労働者人口の減少に加え、現在は売り手市場ということもあり、優秀な人材の取り合いともいえる状況になってきているように感じます。その中で、特に新卒採用において、「内定者から辞退の連絡がきた・・・」ということが時折発生します。
辞退理由はさまざまではありますが、多大な時間と工数をかけ、厳選して学生を採用したのに辞退となると人事の方のショックも大きいものです。そうならないためにも、採用担当者は内定辞退の防止に力を入れています。
そして今回は学生が内定辞退をする理由と企業が実践している内定辞退防止施策をご紹介いたします。
本資料では、自社の現状をデータで把握することと、データに基づいた採用を行うためのノウハウを紹介いたします。
学生が抱える内定ブルー
内定を辞退する学生には2つのパターンが考えられます。
1つ目は選考時に企業に対して不信感を抱くパターンです。
例えば、「求人票に記載している内容と選考方法が異なっている」「実際の条件提示の内容と求人票が違っている」などが挙げられます。
また、面接時間が極端に短かったにも関わらず内定が出たりすると「自分ではなく誰でもいいのではないか」と不安になることもあります。さらに、面接官や採用担当者は学生からみれば応募先の企業で働くことになる社員の代表であるにも関わらず、その面接官や採用担当者の態度や印象が悪いと「この人たちと一緒に働きたくない」と思われてしまうことでしょう。
2つ目のパターンは、内定期間が長いために生まれる疑問や不安です。
近年の学生は人間関係に強い不安を抱く傾向があるため「社員や同期と上手くやっていけるだろうか」と思ってしまうことがあります。また、理系の学生に多いのが「今の知識や技術で会社の役に立てるのだろうか」という不安です。
企業で働く自分が活躍できるイメージに疑問や不安を持ち「もっと自分に合う企業があるのではないか」と他社選考を受けて内定を辞退するパターンもあります。
昔から良く「内定ブルー」という言葉を耳にします。
内定ブルーとは、内定後時間が経つにつれて「本当にこの会社でいいのか・・・」と不安や葛藤が生まれ悩んでしまう状況のことを指します。内定ブルーには明確な理由もなく、ただ漠然と悩んでいるといったケースも多いので、企業側は定期的に内定者とコミュニケーションをとって内定ブルーの解消に努めています。
今回は、各企業が内定者とどのようにコミュニケーションをとっているかいくつか事例をご紹介します。
内定辞退を防ぐために何ができるか
ここでは、内定辞退防止のために、採用担当者が取り組むべき施策をいくつかご紹介します。
1.選考の過程で徐々に惹き付けを行っていき、理解度と志望度を高める
これは、デートを重ねてお互いの気持ちが高まった上で告白することと似ていますが、選考を突破するごとに自社への志望度が高まるように対応していきましょう。例えば、選考途中で社員に会わせて働くイメージをつけてもらったり、何気なくランチに誘ってみたり、説明会では配布しなかったパンフレットやノベルティがあればそれを渡したりなど、最終選考が近づくにつれて、徐々に学生の気持ちが盛り上がるような特別感を演出できると良いかと思います。
2.印象に残る内定出しを行う
電話や書類送付のみの味気ない通知ではなく、例えば、何気なく自社に来てもらいサプライズの内定出しの演出を行ったり、社長自らが熱い想いとともに内定を出したり、大勢の社員の歓迎ムードとともに内定を出したりと、「自分は歓迎され、必要とされている」と感じてもらえるような内定出しを心がけましょう。強烈な惹き付けになります。
3.社員に会わせる
優秀な社員に会ってもらい、惹き付けを行うことも良くある方法です。誰をアサインするかが重要で、同じ大学、職種、行ってきた部活、志など、学生とどの社員を引き合わせるかは人事の腕の見せ所です。
4.内定承諾後も定期的に会う
恋愛と同じで会わない時間が多くなると、気持ちが薄れていったり、不安や不満が募ってきたりするものです。そのため、懇親会の開催や、研修・課題などを定期的に行っていきましょう。また、内定者同士を会わせることで同期の絆も生まれてくるので、つらいことや悩みがあっても踏みとどまれるきっかけになります。
内定辞退を防ぐための施策に関する企業事例を紹介
サイボウズ株式会社:サイボウズLiveで内定者をフォロー
サイボウズでは内定式や入社式以外にも先輩社員との食事会や、内定者の保護者も参加できる会社参観日、サイボウズ製品の広告宣伝を考えるワークショップイベントを行っています。
ただ、こうしたイベントは数ヶ月に1回しか行えないため「サイボウズLive」というグループウェアを使用して、上記に加え継続的に内定者フォローを行っています。
サイボウズLiveでは採用担当から連絡事項や自社の紹介を行ったり、内定者同士で自己紹介を行なったり、イベント後の感想を投稿したりと、入社前から自社への理解促進や同期の絆を深めるようにしています。
