組織論や成功事例を数多く知ることは勉強になります。
しかし「自分の所属する組織で使えるのだろうか」「根本から変えていく余裕なんてないし」などとお考えになる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、2021年8月25日・26日に開催したHR NOTE CONFERENCE2021より、1日目の最後を締めくくったセッション、『「組織のお悩み相談会」3人のCHROがあなたの組織におけるお悩みに答えていきます!』の内容を再編成し、悩みを抱える皆様へ向けた“プロフェッショナルの回答”をお届けします。
組織内で起こった具体的なお悩み事例に対して、3人のCHROはどのような解決策をアドバイスしたのか、ぜひ最後までご覧いただければと思います。
登壇者紹介
曽山 哲人|株式会社サイバーエージェント 常務執行役員CHO
上智大学文学部英文学科卒。高校時代はダンス甲子園で全国3位。1998年に株式会社伊勢丹に入社し、紳士服の販売とECサイト立ち上げに従事。1999年に当時社員数20名程度だった株式会社サイバーエージェントに入社。インターネット広告事業部門の営業統括を経て、2005年人事本部長に就任。 現在は常務執行役員CHOとして人事全般を統括。
島田 由香|ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 人事総務本部長
Team WAA! 主宰、YeeY Inc. 代表、Delivering Happiness Japanチーフコーチサルタント、Japan Positive Psychology Institute代表、一般社団法人 dialogue代表理事、米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネス NLP®トレーナー。ポジティブ心理学プラクティショナー。1996年慶応義塾大学卒業2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院にて組織心理学修士取得。2014年より現職。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。高校三年生の息子を持つ一児の母親。日本の人事部「HRアワード2016」個人の部・最優秀賞、「国際女性デー|HAPPY WOMAN AWARD 2019 for SDGs」受賞。
江澤 身和|株式会社スープストックトーキョー 取締役副社長兼人材開発部長
短大卒業後、フリーターを経て2005年にスープストックトーキョーのパートナー(アルバイト)として株式会社スマイルズに入社。1年後に社員登用されて複数店舗の店長を歴任し、法人営業グループへ異動。2016年、株式会社スープストックトーキョーの分社に際して取締役兼人材開発部部長に着任。2019年4月に取締役副社長兼店舗営業部長となる。2021年4月より現職。「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2018」では個人部門・チェンジメーカー賞を受賞した。
モデレーター
西村 創一朗|株式会社HARES/CEO 副業研究家 HRマーケター
新卒でリクルートキャリアに入社後、法人営業・新規事業開発・中途採用などを歴任。在職中の2015年に「二兎を追って二兎を得られる世の中を創る」をミッションに株式会社HARES(ヘアーズ)を創業後、2017年に独立。今回のテーマである「オンボーディング」を含め採用・人事領域を中心に多数の企業のアドバイザーを務めるほか、人事系イベントのモデレーター/ファシリテーターとしても活躍。著書に『複業の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)がある。
[内容をまとめたスケッチノート]
目次
Q1.メンバーに響くリーダーのコミュニケーションとは
今回のセッションは以前にもHR NOTEのオンラインイベントでご登壇いただいたCHROの3人に「お悩み相談」と題しています。視聴者の皆様にはラジオ感覚でご参加いただきたいですね。
早速最初の質問はこちらです。(以下画像)
情景が目に浮かぶようなあるあるの場面ですね。
まずは曽山さんいかがでしょうか。
はっきりいって難易度高いですよね(笑)。
サイバーエージェントも実は、昔は上司が部下を激詰めするシーンが多くて僕自身も指示・命令型のマネジメントをしていました。
これを変えるときに大切にしたのは「目的は叱ることではなく、“成果を上げてもらう”こと」だよねということです。
その中で叱り方のワークショップもおこない、すぐに実践できるメソッドとして「ワンメッセージ」というのを伝えていました。
これを実践すると、絞り込みが生まれて伝わりやすくなりますね。
「ワンメッセージ」すごくわかりやすいですね。
こちらはソヤマンのYoutubeチャンネルでも紹介されているそうなので詳しく知りたい方は必見ですね。
では次に島田さんはこの「叱れない問題」に対していかがお考えですか。
質問された方が人事の立場であるとしてお答えすると、まずリーダーもメンバーも「客観的におかしいこと」は直接伝えられることが大事だと思います。
この時にメンバーが言いたいことが言えないのならば、心理的安全性が生まれるようにリーダー側が関係性を変えていくべきだと思います。
また、私がリーダーによく伝えることとして、ポジティブ心理学でいう「3:1の法則」があります。
この法則は「フィードバックをする時に良いこと3つと良くないこと1つを組み合わせる」とバランスがいいというものです。
さらに、3つと1つにも順番があって、私は“ポポネポ”って覚えています。
「ポジティブ▶︎ポジティブ▶︎ネガティブ▶︎ポジティブ」の順番にするんです。
いきなり直して欲しいことを言うのではなく、
「〇〇頑張ってるよね、この間の△△もすごく良かった、だけど今回××に気づいちゃったんだ、でもこれを直したら君はもっと素晴らしい成果を上げられると思う」
と言う感じで伝えてあげることが、本人への効果が高いとリサーチの結果でわかってるんです。
ポポネポ、覚えやすいですね!
