こんにちは!HR NOTE編集部です。
先日、2016年3月の末に『人事において「見るべき」データとは?』というセミナーに参加させていただきました。
データの重要性というのは人事領域でも言われておりますが、どのデータを見るべきなのかという点に関しては明確な答えを持っている企業は多くありません。どういったデータが人事において重要なのか、様々な新しいデータポイントを人事に活かそうとされている事例をもとに「見るべきデータ」を考える内容となっております。
主催は、株式会社ミライセルフの表 孝憲氏。ゲストスピーカーとして、以下3名の方に講演いただきました。
- リンクトイン・ジャパン株式会社 杉本 隆一郎氏
- 採用学研究所コンサルティングフェロー 杉浦 二郎氏
- 株式会社FiNC 岡野 求氏
今回はLinkedInの杉本氏の講演内容をもとに、「人事が見るべきデータとは何か?」を皆様にお伝えできればと思います。
【セミナー主催者紹介】表 孝憲 |株式会社ミライセルフ代表取締役
モルガンスタンレー証券株式会社で入社当初から面接官を勤め、2010-12年は東京オフィスのリクルーティングコミッティーリーダーとして活躍。UC BerkeleyMBAで組織論と起業論を中心に学習してきた経歴を持つ。現在はミライセルフの代表として適性テストと人工知能による転職マッチングサービス 「mitsucari」(https://mitsucari.com/)を運営している。
杉本 隆一郎|リンクトイン・ジャパン株式会社 日本オフィス代表代行
上智大学卒業後、タイタス・コミュニケーションズ(現ジュピターテレコム)へ入社、人事部配属。
その後MTVジャパンでの人事職を経て、2006年楽天株式会社に入社。楽天在籍6年弱の間に約3000人の中途採用に関わり、近年は海外経験者を中心とした幹部候補の採用をリード。15年以上の人事業務経験を活かし、2012年にリンクトイン日本法人立ち上げに人事責任者として参画。2013年4月より、日本オフィス代表代行としてビジネスオペレーション全般を統括。
目次
LinkedInからとれるデータとその活用 杉本 隆一郎:リンクトイン・ジャパン株式会社
杉本氏より、自身の今までの経験や、LinkedInから取れるデータを採用や組織構成にどう活用していくか、取り組んでいる内容についてお話されました。
LinkedInは世界最大級のビジネス特化型SNSサービスで、2016年時点では、全世界で会員数が4億人、日本では100万人以上が活用しています。
ユーザーの利用目的はビジネスでの交流が主で、プロフィールも履歴書や職務経歴書に記載するような内容になっており、経歴やスキルを見ながら交流を図っていきます。
※LinkedInで活用できる機能には別途費用がかかるものもございます。【LinkedIn】
https://www.linkedin.com/
【参照記事】
LinkedInとは?今さら聞けない使い方・便利な機能を紹介
LinkedIn Wikipedia
【LinkedIn画面イメージ】
ビッグデータをもとに経営陣に採用提案することが増えてきたLinkedInの現在
世界中の多くのビジネスパーソンのデータを扱っているLinkedInでも、自社の採用や人事業務においてデータを活用して取り組むことが増えてきたと杉本氏は述べています。
杉本氏:やっぱり最近のビッグデータの流れから、社内でも人事部門としてどうやってデータを元に経営陣やビジネスパートナーを説得していくか。やっぱり感情論とか印象論じゃ説得できないので、人事もデータを活用しなくちゃいけない。そういう温度感がすごく出てきております。毎月のようにデータのエクササイズみたいな、お題が出されて、それに対してどうやって経営陣を説得していくかロープレを行う。そんな日々を過ごしています。
全社の採用人数の見込みや、組織階層を見た際に課題はないか、課題を改善するためにどうするべきかなど、データを用いて分析し、提案を行うことが当たり前になってきていると杉本氏は述べています。
杉本氏:例えば、現在社内にエンジニアが1,000人いて、来期の見込みが1,200人、3年後には1,800人くらいになるということを想定します。
そこから逆算して、離職率も含め毎年どのくらい採用すべきなのかを算出します。そして採用成功に向けて採用担当者も増やす必要があり、実際どういう手法・セグメントをもとに採用成功まで導いていくのか、データをもとに提案していきます。また、採用活動を行ってきた結果、マネジメント層が少なくスタッフ層のボリュームが非常に多くなっており、組織の階層にも変化がみられる場合があります。
ただ、各部門からはスペックやスキル重視の採用を求められている状況で、よりバランスの良い理想的な組織構造をつくるために、ミドルからシニアレベルで管理職候補になり得る方に絞って採用していくように社内で抱えている既存のデータを分析・加工して提案を行っています。
LinkedInのプラットフォームにあるデータを活用する方法
ここでは、LinkedInをどのように活用してるのか、その一部を紹介しています。
先ほども触れたように、LinkedInは全世界の会員数が4億人以上いて、個人のビジネスプロフィールが公開されています。
それに加えて700万社以上の企業が自社のページを設けて、そこで自社情報を掲載しています。
例えばLinkedInの企業ページを訪れると、従業員の公開されているプロフィールを全部見ることができます。
