新型コロナウィルスや台風などの疫病・災害、AIの急速な進化など、社会の変化を予測しづらい昨今、もはや将来がどう変化していくかは、全く予測できません。
こういった状況を指す言葉として「VUCA」というキーワードが存在します。
本記事では、「VUCA」という言葉の意味、ビジネスパーソンとしてVUCA時代に対応するための3つの方法、VUCA時代の思考法として注目されている「OODAループ」を紹介します。
VUCA時代を生き抜くヒントとしてご活用ください。
1|VUCA(ブーカ)とは?
VUCAとは、社会やビジネスにおいて将来の予測が困難になっている状態を示す造語です。予測が困難な要因として4つの時代の特性をあげ、頭文字を取って作られました。
【VUCAを分解すると…】
- V:Volatility(変動性)
- U:Uncertainty(不確実性)
- C:Complexity(複雑性)
- A:Ambiguity(曖昧性)
VUCAは元々、冷戦終結によって従来の核兵器ありきの戦略から不透明な戦略へと変わった1990年代の状態を表す軍事造語でした。
その後2010年代に入り、変化が激しく不確実な社会情勢を指して、VUCAという言葉が転用されるようになったのです。
本章では、VUCAの頭文字となっている、時代の特性4つを解説します。
1-1|Volatility(変動性)
IT技術が急速に発展している今の時代は、顧客ニーズの変動が顕著です。
実際に、2013年頃に一世を風靡したソーシャルゲーム業界は、ピーク時と比べ売上高が半減しています。新しいビジネスモデルを作り出しても、環境の変動によってわずか数年で衰退してしまう状況です。
1-2|Uncertainty(不確実性)
不確実性が大きい状況では、売上計画などビジネス上の見通しを立てるのが難しくなります。
たとえば、新型コロナウィルスが日本経済にどのような影響を与えるのか、渦中では予測不可能です。このような突発的な疫病や、激化していく台風や地震などの災害、少子高齢化・過疎化などの不確実な要因が、現代には複数存在します。
1-3|Complexity(複雜性)
グローバル化により、ひとつの企業あるいは国での成功事例を他で再現しようとしても、個別の要因が作用して単純化できず、ビジネスが複雑化しています。
例をあげると、キャッシュレス化は全世界的に受け入れられていますが、日本では店舗側によるコスト負担の敬遠や、現金信仰という独自の文化観によって浸透しないという独自の結果が生じています。
1-4|Ambiguity(曖昧性)
現代は、ビジネスを取り巻く環境が急速に変化し、問題に対する絶対的な解決策が見つからない曖昧な状況です。
たとえば、日本でも投資ファンド経由で、大企業がベンチャー企業に投資する試みが増えていますが、高い技術があってもリターンが見込めるとは限らない曖昧な状況で、短期間での経営判断が必要となっています。
2|VUCA時代に対応するビジネスパーソンになる3つの方法
本章では、「先の未来は予測できないVUCA時代」において、ビジネスパーソンが対策がとるべき3つの対策をご紹介します。
2-1|ビジョンを明確に持つ
VUCA時代は、将来を予測するのが難しく刻々と移り変わる環境へと柔軟に適応する必要があります。
特に、リーダーがビジョンを持っていないと、一貫した対応ができずにその場しのぎの対応を重ねることになってしまいます。
ビジョンを設定するためには、企業と個人の両方で出すべき成果を考えます。企業やチーム、そして自らがどのような役割を担っているかを踏まえ、置かれた環境の中で達成すべき目標を明確化しましょう。
ビジョンを明確化できれば、環境が変動しても目標のために取るべき行動」や「軸が通った判断」が可能になるため、その場しのぎの対応を繰り返すことが防げます。
また、企業やチーム内で共通のビジョンを掲げることで、メンバーがそれぞれ当事者意識を持ち、「個人の強みやチームワークをどのように発揮すればよいか」を考えられるようになります。
このとき、リーダーはメンバーが互いにサポートできる環境づくりや育成、動機づけをおこなうとともに、ビジョンにもとづいた決断力が求められます。
また、VUCA時代ではリーダー自らが前に出るだけではなく、状況に応じて最適な能力を持つメンバーに「決断する権限」を委ねることも必要です。