最初の質問から即実践できるメソッドが盛り沢山です。
江澤さんはいかがでしょうか?
まず叱ることが苦手な人っていると思うんですよね。
そう言う人の共通点として「自分がどう思われるのか」を一番に気にしちゃっているのが挙げられると思います。
だからこそ、叱る人が「どれだけ相手のためだと思ってコミュニケーションできるか」が重要だと思いますね。
また、弊社内でもポジティブフィードバックに取り組んでいて、「もっと良くなるためにはどうすればいい?」と言う視点を大切にしています。
大前提として成果に向き合う、そのためには耳の痛いこともしっかりフィードバックすることが重要ですね。
また、耳の痛いことを言ったら嫌われると言うことではなく、伝え方の工夫次第だなと感じました。
はい。ハラスメントって私の経験上は「内容よりもコミュニケーションによって生まれてしまう」と感じている部分が大きいと感じるので、表現の仕方・伝え方は非常に重要だと思います。
Q2.組織で生まれる“分断”へどうアプローチするのか
続いて2つ目の質問に参ります。(以下画像)
既存の社員と新しいことに挑戦したい社員との間で隔たりが生まれてしまうことは、ある程度歴史のある会社なら容易に起こり得ることですよね。
こちらについても曽山さんから順に伺ってみたいと思います。
またこれ難易度高いですね(笑)。
1つ、サイバーエージェントを例にとって私の経験をお話しします。
まず、弊社はインターネットの広告事業から始まり、現在は「ABEMA」のようなインターネットテレビを運営していたり、ゲーム作っていたりと、事業領域も幅広いので、多様な職種の人材が働いている状況なんですね。
質問の回答としては、経営陣に対して「この問題が経営課題である」と言うことを伝え、議論することが一番最初に重要です。
メディア事業に参入した頃に、実際にサイバーエージェントがやったことをご紹介しましょう。
広告の法人営業はみんなスーツを着てネクタイを締めているのに、アメブロ(Amebaブログ)に携わっている社員はみんな自由な私服姿で、それが同じオフィス内に混在していたんですね。
広告事業の収益をアメブロに投資していた時期だったこともあって法人営業やってる人たちはむかついて不満を言うわけですよね。
この時に、弊社の代表の藤田に言われた指示がこれです。
「曽山くん、オフィスを借りて。別々に分けよう」
その後実際に近くの雑居ビルを借りて、アメブロの部署が移ったんです。
この時に大事だったのは「見えないようにすること」でした。
混ぜようと思っても絶対に混ざらないものは、それぞれで独立していい組織を築き上げようということでした。
共通のビジョン・ミッションは持ちながらも、やり方は全く違うという形を取ったのは有効だったかなと思います。
非常に面白いですね。
見えないように建物も分けてしまうと言うのは大変わかりやすいです。
江澤さんはいかがでしょうか。
スープストックトーキョーは、16年目で分社をしたタイミングが最も全体の中で意識の差が生まれていた時だったと思います。
ここで重視したのは、会社全体の理念である「世の中の体温をあげる」に沿っているのかということです。
理念に沿っているものであれば、周りの意見に悪い意味で引っ張られずにやり抜くことが大事なのかなと思いますし、経営陣はしっかりプロジェクトを守ることが必要だと感じています。
経営陣のコミットが、サイバーエージェントでもスープストックトーキョーでも大きな肝になったということですね。
ユニリーバではこのような新たな取り組みに対してはどのように扱っておられるのでしょうか。
私が在籍している日本法人のサイズは520人程度なので、参考になるかはわかりませんが、質問の中の言葉にあえて反応しようと思います。
質問の中に、「願わくば彼らにもこれからの時代に沿った前向きな仕事をして欲しいと思うが、50代の社員も多く、大きく変わることが難しい」とありますが「まずこれが間違ってるでしょ」と思いました。
「50代だから変われないよね」という考えがNOです。
本当に人はいつだって変われるんです。
特にこれを人事の人が信じて欲しい。
本当に変わって欲しいなら「一緒に変わろう」って言えばいいし、最終的に結果を出すために未来の種を巻いて育てていくことが実は重要だったりするんです。
実に島田さんらしいご意見・フィードバックですね。
「誰にでも新しいことへの挑戦はできる」を島田さんが実践してこられたからこそぜひ真似していきたいです。
