュリティも安全という点から、公式に導入することになりました。
あと、「Callingはアプリのダウンロードが必要ない」といったところも決め手の一つでした。他のツールはアプリのダウンロードやアカウント設定が必要など、手間がかかるものが多く、運用にのせていく上でそこが懸念でした。
時期としても「すぐ導入したい」といった想いがあったので、迷わずに導入を決めましたね。
―行政で、Web会議のクラウドサービスを利用されるイメージがあまりないのですが、導入にあたり何か障壁はありましたでしょうか?
吉本さん:確かに、行政では何かシステムを導入するときには、業者を選定した上で入札をかけて、金額等々を鑑みて、業者と契約を結ぶことになります。
しかし、今回は行政での実証実験として活用させていただくことになったので、煩雑なフローを介さなくてもスムーズに導入できました。
3、Web会議システムの三宅町での活用方法
―三宅町ではWeb会議システムを実際にどのように活用されているのですか?
森田町長:現状でいくと、職員間での会議での活用がメインで、業者との打ち合わせや役場の総合受付窓口にもWeb対応のブースを設置しています。
職員間でのWeb会議では、「Web会議室A」「Web会議室B」といったように、2つのWeb会議のルームを設けています。
そのため、Web会議を実施するときは、会議室を予約するのと同様の方法でWeb会議ルームを予約して利用するといった運用をしています。
▶三宅町の実際の会議室予約の画面
―このやり方だと、はじめての方でもWeb会議システムにスムーズに慣れていきそうですね。ちなみに、Web会議をする上で工夫されていることはありますでしょうか?
森田町長:たとえば、特別給付金の打ち合わせをしたときに、「メモ機能」を議事録代わりに活用しています。
打ち合わせ後にその議事録を全員に共有し、いつまでに誰が何をするかといったタスクも含めて進捗管理をしています。
紙の議事録だと会議中に同じ議事録を見ながら話せないのですが、 メモ機能を活用すると、会議に参加している職員全員で、記入中の議事録を見ながら話せます。全員の認識が揃った状態で会議を進行できるので、非常にやりやすいですね。
―役場の総合受付窓口でもブースを設置されているとのことですが、利用状況はいかがでしょうか?
森田町長:モニターとPCを置いて環境は整備しているのですが、利用はまだないですね。実際、役場まで足を運ばれているので、そのまま対面の窓口に行かれます。
また、高齢者の方々の来庁が多いので、どうしても高齢者はPCなどのシステムをうまく扱えないなど、システム利用への障壁があるので、効果的な活用にはまだ至っておりません。
吉本様:加えて、役場に来庁される方は、何かしらの書類の手続きをするために来られているので、そのまま対面の窓口に行って手続きされていますね。
森田町長:三宅町のホームページから、Web窓口の利用等ができれば良いのでしょうが、まだそこまでの段階に至っていないですね。
今後、Callingも行政が使いやすいようにシステムをアップデートしてくださるようなので、より様々な活用方法が実現できればと思っています。
4、実際にWeb会議システムを活用してみてどうか
▶三宅町でのWeb会議の様子
―実際に、Callingを活用してみていかがでしたか?
森田町長:実際に活用してみて職員のWeb会議へのハードルが下がったことが良かった点だと感じています。
アフターコロナも鑑みて、こういったツールを今後活用していかなければいけないと思っていましたが、想像以上にスムーズに導入でき、Web会議のイメージが職員に共有できたかなと思います。
あとは、住民の方とのやり取りにおいてもうまく活用できるようになれば、より幅は広がりますね。
―職員目線としては、吉本さんいかがですか?
吉本様:職員間でのWeb会議については、森田町長がおっしゃったように、徐々にハードルが下がってきていますね。
やはり1回利用してみると次からも簡単にできるので、「Webで会議をやろう」といった声を聞くことが増えてきていますね。
また、私はシステム業者との打ち合わせもWeb会議システムを活用してやっているのですが、今後もうまく活用していければと思っています。
―導入してから運用に乗せるまでどのように進めたのでしょうか?
森田町長:まず、共通の掲示板みたいなものがあるので、そこに周知しました。
Callingは利用が簡単で、1回活用すると慣れてスムーズに活用できるようになると感じていたため、まずは一旦特別給付金チームの会議をWebでおこないました。
吉本さんがうまく使えない職員のところに行って、使い方をレクチャーしてくれましたね。
吉本様:そうですね、1回つなげられたらその次からは各自で利用してくれましたね。
またCallingを利用したことがある職員がまだ利用したことがない職員に使い方を教えて、、、といった感じでだんだんCallingを使いこなせる職員が増えていきました。
森田町長:一度利用してみると簡単で楽に利用できるので、だんだん職員の利用頻度も増えていきましたね。
4、まとめ
▶森田町長がCallingを利用している様子
民間企業では一般的になってきていますが、行政でのWeb会議システムの活用は、まだまだ数少ない現状があります。
森田町長は、新型コロナウイルス感染症が収束したアフターコロナの世界観においても、採用シーンでの活用や育児休暇中の活用など様々な活用を検討しているようです。
こちらの内容に関しては、第二弾の記事でご紹介いたします!
今後の行政におけるWeb会議の活用が広まりつつあり、どのようなが活用事例が生まれてくるのか、非常に楽しみです。