変動する状況を読み、どのような体制で状況に対応するのが最適か判断するとともに、メンバーに権限を委ねられるよう日常レベルで信頼関係を構築しましょう。
2-2|情報を収集し、受け入れる
VUCA時代では、ビジネスが置かれている環境が急速に変化していきます。そのため、まずは情報を集めて、どのような変化が起こっているのかを把握しなければ、変化にも対応できません。
時事ニュースなど広く浅い情報を集めるにはニュースサイトやアプリ、自らのビジネスに直結する深く狭い専門的な情報を集めるには、専門的なサイトやSNS上のアカウントをフォローするなど、情報を集める方法を使い分けましょう。
インターネットはリアルタイムの情報を収集するには便利ですが、記事の執筆者が必ずしも専門家ではない場合も多いです。
そのため、ネットのみで情報収集を終わらせずに、専門家が執筆した書籍や、実際に現場の人間に会って生きた情報を入手するなど、情報のソースをバランスよく配分する必要があります。
情報を収集して、ビジネスの変化を把握したら、固定観念を挟まずにまずは受け入れましょう。情報から将来の予測を立てることは必要ですが、予測は絶対に正しいと思い込んではいけません。
そして、集めた情報から現状を打開するアイデアを考えることができたら、実行してみることが大切です。VUCA時代では、石橋を叩くようにアイデアを検証している間にも、どんどん状況が変化していってしまうためです。
小さいアイデアから試してみて、結果をフィードバックしながらアイデアを大きくしていく、失敗を恐れずに動きながら考える人材がVUCA時代では求められます。
2-3|選択と集中
このように、情報を収集し将来を予測したとしても、その予測が正しいかどうかはだれにも判断できません。
そのため、情報収集をある程度おこない、情報をもとにビジネスに関する予測をした後は、予測が当たるかどうか一喜一憂するのではなく「やりきる力」が必要となります。
選択の大枠となる部分を決めたら、結果が出るまではその実践に集中する強い意志を持ちましょう。
変化が激しいVUCA時代には、ビジョンに基づいた選択の中で柔軟に対応し、変化に振り回されず一貫性のある対応が求められます。
また、「柔軟に対応しているつもりで、実は状況に流されているだけだった」という事態を避けるために、判断した後に一定期間その選択に集中しましょう。
3|VUCA時代の思考法「OODAループ」
VUCA時代を生き抜くのに役立つ思考法として、「OODAループ」があげられます。
「OODAループ」とは、PDCAサイクルといった従来の思考法よりも、刻々と変化する情勢に臨機応変に対応しやすい思考法です。
アメリカ空軍において、縦型組織では対応しづらいテロへの対策のため、指揮官の命令がなくても現場の兵士が自分で状況を見定めるための戦略法として提唱されました。
3-1|「OODAループ」が注目されている背景
ビジネスにおいてOODAループが注目されている背景として、VUCA時代には激しく変化する市場や顧客のニーズの把握・迅速な反映が求められる点があげられます。
OODAループは従来のPDCAサイクルと異なり、臨機応変にステップを飛ばすことができます。そのため、サイクルを回し終えるまでの時間が短く、短期間で変化に対応できます。
3-2|「OODA」ループの4つのステップ
OODAループは次の4ステップを回す(ループ)思考法で、都度フィードバックを反映させていきます。
【OODAを分解すると…】
- Observe(観察)
- Orient(適応・見定め)
- Decide(決定)
- Act(実行)
まず、情報を収集して市場などの動向を観察、現在何が起こっているのかを見定めましょう。
そして、見定めた内容をもとに仮説と解決策を立て、最適な解を選択して実行していくのがOODAループの一連の流れになります。
4|まとめ
VUCAとは、4つの要素(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)のため、将来の予測が困難な現代の状況を表す言葉です。
VUCA時代では、先の未来は誰にも予測できません。このような時代にビジネスパーソンとして対応していくには、次の方法が有効です。
- ビジョンを明確に持つ
- 情報収集をし、受け入れる
- 選択と集中
VUCA時代において重宝される人材になるためには、「OODAループ」を活用して、変化が激しい時代にどう対応していくべきかを、常に考え続けるよう心がけましょう。