Q3.結果偏重リーダーとの上手な付き合い方
では次に3つ目の質問に移ろうと思います。(以下画像)
結果の質を追い求めるのではなく、関係の質を高めることが結局は結果の質を高めることにつながるなんて話もありますよね。
でも実際に具体的にはどのようなことに取り組めばいいのかなんて話を伺っていこうと思います。
島田さんからいかがでしょうか。
西村さんが言ったことが、まず1つの答えだと思います。
ダニエルキムの「成功循環モデル」の話で、全ての結果は関係性の質に起因するというのを信じるとしましょう。
「明日までに売ること」「1週間後までに成果を上げること」をメンバーに指示してもいいと思います。
でも、伝え方は考えないといけません。
「やらされ感」であってはいけなくて、内発的な動機を基にチャレンジできるようにするのが上司やチームリーダーの役目であるはずです。
だからこそHRの人間がやるべきなのはリーダー、上司の立場である彼らに適切なコーチングをしていくことじゃないかなと思います。
ちなみに内発的動機付けを生み出す三つのポイントというのがあるのでご紹介しますね。
- 本人が成長を感じること
- 「昨日よりも今日できるようになっていると感じられる」
- 自分で決める・色をつけるスペースを残すこと
- 「考える余白があることで、自立を感じられる」
- 周囲とのつながりを感じられること
- 「今やっている仕事が会社の未来・社会につながっていると感じられる」
この3要素を感じさせる対話ができると、相手は内発的な動機を強く感じられるとリサーチでわかっています。
ためになるお話で、曽山さんも熱心にメモを取られているようですね。
曽山さんはこの質問に対してはいかがですか。
島田さんの話も踏まえて感じたことでもあるのですが「仕事の意味づけ・意義づけ」をしっかりやっていくことがまずは大事だと思っています。
また、もう一つお伝えしたいこととして「セキュアベースリーダーシップ」という本に登場するものをご紹介します。
この本では「ある2つのものとの絆」が非常に重要であると述べられていて、僕の記憶にも強く残っています。
一つ目は「人との絆」ですね。
これはわかりやすくて「上司との良好な関係性」や「取引先の人との関係性」など想像しやすいですよね。
ところが2つ目がちょっと意外で「目標との絆」が重要だそうです。
わかりやすい例だと、スタートアップの経営者で周りがついてこなくてもガンガン進んでいくリーダーっていますよね。
こんな人がまさに目標との絆、自分の思い描く未来との絆が強い人です。
さらに、目標との絆があることは言い換えれば自分の仕事に強く意味を感じられているということなので「意味づけ・意義づけ」にもつながっているなと感じています。
安全基地があることで人は初めてチャレンジできるようになるんですよね。
この安全基地を築くために上司や同僚などの「人との絆」を強めること、成果・なりたい姿などの「目標との絆」を強めることがどちらも重要であるのではないかなと思います。
「目標との絆」という考え方は大変面白いですね。
メンバーが目標との絆を強めていくためにマネージャーができることというのは何かありますか。
これはまさにリクルート創業メンバーの1人でもある大沢さんの著書『心理学的経営』に載っている言葉を引用します。
この本の中に「組織目標が浸透しているチームは業績が高い」という言葉があり、僕にはぶっ刺さりましたね。
だからこそまずは「組織目標をチーム全員で議論すること」から始めてみることは非常に有効ではないかと思いますね。
大事なのは「自分たちの未来に向かって自分自身が意見を出した」という当事者意識を持てることであり、これ一つできるだけで大きく変わるのではないかなと思います。
面白いですね。
まずは場を作ってみることで最初の1歩が踏み出せるわけですね。
こちらについて江澤さんはいかがですか。
私からはコロナ禍によって飲食業界で苦しいタイミングの中での経験をお話しします。
危機的な状況下においては、従業員にとってモチベーションの波が激しくなることが想像つくかと思います。
だからこそ、人事の役割は「現場のリアルな変化を細かく拾い上げ、経営陣にそのまま伝えること」だと思います。
「ネガティブなことも正しく伝えて、いい意味で足並みを揃えていく」ことが人事にとって重要な役割なのではないかと思います。
Q4.成長とwell-beingは二項対立ではない?
