最近、人事領域もAIの活用がかなりのスピードで進んでいます。
グローバルに目を向けると、AIを用いたHRTechサービスを提供する企業が増え、M&Aも活発化しています。
そこで今回は、この1年に海外メディアなどで取り上げられたスタートアップを中心に、AIを用いた海外のHRTechサービスをご紹介します。
目次
①Textio|テキストのパフォーマンスを分析
Textioはテキストのパフォーマンスを分析するサービスで、2014年にシアトルで設立したスタートアップ企業です。
機械学習と自然言語処理を駆使し、候補者の作成したレジュメや求人広告に利用されている文言やレイアウト、オファーメール、応募効果(ニーズにあった人材の獲得ができたか、獲得までに要した時間)などを解析。
候補者の属性によって効果的な、またはネガティブにとらえられる可能性の高い文言や文章を割り出します。
Textioのサービスを利用して、求人情報をデータ分析しスコアリング、フィードバックされた指摘事項をもとに訂正、再スコアリングすることでより効果の高い求人情報が作成できます。
TwitterやMicrosoft、スターバックスも利用しているサービスです。
②Connectifier|4億人のデータベースによる検索・マッチングサービス
Connectifierは、2012年に元Google社員のBen McCann氏とJohn Jersin氏が創業したカリフォルニアの企業です。
4億人を上回る求職者情報をデータベース化しており、人事担当者がキーワードやロケーションなどの条件を入力すると、データベースから潜在的な候補者を含む、適合性の高いターゲットがスピーディにピックアップされるというサービスです。
具体的なアルゴリズムは公開されていないものの「AIを活用する」とコーポレートサイトに明記されており、AI×HRのスタートアップとしてかねてより注目が集まっていました。
2016年2月、このConnectifierをLinkedInが買収。
LinkedInは、プロフェッショナル向けSNSとして確固たる地位を確立し、自社の会員情報データベースを活用する手法で人材採用サービスを提供してきました。
LinkedIn とConnectifierは、これまで競合として比較されてきましたが、この買収により比較競争には終止符が打たれ、LinkedInが提供するHRTechサービスへのAI活用が加速度的に進むものと予測されます。
今後の動向に注目です。
③Gild|エンジニアのスキルを可視化し採用に結びつける
Gildはサンフランシスコにある企業で、エンジニア採用向けのサービスを提供しています。
一般的なSNSだけではなく、エンジニアが利用するGithubやStack Overflowなどのプログラミング技術に関するコミュニティサイトや個人ブログなど、Webサイトをクロールして大量のデータを収集し、データベース化しています。
エンジニアの実力は履歴書や面接だけでは、適切に評価することは難しいものですが、常に最新化されるビッグデータを独自のアルゴリズムで解析することで、エンジニアのレベルを可視化することができます。
さらにGild Spotlightという求職者として顕在化していないエンジニアが転職をしたくなるタイミングも推測して企業の人事担当者に推薦することができるサービスも提供しています。
Facebook、trip advisorなどの企業がGildのサービスを利用しています。
④Entelo|優秀なエンジニアとデザイナーを効率的に探すことができる
Enteloはサンフランシスコの企業で、人事担当者がエンジニアとデザイナーをWEB上から検索できるサービスです。
Gildと同様に、主要SNSのみではなく、エンジニアやデザイナーが利用するコミュニティサイトから情報を収集し、候補者毎のプロフィールをまとめたデータベースを持っています。
応募があった候補者のデータを簡単に管理・分析できるインバウンド向けのEntelo Stackと、自ら検索して候補者を探すアウトバウンド向けのEntelo Searchがあります。
Entelo Stackは、応募があった数多くの候補者のレジュメに対して、あらかじめ設けた基準と照合し、最良の候補者が優先的にリストアップできるサービスです。
人事担当者が自社にマッチした候補者を優先順に目を通せるため、選考プロセスや選考スピードの効率化につながります。
Entelo Searchは、膨大なデータベースから、ニーズにあった候補者を検索することが可能なサービスです。
候補者の転職検討タイミングの推測、ビジネススキル・人種・軍隊経験までわかる多様な検索軸、優秀な候補者のレコメンドなど多彩な機能があります。
Microsoft、Znefits、Facebookなどの企業がサービスを利用しています。
⑤GapJumpers|バイアスを排除したマッチングが行えるサービスを提供
GapJumpersは、2012年に設立したサンフランシスコ発の企業です。
GapJumpersは、テクノロジーを活用して選考時に惑わされがちなバイアスを無くし、企業のニーズとバイアスのため、見逃していたかもしれない優れた人材の最適なマッチングを提供するプラットフォームです。
オランダを皮切りに世界各国でフォーマットされているオーディション番組”The Voice”のブラインドオーディション(審査員が歌声だけで審査を行うオーディション)を雇用に活かし、バイアスの無いマッチングを行うための「雇用のブランインドオーディション」を実践しています。
学歴や性別などにとらわれず、自社の求めるスキルに合った人材の採用が可能になります。
⑥hiQ|People Analyticsサービスを展開
hiQはサンフランシスコに拠点を置く企業です。
hiQは、「People Analytics」と言われるサービスを展開しています。
それは従業員のデータを解析することによって、採用の効率化、適正配置、人材育成、従業員エンゲージメントなどの従業員の生産性・満足度向上に寄与することができます。
人間の勘によるバイアスを排除し、データ分析結果を用いて人事部門を変革していくことをミッションとしています。今年2月には、テンプホールディングスの出資が決定、発表されました。
今後日本でも一層の注目が集まりそうです。
最後に
いかがでしたでしょうか。
各サービスに特色はありますが、個人に依存する経験や勘によるバイアスを除去し、テクノロジーとデータによる裏付けで人事領域を革新していくという共通のコンセプトが強く感じとれます。
海外、国内問わず、今後も人工知能の研究が進み、新しいサービスが出てくることでしょう。