株式会社ジェイック:接触頻度を保ちながら会社の一員という意識を持ってもらう
「10年間で内定辞退は1人だけ」という採用支援のジェイックが内定者フォローで心がけていることは、電話やメール、社内報、Facebookなどで内定者との接触頻度を保ち、心配事や疑問があればすぐに相談できる体制を整えていることです。
また、懇親会、内定式、内定者研修などの各イベントでは社員が多く参加して内定者を歓迎していることを伝える工夫をしています。
内定者には各イベントでビジネス意識を持ってもらえるプログラムを実施し、内定者研修終了後に経営計画発表会に参加してもらうことで、ジェイックの一員という意識を高めてもらえるようにしています。
クックパッド株式会社:ワークスタイルトランプで互いの価値観を知る
クックパッドでは、グループワークで使えるトランプ型自己分析ツール「ワークスタイルトランプ」を活用しています。
ワークスタイルトランプは52枚のトランプには様々な「働き方」に関するキーワードが書かれており、全員が納得できる最も大事だと思う10枚を選び、どのカードが選ばれたかによって自社とのマッチ度を把握することができます。
内定者研修で初めて顔を合わせるため、ワークスタイルトランプを使って話をするきっかけを作り、価値観の違いや共通点を知ることで同期にどんな人がいるのかより深く知ることができます。
また、自分の価値観を話をしたり他の人の考えを知ることで、自分を省みることができる工夫がされています。
内定者研修には若手の社員を交えていますが、ワークスタイルトランプを使って話をするため、共通の話題を持つことができ、入社後の人間関係についての不安を払拭することにつなげています。
マルホ株式会社:採用時の評価をフィードバックして入社意欲を高める
皮膚科学に特化した製薬企業のマルホでは、内定者向けの専用サイトでMRの免許取得サポートなどの情報を発信したり、内定者が疑問や不安に感じたことをすぐに相談できる状況を作ったりなど、入社前に疑問や不安を払拭するように心がけています。
また、内々定の時期に採用時の評価をフィードバックし、面接時の印象や個人の強みだけでなく克服して欲しいところを伝えています。
さらに、1泊2日の合宿形式での懇親会を実施し、「社会人としてどう成長したいか」をテーマとして、グループワークを行うことで入社後のイメージをより明確に描いてもらえるよう働きかけています。
MHソリューションズ株式会社:スマホアプリで学習状況を共有することで同期は仲間でありライバルという意識を持つ
ITコンサルティング、業務アプリケーションの開発などを行うMHソリューションズは、エンジニア職でのケーススタディをまとめたテキストで実務型の教育を受けてもらいながら、SNS機能がついたスマホアプリで社会人に必要なビジネスマナーなどを学ばせています。
スマホアプリには進捗状況がランキング形式で表示され、ランキング上位になるたびに役職が上がる仕組みになっているため「同期の●●さんには負けないぞ」と自然とライバル意識が生まれます。
また、タイムライン機能が搭載されており、採用担当からのお知らせだけでなく、同期の仲間同士でコミュニケーションをとることができるため、同期の絆とライバル意識が生まれるように工夫をしています。
株式会社パソナ パソナキャリアカンパニー:e-ラーニングで0から学べるプログラミング研修を実施
パソナでは、総合職・エンジニア職の内定者両方にe-ラーニングを通してプログラミングスキルを学んでもらいます。
エンジニアはもちろん必須のスキルですが、営業職に関してはITリテラシーの強化・向上を求めており、最低限必要なスキルを身につけて、そのあたりの情報感度の高さを身につけてもらう狙いがあります。
そのために、e-ラーニングを利用し、内定者自身のスケジュールに合わせて学ぶことができる上、オンライン上で講師からのフィードバックを受けられるので未経験からでもプログラミングスキルを身につけることができます。
また、個別学習というスタイルをとることで、行き詰まった時に自分で解決する習慣を身につけることにもつながります。
受講した内定者からは、「普段目にするWebサービスの構造を理解することが出来た」「また、引き続きプログラミングを学びたい」といった声が多数挙がっており、内定者の満足度につながっています。
最後に
いかがでしたでしょうか。
内定辞退を防ぐには、学生に自分の働くイメージをもってもらったり、同期との関係構築を強化させたりなど、学生と密接にコミュニケーションをとり、内定者の不安を払拭することが求められます。
そのためにSNSツールや定期的な懇親会、e-ラーニングなど、中には費用がかかるものもありますが、これらを活用することも一つの方法かと存じます。