そしてLinkedInは、SNS上にある情報をもとに「エコノミックグラフ」を軸とした新しいつながりを活かしたネットワーク構想を数年前からビジョンとして掲げています。
企業、教育機関、従業員、大学生などのユーザーが持っている固有スキル、知識、仕事での成果、求人情報などをすべて連携させ可視化したものをエコノミックグラフと言い、人事をはじめとしたあらゆるビジネス活動に活用していこうとしています。
杉本氏:ビジネスにまつわるあらゆる情報を、LinkedInというプラットフォームに載せることによって、より人と人、企業と人っていうのが、効率良く有機的に自動的に結びつく、そういう世界観を作りたいと思っています。
LinkedInでは、名前や会社はもちろん、スキルや前職、出身校といった情報が可能な限り掲載されています。
そういったデータをもとに、自社の採用や最適な組織構成に結び付けていくことができると杉本氏は述べています。
杉本氏:自社の情報だけだと、現状こうだからこうあるべきなんじゃないのっていう話をする時に、何をもってそれが説得力のある提案なのか、そういうことが大事になってくるかと思います。
私の以前の経験からですと、人事の仕事をしていると、例えば競合他社とかよく耳にするような勢いのある会社とかの情報を集めていましたが、要はそういう情報が、大抵のものがLinkedInのプラットフォーム上で公開されています。
例えば、この会社にはエンジニアが7,000人、この会社には8,500人いるなど、各企業にどれだけのエンジニアがいるか把握ができ、さらにその人たちの経歴がLinkedInで見ることができます。
そのため、他社のエンジニアの組織構造や、どのくらいの経歴、・スキルを持った従業員が多いのかなどを見ることができるので、データをもとにディスカッションが行えます。
杉本氏:ベンチマークになる企業がある程度明確になっているのであれば、この会社は実際にこういう構造ですが、我々の目指すべき方向はこっちですよねとか、いやそうじゃないよっていうことをディスカッションしていく。
そして実際の採用活動というところになりますと、ベンチマークしている会社のエンジニアが結構評判いいと。どんなスキルを持っていて、前職はどこで働いていたのか調べて、自分達の採用に活かしていくと。こういう感じで採用担当の方も、ダイレクトアプローチがトレンドになっている中で、闇雲にアタックするのではなく、ターゲットにする企業を実際の事実に基づいて選定して、アプローチを行っていくことをやっていただきたいと思います。
LinkedInでは、どの会社にどのような人がいるのか把握することができます。
そして、その情報をもとにベンチマーク企業と自社を比較してみたり、ダイレクトリクルーティングに結びつけてみたりとさまざまアプローチを行うことができます。
新しいリファラルサービス、LinkedInを活用した社員紹介制度とは?
さらに、LinkedInでは、新しいリファラルサービスも展開しています。
自社で空きがでているポジションに対して、LinkedIn上に適切と思われる人候補者がいた際に、採用担当者が直接アプローチを行っても反応してもらえない可能性があります。
しかし、社内にその候補者と知り合いがいれば、そこからのアプローチの方がより反応率は高まります。
LinkedInでは、LinkedIn上で候補者を発見した際に、その候補者の知り合いの自社の従業員が全部可視化されるようなブロダクトを実装することができます。
杉本氏:採用担当者が、あなたの知り合いのAさんにアプローチできませんかと。
Aさんは、今の会社ではこういうことをやっているけど、うちのこのポジションにフィットしてそうだよとか。そこで上手くコンタクトが成功したら、特別にインセンティブを出したりと。
採用担当者が社員を探す必要がなく、社員紹介を推進できるような、そういうプラットフォームが今出来ています。
LinkedInでも活用していく中で、社員紹介による候補者が17%増え、社員紹介経由での採用も増加したとのことです。
さらに、精度の高いマッチングができるため、募集から採用に至るまでの採用期間も2週間短縮できたような、ポジティブな情報が取れてきたと杉本氏は言います。
また、上記とは少し異なる事例ですが、国内でもLinkedInを活用したリファラルリクルーティングを実施している企業がいくつも存在します。
ある企業では、テーマを設けてイベントを開催し、興味を持って参加してくれた方に対して、イベントを通して自社のファンになってもらい採用に結びつける施策を行っています。
その際、LinkedIn上で「自社に来てもらいたい」と思った方に「イベントに参加しませんか?」というメッセージを積極的に送っており、LinkedInのデータベースを駆使し、SNSとリアルの場を融合させ、ファンをつくり、リファラルリクルーティングにつなげています。
杉本氏:これから世界各国日本も含めて、こういうプロダクトをどんどん提供していくことによって、データを上手く裏側でマッチングさせることによって、採用活動をより効率的に進められるような、そんな世界観を構築していきたいと思っております。
最後に
LinkedInには、自社がベンチマークしているような企業の情報や、そこで働く従業員のスキル・経歴が載っており、そのデータ情報を活用することで、採用や組織構成を考える際により説得力のある具体的な意見を形成することができます。
LinkedInの活用に関しては、海外と比較した際に日本ではまだまだこれからという印象ですが、グローバル化に伴い、より活用のシーンは増えてくるのではないでしょうか。