事前に募集した質問は次で最後になります。4つ目の質問はこちらですね。(以下画像)
質問の内容を見る限りでは、おそらくスタートアップかそれに近い企業さんなのではないかと思います。
組織に対して人事の手数が追いついていないという状況のこちらの質問に関して、まずは江澤いかがでしょうか。
まさにこの問題は経営課題に直結していると思います。
私が真っ先に感じたのは「人事部だけでこの課題を解決しようとするのは危険」ということです。
事業の成長にストップをかけるのは憚られますが、社内のリソースをできるだけ多く活用してこの課題に取り組むことが大事ではないかと思います。
弊社でも、このような課題に直面した際には人事だけで解決しようとはしません。
個別の課題に対して現場できちんと対処・対話できるために「適切な人をアサインすることが人事の役割」で、解決自体は会社全体でおこなっていくというのが根本的な解決に最も近い方法ではないかと考えています。
リソースが限られているからこそ、経営陣や現場のマネージャーを巻き込んで解決していくことが必要になるというお話ですね。
まさにその通りだと思います。ありがとうございます。
では次に曽山さんはこの問題について、いかがお考えですか。
僕も江澤さんもおっしゃったように「経営課題」として捉えることが重要であり理想だと思います。
そこでまた1つメソッドをご紹介しますと、僕はよく「このままイメトレ」をするようにしようとメンバーに伝えています。
やり方はごく簡単で、今の状態のままで1年後、2年後、3年後になった時会社はどうなるのかを想像して紙に書くだけです。
今回の例でやってみると、おそらく以下のようになります。
- 「人事のリソース・人はほぼ増えない」
- 「退職・休職によって起こる問題への対応が増える」
- 「人事はますます疲弊する、well-beingが失われていく」
このくらいは簡単に想像がついてしまいます。
ここまでわかれば、経営陣に対してしっかり議論を持っていくことができると思います。
サイバーエージェントも創業間もない頃は退職率が30%だったんです。
その頃の反省も踏まえて一番のポイントは「足元の課題を1つ1つ対処していくこと」「先々の設計をしていくこと」の2つのバランスをとっていくことです。
残念ながらどちらかだけをやっていても事態は好転しづらいため、両軸で考えることが大切です。
さらに、必要なときは「助けて!」と経営陣に向けて発信することが非常に重要です。
頑張って欲しいですね。応援しています。
ありがとうございます。
では最後にwell-being隊長の島田さんよろしくお願いします。
well-being隊長は嬉しいですね。(笑)
質問を見て「まず150%成長はすごい。素晴らしい。でも、増員よりも退職・休職が上回ってしまえば会社はいずれダメになってしまう」と率直に感じました。
私がやるべきだなと思ったことは3つあります。
1.一度立ち止まることを提案する
1つ目は、この経営課題を経営を引っ張っていっているメンバー1人ひとりに伝えて「今ストップすることはできないの?本当にコアになることは何?」と問うことです。
150%成長を追い続けるのか、今本当に必要なものはなんなのかを全社として共通にしていくことがまずは必要なことじゃないかなと思います。
2.全社を巻き込んで「みんなの課題」にする
2つ目は、皆さんもおっしゃったように人事だけの課題にしないことです。
退職や休職の前には必ずサインがあるはずです。
その小さなサインに対して、「人事が」ではなく「現場の中で」解消できることが重要だと思います。
実は私、人事部って本当はなくてもいいと思っていて、現場の中で気づき対話ができたらそれが一番だと思っているんですね。
だからこそ、現場のリーダーやマネージャーを育んでいくことが今の人事には必要なことだと思います。
3.現場で解決できる仕組みづくり
3つ目は、実際に弊社で今やっていることですが、「メンタルヘルスチャンピオン」というのを現場で募って設けています。
そもそもwell-beingって誰に責任があるのかといえば自分にあるので、実は会社の責任では全くないんです。
「自分で自分のことをしっかり知り、いい調子を保つ」ということは自分でしかできないことですし、一番わかっているはずなので。
でも大切な社員が集まる場が会社だからこそ、会社が社員のwell-beingに対して積極的に関わることは大切です。
これを促進するためにこのメンタルヘルスチャンピオンになってくれた方に現場で日々の対話をしてもらっています。
また、彼・彼女らには私たちからもメンタルヘルス・well-beingのTipsやコーチングのノウハウを伝えるようにしています。
これによって「人事の元へ来なくても、現場で問題を解決できる仕組み」を整えています。
あとは「健康を害してまで働くものではありません」ということは、ハッキリ言わせていただきます。
業務の量だけではなく、感じているプレッシャー・責任感・罪悪感・無力感などによって私たちの気持ちはどんどん沈んでいきます。
でも、これらはしっかりと回復する時間を取ればリカバーできることもわかっていて「ストレスがあるか」だけではなく「回復する時間があるか」も見なければならないんです。
要するにどれだけ成長していようともまず寝る。寝ないで仕事することは絶対にサステナブルでないです。
ビジネスの成長よりも、1人ひとりの健康が大事です。
応援しています。頑張ってください。
大変素敵なエールをいただきましたね。ありがとうございます。
視聴者からのQ&A
ここまでは事前に視聴者の皆様からいただいた4つの質問に対してお答えしてきましたが、この先は本日この場でご質問いただいた内容にお答えしていきます。
経営陣と人事の協力関係を作るには
まず一つ目の質問はこちらです。
『人事施策について経営陣とディスカッションをする際に共通認識が得られない、話が通じない時にどう対処すればいいでしょうか』ということで、まさに経営陣と社員の架け橋を担うCHROの3人に伺いたい質問ですね。
江澤さんからご回答お願いします。
まず見てるポイントが違うんだと思いますね。
始めの1歩としては「経営陣が何が重要だと考えているのか」を聞いて対話することが必要なのではないかと思います。
私の場合は恵まれていたと思うのですが、代表も人事・人に関わる部分の課題を重要視してくれる人だったために同じ見方・視点で課題の解決に取り組むことができていました。
人事の方でこの壁にぶつかる方は非常に多いですよね。
江澤さんのお話でもあるように僕も「同じものを見るようにしよう」といっています。
皆さんは経営陣と同じメディア・ニュースソースを見ているのでしょうか。
課題に対する見方・捉え方の前に、普段から触れる情報源を揃えていくことは意外と重要です。
これによって使う言葉も揃うし、シンクロが取れていくんじゃないかなと思いますね。
また、もう1つ僕の方から質問をして頂いた視聴者の方に聞いてみたいことがあります。
それは「経営陣が耳を貸すほどの成果を人事のあなたは生み出せていますか」という問いです。
僕は“満額ファースト”という言葉を使っているのですが、まず経営陣の注文や期待に日々答えていることが一番大切だと思います。
なぜなら経営陣が人事に解決して欲しいと言う課題は「解決することで業績が上がるから取り組もう」という意思決定の結果だからです。
だからこそ、先に注文に応えることが話を聞いてもらうための一番の近道なのではないでしょうか。
「経営陣にムカつく」は悪なのか
ではここで1つカジュアルな質問も取り上げてみたいと思います。
『人事責任者でありながら、経営陣にムカつく、イラつく場面が多くあるのはおかしいことでしょうか』ということでぶっちゃけトークでお答えいただきましょう。
こちらについては島田さんいかがですか。
ムカつくことなんて毎日ですよ。(笑)
何もおかしいことではないし、むしろムカつけるってベリーグッドだと思いますね。
重要なのはムカついた瞬間ではなく、そのあとどうするかだと思います。
メタ認知なんてよく言いますけど「今自分はむかついているんだ、怒っているんだ」というのを自覚した上で、感情にぶつけるのではなく「自分は何が欲しいんだろう?」を考えてみてください。
そして、自分の欲しいものがわかったら包み隠さず全部伝えます。
ありがとうございます。
曽山さんも江澤さんも深くうなづかれていてアグリーといった感じでしたね。
ムカつくことは当たり前で、その後どんな行動を取っていくのかが非常に重要だなと感じました。
人事・経営層と現場をつなげるには
時間も迫ってきてしまいましたので次が最後の質問です。
『弊社は調査によると社員幸福度指数(well-being)が低いとのことでした。人事・経営層の思想は素晴らしいと感じているのですが、現場との乖離がある場合はどうすればいいのでしょうか』
こちらについては曽山さんにお伺いしてみようと思います。
思想は素晴らしくても、足元の部分・現実ができていないんでしょうね。
well-beingに限った話ではありませんが、経営と現場の乖離がある時に一番にやらなければいけないことは「経営の言行一致」だと思っています。
「経営が言っていることを、経営がちゃんとやっているか」これが非常に大事なので、ミッションとかも“浸透させる”のではなく、経営陣がどのように“体現・行動していくか”が最重要です。
上のレイヤーがやっていることは自然と下のレイヤーにも伝わっていきますので。
最後に刺さるお話でした。ありがとうございます。
あっという間に時が過ぎて、ここで終了の時間となってしまいました。
改めて曽山さん、島田さん、江澤さん貴重なお話ありがとうございました。